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第2章 露天商をさせて生きていこう

26.事なかれ主義者は追い出される

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 浮遊台車を子どもたちが気を付けて使ってほしいな、なんて事を考えながら猫の目の宿に戻ると猫耳少女のランが今日も元気よく出迎えてくれた。

「シズト、おかえりー。水拭きゴーレムめっちゃ便利だよー、ありがとー!」
「なんかトラブルとかなかった?」
「んーっとねー。特にはないかなー?」

 ランが首を傾げながらうんうん考えていたが、特に新しい魔道具で不備は発生していないようだった。
 ゴーレム、と名付けたが円形の小さな箱の底に木で作った球体を仕込んでその周囲に布をセットするだけの代物だ。
 濡れたタオルを付けておくと、机の上に何もない時にだけ動き始めて勝手に決められたルートを動き、水拭きをしてくれる。
 お掃除を勝手にしてくれるロボットを参考にしました、はい。
 でも細かなところまでは覚えてないからどう動かせばいいのかわかんなかった。
 魔石を入れて、水拭きをするときに仕込んだ球体が飛び出て動き始めるが、それ以外は見た目は円柱の箱。
 盗難防止の事も考えなきゃいけないけど、とりあえず試験的に使ってみてもらっているだけなのでそこら辺はまた今度考えよう。
 猫耳少女とおしゃべりをしながら夕食の時間まで過ごし、ホムラが帰ってきたら一緒にご飯を食べて部屋に戻る。
 ホムラもいつものようについてきていた。

「今日から浮遊台車一台だけでいいんだけど、なんか作った方がいいのとかある?」
「オートトレース以外は特にはありません、マスター」
「そっかー。じゃあ、そろそろホムラの兄弟でも作っていこうかなぁ」
「準備は万全です、マスター」

 そう言ってホムラが取り出したのは、拳よりも大きな魔石が十個以上。
 ……たくさん、集めたんですね。
 ちょっと値段の事は考えないで一つ手に取って見る。
 ホムラの時に使った魔石とは少し色が異なるけど、違う魔物の魔石なんだろうか。
 まあ、ホムラの魔石が何だったか知らないし、聞いたところでよくわかんないから聞かないんですけどねー。
 知らない事が幸せな事ってあると思うんだ。

「前は気づいたらホムラができてたから、ちょっとそこは勝手にできないように制限かけて――」

 あとは、まあ、ホムラと同じ感じでいいかなぁ。
 あ、でも従順すぎるのも微妙だし、そこはなんかいい感じに変えときたい。
 ……間違った事は諫めてくれる感じの頭の良いホムンクルス的な?
 うん、そんな感じで【付与】を行う。
 ごっそりと魔力がなくなる感じはしたけど、魔力切れで気を失うことはなかった。
 ホムラの時以上に魔力を使ってるのは制約を付けたからかな?

「次はこちらをどうぞ」
「ありがと。んー……こんな感じで……【付与】」
「次はこちらを」
「はいはい……【付与】……は、できなかったみたい」

 流石に三個目は無理だった。
 大人しく【加工】で端材を板にまとめたり、金属のインゴットを使って魔力をある程度消費してから、最後にもう一台浮遊台車を【付与】して――気づいたらベッドで横になっていた。
 加工のおかげで魔力の微調整をしてから狙って魔力切れを行う事が出来るようになって、結構魔力を鍛えるのは捗っている。
 自分の魔力の鍛錬方法を自画自賛しつつ二度寝を決め込もうとしたら、大柄な人に首根っこをつかまれて宙にぷらんぷらん揺らされる。
 ……僕は猫じゃないんですよ、ライルさん。

「お前、ちょっと今回はさすがにダメだろ」

 何の事でしょう?
 と、状況が分からず、視線を動かすと、ホムラとラオさんと――知らない人がいた。
 綺麗な金色の髪に、めちゃくちゃ整った顔。テレビでもここまで綺麗な顔立ちの人見た記憶少ない気がする。
 海のように青い瞳は、眠たそうな様子だがこちらをじっと見ていた。
 おっと、僕の息子は何も起きてないよね? うん、起きてないよ。
 自分の股間に視線を向けた時に気づいたんだけど、なんか床になんかの残骸みたいなのが転がってますね?
 部屋を見渡すと荒らされた感じはない。
 けど、ライルさんが顎で示した先を見ると、壁に大きな穴が開いていて、ラオさんが泊まっている隣の部屋が丸見えだった。
 ……どういう事でしょうね、ラオさん。

「お前の魔道具が鳴り響いたから、守るために壁を突き破って状況確認したんだよ。アタシは仕事をしただけだ」
「ホムラ?」
「夜遅くに何者かが窓に仕掛けておいた簡易魔法錠を解除して侵入しようとしたみたいです、マスター」
「自動探知地図には何も映らなかった」

 え、その声ドーラさんなんですか?
 眠たそうな目でこちらを見ていた人がこちらに自動探知地図を掲げて見せてくれる。
 きちんと今部屋内にいる人と、廊下に誰かいるのが表示されている。

「さすがに、深夜に近所迷惑になるような音を出されたらこっちも庇いきれねぇわ。と、いう事で、今日で出て行ってくれ」

 窓にそんなものを仕掛けた記憶がないんですけど、ホムラ。
 どうして視線を逸らすのかな?
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