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それから私は、オブリヴィオに抱かれた日は必ずアネシスに抱かれた。
上書きするように何度も何度も執拗なくらい、全身を愛された。ただそれだけで、絶望感が薄まるのだから不思議だ。
そして一つ変わったことがある。
常に私の側にいた専属執事は、私が婚約者に会わない日であり、屋敷から出ない日に限り、休暇を取得するようになった。
婚約者の態度は相変わらずだったけれど、私はもうそれでいいと思った。
正式に婚姻式の日取りが決まった頃、私を確実に得ることが出来る安心からなのか、オブリヴィオはあの女を抱いたようだ。
それからは嘘のように私に触れてこなくなり、タガが外れたように、オブリヴィオはあの女との逢瀬に夢中になっていた。
□ □ □ □ □ □
それから数か月後。婚姻式を数日後に控えたある日の夜、この国の将来の王妃は侯爵邸の広い庭にある深い湖に身を投げた。
残された遺書と、彼女に仕えていた執事の証言から、婚約者の不貞が露見した。
逢瀬を目撃した者や黙認していた人数の多さにより次々と証言が集まり、不貞が事実だと裏付けられていった。
そして侯爵は、いまだ遺体の見つからない娘を哀れみ激昂し、侯爵と懇意の貴族までもが王家を非難し王太子の行いを咎め始める。
新聞社に売り込まれた王家の醜聞は尾ヒレがつき国中に広まり、不貞を働きながらも性欲を晴らすため婚約者を犯し続け、遂には死に追いやったと非難が集中した。
しばらくして、ようやく王家は一人息子の廃嫡を決定した。
不貞の相手である令嬢は好奇の目に晒されているが、その後のことは不明だ。
□ □ □ □ □ □
仕えるべき主人を失った執事は、侯爵家を辞め、遠く離れた地で暮らし始めた。
明るい水色の屋根、少しくすんだ灰色の扉。彼が必死に貯めた給金で購入した、こぢんまりとした家。
庭には明るい暖色の花が咲き誇っている。
その中心で、日に焼けた美しい女性が幸せそうに笑い、彼を迎えた。
上書きするように何度も何度も執拗なくらい、全身を愛された。ただそれだけで、絶望感が薄まるのだから不思議だ。
そして一つ変わったことがある。
常に私の側にいた専属執事は、私が婚約者に会わない日であり、屋敷から出ない日に限り、休暇を取得するようになった。
婚約者の態度は相変わらずだったけれど、私はもうそれでいいと思った。
正式に婚姻式の日取りが決まった頃、私を確実に得ることが出来る安心からなのか、オブリヴィオはあの女を抱いたようだ。
それからは嘘のように私に触れてこなくなり、タガが外れたように、オブリヴィオはあの女との逢瀬に夢中になっていた。
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それから数か月後。婚姻式を数日後に控えたある日の夜、この国の将来の王妃は侯爵邸の広い庭にある深い湖に身を投げた。
残された遺書と、彼女に仕えていた執事の証言から、婚約者の不貞が露見した。
逢瀬を目撃した者や黙認していた人数の多さにより次々と証言が集まり、不貞が事実だと裏付けられていった。
そして侯爵は、いまだ遺体の見つからない娘を哀れみ激昂し、侯爵と懇意の貴族までもが王家を非難し王太子の行いを咎め始める。
新聞社に売り込まれた王家の醜聞は尾ヒレがつき国中に広まり、不貞を働きながらも性欲を晴らすため婚約者を犯し続け、遂には死に追いやったと非難が集中した。
しばらくして、ようやく王家は一人息子の廃嫡を決定した。
不貞の相手である令嬢は好奇の目に晒されているが、その後のことは不明だ。
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仕えるべき主人を失った執事は、侯爵家を辞め、遠く離れた地で暮らし始めた。
明るい水色の屋根、少しくすんだ灰色の扉。彼が必死に貯めた給金で購入した、こぢんまりとした家。
庭には明るい暖色の花が咲き誇っている。
その中心で、日に焼けた美しい女性が幸せそうに笑い、彼を迎えた。
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