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第4章 助手と一緒に魔道具を作って生きていく。
53.事なかれ主義者は苗木を手に入れた
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ドランという街には大小さまざまな教会がある。主流なのは最高神様の教会。世界を創造した神様で、人間や亜人を作ったと言われている。実際そこの所どうなの、って聞いたら教えてくれるのかな。
神託という形で実際に神様と関わる機会があるこの世界では日本のように無宗教の人はおらず、何かしらの神様を信仰しているらしい。ただ、日本と同じように膨大な神様がいると信じられているのでいくつも掛け持ちオッケーらしい。邪神じゃなければ。
「私は心を司る神様を信仰しているのですわ」
「私は大地の神と戦の神」
「最高神様は信仰していないの?」
「最高神様は信仰していない人の方が少数派ですわ。だから、わざわざ言う事は少ないのですわ」
「そういうものなんだ」
「最高神は他の神とは格が違う。他の神の代わりに神託を行った記録もあり、上の存在と考えられている」
なるほどなぁ。
最高神様を信仰している教会に向かう途中で神様についてお喋りをしていた。
僕はとりあえず加護をくれた神様を信仰しておけばいいのかな。
にしても、最高神様から呼び出し食らうって何なんだろう?
あいつらの事かなぁ。こっちをパシリとして使おうとしなければ割とどうでもいいし、関わりたくないんだけど。
最高神様を信仰している教会はドラン公爵の屋敷の近くに建てられていた。
真っ白な外壁が眩しい。ドラン公爵の屋敷もとても大きくて立派なんだけど、縦の大きさだと教会の方が大きい。
「立派な建物だね……」
「最高神様ともなればこのくらいは当たり前ですわ。王都の教会はもっと大きいですわ! とりあえず奥に入るのですわ」
「建物は立派だけどほとんど人いないね」
「行事の時くらいしか人は来ない」
「最高神様だけを信仰している人は熱心にお祈りをしにいらっしゃるようですわ」
「他の神様の信仰を促すためです。『わしだけが信仰されても発展はない。他の神々をしっかりと信仰するように』とお言葉を賜っております。初めまして、司祭のダドリエルです。この教会に仕えております」
白い祭服を身にまとった髭もじゃの人が自己紹介をすると「こちらへどうぞ」と案内をしてくれるようなのでその後ろについていく。
敷地に入っても人は祭服を着た人くらいしか見かけない。時間帯も関係あるのかな。
案内された礼拝堂はイメージ通りの場所だった。豪華なステンドグラスに一度見た事がある髭もじゃの神様の大きな像。木の長椅子が並べられている。
指示された場所に座ると、司祭様は一人祈りを捧げ始めてしまった。
っていうか、両隣に座っていた二人も手を組んで目を瞑っている。
え、なんも説明ない感じですか?
とりあえず見様見真似で手を組んで目を瞑る。
と、同時にものすごい衝撃が背中を襲って前のめりで床に突っ伏した。
目を開いて周りを見渡すと真っ白な空間だった。そして背中に重みを感じると、背中に乗っているちっこいのが大音量で叫んでいる。
「え、どゆこと?」
「ちょっとわしの力でこっちに来ていただいたんじゃよ。ほれ、ファマ。いつまでも泣いてないで用件を済ませなさい」
「ワ゛ア゛ア゛~~~~~~~~」
「だめじゃな、これは」
「シズトが悪いんだよ! プロスたちの加護だけ使ってファマの加護を使わないんだから! プロスたち慰めてたんだからね!」
「ワ゛ア゛ア゛~~~~~~~~」
「え、ちょっと何それ苗木? 僕の背中に押し付けても何も起きないと思うんだけど!?」
「その木を育てて欲しいんじゃないかな……?」
「シズトが住んでるお屋敷で育ててって事でしょ? ちゃんと加護を使ってあげないとダメなんだからね!」
背中で泣きじゃくっている男の子がぶんぶんと首を縦に振っている。
ちょっと何言いたいか分かんないっす。
改めて正面に立っている神様を見る。髭もじゃが特徴的な神様のまとめ役。最高神と呼ばれていた神様だ。
「名前はないのじゃよ。最高神とだけ呼ばれておる」
「最高さんだぞ! ですね」
「ちょっと何言ってるかわかんないのう」
「え?」
「え?」
「ちょっと最高神様! 遊んでないでファマを落ち着かせてよ~」
「これこれ、プロス。まとわりつくでない」
「ファマくん、どこに植えてほしいの……?」
「ひ゛ろ゛い゛と゛こ゛な゛ん゛た゛な゛~~~~~~~」
え、あの屋敷の広さで駄目なの?
「ほれ、ドランの南に草が生えんところがあったじゃろう」
「そこは植物育たない場所って聞いてるんですけど大丈夫なんですか?」
「そ゛だつ゛ん゛た゛な゛~~~!! い゛の゛る゛ん゛た゛な゛~~~!!!」
「その木はちょっと特殊で『生育』の加護を持つ者の祈りで成長が進むんじゃ」
んー、なんか面倒事の予感しかないから嫌だな~。
「そ゛た゛て゛る゛ん゛た゛な゛~~~~!」
結局、押し問答の末、今まで『生育』の加護を使うどころか忘れていた負い目もあって苗木を育てることを了承した。
苗木を受け取った瞬間、礼拝堂の元居た場所に座っていた。
一瞬白昼夢かな? とか思ったけど、しっかりと手には苗木があったのでちょっとげんなりしつつ、ため息をつくと隣に座っていたレヴィさんが騒ぎ始めた。
司祭様だけでなく、ドーラさんも眠たそうな目をまん丸にして驚いた様子で僕を見ていたので、これはやらかし案件ですね、分かります。と、遠い目でステンドグラスをボーっと見て現実逃避したんだけど、僕は悪くないと思う。
神託という形で実際に神様と関わる機会があるこの世界では日本のように無宗教の人はおらず、何かしらの神様を信仰しているらしい。ただ、日本と同じように膨大な神様がいると信じられているのでいくつも掛け持ちオッケーらしい。邪神じゃなければ。
「私は心を司る神様を信仰しているのですわ」
「私は大地の神と戦の神」
「最高神様は信仰していないの?」
「最高神様は信仰していない人の方が少数派ですわ。だから、わざわざ言う事は少ないのですわ」
「そういうものなんだ」
「最高神は他の神とは格が違う。他の神の代わりに神託を行った記録もあり、上の存在と考えられている」
なるほどなぁ。
最高神様を信仰している教会に向かう途中で神様についてお喋りをしていた。
僕はとりあえず加護をくれた神様を信仰しておけばいいのかな。
にしても、最高神様から呼び出し食らうって何なんだろう?
あいつらの事かなぁ。こっちをパシリとして使おうとしなければ割とどうでもいいし、関わりたくないんだけど。
最高神様を信仰している教会はドラン公爵の屋敷の近くに建てられていた。
真っ白な外壁が眩しい。ドラン公爵の屋敷もとても大きくて立派なんだけど、縦の大きさだと教会の方が大きい。
「立派な建物だね……」
「最高神様ともなればこのくらいは当たり前ですわ。王都の教会はもっと大きいですわ! とりあえず奥に入るのですわ」
「建物は立派だけどほとんど人いないね」
「行事の時くらいしか人は来ない」
「最高神様だけを信仰している人は熱心にお祈りをしにいらっしゃるようですわ」
「他の神様の信仰を促すためです。『わしだけが信仰されても発展はない。他の神々をしっかりと信仰するように』とお言葉を賜っております。初めまして、司祭のダドリエルです。この教会に仕えております」
白い祭服を身にまとった髭もじゃの人が自己紹介をすると「こちらへどうぞ」と案内をしてくれるようなのでその後ろについていく。
敷地に入っても人は祭服を着た人くらいしか見かけない。時間帯も関係あるのかな。
案内された礼拝堂はイメージ通りの場所だった。豪華なステンドグラスに一度見た事がある髭もじゃの神様の大きな像。木の長椅子が並べられている。
指示された場所に座ると、司祭様は一人祈りを捧げ始めてしまった。
っていうか、両隣に座っていた二人も手を組んで目を瞑っている。
え、なんも説明ない感じですか?
とりあえず見様見真似で手を組んで目を瞑る。
と、同時にものすごい衝撃が背中を襲って前のめりで床に突っ伏した。
目を開いて周りを見渡すと真っ白な空間だった。そして背中に重みを感じると、背中に乗っているちっこいのが大音量で叫んでいる。
「え、どゆこと?」
「ちょっとわしの力でこっちに来ていただいたんじゃよ。ほれ、ファマ。いつまでも泣いてないで用件を済ませなさい」
「ワ゛ア゛ア゛~~~~~~~~」
「だめじゃな、これは」
「シズトが悪いんだよ! プロスたちの加護だけ使ってファマの加護を使わないんだから! プロスたち慰めてたんだからね!」
「ワ゛ア゛ア゛~~~~~~~~」
「え、ちょっと何それ苗木? 僕の背中に押し付けても何も起きないと思うんだけど!?」
「その木を育てて欲しいんじゃないかな……?」
「シズトが住んでるお屋敷で育ててって事でしょ? ちゃんと加護を使ってあげないとダメなんだからね!」
背中で泣きじゃくっている男の子がぶんぶんと首を縦に振っている。
ちょっと何言いたいか分かんないっす。
改めて正面に立っている神様を見る。髭もじゃが特徴的な神様のまとめ役。最高神と呼ばれていた神様だ。
「名前はないのじゃよ。最高神とだけ呼ばれておる」
「最高さんだぞ! ですね」
「ちょっと何言ってるかわかんないのう」
「え?」
「え?」
「ちょっと最高神様! 遊んでないでファマを落ち着かせてよ~」
「これこれ、プロス。まとわりつくでない」
「ファマくん、どこに植えてほしいの……?」
「ひ゛ろ゛い゛と゛こ゛な゛ん゛た゛な゛~~~~~~~」
え、あの屋敷の広さで駄目なの?
「ほれ、ドランの南に草が生えんところがあったじゃろう」
「そこは植物育たない場所って聞いてるんですけど大丈夫なんですか?」
「そ゛だつ゛ん゛た゛な゛~~~!! い゛の゛る゛ん゛た゛な゛~~~!!!」
「その木はちょっと特殊で『生育』の加護を持つ者の祈りで成長が進むんじゃ」
んー、なんか面倒事の予感しかないから嫌だな~。
「そ゛た゛て゛る゛ん゛た゛な゛~~~~!」
結局、押し問答の末、今まで『生育』の加護を使うどころか忘れていた負い目もあって苗木を育てることを了承した。
苗木を受け取った瞬間、礼拝堂の元居た場所に座っていた。
一瞬白昼夢かな? とか思ったけど、しっかりと手には苗木があったのでちょっとげんなりしつつ、ため息をつくと隣に座っていたレヴィさんが騒ぎ始めた。
司祭様だけでなく、ドーラさんも眠たそうな目をまん丸にして驚いた様子で僕を見ていたので、これはやらかし案件ですね、分かります。と、遠い目でステンドグラスをボーっと見て現実逃避したんだけど、僕は悪くないと思う。
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