【R18】私は婚約者のことが大嫌い

みっきー・るー

文字の大きさ
上 下
3 / 3

しおりを挟む
 それから私は、オブリヴィオに抱かれた日は必ずアネシスに抱かれた。
 上書きするように何度も何度も執拗なくらい、全身を愛された。ただそれだけで、絶望感が薄まるのだから不思議だ。

 そして一つ変わったことがある。
 常に私の側にいた専属執事は、私が婚約者に会わない日であり、屋敷から出ない日に限り、休暇を取得するようになった。
 婚約者の態度は相変わらずだったけれど、私はもうそれでいいと思った。

 正式に婚姻式の日取りが決まった頃、私を確実に得ることが出来る安心からなのか、オブリヴィオはあの女を抱いたようだ。
 それからは嘘のように私に触れてこなくなり、タガが外れたように、オブリヴィオはあの女との逢瀬に夢中になっていた。
 
 □ □ □  □ □ □

 それから数か月後。婚姻式を数日後に控えたある日の夜、この国の将来の王妃は侯爵邸の広い庭にある深い湖に身を投げた。
 残された遺書と、彼女に仕えていた執事の証言から、婚約者の不貞が露見した。
 逢瀬を目撃した者や黙認していた人数の多さにより次々と証言が集まり、不貞が事実だと裏付けられていった。

 そして侯爵は、いまだ遺体の見つからない娘を哀れみ激昂し、侯爵と懇意の貴族までもが王家を非難し王太子の行いを咎め始める。
 新聞社に売り込まれた王家の醜聞は尾ヒレがつき国中に広まり、不貞を働きながらも性欲を晴らすため婚約者を犯し続け、遂には死に追いやったと非難が集中した。
 しばらくして、ようやく王家は一人息子の廃嫡を決定した。
 不貞の相手である令嬢は好奇の目に晒されているが、その後のことは不明だ。

 □ □ □  □ □ □

 仕えるべき主人を失った執事は、侯爵家を辞め、遠く離れた地で暮らし始めた。
 明るい水色の屋根、少しくすんだ灰色の扉。彼が必死に貯めた給金で購入した、こぢんまりとした家。
 庭には明るい暖色の花が咲き誇っている。
 その中心で、日に焼けた美しい女性が幸せそうに笑い、彼を迎えた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

処理中です...