【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第2章 露天商をさせて生きていこう

24.事なかれ主義者はダイエットしたい

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 昨日ラオさんのお腹周りを心配していたけど、僕もやばい気がする。
 自分の膨れ上がった腹をさすりながら、浮遊台車に乗せられてラオさんにドナドナされている時に気づいたんだけど、ちょっと太ってきた。

「痩せねば!」
「そんな言うほどか? むしろもっと食べないと成長しないぞ?」
「もう成長する時期終わってるんですが?」
「……お前っていくつなんだ?」
「今年で17ですね」
「……まあ、勇者の子孫は幼く見えがちだからそんなもんか」

 日本人は海外の人から見たら若く見える、って言われるって聞いた事あるけどそれは異世界でもやっぱり同じらしい。
 時々ラオさんが浮遊台車を止めて、屋台の食べ物を買っている。
 もちろん全部ラオさんの分だ。
 どれだけお腹に入っても膨らまないお腹がほんとに謎だ。そのお腹に魔道具でも入ってるんですかね。

「あんだよ」
「ラオさんって、たくさん食べるのに太らないよね」
「動いてっからな」

 なるほど。
 あと、ラオさん全体的に筋肉質だからかな。なんか筋肉が多いと太りにくいって聞いた事がある。
 ただ筋トレって長続きしないんだよね。
 よくCMでやっているような楽ちん筋トレグッズがあれば……。

「あ、できそう」
「また変なの作るんじゃねぇぞ」
「変なのじゃないよ。筋肉鍛える魔道具だよ」
「訓練すればいいだろうが」
「自堕落な人がいるって、ラオさんは知るべきだと思う」

 そんな事を話しながら、今日はいろんなお店をお邪魔する。
 だいたいルートは決まっていて、木工所で端材を、武器を売っている場所ではもう使えそうにもないような武器を買い漁る。
 買い漁ったものは僕と一緒に浮遊台車に乗せられて、お腹が圧迫されないように僕はちょっとバランスを気にしつつ座って過ごす。
 初めて入るお店の人には驚かれるが、何回か通っているお店では「今日も運ばれてんのか」と言われる程度だ。
 僕が怠惰なわけじゃなくて、おかわりポトフが大変なんですよ。
 あの人もしかして僕が成長期の子どもと勘違いしてんじゃないのかな。
 ……ラオさんもそうだったし、なんかそんな気がしてきた。

「ラオさん、腹巻売ってるとこない?」
「腹巻? あー、防具屋になら売ってんじゃね?」

 腹巻って防具になるの?
 わからないけど、ラオさんに任せてドナドナされていく。
 ラオさんが防具屋で示してくれたのはお腹の防具でした。
 あれ、腹巻って鎧だったっけ。

「なんだ、これじゃねぇのか?」
「んとね、お腹が冷えないように巻く布の方の腹巻ですね」

 この腹巻は知らない子です。ていうか、腹巻っていうの初めて知りました。
 とりあえず防具屋さんには悪いけど冷やかしだけして、今度は古着屋さんに連れてかれた。
 古着と言ってもそこそこのお値段がする。
 出来るだけきれいな腹巻を選んでもらうと、所持金がもう銅貨一枚もない。お小遣い強請らないと。
 腹巻はちょっと薄汚れた感じだけど、まあ魔道具にして巻くだけだから問題ない。
 宿に着くころにはだいぶお腹も楽になったので、自分で部屋に戻り魔道具作りを行う。
 ラオさんもついてきて作業風景を、僕の魔力マシマシ飴も舐めながら見ている。
 腹巻にとりあえず振動する魔法を付与してお腹に巻く。

「おぉおぉおぉおぉ~~~~」
「……なんで振動してんだ?」

 魔力を流すと結構な力でお腹が揺らされる。
 ……これただ揺れてるだけじゃね? 【付与】の重ね掛けで脂肪燃焼効果もつけてみた。……たぶん。
 魔力を流してみるけど特に変化があるようには感じない。
 魔力を使うタイプだと、浮遊台車の納品の事もあるので厳しい。
 魔石を使うタイプにしようと、ルンさんにお願いして腹巻にポケットをつけてもらった。
 そこに魔石の魔力を使うように【付与】を行い、再度身につけてとりあえず魔石を入れて放置。
 これで結果が出たら売り始めてもいいかもしれない。
 次に作るのは浮遊台車三台。作り終わったら夕食まではのんびり過ごす事にする。
 部屋から出ると少し遅れてラオさんも部屋から出てきて、後ろをついてくる。
 一緒に一階に降りるとランが埃吸い吸い箱のトレーにたまったゴミを捨てる所だった。

「どう? 埃吸い吸い箱調子悪くなったりしてない?」
「大丈夫だよー」
「なんか使ってて使いづらい所とかってある?」

 お客様の声を聴いて改善するのは大事な事だよね、と思いつつゆらゆら揺れている尻尾を目が追う。
 一回くらい触ってみたいなぁ。
 猫カフェみたいなとこあったらいいんだけどなぁ。

「んー、食べかすとか吸い込んでくれないから掃除しなきゃだから面倒かもー」
「埃限定で集めてるからかな……ただ、食べ物だと料理も吸い込んじゃうだろうしなぁ」
「床に落ちたものとかだったらできるんじゃねぇか?」
「んー……ピンとこないから無理かも」

 思いつかないものは【付与】しようがない。
 魔法はイメージの問題が大きいと言われているらしいけど、加護もそうなんだろうか。
 僕の中で無理、って思ってるから思いつかないとか?
 単純にそこまで万能じゃない、ってだけかな。

「他は何か困っている事ない?」

 いつもライルさんに怒られているので、点数稼ぎをしときたい。
 ランと仲良くなってあわよくば耳か尻尾触らせてもらいたいなんて思ってないです。
 ラオさんが扉とか壊すたびに怒られているので、ちょっと仲間に引き込んでおきたいだけですよ?
 だからラオさん、こっちを変な目で見ないでもらえますかね。

「んー、忙しい時に机拭くのはちょっと大変かも」

 あー、確かに朝食の時間とか近所の人も食べに来る時は人やばいもんね。ルンさん一人で回しているのでバタバタしている。
 それなのに僕の皿の中身が空になったのはすぐに察知して、いつの間にかおかわりが入れられているのは本当にびっくりする。
 ちょっと思考が脱線しちゃったけど、……うん、できそう。
 ルンバみたいに机の上を水拭きする感じにするだけだから簡単そうだ。
 今日の夜はそれとダイエットグッズをもう少し追加で作って寝ることにしよう。
 そうと決まれば夕食の時間まですることがないので、ゆらゆら動く尻尾を目で追いながらおしゃべりをして過ごした。
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