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第2章 露天商をさせて生きていこう

16.事なかれ主義者は店番を頼んだ

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 ラオさんから、「欠点を付けるといい」と言われて考えてみたけど、そもそも量産ができないから欠点を付けても奪い合いとかになりそうだ。
 今現時点で物にはよるけれど、1日に作れる魔道具は三個から五個。
 だいぶ魔力が増えたなぁ、と感じつつ今日も今日とて魔力マシマシ飴を舐める。
 二か月くらいで最初の頃の五倍。
 ダンジョンに入った後には伸びが顕著になったような気がする。
 経験値とか入ってるのかな。まあ、魔力伸ばすためにダンジョンは行きたいとは今は思えないけど。
 ボロボロの冒険者が脳裏をよぎって力がちょっと入り辛くなったので考えるのをやめた。

「数がそろうまでは試しに高めで売る事にするね」
「そうしとけ」
「じゃあ、ホムラ。地図は持ってて。ランプは近くに浮かせとけばなんか見に来てくれそうだし、浮かせといて」
「はい、マスター」

 後なんか売れそうなものないかな、とバックを漁るとボールガイドが出てきた。
 でもこれ、階段から階段までしか使えないしなぁ。
 しまっとこう。

「それで、いくらで売るんだ?」
「んー……浮遊ランプが金貨一枚、地図は金貨五枚……?」
「もう一声」
「え、じゃあ銀貨――」
「高くしろってことだよ!」
「……浮遊ランプが金貨二枚で、地図は金貨六枚?」

 ラオさんは腕を組んで何か考え込んでいる様子だった。
 浮遊ランプと地図の値付けは結局ラオさんがして、僕はラオさんに頭を脇に挟まれた状態で魔道具が売っている場所にドナドナされた。
 お胸が当たっているんですけど??



 魔道具はとっても高かった。
 迷宮産だからかはわからないけど、金貨一枚の物なんてない。
 こんなのだれが買うんだろう? とか思っていたら歴戦の猛者みたいな見た目の厳つい冒険者が水が湧き出る器を買っていった。
 水は必需品なので人気が高いそうだ。
 厳つい冒険者の接客をしていた皺が深いご老人が僕たちを見て、白い眉がぴくっと動いた。

「なんだ、お前か。まだ見つかっとらんぞ」
「ああ、今日はその事じゃねぇからいいさ。ちょっと物の価値を知らない馬鹿に魔道具を見せてやろうと思ってな」
「なんだい、冷やかしかい。適当に見てさっさと帰れよ。わしは忙しいんだ」

 そう言ってご老人が椅子に座って何か器のようなものの手入れを始めた。
 ご老人のお言葉に甘えて魔道具を見て回る。
 同じものは一つもなく、使い方がわからない不思議なものもたくさんあった。
 ただ、どの魔道具も金貨数枚は当たり前。
 中には大金貨の上の白金貨の値段がついているものもある。
 どれもこれも作れそうだし、作って売りに出したら大儲けできそうだけど、同じものが何個もあったら価格が暴落する事もあり得そうだ。
 需要と供給がどうの、って習った気がする。社会嫌いだからあんまり覚えてないけど。

「作れそうなら作ってもいいんじゃねぇか」
「こういうの売ってる人から恨まれそうだし、やめとく」
「変なとこ気にするよな、お前」

 わしゃわしゃ、っと頭を乱雑に撫でられながら、その後もしばらく店内を物色した。



 他のお店も見て回り、何となく相場というものがわかったような気もする。
 物によっては露天商の方が安く売られている場合もあれば、その逆もあった。
 ただ、露天商は珍しいものも多く、割とお高いものも中にはあった。
 夕方頃までドランの門の近くのマーケットを僕を連れまわして歩き続けたラオさんが満足した様子。
 やっとホムラの所に戻れる。
 そんな事を思いながらホムラの所に戻ったら――。

「おかえりなさい、マスター」
「あれ、なんも売れてないの?」
「?」

 ホムラがきょとんとした様子でこちらを見ている。
 いや、そんな顔で見られてもなんも一個も売れてないし……。

「ああ、そこの嬢ちゃん。客が来てもただそこに座ってるだけで金額も言わねぇし、魔道具を取って見ようとした冒険者に触らせもせず怒らせて帰していたぞ」

 隣でおいしそうな肉串を売っていたおじさんが呆れた様子で言う。
 ラオさんはそのおじさんからちょうど肉串を買って豪快に食べていた。

「お前、ホムラになんか物を売れとか、命令したか?」
「……してないですね」

 もう夕方だった事もあり、今日は店じまいにして夕食をホムラとラオさんと一緒に食べる。
 明日はとりあえず僕も店番をするとして、その後をどうするかだよな。
 命令がないと何もしないんだったらちょっと困るしなぁ。

「ホムラ、ちょっと話があるんだけど」
「なんでしょう、マスター」

 ホムラは食べていた手を止めてまっすぐこちらを見た。
 こういう事ができるなら言ったらできそうな気もする。

「これからはさ、自分で考えて行動する事ってできる?」
「できます」
「そっかー……でき、ちゃうの!?」

 魔力マシマシ飴をレロレロ舐めていたラオさんの動きが止まって、ホムラを見て何か考えているようだったけど、「まあ、人型なんていなかったしそういう事もあるか」とか呟いて、また飴を舐め始めた。
 ホムラは表情も変えずにまっすぐこちらを見て、もう一度言葉を放った。

「できます」
「え、じゃあ……これからはさ、自分で考えて好きなように行動してくれない?あ、でも僕の準備した商品は売ってほしい。売り方とかはお任せするから、いい感じに売ってくれる?」
「わかりました。いい感じに売ります」

 そういうホムラの表情が若干動いたような気もしたけど、気のせいかな。
 何はともあれ、明日はちょっと心配だから一緒に店番をしよう。
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