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第3章 居候して生きていこう
32.事なかれ主義者は電話が欲しい
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ドーラさんが仕事に出かけた次の日の朝も彼女はいなかった。
ラオさんは特に心配している雰囲気がない。
「街の外の仕事ができるようになった冒険者は、日帰りの仕事をする事は少ねぇんだよ。そんな気にする事ねぇ」
「そういうものなの?」
「ここはダンジョンがあるからちょっと特殊なんだけどな。それでもダンジョンの奥に行くってなると半日くらいは普通なんだよ。戻ってくるのは転移陣さえ見つければ簡単だがな」
「へー。行く時は転移陣とか使えないの?」
「まあ、ある所はあるが、この周りのダンジョンではまだ聞かねぇなぁ。もしかしたら誰かが使ってるけど秘密にしてる、とかはあるかもしれねぇけど」
そういうものなのか。まあ、以前ダンジョンに入った時、確かにみんな同じところから入って行ってたもんね。ショートカットがあったらそうはならないか。
「それより、シズトは今日どうすんだ?」
「今日は防衛面の強化をしようかな、って」
「ふーん……そういえばお前、看破の魔道具作れたりしねぇか?」
「カンパ? どういう感じの魔道具?」
「姿が見えねぇ奴を見つける感じの奴だ」
うん、できそうですね。
眼鏡とか見えないものを見る事が出来るとかカッコよさそう。
「常時発動したりとかできねぇのか? それこそ魔法陣の中では姿が見えるようになるとかそんな感じで」
「んー……魔石使うタイプだったらいい感じに四隅に魔道具を置けばいけなくもない? て感じかな」
「じゃあ、とりあえずそれを作ってくれ。姿見えねぇだけなら何とかなるけど、気配も隠れるような奴は正直どうしようもねぇ」
「じゃあまずはそれ作るかー」
まあ、その前にご飯なんですけどね。
ハンカチでホムラの口元についたタレを拭ってから僕も持っていた串を食べた。
今日は僕を一人にするわけには行かない、ってことで一緒に外出して、朝食を食べ歩きしている。
ラオさんから「もっと食え」と追加の肉を買われそうになったけど、断固拒否した。
やっと腹巻から解放されたのに、またお世話になるのは避けたい。
それにちょっと気になっていたお店があるのだ。このお肉はそれまでの間食なんです。
ちょっと小腹を満たした後、中央通りのマーケットに向かう。少し前にそこで見かけたちょっとお高い屋台が気になっていたので、その屋台を探す。
ちょっと場所が変わっていたけど、変わらずそのお店でうどんを売っていた。
たぶん前に転移してきた人が屋台ラーメンとか伝えた時にうどんも話に出たんだろうなぁ。
「なんだ、ここ食いたかったのか。おっちゃん、肉マシマシ野菜抜き麺極モリ汁ギリギリで」
「あいよー」
え、なんて?
とりあえず僕もラオさんの隣に腰かけると、屋台のおっちゃんがこっちをちらっと見ながら作業をしている。
「……注文は?」
「え、っと……あったかいうどんで」
「量は?」
「普通で」
「追加は?」
「特になし…?」
「あいよ」
おっちゃんの視線が僕の後ろに行く。
あ、ホムラ忘れてた。ここ座って座って。
「一緒のでお願いしますー」
「あいよー」
うどんは普通においしかった。
コレジャナイ感とかも特になくて満足した。
ちょっとラオさんの頼んだうどんが大変な事になってたのは驚いたけどね。
屋敷に帰ってもドーラさんはいなかった。
ご飯までには帰ってくるかなぁ。
「とりあえず、看破フィールドを作るか」
「………」
なんかラオさんが微妙な表情なんだけど、何でですか。なんか言いたい事あるんすか。相手になりますよ? 物理じゃなければね!
むすっとしつつ、ホムラがアイテムバッグの中から取り出してくれた木の端材を背丈くらいの長さの丸太に【加工】する。先端が尖っているので、丸太というか、杭ですね。吸血鬼とかこれ突き刺せば死にそう。
尖っていない方の部分に窪みを作って、そこに【付与】をする。
これで魔石の魔力を使って起動できるようになった。
それを四本作ってホムラにアイテムバッグの中に戻してもらって、とりあえず敷地の端っこに移動する。
「ここら辺にこう……垂直に突き刺す事できる?」
「できます、マスター」
柵のギリギリの地面を指差してホムラに指示をすると、ズトン! と丸太を思いっきり突き刺した。
ホムラは見た目的に魔法使いなのに外見詐欺も甚だしいよね。魔法使いっぽい服装なのに、魔法使えないし、物理で魔物倒すし今更か。
お礼を言って今度は【付与】を行う。
看破だけではなく、結界の機能も付けるわけだから結構魔力を持ってかれた。
ちょっとこれ今日中に全部は無理だわ。
とりあえず付与は終わったので、埋まるまで沈めてもらい、次の端っこに移動する。
二回目も無事に魔力が足りたわけだけど、もうほとんど魔力が残っている感じがしない。
「ちょっと今日はここまで」
その日はもう何をする気も起きず、晩御飯までのんびり過ごしていたけど、晩御飯の時間になってもドーラさんは帰ってこなかった。
晩御飯どうするんだろ。いつ戻ってくるとか聞いとけばよかったなぁ。友達がお母さんによく「いつ帰ってくるの」って言われて鬱陶しいって言ってたけど、これが理由か。
こういう時、電話とか気楽に連絡できるのがあったら便利なんだけどなぁ。
……あ、できそう。
ラオさんは特に心配している雰囲気がない。
「街の外の仕事ができるようになった冒険者は、日帰りの仕事をする事は少ねぇんだよ。そんな気にする事ねぇ」
「そういうものなの?」
「ここはダンジョンがあるからちょっと特殊なんだけどな。それでもダンジョンの奥に行くってなると半日くらいは普通なんだよ。戻ってくるのは転移陣さえ見つければ簡単だがな」
「へー。行く時は転移陣とか使えないの?」
「まあ、ある所はあるが、この周りのダンジョンではまだ聞かねぇなぁ。もしかしたら誰かが使ってるけど秘密にしてる、とかはあるかもしれねぇけど」
そういうものなのか。まあ、以前ダンジョンに入った時、確かにみんな同じところから入って行ってたもんね。ショートカットがあったらそうはならないか。
「それより、シズトは今日どうすんだ?」
「今日は防衛面の強化をしようかな、って」
「ふーん……そういえばお前、看破の魔道具作れたりしねぇか?」
「カンパ? どういう感じの魔道具?」
「姿が見えねぇ奴を見つける感じの奴だ」
うん、できそうですね。
眼鏡とか見えないものを見る事が出来るとかカッコよさそう。
「常時発動したりとかできねぇのか? それこそ魔法陣の中では姿が見えるようになるとかそんな感じで」
「んー……魔石使うタイプだったらいい感じに四隅に魔道具を置けばいけなくもない? て感じかな」
「じゃあ、とりあえずそれを作ってくれ。姿見えねぇだけなら何とかなるけど、気配も隠れるような奴は正直どうしようもねぇ」
「じゃあまずはそれ作るかー」
まあ、その前にご飯なんですけどね。
ハンカチでホムラの口元についたタレを拭ってから僕も持っていた串を食べた。
今日は僕を一人にするわけには行かない、ってことで一緒に外出して、朝食を食べ歩きしている。
ラオさんから「もっと食え」と追加の肉を買われそうになったけど、断固拒否した。
やっと腹巻から解放されたのに、またお世話になるのは避けたい。
それにちょっと気になっていたお店があるのだ。このお肉はそれまでの間食なんです。
ちょっと小腹を満たした後、中央通りのマーケットに向かう。少し前にそこで見かけたちょっとお高い屋台が気になっていたので、その屋台を探す。
ちょっと場所が変わっていたけど、変わらずそのお店でうどんを売っていた。
たぶん前に転移してきた人が屋台ラーメンとか伝えた時にうどんも話に出たんだろうなぁ。
「なんだ、ここ食いたかったのか。おっちゃん、肉マシマシ野菜抜き麺極モリ汁ギリギリで」
「あいよー」
え、なんて?
とりあえず僕もラオさんの隣に腰かけると、屋台のおっちゃんがこっちをちらっと見ながら作業をしている。
「……注文は?」
「え、っと……あったかいうどんで」
「量は?」
「普通で」
「追加は?」
「特になし…?」
「あいよ」
おっちゃんの視線が僕の後ろに行く。
あ、ホムラ忘れてた。ここ座って座って。
「一緒のでお願いしますー」
「あいよー」
うどんは普通においしかった。
コレジャナイ感とかも特になくて満足した。
ちょっとラオさんの頼んだうどんが大変な事になってたのは驚いたけどね。
屋敷に帰ってもドーラさんはいなかった。
ご飯までには帰ってくるかなぁ。
「とりあえず、看破フィールドを作るか」
「………」
なんかラオさんが微妙な表情なんだけど、何でですか。なんか言いたい事あるんすか。相手になりますよ? 物理じゃなければね!
むすっとしつつ、ホムラがアイテムバッグの中から取り出してくれた木の端材を背丈くらいの長さの丸太に【加工】する。先端が尖っているので、丸太というか、杭ですね。吸血鬼とかこれ突き刺せば死にそう。
尖っていない方の部分に窪みを作って、そこに【付与】をする。
これで魔石の魔力を使って起動できるようになった。
それを四本作ってホムラにアイテムバッグの中に戻してもらって、とりあえず敷地の端っこに移動する。
「ここら辺にこう……垂直に突き刺す事できる?」
「できます、マスター」
柵のギリギリの地面を指差してホムラに指示をすると、ズトン! と丸太を思いっきり突き刺した。
ホムラは見た目的に魔法使いなのに外見詐欺も甚だしいよね。魔法使いっぽい服装なのに、魔法使えないし、物理で魔物倒すし今更か。
お礼を言って今度は【付与】を行う。
看破だけではなく、結界の機能も付けるわけだから結構魔力を持ってかれた。
ちょっとこれ今日中に全部は無理だわ。
とりあえず付与は終わったので、埋まるまで沈めてもらい、次の端っこに移動する。
二回目も無事に魔力が足りたわけだけど、もうほとんど魔力が残っている感じがしない。
「ちょっと今日はここまで」
その日はもう何をする気も起きず、晩御飯までのんびり過ごしていたけど、晩御飯の時間になってもドーラさんは帰ってこなかった。
晩御飯どうするんだろ。いつ戻ってくるとか聞いとけばよかったなぁ。友達がお母さんによく「いつ帰ってくるの」って言われて鬱陶しいって言ってたけど、これが理由か。
こういう時、電話とか気楽に連絡できるのがあったら便利なんだけどなぁ。
……あ、できそう。
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