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第1章 冒険者になって生きていこう
6.事なかれ主義者は身代わりが欲しい
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浮遊台車作成を頑張る事にしてから三週間経った。
途中から一日二台作る事が出来るようになり、三十台無事に納品できた。
浮遊台車を夜に作っていたので、昼は街の観光を楽しんだ。
時々お店によっては、店員に押し売りされて断り切れずに無駄な物を買ってしまうので、お金は徐々に減る状況だ。
本も読んでみたいと思って探したが、そういうものは国が管理しているとラオさんに教わり、王立図書館にいった。
ラオさんは爆睡してたけど、護衛はいいんだろうか? とか思いつつ隣で静かに本を読んだり、おっきな胸をチラ見したりして過ごした。
本を読んでいて気になったのは、魔法生物。
具体的に作成方法が確立されているわけじゃないらしいけど、戦争とかで時々使う国もあったとか。
魔法生物、って考えた時にぱっと思いついたのが人間みたいな外見だったけど、戦争では合成魔獣とからしい。
見た目が良くなさそうだ。
どうせなら見目麗しい従順な魔法生物が欲しい……とかなんとか考えていた時に【付与】で作り方を閃いた。
これは……作るしかないのでは?
すぐにでも作ってみたい気持ちはあったけど、その時は浮遊台車を作る事を優先しなきゃいけなかった。
あと、できるだけ高いランクの魔石を買わないといけない。
浮遊台車を作るついでに魔石の値段とか調べたら買えない値段ではなかった。
ただ、魔物の討伐状況やダンジョンに潜っている冒険者の人数・ランクによって相場が変動するのでもう少し待った方がいいとラオさんに言われた。
そして待ちに待った夜がやってきた。
拳よりも大きな魔石が目の前にある。Cランクの魔物の魔石でもうお金が一か月分くらいしかない。
三十台納品した後も、浮遊台車の価格が上がったままになったので、納品し続ければとりあえず宿には泊まれるからついやってしまったけど、この後もちゃんと考えている。
魔法生物次第ではあるけど、商業ギルドで働いてもらおうと思う。そこに僕が人知れず品物を納品すればどこからか魔道具を仕入れて売る商人の出来上がりだ。
意気揚々と魔石に魔法陣を【付与】したら、気づいたら机で寝ていた。
魔石はなくなっていて、慌てて床に転がっていないかと探したら、誰かの足があって声を上げて驚いてしまった。視線を上げると別の意味でまた驚く。裸の女性が立っていたのだ。
透き通るような白い肌。神秘的な紫の瞳。床まで伸びている黒くて長い髪。髪が絶妙に大事な部分を隠していたが、慌てて僕はベッドの掛布団を巻き付けた。
「おはようございます、マスター」
「だれ!?」
無表情で挨拶をしてきた人物にそう咄嗟に言ってしまったが、十中八九魔法生物だ。
連想していた通りのきれいな女性で、ここまでイメージ通りになるんだな、とか、細かいところまで再現されているんだろうか……知識しかないから不安なんだけど、とか。
いろいろ思う所はあるけど、女性物の服がないのでとりあえず僕の持っていた服を着るように伝えると、人目を気にせずに着始める彼女。
ちょっと大きかったようだが、胸は窮屈そうだ。
押し売りされたローブをまとわせて、とんがり帽子をかぶせる。どちらもダンジョン産のものだ。
ぱっと見、魔法使いっぽい。
どこから見ても魔法使いの女の子だ。
魔法生物――イメージしていたのはホムンクルスだが、違いはどうやって見抜けばいいんだろうか? とかどうでもいい疑問が頭をよぎったが、まずは名前を決めないと。
名無しじゃ呼ぶ時に困るからね。
ホムンクルス……ホム……。
「これからホムラ、って名乗ってね」
「かしこまりました、マスター」
ホムラは相変わらず無表情で了承した。
名づけが終わったタイミングで、廊下からラオさんの声がする。
「おい、大丈夫か?」
返事を待たずに扉を壊して入ってくる彼女。普段身につけてないグローブを身につけている。
「……だれだ、そいつ」
鋭い目つきでホムラを睨みながら、聞いてくる。
僕は少し考えて、全部洗いざらい彼女について話す事にした。
説明という名の言い訳をだいたい聞いたラオさんが呆れたように息を吐いた。
「なるほどねぇ。お前、わりと馬鹿だな。もう十分目立ってるし、変な魔道具使ってるの見られてるんだから、魔道具が出回ったら真っ先に怪しまれるのお前だろうが。身代わりとか意味ねぇよ。やるなら街に入る前からやれよ」
「はい」
「まあ、お前が作ったのをそいつに売らせるのはいいんじゃねぇか? 売る時間あるくらいなら作った方がいいだろうし」
とりあえず商人ギルド行くぞ、と引き摺られる僕の後ろをついてくるホムラを見ながら、ちょっと時間戻る魔道具欲しいなぁ、なんて考える。
……残念ながらそういうものは閃かなかった。時を超えるのは、魔法があるこの世界でも良くない事なのかもしれない。
商人ギルドでは、ホムラが登録をする。お金は僕の財布から出るけど。
一通りの説明をホムラが聞くついでに僕も隣でふんふん、と聞く。
受付は目つきの柔らかい、優しそうなお爺さんだった。
「年会費は店を持っているのなら大金貨一枚以上お支払いしていただく事になります。露天商は金貨一枚ですね。店を持っている場合は、証書を店内に飾ってください。露天商の場合はコレをいつでも見せる事が出来るように首から下げておいてください」
店に飾るものは、額縁に入れられてご立派な感じだ。身につける物はドッグタグに似ている。
「ホムラさんはどちらをご希望なんですかな?」
「………」
「露天商だ」
特に反応がないホムラの代わりに、ラオさんが答えた。
お金が減った。ドッグタグをホムラの代わりに受け取った。
声掛けをすると、やっとホムラは動いて後ろをついてきた。
思ったよりもあっさりと、商人ギルドでの登録が終わり、今日は売る物がないので店を出していい場所だけ下見をする事にした。
中央通りの近くにある場所では場所代が高いらしい。日用品や食べ物が売られている。
外壁周辺の北、西、東門付近にある場所では比較的安価らしい。保存食や名物屋台料理が並んでいる。
南側にある歓楽街にも場所があるらしいが、トラブルが多いので女性がする場合はおすすめしていないらしい。
また、壁の外側にあるダンジョン付近にも場所はあるらしい。
「まあ、とりあえず宿の近くでいいだろ。あそこら辺は治安はいいからな」
「確かにそうかも。街の依頼受けてて顔見知りも多いし、お客さんになってくれるといいなぁ」
「………」
ラオさんのオススメだし、とりあえずここにしようかなぁ。場所だけ覚えてお爺さんと別れる。
とりあえず、場所が決まったので次は売るものを用意しなきゃな。
浮遊台車を一台作ったら魔力が余るし、なんか作れるよな。何を作るか悩む。
「あんまり変なの作んじゃねぇぞ」
失敬な、変なのなんてまだ作ってないですよ!
途中から一日二台作る事が出来るようになり、三十台無事に納品できた。
浮遊台車を夜に作っていたので、昼は街の観光を楽しんだ。
時々お店によっては、店員に押し売りされて断り切れずに無駄な物を買ってしまうので、お金は徐々に減る状況だ。
本も読んでみたいと思って探したが、そういうものは国が管理しているとラオさんに教わり、王立図書館にいった。
ラオさんは爆睡してたけど、護衛はいいんだろうか? とか思いつつ隣で静かに本を読んだり、おっきな胸をチラ見したりして過ごした。
本を読んでいて気になったのは、魔法生物。
具体的に作成方法が確立されているわけじゃないらしいけど、戦争とかで時々使う国もあったとか。
魔法生物、って考えた時にぱっと思いついたのが人間みたいな外見だったけど、戦争では合成魔獣とからしい。
見た目が良くなさそうだ。
どうせなら見目麗しい従順な魔法生物が欲しい……とかなんとか考えていた時に【付与】で作り方を閃いた。
これは……作るしかないのでは?
すぐにでも作ってみたい気持ちはあったけど、その時は浮遊台車を作る事を優先しなきゃいけなかった。
あと、できるだけ高いランクの魔石を買わないといけない。
浮遊台車を作るついでに魔石の値段とか調べたら買えない値段ではなかった。
ただ、魔物の討伐状況やダンジョンに潜っている冒険者の人数・ランクによって相場が変動するのでもう少し待った方がいいとラオさんに言われた。
そして待ちに待った夜がやってきた。
拳よりも大きな魔石が目の前にある。Cランクの魔物の魔石でもうお金が一か月分くらいしかない。
三十台納品した後も、浮遊台車の価格が上がったままになったので、納品し続ければとりあえず宿には泊まれるからついやってしまったけど、この後もちゃんと考えている。
魔法生物次第ではあるけど、商業ギルドで働いてもらおうと思う。そこに僕が人知れず品物を納品すればどこからか魔道具を仕入れて売る商人の出来上がりだ。
意気揚々と魔石に魔法陣を【付与】したら、気づいたら机で寝ていた。
魔石はなくなっていて、慌てて床に転がっていないかと探したら、誰かの足があって声を上げて驚いてしまった。視線を上げると別の意味でまた驚く。裸の女性が立っていたのだ。
透き通るような白い肌。神秘的な紫の瞳。床まで伸びている黒くて長い髪。髪が絶妙に大事な部分を隠していたが、慌てて僕はベッドの掛布団を巻き付けた。
「おはようございます、マスター」
「だれ!?」
無表情で挨拶をしてきた人物にそう咄嗟に言ってしまったが、十中八九魔法生物だ。
連想していた通りのきれいな女性で、ここまでイメージ通りになるんだな、とか、細かいところまで再現されているんだろうか……知識しかないから不安なんだけど、とか。
いろいろ思う所はあるけど、女性物の服がないのでとりあえず僕の持っていた服を着るように伝えると、人目を気にせずに着始める彼女。
ちょっと大きかったようだが、胸は窮屈そうだ。
押し売りされたローブをまとわせて、とんがり帽子をかぶせる。どちらもダンジョン産のものだ。
ぱっと見、魔法使いっぽい。
どこから見ても魔法使いの女の子だ。
魔法生物――イメージしていたのはホムンクルスだが、違いはどうやって見抜けばいいんだろうか? とかどうでもいい疑問が頭をよぎったが、まずは名前を決めないと。
名無しじゃ呼ぶ時に困るからね。
ホムンクルス……ホム……。
「これからホムラ、って名乗ってね」
「かしこまりました、マスター」
ホムラは相変わらず無表情で了承した。
名づけが終わったタイミングで、廊下からラオさんの声がする。
「おい、大丈夫か?」
返事を待たずに扉を壊して入ってくる彼女。普段身につけてないグローブを身につけている。
「……だれだ、そいつ」
鋭い目つきでホムラを睨みながら、聞いてくる。
僕は少し考えて、全部洗いざらい彼女について話す事にした。
説明という名の言い訳をだいたい聞いたラオさんが呆れたように息を吐いた。
「なるほどねぇ。お前、わりと馬鹿だな。もう十分目立ってるし、変な魔道具使ってるの見られてるんだから、魔道具が出回ったら真っ先に怪しまれるのお前だろうが。身代わりとか意味ねぇよ。やるなら街に入る前からやれよ」
「はい」
「まあ、お前が作ったのをそいつに売らせるのはいいんじゃねぇか? 売る時間あるくらいなら作った方がいいだろうし」
とりあえず商人ギルド行くぞ、と引き摺られる僕の後ろをついてくるホムラを見ながら、ちょっと時間戻る魔道具欲しいなぁ、なんて考える。
……残念ながらそういうものは閃かなかった。時を超えるのは、魔法があるこの世界でも良くない事なのかもしれない。
商人ギルドでは、ホムラが登録をする。お金は僕の財布から出るけど。
一通りの説明をホムラが聞くついでに僕も隣でふんふん、と聞く。
受付は目つきの柔らかい、優しそうなお爺さんだった。
「年会費は店を持っているのなら大金貨一枚以上お支払いしていただく事になります。露天商は金貨一枚ですね。店を持っている場合は、証書を店内に飾ってください。露天商の場合はコレをいつでも見せる事が出来るように首から下げておいてください」
店に飾るものは、額縁に入れられてご立派な感じだ。身につける物はドッグタグに似ている。
「ホムラさんはどちらをご希望なんですかな?」
「………」
「露天商だ」
特に反応がないホムラの代わりに、ラオさんが答えた。
お金が減った。ドッグタグをホムラの代わりに受け取った。
声掛けをすると、やっとホムラは動いて後ろをついてきた。
思ったよりもあっさりと、商人ギルドでの登録が終わり、今日は売る物がないので店を出していい場所だけ下見をする事にした。
中央通りの近くにある場所では場所代が高いらしい。日用品や食べ物が売られている。
外壁周辺の北、西、東門付近にある場所では比較的安価らしい。保存食や名物屋台料理が並んでいる。
南側にある歓楽街にも場所があるらしいが、トラブルが多いので女性がする場合はおすすめしていないらしい。
また、壁の外側にあるダンジョン付近にも場所はあるらしい。
「まあ、とりあえず宿の近くでいいだろ。あそこら辺は治安はいいからな」
「確かにそうかも。街の依頼受けてて顔見知りも多いし、お客さんになってくれるといいなぁ」
「………」
ラオさんのオススメだし、とりあえずここにしようかなぁ。場所だけ覚えてお爺さんと別れる。
とりあえず、場所が決まったので次は売るものを用意しなきゃな。
浮遊台車を一台作ったら魔力が余るし、なんか作れるよな。何を作るか悩む。
「あんまり変なの作んじゃねぇぞ」
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