3 / 3
3
しおりを挟む
それから私は、オブリヴィオに抱かれた日は必ずアネシスに抱かれた。
上書きするように何度も何度も執拗なくらい、全身を愛された。ただそれだけで、絶望感が薄まるのだから不思議だ。
そして一つ変わったことがある。
常に私の側にいた専属執事は、私が婚約者に会わない日であり、屋敷から出ない日に限り、休暇を取得するようになった。
婚約者の態度は相変わらずだったけれど、私はもうそれでいいと思った。
正式に婚姻式の日取りが決まった頃、私を確実に得ることが出来る安心からなのか、オブリヴィオはあの女を抱いたようだ。
それからは嘘のように私に触れてこなくなり、タガが外れたように、オブリヴィオはあの女との逢瀬に夢中になっていた。
□ □ □ □ □ □
それから数か月後。婚姻式を数日後に控えたある日の夜、この国の将来の王妃は侯爵邸の広い庭にある深い湖に身を投げた。
残された遺書と、彼女に仕えていた執事の証言から、婚約者の不貞が露見した。
逢瀬を目撃した者や黙認していた人数の多さにより次々と証言が集まり、不貞が事実だと裏付けられていった。
そして侯爵は、いまだ遺体の見つからない娘を哀れみ激昂し、侯爵と懇意の貴族までもが王家を非難し王太子の行いを咎め始める。
新聞社に売り込まれた王家の醜聞は尾ヒレがつき国中に広まり、不貞を働きながらも性欲を晴らすため婚約者を犯し続け、遂には死に追いやったと非難が集中した。
しばらくして、ようやく王家は一人息子の廃嫡を決定した。
不貞の相手である令嬢は好奇の目に晒されているが、その後のことは不明だ。
□ □ □ □ □ □
仕えるべき主人を失った執事は、侯爵家を辞め、遠く離れた地で暮らし始めた。
明るい水色の屋根、少しくすんだ灰色の扉。彼が必死に貯めた給金で購入した、こぢんまりとした家。
庭には明るい暖色の花が咲き誇っている。
その中心で、日に焼けた美しい女性が幸せそうに笑い、彼を迎えた。
上書きするように何度も何度も執拗なくらい、全身を愛された。ただそれだけで、絶望感が薄まるのだから不思議だ。
そして一つ変わったことがある。
常に私の側にいた専属執事は、私が婚約者に会わない日であり、屋敷から出ない日に限り、休暇を取得するようになった。
婚約者の態度は相変わらずだったけれど、私はもうそれでいいと思った。
正式に婚姻式の日取りが決まった頃、私を確実に得ることが出来る安心からなのか、オブリヴィオはあの女を抱いたようだ。
それからは嘘のように私に触れてこなくなり、タガが外れたように、オブリヴィオはあの女との逢瀬に夢中になっていた。
□ □ □ □ □ □
それから数か月後。婚姻式を数日後に控えたある日の夜、この国の将来の王妃は侯爵邸の広い庭にある深い湖に身を投げた。
残された遺書と、彼女に仕えていた執事の証言から、婚約者の不貞が露見した。
逢瀬を目撃した者や黙認していた人数の多さにより次々と証言が集まり、不貞が事実だと裏付けられていった。
そして侯爵は、いまだ遺体の見つからない娘を哀れみ激昂し、侯爵と懇意の貴族までもが王家を非難し王太子の行いを咎め始める。
新聞社に売り込まれた王家の醜聞は尾ヒレがつき国中に広まり、不貞を働きながらも性欲を晴らすため婚約者を犯し続け、遂には死に追いやったと非難が集中した。
しばらくして、ようやく王家は一人息子の廃嫡を決定した。
不貞の相手である令嬢は好奇の目に晒されているが、その後のことは不明だ。
□ □ □ □ □ □
仕えるべき主人を失った執事は、侯爵家を辞め、遠く離れた地で暮らし始めた。
明るい水色の屋根、少しくすんだ灰色の扉。彼が必死に貯めた給金で購入した、こぢんまりとした家。
庭には明るい暖色の花が咲き誇っている。
その中心で、日に焼けた美しい女性が幸せそうに笑い、彼を迎えた。
144
お気に入りに追加
63
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説


どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。


淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる