【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
上 下
2 / 1,094
第1章 冒険者になって生きていこう

1.事なかれ主義者は冒険者になる

しおりを挟む
 結局、三柱の加護をそれぞれ貰って下界に送られた。
 加護を断ろうとすると、小さい神様たちが周りを囲み、涙目で見上げてきたのだ。
 ……断り切れなかった。
 一番偉い神様の話では、複数の神からの加護を持つ者は何人もいたそうだ。
 また、神様にとって良い事をした者や、見どころのある者、後は気まぐれで加護を与える事もあるらしい。
 転移先の世界の者の中でも、人間で加護を持っているのは何人もいるらしい。
 ただ、だいたいは戦闘に関わる加護らしく、生産系の加護をたくさん持っているのは僕くらいかもしれない、との事だ。

「身分証は?」

 ちょっと現実逃避をしていたら、次は僕の番だった。
 転移先は街道のど真ん中で、周りには誰もいなかったが、近くに街が見えたのでとりあえずそこに入れないか挑戦中だ。
 街道のど真ん中だったのは、僕の希望だ。せめて王様とか偉い人と関わりたくない、平和に生きたい! と望んだらそこに送られたっぽい。
 服装も一緒に順番待ちしていた人たちと似たような服だった。
 鞄の中には餞別としてお金が入っていた。加護を得た時にこの世界の知識みたいなものも流れ込んできたけど、それを参考にすると3カ月くらいは生活できそうだ。
 ちょっと節約して、もう少しいい服を買いたい。服がチクチクする。

「持ってないのか? 流れ者か、最近多いな。おい!」

 また、現実逃避をしていたら話が進んでいた。
 門番さんが門の内側にいた人を呼び寄せると、僕をギルドに連れていけ、とだけ伝えて次の人に話を聴きに行っていた。
 順番待ちの人はまだまだいっぱいいるから構ってられないのかなぁ、とか暢気に思いつつ、ギルドに連れてかれた。
 冒険者ギルドだった。
 これから有り得そうなテンプレを警戒したり、魔物とか相手しなきゃいけないのか、とげんなりしたりしていたら受付の人が説明を始めていた。美人なお姉さんではなくて、真面目そうなお兄さんだった。

「冒険者ギルドで登録したカードは再発行に料金がかかりますので注意してください。また、ランクが低い場合は街に入る際に金銭が必要になる事もあるのでご注意ください。ランクはSランク以外は昇格試験を受ける事で上がっていきます。その他に功績によって上がる事もあります。最初はGランクから始まります。登録料は鉄貨一枚です」

 登録しなきゃいけないのかなぁ、なんて思いつつ連れてきてくれた門番さんの方を見る。
 筋骨隆々のおっさんは、なぜか受付の隣に併設されている酒場にいた冒険者らしき人と話をしていた。
 げんなりしつつ、真面目な受付のお兄さんにたずねる。

「あのー……身分証って、冒険者ギルドに登録しないともらえないんですか?」
「一番安く手に入るのがここなだけです。貧民対策でもありますし、人手はあって困る仕事ではないので。他のギルドでもカードを発行しているので、それが身分証代わりになります。商人ギルドは、冒険者ギルドと同様、街の行き来にある程度の自由を保障されます。まあ、登録した後も年会費などが必要になりますが。職人ギルドは、まずどこかの見習いとして入る必要があります。そういう技術があれば別ですが、難しいでしょう。また、技術の流出を領主が嫌う傾向が高いので街の移動に制限がかかりますね。住民になるのは難しく、ある程度街に留まって仕事をしたという実績を作る必要がありますね」

 ちょっと聞いただけでたくさん答えてくれるし、真面目な人だな~。
 あっちの酒を飲もうとしてる門番と違って。
 僕の視線に気づく事なく、門番さんは楽しそうに笑って酒を飲んでいる。……職務中じゃないの?

「オススメはやっぱりここなんですか?」
「ええ、基本来る者は拒まないので」
「争いとか嫌なんですけど……」
「街の中の仕事も有り余ってますし、この国、ドラゴニアはダンジョンがいくつもあるのでポーターになる子どもも多いですね。スカベンジャーとして活動している人もいます。まあ、ダンジョンの中で魔物に遭遇したら襲ってくるので危険はありますが」
「ちなみになんですけど、もし……もしも商人ギルドに登録するならいくらいるんですか?」
「登録料でまず銀貨一枚必要ですね」

 冒険者登録の百倍だった。

「年会費はものによりますが、街の中で売買するなら露天商でしょうか。それなら年会費は金貨一枚ですね。行商人の場合も同じです。店を持つのなら大金貨一枚からですね。たくさん払えばそれだけギルド内の発言力が増すので明確にいくら、というのはありませんが」
「………登録、お願いします」

 細かいのがなかったから銀貨で払った。
 銅貨が九枚と鉄貨九枚が返ってきて、紙と羽ペンを差し出される。

「代筆は必要ですか?」
「大丈夫です」

 紙をちらっと見たけど普通に読めた。多分書く事も意識すればできるだろう。
 名前……まあ、シズトでいいか。
 職業……ポーター? にしよう。
 書き終わると針を渡された。キランと先端が輝いている。

「え?」
「血判をお願いします」
「……え?」

 ………………頑張った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...