【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
53 / 1,094
第3章 居候して生きていこう

38.事なかれ主義者はリクエストを受ける。

しおりを挟む
 結局一つずつ魔道具を説明するのに時間を使うのがもったいないと思ったので、マイルーム予定の部屋でノエルに生活をしてもらう事にした。
 あの部屋の机の引き出しはアイテムバッグにつながっているので、アイテムバッグ内にある魔道具は好きなように見ていいと伝えてある。
 ある程度防衛体制が整ったら僕の部屋になる予定の部屋なので綺麗に使うようにはきつく注意しておいた。
 それから一週間、ノエルはご飯を作るとき以外は部屋にこもって作業をしている。
 最初の三日間は徹夜で魔道具を弄っていたらしいので、四日目からはホムラにノエルの寝かしつけの仕事をお願いした。僕で慣れてるでしょ。
 ご飯を食べる時に見る顔色が最近はとてもいいので今後も続けるようにお願いしておいた。
 なんかノエルが青い顔して震えてるんだけど、どうしたんだろう?

「な、何でもないっす! あ、調理場の片づけをしないといけなかったっす!」

 そう言って慌てて外に出ていったのは、ホムラの視線から逃れるためじゃないよね?

「ホムラ、なんかしてないよね?」
「言われた通り寝かしつけをしているだけです、マスター」

 とか何とかそんな感じのやり取りをして朝ごはんを食べ終わると、ホムラはいつものようにマーケットにノエルと僕がそれぞれ作った魔道具を売りに行く。空いた時間で冒険者ギルドに浮遊台車の納品も頼んである。
 それにドーラさんがついていって、僕の作った魔道具だけ買って戻ってきて、それぞれがのんびり過ごすのがいつもの日課だったけど、今日は少し違った。

「作ってほしいものがある」

 そういうドーラさんは眠たそうな目だったけど、いつものボーっとした感じではなく真剣な表情だった。
 浮遊台車を作っている作業を止めて、ドーラさんの話を聴く。

「加護の発動を阻害する物が欲しい」
「加護を使えなくする物って事だよね?」
「そう」

 んー、できそう。
 何に使うのかは聞いたら厄介事に巻き込まれそうな気がするので何も聞かずにとりあえず物を作る事にした。
 鉄を【加工】して、手枷を作ってそこに【付与】をする。
 これでどうですかね、ドーラさん。

「……見た目を変えてほしい」
「どんなのがいいの?」
「アクセサリーとかでいい。つけてる人がすぐに取り外せる物の方がいい」
「んー、じゃあ指輪にしようか見た目ってちょっと凝った方がいい?」
「なんでもいい」

 加護を持った悪い人を拘束するためにいるのかな、って思ったけどそうでもないみたい。
 見た目のご希望とかはなかったから、とりあえず鉄のリングを指のサイズで作る。
 ……そういえば使う人の指のサイズ知らないわ。自動調節機能でもつけようか。
 本人が魔力を流している間は加護が使えなくなる魔法を【付与】して完成。
 魔力を流している間は加護無しになるから、『加護無しの指輪』とでも名付けようか。
 魔石を使ったタイプにすれば強制的に加護無しにできるんだけど、そういう物はご希望じゃないみたいだしね。
 使い方を教えると、ドーラさんは自分で身につけ、椅子を持ち上げたり机を移動させたりして確認をすると満足してもらえたみたいだ。
 家主さんで話が魔道具店の常連さんだからご要望はお聞きして、ご機嫌取りはしとかないとね。
 お風呂とかマイルームとかめっちゃ魔改造しちゃったし、掃除も頑張ったし、たい肥も今作成中だし追い出されたくない。
 宿とかだと勝手にある物を改造するのはよくないだろうから、この屋敷を自由にさせてもらえるのはありがたいんだよね。
 だから、これからもご要望があれば言ってほしいな。作るかどうかは僕が決めるけど。
 そんな事を思っていたら、今度は美味しい紅茶が簡単に入れられる魔道具が欲しいと言われた。

「美味しい紅茶ってどんな味?」
「ついてきて」

 と、いう事で全身鎧を身にまとっていないドーラさんと、お高そうな雰囲気のお店で紅茶を飲んでいます。
 周りがすごい身なりいい人ばっかなんだけど浮いてないっすか?
 緊張で紅茶の味とか分かんないんだけど、どうすればいいっすか?
 ドーラさんの方を見ると、眠たそうな目で陽に当たっている。窓際の席を希望していたし、日向ぼっこでもしたかったのかな。
 陽に当たって輝いている金色の髪はサラサラで、ちょっと触って見たいな、って思っているのは秘密だ。
 眠たそうな青い瞳が紅茶の入った器からこちらに移ると、ちょっとドキッとするくらい綺麗だった。顔がすごく整っているのも駄目だ。肌も白くて直視するともう駄目駄目だ。
 っていうか、女の人と二人で紅茶飲むのってなんかデートみたいなんですけど?
 そう考えちゃったらもう駄目過ぎだ。余計緊張してきて味わかんないやっばい!

「作れそう?」
「ちょっと……緊張しすぎて味わかんないや」
「そう。時間はたくさんある」

 拷問ですかね?
 そんな事を思いながら味が分かるようになるまでひたすら紅茶を飲み続けた。
 あ、なんか作れそう。と思った頃には太陽がかなり傾いていて、ドーラさんはとっても眠たそうな目でこちらを見ていた。
 なんかすみません。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

処理中です...