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第3章 居候して生きていこう
幕間の物語13.ちびっこ神様ズは見守り中
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シズトたちが送り込まれた世界の神々は、普段は神々が住まう世界で世界の行く末を見守っている。
と、言えば聞こえはいいが、暇つぶしで人間たちの生活を眺めている事が多い。
気まぐれに試練と称して災いを引き起こす神もいれば、何となく目についたものに自身の加護を与える神もいる。
ただ、下界に干渉をする事が出来るのはある程度力を付けた神だけ。
まだ神として力を蓄える事が出来ない神々は、人間たちの生活を覗き見る事しかできない。
神界の自分たちの秘密基地に集まって水晶玉をじっと見ている小さな神々もそうだった。
心配そうに手をもじもじとしているおかっぱ頭の女の子の名前はエント。シズトに付与の加護をあげた駆け出し神様。
ムーッと眉間に皺を寄せながら見つめている目が真ん丸の女の子も同じく駆け出し神様で名前はプロス。シズトに加工の加護をあげた。
ボーっとした表情で、鼻水を垂らしている男の子はファマ。シズトに生育の加護をあげた2人よりもちょっと先輩の神様。彼の力で下界に下りたシズトを水晶玉を通して見ている。
「ぶ、無事に街に着いたみたいなんだな」
「よかったー。プロスの加護を使う前にバタンキューしちゃったら困るもん」
「オ、オイラもそうなんだな」
「ファマはまだいいでしょ。エルフたちにホイホイ加護渡してたでしょー。プロスはシズトが初めてなんだよ!」
「エ、エルフたちが秘匿してて信仰が広がってないんだな。そ、それに……それに……」
ファマの目がだんだんと潤んできていてハッとする二人。
ファマに感謝の信仰を捧げていた者がすでに誰もいなくなってしまった事を、一緒に下界を覗かせてもらっている時に知っていた。
長い間嘆いていたファマの相手をしていた二人は、癇癪を起こしたファマがエルフの加護をシズトが転移するちょっと前に取り上げたのを知っている。
「シズトくんが広めてくれるよ……?」
「そうそう、シズトがバーッて広めてくれたらエルフなんていらないでしょ!」
「そ、そうなんだな。シズトがいるんだな」
目元をこすって涙を拭い、気を取り直して残り少ない神力でシズトの様子を映す。
どうやら冒険者になったようだった。
果たして彼らの加護は使われるのだろうか。
ちょっとハラハラしながらずっと見ていた三人だったが、無事エントとプロスの加護を使って魔道具が作られた。
小躍りするプロスと、それに振り回されるエント。
二人を横目に見ながらファマは思う。
自分の加護はいつ使ってもらえるのかな、と。
「ぜ、全然使ってくれないんだな」
「宿に住んでるし、使いづらいんじゃないかな……?」
「かもねー。プロスたちの加護はバンバン使ってくれるし」
「オ、オイラの加護も役立つはずなんだな。や、野菜とか育てられるんだな!」
「んー、でもそれ難しいんじゃない? プロス、あんまり野菜の事知らないけど、育てるために広い場所がいるんでしょ?」
「そ、そんな事ないんだな! か、加護使えば部屋の中でも育てられるんだな!」
「……それって、シズトくん知ってるのかな……?」
エントの一言で先程まで喧しかった室内がピタッと静まり返った。
本来、加護の使い方は天啓という形で伝える事が多い。
ただ、それは本人がそれをしたいと願い、それを神が汲み取って気が向いた時に伝えるだけのものだ。
この方法の便利な所は神力を必要としない所だ。
加護を通して対象の者に伝えるだけなので、神側はあくまでも受動的にならざるを得ない。
「こ、こうなったら、夢に入って伝えるんだな!」
フンス! と鼻息荒く水晶玉を食い入るように見つめるファマ。
夢の中に現れ、人に英知を授ける方法はよく使われる手法の一つだった。
神力はある程度必要なため、プロスとエントにはまだ難しいものだったが、エルフから得ていたなけなしの信仰力を使えば干渉も可能だ。
あくまで、シズトが夢を見れば、の話だが。
「ぜ、全然夢を見ないんだなああああああああ!」
ファマが床に寝転がり、ドッタンバッタンと駄々をこねながら大号泣中だ。
それを見守るエントは、何とも言えない表情をしていた。
こうなった原因がエントの加護を使って作られた魔道具だと、この短い時間覗いていて気づいた事だった。
シズトが作り出した安眠カバーは安らかな眠りを対象に授けるものだ。
使っている間は常に熟睡状態。時間が来るまでは起きる気配もないが、時間が来れば一気に覚醒する代物だった。
これでは夢なんて見る訳もない。
神力がいくらあろうと、夢を見ていない限り夢の中に入る事なんて不可能だった。
ずっと泣き叫んでいるファマを見て、困り顔を見合わせるエントとプロス。
ちら、っと水晶玉を見ると、何やらまた自分たちの加護を使って、外に魔道具を作っているのが映っていた。
「あれ? これ、たぶん農業に使うやつじゃないかな……?」
エントは農業については詳しくない。詳しくないが、魔道具でこういう事がしたい! というシズトの思いから推測する事は出来た。
ガバッとファマが起き上がり、四つん這いなのにすごい速さで水晶玉に近づいたかと思えば、飛びついた。
「ほ、ほんとなんだな!? ほんとなんだな! たい肥をつくろうとしてるんだな!!」
「よかったじゃんファマ! なんか引越して草とかバリバリ~ってしたり、水をブシャーってしてたりしたから、そのうちお野菜バンバン育て始めるんじゃない?」
「き、きっとそうなんだな! そ、そのために肥料作ってるんだな!」
「よかったね、ファマくん……?」
「よ、よかったんだな。ほ、本当によかったんだな!」
ちびっこ神様三人組はしばらくの間、水晶玉を囲んで嬉しそうに小躍りを続けていた。
ただ、その後たい肥を売ったシズトを見て大絶叫をする事になるのだが、今は三人共そんな未来を知る由もなかった。
と、言えば聞こえはいいが、暇つぶしで人間たちの生活を眺めている事が多い。
気まぐれに試練と称して災いを引き起こす神もいれば、何となく目についたものに自身の加護を与える神もいる。
ただ、下界に干渉をする事が出来るのはある程度力を付けた神だけ。
まだ神として力を蓄える事が出来ない神々は、人間たちの生活を覗き見る事しかできない。
神界の自分たちの秘密基地に集まって水晶玉をじっと見ている小さな神々もそうだった。
心配そうに手をもじもじとしているおかっぱ頭の女の子の名前はエント。シズトに付与の加護をあげた駆け出し神様。
ムーッと眉間に皺を寄せながら見つめている目が真ん丸の女の子も同じく駆け出し神様で名前はプロス。シズトに加工の加護をあげた。
ボーっとした表情で、鼻水を垂らしている男の子はファマ。シズトに生育の加護をあげた2人よりもちょっと先輩の神様。彼の力で下界に下りたシズトを水晶玉を通して見ている。
「ぶ、無事に街に着いたみたいなんだな」
「よかったー。プロスの加護を使う前にバタンキューしちゃったら困るもん」
「オ、オイラもそうなんだな」
「ファマはまだいいでしょ。エルフたちにホイホイ加護渡してたでしょー。プロスはシズトが初めてなんだよ!」
「エ、エルフたちが秘匿してて信仰が広がってないんだな。そ、それに……それに……」
ファマの目がだんだんと潤んできていてハッとする二人。
ファマに感謝の信仰を捧げていた者がすでに誰もいなくなってしまった事を、一緒に下界を覗かせてもらっている時に知っていた。
長い間嘆いていたファマの相手をしていた二人は、癇癪を起こしたファマがエルフの加護をシズトが転移するちょっと前に取り上げたのを知っている。
「シズトくんが広めてくれるよ……?」
「そうそう、シズトがバーッて広めてくれたらエルフなんていらないでしょ!」
「そ、そうなんだな。シズトがいるんだな」
目元をこすって涙を拭い、気を取り直して残り少ない神力でシズトの様子を映す。
どうやら冒険者になったようだった。
果たして彼らの加護は使われるのだろうか。
ちょっとハラハラしながらずっと見ていた三人だったが、無事エントとプロスの加護を使って魔道具が作られた。
小躍りするプロスと、それに振り回されるエント。
二人を横目に見ながらファマは思う。
自分の加護はいつ使ってもらえるのかな、と。
「ぜ、全然使ってくれないんだな」
「宿に住んでるし、使いづらいんじゃないかな……?」
「かもねー。プロスたちの加護はバンバン使ってくれるし」
「オ、オイラの加護も役立つはずなんだな。や、野菜とか育てられるんだな!」
「んー、でもそれ難しいんじゃない? プロス、あんまり野菜の事知らないけど、育てるために広い場所がいるんでしょ?」
「そ、そんな事ないんだな! か、加護使えば部屋の中でも育てられるんだな!」
「……それって、シズトくん知ってるのかな……?」
エントの一言で先程まで喧しかった室内がピタッと静まり返った。
本来、加護の使い方は天啓という形で伝える事が多い。
ただ、それは本人がそれをしたいと願い、それを神が汲み取って気が向いた時に伝えるだけのものだ。
この方法の便利な所は神力を必要としない所だ。
加護を通して対象の者に伝えるだけなので、神側はあくまでも受動的にならざるを得ない。
「こ、こうなったら、夢に入って伝えるんだな!」
フンス! と鼻息荒く水晶玉を食い入るように見つめるファマ。
夢の中に現れ、人に英知を授ける方法はよく使われる手法の一つだった。
神力はある程度必要なため、プロスとエントにはまだ難しいものだったが、エルフから得ていたなけなしの信仰力を使えば干渉も可能だ。
あくまで、シズトが夢を見れば、の話だが。
「ぜ、全然夢を見ないんだなああああああああ!」
ファマが床に寝転がり、ドッタンバッタンと駄々をこねながら大号泣中だ。
それを見守るエントは、何とも言えない表情をしていた。
こうなった原因がエントの加護を使って作られた魔道具だと、この短い時間覗いていて気づいた事だった。
シズトが作り出した安眠カバーは安らかな眠りを対象に授けるものだ。
使っている間は常に熟睡状態。時間が来るまでは起きる気配もないが、時間が来れば一気に覚醒する代物だった。
これでは夢なんて見る訳もない。
神力がいくらあろうと、夢を見ていない限り夢の中に入る事なんて不可能だった。
ずっと泣き叫んでいるファマを見て、困り顔を見合わせるエントとプロス。
ちら、っと水晶玉を見ると、何やらまた自分たちの加護を使って、外に魔道具を作っているのが映っていた。
「あれ? これ、たぶん農業に使うやつじゃないかな……?」
エントは農業については詳しくない。詳しくないが、魔道具でこういう事がしたい! というシズトの思いから推測する事は出来た。
ガバッとファマが起き上がり、四つん這いなのにすごい速さで水晶玉に近づいたかと思えば、飛びついた。
「ほ、ほんとなんだな!? ほんとなんだな! たい肥をつくろうとしてるんだな!!」
「よかったじゃんファマ! なんか引越して草とかバリバリ~ってしたり、水をブシャーってしてたりしたから、そのうちお野菜バンバン育て始めるんじゃない?」
「き、きっとそうなんだな! そ、そのために肥料作ってるんだな!」
「よかったね、ファマくん……?」
「よ、よかったんだな。ほ、本当によかったんだな!」
ちびっこ神様三人組はしばらくの間、水晶玉を囲んで嬉しそうに小躍りを続けていた。
ただ、その後たい肥を売ったシズトを見て大絶叫をする事になるのだが、今は三人共そんな未来を知る由もなかった。
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