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第3章 居候して生きていこう

42.事なかれ主義者の所に「ですわ」襲来ですわ!

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 ラオさんがいなくなっても日常は変わらない。
 ご飯の時に一人いないので少し静かな感じはするけど、元々ラオさん早食いした後は魔力マシマシ飴を舐めてのんびりしてるから僕が話さないと喋らないし。
 朝ご飯を食べ終わったらホムラはマーケットに行って商売をしている。
 僕は基本的に屋敷から出る事はない。
 冒険者ギルドに依頼されている浮遊台車の納品は続いているけれど、ホムラがついでに納品してくれるので本当に外に出ない。
 一週間ほどそんな生活をしていると流石に運動不足やばいなぁ、と感じた。なので今日はジュリーンと一緒に全自動草刈り機で刈られた草を集める作業をする。
 マッドサイエンティスト感のあるどこかのハーフエルフさんとは違って、まっすぐ伸ばされた綺麗な金色の髪は腰まで伸びている。側頭部からノエルよりも長い耳が存在を主張していて、時々ピクッと動く。緑色の目はジト目だった。ジーって見られてるとなんかやっちゃったかな? て気になる。
 ハーフエルフに対して思う所はない様子だった。

「世界樹を守護している都市国家ユグドラシル等では混じり物は忌避されると聞いた事はありますね。世界樹を育てられる自分たちに誇りを持っているんだとか」
「世界樹? それってめっちゃでかい感じ?」
「そうです。世界樹は希少な木で杖にして使えば魔力効率がとてもよく、制御もしやすい最上級の杖が作れます。葉っぱや樹液等をポーションに少しでも混ぜれば劇的に効力をあげる事もできます。それを育てているエルフ共は世界樹の周辺に都市を作り、神から賜りし物だとか言って値段を釣り上げて商売をしている守銭奴共です。たとえ同族だとしてもそれは変わりませんでした」

 なんかこれ聞いたら面倒事に巻き込まれそう。黙って草集めよ。
 そうするとジュリーンも特にそこから話す事はなかった。
 草集めが終わったので屋敷に戻る。

「なーんもやる事ないんだよなぁ」

 そう思いつつ廊下を歩いていると、ばったりちびっ子と遭遇した。
 奴隷夫婦の娘さんのアンジェラちゃんだ。
 くりくりとまん丸のピンクの瞳にピンクの髪はちょっと最初びっくりしたけど、人は慣れるものである。ピンク色の髪と瞳はお父さん譲りらしい。
 アンディーはスキンヘッドだったけど、ピンク色の目をしてた。
 奴隷の子は奴隷ではないので自由に過ごしている彼女だが、一週間も経つと僕に慣れてくれた。
 フフフッ。日頃遊んであげているからね、その影響ですね!

「シズトさま、なにしてるの?」
「暇してるの」
「アンジェラがあそんであげる!」
「じゃあ有難く遊ばれてあげよう! 今日はそうだな……鬼ごっこでもしようか」
「シズトさまがおに!」

 そういうとタタタタターッ、と短い足を懸命に動かして去っていく幼女。
 病気で苦しむのはかわいそうだと感じたので、魔道具を作ってあげた。
 ペンダントとして彼女の両親に効果を伝えて渡した。
 薬入れ用ロケットペンダントなんてものがあったな、と思って作ってみたそれは今の所効いているのかどうか分からない。
 分からないけど、彼女が常につけているので気に入ってくれたようで安心した。
 魔石を中に入れるタイプなのでその魔石を遊ぶたびに入れ替えている。

「シズトさまー、こっちにおいでー!」
「よーし、捕まえちゃうぞー!!」

 ……ちょっと元気になりすぎなのも問題ですね。
 際限なく鬼ごっこをする事になり、最終的に魔道具を使って捕まえた。



 エンドレス鬼ごっこをした翌日。足の筋肉痛がやばい。
 ちょっと今日は歩きたくないので寝室でゴロゴロして過ごしていると、扉をノックする音が聞こえた。
 家の清掃をしてくれているモニカかダーリアかな?

「入っていいよー」

 そう伝えると、予想と反してドーラさんが入ってきた。
 いつもノックをしないのに珍しい、と思っていたらその後ろにも誰かいた。
 ふっくらとした女性だった。
 丸々とした顔は、太っている女性が好みの人であれば人気が出るんじゃないだろうか。
 ぱっちりとした気の強そうな青い瞳は物珍しそうに部屋をきょろきょろしていたが、やがてベットでゴロゴロしていた僕にロックオンした。
 金色の髪はツインテール……というか、ツインドリル? その髪型ってどうなってんの???
 疑問を脇に置いて着ている服を見ると、お貴族様が着るような豪華なドレスを着ていた。それになんか見覚えがある金属製の指輪をしている。それに口に咥えているそれって、魔力マシマシ飴じゃない?
 僕と謎の女性が黙って静かに見つめあっていると、ドーラさんが口を開いた。

「シズト、手伝って」
「手伝うって何を?」
「彼女のダイエット」

 ドーラさんの視線が名も知らない女性に向く。
 僕もその視線を追って金髪ダブルドリルさんを見ると、彼女は「よろしくお願いするのですわ!」と胸を張ってそう言った。
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