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第2章 露天商をさせて生きていこう

25.事なかれ主義者は事故が起きないか心配

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 領主様からの依頼を受けて二週間が経った。
 毎日浮遊台車を作って、その後に適当な魔道具を作ったり飴を舐めたりして魔力切れになるまで魔力を使って寝ている。
 そのおかげか、浮遊台車を作っても魔道具を六個くらい作れるようになった。
 あと、毎朝ホムラがベッドのそばで僕の寝顔を見ているのにも慣れた。
 ラオさんは、簡易魔法錠の騒音はどうしようもないと諦めて勝手に入ってくる事はなくなったので、後はホムラを何とかしよう。

「ねえ、ホムラ」
「なんでしょう、マスター」
「どうして毎日部屋にいるのかな?」
「マスターが床で寝てしまうのでベッドに戻しているからでしょうか」
「そのまま出ていけばよくない!?」
「では、戸締りをしなければならないからですね、マスター」
「簡易魔法錠は魔石がなくなるまで抜けないから外側から閉めても問題ないよね? ちょっと調整して朝方に魔石の魔力がなくなるようにすればいいでしょ。今日からは僕が寝た後は部屋から出て行ってよね!」

 朝困るんですよ。僕の息子が一緒に起きてたら困るんですよ。
 ホムラはちょっと不服そうな雰囲気だったけど、無表情で最終的には頷いてくれた。
 ホムラを外に出してから着替えを済ませ、朝食を食べている時にホムラが最近の売り上げについて教えてくれる。

「ドーラ様にだいたい買っていただけるので売れ行きは好調です、マスター」

 ドーラさんは常連客で朝一番に買いに来て、新しい魔道具は必ず買っていくらしい。
 ドーラさんには不要だと思うんだけど、ダイエット用品も買っていったらしい。

「好きなように仕入れていいという事でしたので魔石を中心に買っています、マスター」
「そっか。いい感じで安心したよ」

 僕は作って後はホムラに任せっきりだ。
 値段だけじゃなくて、ネーミングすらホムラに丸投げしたのでどのように売られているか、誰に売っているのか、どれだけのお金が手に入っているのか知らない。っていうか、怖くて知りたくない。
 なんかダイエット用品作った時に、ラオさんが「貴族が金積んででも買いそうだな」なんて事を言っていたのがとても気になる。
 その後にちょくちょくホムラからダイエット用品を作るように言われているので作っているけど、どんどん素材の手触りがすごくいいやつになっていくのなんでだろうね。わかんないや。この前なんて光を受けたらなんかきらきら綺麗に光る石ころがたくさんついていた腹巻があったんだけど、あれは腹巻と言っていいのかな。

「そういえば、なんか嫌な事言われたって言ってた気がするけど、あれからどう? なんかまた言われたりとかしてない?」
「……特にマスターが気にされるような事は起こってないです」

 何も起こってないならいいんだけど。
 最近街を歩いていても贋作の方の浮遊ランプを持っている人が増えてきているので、またいつ言われても不思議じゃない。
 ラオさんがなんかホムラを半目で見ているけど、どうしたんだろう?



 ルンさんに僕の年齢を伝えてからは、おかわりをひたすら出される事もなくなって、脂肪燃焼腹巻と浮遊台車のお世話になる事はなくなった。
 通りを歩いていると、時々お母さんに連れられた小さな子が「今日も変なのに乗ってないね」なんてお母さんに言っているのが見えたけど僕は聞こえなかった事にした。
 冒険者ギルドに到着すると、空いている受付がないか見渡す。
 イザベラさんと目が合ったので、イザベラさんの方へと足を向けた。

「おはようございます、イザベラさん」
「おはようございます、シズトくん」

 今日も今日とてクールビューティーですね、イザベラさん。眼鏡かけてみたらもっといい感じだと思うんですけど、どうでしょう?
 とかなんとか頭の隅っこで考えながら、アイテムバッグから浮遊台車を三台出して今日の分を納品する。
 全部受け取ったイザベラさんは、僕の前に一枚の紙を差し出した。

「お疲れさまでした、シズトくん。領主様から依頼の終了の申し出がありました。ギルドとしてはあって困るものではないので、毎日一台納品していただければと思います」
「まあ、あれだけ街中で見かけたらしょうがないですよね」

 ギルドとあわせると多分百台以上作ってるもんね。だいぶ出回ったからもうそろそろ不要になるかなぁ、って思っていたところだしそこまで困らない。
 そもそも領主様からの一日の報酬大金貨一枚だけでも今の宿の三ヵ月ちょっとくらいの生活費になるのだからだいぶ稼がせてもらったと感謝しているくらいだ。
 浮遊台車一台だけだったらだいぶ魔力余るし、今日はインスタントホムンクルスでも作るかなぁ。

「変な事するんじゃねぇぞ」

 ラオさんが思う変な事と僕の思う変な事って違うからわかんないなぁ。
 納品が終わったら今日のお小遣い銀貨一枚を握りしめて街を散策する。
 本当に浮遊台車は街中で見かけるのが当たり前になってきたな。
 今も大通りを競争するかのようなスピードで子どもたちがレンガを乗せて通り過ぎていくのを見送ったところだ。

「あんなスピード出して大丈夫かなぁ」
「大丈夫だろうよ。それに、あれ結構魔力使うから、魔力のすくねぇ子どもはタイムリミットまで少しでも多く運ぶなら速くするしかねぇんだとよ」
「途中で魔力切れになったら危ないと思うんだけど」
「実際事故は起きてるみてぇだぜ。一応対策として、魔力残量を確認してからレンガを運ばせているらしい」

 まあ、作った後の事は僕にはどうしようもないわけだから気を付けて使ってもらうしかないよなぁ。
 何とも言えない気持ちになりながら、すごい速さで外壁方面から戻ってくる子どもたちを見送った。
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