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第1章 冒険者になって生きていこう
5.事なかれ主義者は、甘いものが欲しい
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タンクトップの女性――ラオさんの体に目が行ってしまって他はよく見てなかったが、普通に美人さんだ。
赤く短い髪に赤い瞳をみると、本当にファンタジー世界にいるんだよなぁ、と思う。
背丈は僕よりも高く、見上げる形になっている。たぶん二メートルくらいある。バレーとかやってそう。
引き締まった肢体を見せびらかすかのようなタンクトップ姿が特徴的な女性だ。下は動きやすさのためか、ズボンを履いているがパツパツ。
大きな胸に視線があからさまに行かないように気を付けながら、ラオさんに挨拶を返す。
「おはようございます、ラオさん。僕はシズトです」
「あー、知ってる知ってる。ほら、とりあえず飯食いに行くぞ」
「あ、はい」
朝はルンさんが朝食の準備をしてくれる。
こうやって見ると、ルンさんよりもラオさんの方が大きく感じる。
何が、とは言いませんけどね。
「それで? 今日はどういう予定なんだ?」
「とりあえず、これ納品して今日の宿代稼いだら街の配達の依頼を受けようかな、って」
「レンガは運ばないのか?」
「配達で魔力使っちゃうと魔力が足りなくてコレ作れないんですよ」
「ふーん」
ラオさんはすでに食べ終わっていて、僕が食べ終わるのを待っている状況だ。
大きな口でぺろりとトーストを平らげたのはびっくりだ。
胸に乗った食べかすを払っているのをちょっと視線をそらして見ないフリ……。
「ダンジョンでポーターでもした方がまだ儲けはあると思うぞ」
「ダメ、アブナイ、キケン」
断固拒否。絶対無理。最終手段としてならやるかもしれないけど、一人じゃ絶対無理。
ラオさんは、まあその方が守りやすいけどよ、とかなんとか頬杖を突きながらぶつぶつ言っている。
そんなラオさんを置いておいて、机の上に乗っている何かを時々視界に入れながら朝食をいつもよりもゆっくりと食べた。
……ほんとに机の上に乗る人なんているんだね、何がとは言わないけど。
お昼は配達をしながら屋台で済ませる。
材料費の事を考えたら、現時点で収支はぎりぎりマイナス。
正直お昼は食べないほうがいいんだけど、今まで食べていたのに昼を食べないのはしんどい。
働くにも体力がいるはず、なんて言い訳をしながら謎肉の串焼きを食べる。
ラオさんは見た目通り、たくさん食べている。
謎肉の串焼きを両手で合わせて四本持ってもしゃもしゃ食べていたかと思えば、別の料理を食べている。
今は見た目たこ焼き、中身謎肉のものを食べている。熱いのも平気なのか一口で食べていた。
屋台を見て回るだけで、過去の転移者たちが頑張ったのが見えてくる。
たこ焼きもどきも転移者から教わった料理という話だったし、お金さえ払えば食で辛い思いする事はなさそうだ。
ただ、甘いものは別。とっても高い。
謎肉の串焼きは一本、鉄貨三枚だ。肉は固くてちょっと癖のあるにおいがあるが、下処理がしっかりしてあるらしく、まだましな方らしい。癖のあるにおいにも慣れてしまえば、普通においしい。
それと比べると甘いお菓子とかは小さくて、ほんの少しだけでも銀貨一枚はする。
何が起こるかわからない異世界生活の事を考えたら好き放題使うのはだめだと思う。
ただ、やっぱり甘味が欲しい。飴みたいなやつでいいから、ずっと舐めてたい。なくならない飴とかないかな……ないなら、作ればいいのか?
考えてみると意外と簡単にできそうだ。
ちょっと配達のついでに良い感じの材料がないか、お店を見て回る事にした。
イメージとしては駄菓子屋さんで売っていた棒付きキャンディー。万が一の事も考えて、呑み込めないように棒を付けよう。
魔力を感知したら自動的に魔力を甘味に変換する魔法陣をビー玉よりも少し大きいくらいの鉄球に【付与】する。
その後、近くにあった鉄のナイフを【加工】して、一部分を棒状に変え、鉄球とくっつけて【加工】した。
結構魔力を使っている感じがあり、だんだんだるくなってきたけど、とりあえず試しに口に含んで舌で鉄球をなめる。鉄の味がする。
鉄の味がしないように、【付与】でコーティングしてもう一度舐めると、飴のような味がする。イメージをしていたのがイチゴ味だったからかイチゴっぽい味。
うまくできた事に喜びつつ、久しぶりの甘味を楽しむ。
ちょっと昔食べた駄菓子の事を思い出して懐かしくて涙が出そうになったけど、気持ちを切り替えて木製の台車もどきに【付与】を使う。
……何も起こらなかった。
ちょっと魔力を使いすぎたかな、と反省しつつ、ベッドに横になる。
別に甘味を感じているだけで実際に甘いお菓子を食べているわけじゃないから、このまま寝てもいいよね。
……ちょっと心配だから水で口をすすいで寝た。
次の日、棒つき飴もどきを咥えながら部屋から出ると、ちょうどラオさんが出てきた。
「おう、おはよう。……浮遊台車ねぇのか?」
「ちょっと昨日、魔力が足りなくて」
「ふーん……なに咥えてんだ、それ?」
「え、なにって……」
名前、そういえば特に考えてなかった。自動で魔力を吸って甘味に変換する飴だし、魔力を増やしつつ甘味を味わえるから――。
「魔力マシマシ飴」
「はあ?」
「これ、魔力使う飴だから、舐めてたら魔力も増えるでしょ、きっと」
「ふーん?」
なんか納得いってない感じのラオさんが僕の後ろをついて歩く。
いつものように朝食を配膳される時に、ルンさんの胸に目が行きながら、ラオさんとちょっと比べて視線をすぐ逸らす。
よくよく考えたら、そういう事をせずに死んでるわけだし、こっちでは死ぬ前に一回くらいどこかで経験しとくべきなのかな。そういうお店とか行ってみるべきか?
なんて事を考えていたら、ラオさんは今日のご飯もぺろりと平らげていて、胸に乗った食べかすを叩き落としていた。
僕はまたのんびり食べていたのだが、ラオさんが何を思ったのか机のテーブルに置かれていた魔力マシマシ飴を手に取って、口に咥えた。
「お! ほんとにあめぇな」
「返してもらえます?」
「何赤くなってんだ? 冒険者やるなら、酒の回し飲みとか普通にあるし、慣れといたほうがいいぞ」
そういいながら、魔力マシマシ飴をなめ続けるラオさん。割と、甘いものが好きなのかもしれない。
食後、飴は返してもらえたが、唾液が付いていて何とも言えない気持ちになる。
気にしたら負け、と思うけど異性に免疫がないんだからどうしても気になる。
ちょっと袖で拭って舐める事にした。
ラオさんは特に気にした様子もなく、後ろをついてくる。
冒険者ギルドに着く頃には、僕もある程度落ち着く事ができて、今日もガラガラな受付のイザベラさんの所へ。
なんでも、忙しい朝と夕方の時間帯はトラブルが多いから置物みたいな感じで座っているんだとか。ラオさんが言っていた。
「おはようございます、シズトさん」
「おはようございます、イザベラさん」
「今日は浮遊台車、ないんですね」
「ちょっと作れなかったので、また今度持ってきます。それで、今日の依頼――」
「ちょっとわりぃな」
そう言って僕がくわえていた魔力マシマシ飴を盗ると、問答無用でイザベラさんの口に突っ込むラオさん。
イザベラさんは一瞬目を丸くしたが、すぐに口から出してラオさんを睨んだ。空気がちょっとひんやりした気がする。美人の怒った顔って迫力あるな。目力、ヤバイ。
「なにすんのよ!」
「まあまあ、落ち着けって。それで、どうだったよ」
「どうって……?」
怪訝な表情をして、机の上に転がっている魔力マシマシ飴を見る。そして眉間に皺を寄せて、ぼそりと一言。
「これは、ここでは扱えないわ」
「まあ、だよな」
ラオさんは魔力マシマシ飴を手に取って、僕の口の中に突っ込んだ。
そうやって間接キスさせるの良くないと思います。未経験の男の子にもっと優しくして!
「それは商業ギルドで取り扱った方がいいですよ。ただ、できれば浮遊台車の数がある程度揃うまでこちらを優先してほしいですが。それがあるから、今日はないんですよね」
「まあ、そういう感じですね。勢いで作ったら足りなくなっちゃって」
「そうですか……」
少し思案顔のイザベラさん。何か小さな声でつぶやいたかと思うと、新しい契約書を出してきた。事前に準備でもしていたのだろうか、ってくらい準備万端だ。
「とりあえず三十台できるまでこちらを優先していただければ、一つにつき銀貨二枚払いましょう。三十台以降はまたその時に考えるとして、どうですか?」
どうもこうも、商業ギルドにはまだ行く気がなかったし、値段が二倍になって困る事なんてない。
すぐに契約書に名前を記入して、その間に前の契約書は破棄してもらった。
冒険者ギルドにもう用はないので、席を立つと、イザベラさんが契約書を見ながらほっとした様子だったのが印象的だった。
すぐにでも欲しいのかな。ちょっと、三十台作るまでは他の事しないで頑張るか。
そうと決まればすぐに宿に戻った。
また夕ご飯を食べ損ねて追加料金になると困るので、夕方まで宿屋の一階で猫耳少女とお話をして癒された。
今日はかわいいワンピースだ。仕事しているときに使っているからか、少し汚れているが、猫耳と尻尾でそんなこと気にならない。ただ、目のやり場に困る事はないけど、ついつい動く尻尾や耳に視線が行くのは許してほしい。
ご飯を食べた後はとりあえず【付与】を使って浮遊台車を作る。強烈な倦怠感は来たが、気絶する事はなかった。
また魔力が増えたんだな、なんて思いながら魔力マシマシ飴をなめる。
今日の事を色々思い出すと、少し甘さが増したような気がするんだけど、気のせいだよね。
その日の夜は、ちょっと悶々とした夜になった。
赤く短い髪に赤い瞳をみると、本当にファンタジー世界にいるんだよなぁ、と思う。
背丈は僕よりも高く、見上げる形になっている。たぶん二メートルくらいある。バレーとかやってそう。
引き締まった肢体を見せびらかすかのようなタンクトップ姿が特徴的な女性だ。下は動きやすさのためか、ズボンを履いているがパツパツ。
大きな胸に視線があからさまに行かないように気を付けながら、ラオさんに挨拶を返す。
「おはようございます、ラオさん。僕はシズトです」
「あー、知ってる知ってる。ほら、とりあえず飯食いに行くぞ」
「あ、はい」
朝はルンさんが朝食の準備をしてくれる。
こうやって見ると、ルンさんよりもラオさんの方が大きく感じる。
何が、とは言いませんけどね。
「それで? 今日はどういう予定なんだ?」
「とりあえず、これ納品して今日の宿代稼いだら街の配達の依頼を受けようかな、って」
「レンガは運ばないのか?」
「配達で魔力使っちゃうと魔力が足りなくてコレ作れないんですよ」
「ふーん」
ラオさんはすでに食べ終わっていて、僕が食べ終わるのを待っている状況だ。
大きな口でぺろりとトーストを平らげたのはびっくりだ。
胸に乗った食べかすを払っているのをちょっと視線をそらして見ないフリ……。
「ダンジョンでポーターでもした方がまだ儲けはあると思うぞ」
「ダメ、アブナイ、キケン」
断固拒否。絶対無理。最終手段としてならやるかもしれないけど、一人じゃ絶対無理。
ラオさんは、まあその方が守りやすいけどよ、とかなんとか頬杖を突きながらぶつぶつ言っている。
そんなラオさんを置いておいて、机の上に乗っている何かを時々視界に入れながら朝食をいつもよりもゆっくりと食べた。
……ほんとに机の上に乗る人なんているんだね、何がとは言わないけど。
お昼は配達をしながら屋台で済ませる。
材料費の事を考えたら、現時点で収支はぎりぎりマイナス。
正直お昼は食べないほうがいいんだけど、今まで食べていたのに昼を食べないのはしんどい。
働くにも体力がいるはず、なんて言い訳をしながら謎肉の串焼きを食べる。
ラオさんは見た目通り、たくさん食べている。
謎肉の串焼きを両手で合わせて四本持ってもしゃもしゃ食べていたかと思えば、別の料理を食べている。
今は見た目たこ焼き、中身謎肉のものを食べている。熱いのも平気なのか一口で食べていた。
屋台を見て回るだけで、過去の転移者たちが頑張ったのが見えてくる。
たこ焼きもどきも転移者から教わった料理という話だったし、お金さえ払えば食で辛い思いする事はなさそうだ。
ただ、甘いものは別。とっても高い。
謎肉の串焼きは一本、鉄貨三枚だ。肉は固くてちょっと癖のあるにおいがあるが、下処理がしっかりしてあるらしく、まだましな方らしい。癖のあるにおいにも慣れてしまえば、普通においしい。
それと比べると甘いお菓子とかは小さくて、ほんの少しだけでも銀貨一枚はする。
何が起こるかわからない異世界生活の事を考えたら好き放題使うのはだめだと思う。
ただ、やっぱり甘味が欲しい。飴みたいなやつでいいから、ずっと舐めてたい。なくならない飴とかないかな……ないなら、作ればいいのか?
考えてみると意外と簡単にできそうだ。
ちょっと配達のついでに良い感じの材料がないか、お店を見て回る事にした。
イメージとしては駄菓子屋さんで売っていた棒付きキャンディー。万が一の事も考えて、呑み込めないように棒を付けよう。
魔力を感知したら自動的に魔力を甘味に変換する魔法陣をビー玉よりも少し大きいくらいの鉄球に【付与】する。
その後、近くにあった鉄のナイフを【加工】して、一部分を棒状に変え、鉄球とくっつけて【加工】した。
結構魔力を使っている感じがあり、だんだんだるくなってきたけど、とりあえず試しに口に含んで舌で鉄球をなめる。鉄の味がする。
鉄の味がしないように、【付与】でコーティングしてもう一度舐めると、飴のような味がする。イメージをしていたのがイチゴ味だったからかイチゴっぽい味。
うまくできた事に喜びつつ、久しぶりの甘味を楽しむ。
ちょっと昔食べた駄菓子の事を思い出して懐かしくて涙が出そうになったけど、気持ちを切り替えて木製の台車もどきに【付与】を使う。
……何も起こらなかった。
ちょっと魔力を使いすぎたかな、と反省しつつ、ベッドに横になる。
別に甘味を感じているだけで実際に甘いお菓子を食べているわけじゃないから、このまま寝てもいいよね。
……ちょっと心配だから水で口をすすいで寝た。
次の日、棒つき飴もどきを咥えながら部屋から出ると、ちょうどラオさんが出てきた。
「おう、おはよう。……浮遊台車ねぇのか?」
「ちょっと昨日、魔力が足りなくて」
「ふーん……なに咥えてんだ、それ?」
「え、なにって……」
名前、そういえば特に考えてなかった。自動で魔力を吸って甘味に変換する飴だし、魔力を増やしつつ甘味を味わえるから――。
「魔力マシマシ飴」
「はあ?」
「これ、魔力使う飴だから、舐めてたら魔力も増えるでしょ、きっと」
「ふーん?」
なんか納得いってない感じのラオさんが僕の後ろをついて歩く。
いつものように朝食を配膳される時に、ルンさんの胸に目が行きながら、ラオさんとちょっと比べて視線をすぐ逸らす。
よくよく考えたら、そういう事をせずに死んでるわけだし、こっちでは死ぬ前に一回くらいどこかで経験しとくべきなのかな。そういうお店とか行ってみるべきか?
なんて事を考えていたら、ラオさんは今日のご飯もぺろりと平らげていて、胸に乗った食べかすを叩き落としていた。
僕はまたのんびり食べていたのだが、ラオさんが何を思ったのか机のテーブルに置かれていた魔力マシマシ飴を手に取って、口に咥えた。
「お! ほんとにあめぇな」
「返してもらえます?」
「何赤くなってんだ? 冒険者やるなら、酒の回し飲みとか普通にあるし、慣れといたほうがいいぞ」
そういいながら、魔力マシマシ飴をなめ続けるラオさん。割と、甘いものが好きなのかもしれない。
食後、飴は返してもらえたが、唾液が付いていて何とも言えない気持ちになる。
気にしたら負け、と思うけど異性に免疫がないんだからどうしても気になる。
ちょっと袖で拭って舐める事にした。
ラオさんは特に気にした様子もなく、後ろをついてくる。
冒険者ギルドに着く頃には、僕もある程度落ち着く事ができて、今日もガラガラな受付のイザベラさんの所へ。
なんでも、忙しい朝と夕方の時間帯はトラブルが多いから置物みたいな感じで座っているんだとか。ラオさんが言っていた。
「おはようございます、シズトさん」
「おはようございます、イザベラさん」
「今日は浮遊台車、ないんですね」
「ちょっと作れなかったので、また今度持ってきます。それで、今日の依頼――」
「ちょっとわりぃな」
そう言って僕がくわえていた魔力マシマシ飴を盗ると、問答無用でイザベラさんの口に突っ込むラオさん。
イザベラさんは一瞬目を丸くしたが、すぐに口から出してラオさんを睨んだ。空気がちょっとひんやりした気がする。美人の怒った顔って迫力あるな。目力、ヤバイ。
「なにすんのよ!」
「まあまあ、落ち着けって。それで、どうだったよ」
「どうって……?」
怪訝な表情をして、机の上に転がっている魔力マシマシ飴を見る。そして眉間に皺を寄せて、ぼそりと一言。
「これは、ここでは扱えないわ」
「まあ、だよな」
ラオさんは魔力マシマシ飴を手に取って、僕の口の中に突っ込んだ。
そうやって間接キスさせるの良くないと思います。未経験の男の子にもっと優しくして!
「それは商業ギルドで取り扱った方がいいですよ。ただ、できれば浮遊台車の数がある程度揃うまでこちらを優先してほしいですが。それがあるから、今日はないんですよね」
「まあ、そういう感じですね。勢いで作ったら足りなくなっちゃって」
「そうですか……」
少し思案顔のイザベラさん。何か小さな声でつぶやいたかと思うと、新しい契約書を出してきた。事前に準備でもしていたのだろうか、ってくらい準備万端だ。
「とりあえず三十台できるまでこちらを優先していただければ、一つにつき銀貨二枚払いましょう。三十台以降はまたその時に考えるとして、どうですか?」
どうもこうも、商業ギルドにはまだ行く気がなかったし、値段が二倍になって困る事なんてない。
すぐに契約書に名前を記入して、その間に前の契約書は破棄してもらった。
冒険者ギルドにもう用はないので、席を立つと、イザベラさんが契約書を見ながらほっとした様子だったのが印象的だった。
すぐにでも欲しいのかな。ちょっと、三十台作るまでは他の事しないで頑張るか。
そうと決まればすぐに宿に戻った。
また夕ご飯を食べ損ねて追加料金になると困るので、夕方まで宿屋の一階で猫耳少女とお話をして癒された。
今日はかわいいワンピースだ。仕事しているときに使っているからか、少し汚れているが、猫耳と尻尾でそんなこと気にならない。ただ、目のやり場に困る事はないけど、ついつい動く尻尾や耳に視線が行くのは許してほしい。
ご飯を食べた後はとりあえず【付与】を使って浮遊台車を作る。強烈な倦怠感は来たが、気絶する事はなかった。
また魔力が増えたんだな、なんて思いながら魔力マシマシ飴をなめる。
今日の事を色々思い出すと、少し甘さが増したような気がするんだけど、気のせいだよね。
その日の夜は、ちょっと悶々とした夜になった。
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