【R18】転生前の記憶があるせいで、勇者の幼馴染ポジを喜べない

みっきー・るー

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 村に戻ってからの毎日は平穏そのものだった。
 案の定、両親は烈火のごとく怒り狂ったが、ラルと共に帰郷したお陰で幾らか怒りを抑えることに成功した。

 魔王討伐後、ラルは一度村に戻っていたらしい。
 それ以降は各地を巡らねばならない用があり、私とあの店で再会したのは、本当に偶然だったようだ。
 
 ラルとの再会から一か月。
 ずるずると展開に任せていたら、私達は結婚を前提に共に暮らすことになっていた。
 同居後、ほぼ毎晩のように、私はラルに揺さぶられている。
 きつかった秘部は何度も情交を繰り返す内に彼を覚え、快感を享受してしまう。
 でも次第に気付いてしまった。
 ラルの激しく打ち付ける腰、中を擦るそれも、頭を真っ白にする為の逃避の手段なのだと。

「あっ、ぁっ……っ!」

 射精欲を高める為に昂ぶりが中を激しく叩き息苦しい。
 この人は早く果てたいだけだ。
 私がどうしたら気持ちいいかなんて、気にもしていない。
 ラルは私の上で激しく腰を振りたくる。

「んっ……」

 彼は堪えるように瞼を閉じて、最奥に熱い飛沫を放った。
 中で硬さを失わないそれは、脈打ちながらどくどくと精を放ち続ける。
 
(ああ、やっぱり今晩も避妊しなかったな……)

 結婚するから必要ないと思っているのかもしれないが、さすがにこんな気持ちのまま子を成す気はない。
 ラルは、私が実家の自室で避妊薬を口にしていることを知らない。
 
「はぁ……はぁ、ティアナ……」

 ずるりと膣からラルのものが抜けた。
 精液が尻に垂れた感触がして眉を寄せていると、がしりと腰を掴まれ強引に後ろ向きに転がされる。

「もっと……もっとしたい……」
「ちょ! む、むり……っ、ひぁ!」

 ラルは私の臀部を無理やり持ち上げて、卑猥にぬかるんだ秘部を一思いに熱杭で穿つ。
 私は力が抜けて崩れ落ちた身体を支えるため膝をついた。
 それでも、後ろから貪欲に穿たれ続ける衝撃に膝は震え、何度も身体が崩れ落ちる。

「やぁっ………ぁっ! あっああ!」

 声にならない悲鳴を上げても、彼の昂ぶりは熱量を増すばかり。
 こんな体勢で強引に抱かれるなんて、まるで動物の交尾だ。
 苛立ちが湧き抵抗したくても、口から漏れる声は形にならない。

 膣壁を擦られ続けて頭の中で星が瞬く。
 吐き出された精が膣から溢れ泡立ち、抜き挿しの度に下品な音を響かせて最悪だ。

(こんなの、私が相手じゃなくてもいいじゃない……!)

 目元に涙が込み上げて、はらはらと頬を伝うけれど、ラルがそれに気付くことはない。
 彼の独りよがりな行為は初めてではない。回数を追うごとに、そんな夜が増えてきていた。

 私に構うことなく、ただ腰を持ち上げ貫かれる度に、性処理の穴のようだと思う。
 そう考えるようになってから私の膣は濡れなくなった。
 特に女は心情と行為が一致しないと感じない。
 性行為を断ればいいのに、私はラルを受け入れる為に内緒で潤滑油を中に塗っている。
 どうせ一晩で何度も精を吐き出されるのだ。
 そうしたら勝手に秘部は滑りを帯びる。最初だけ誤魔化せればいい。

 がつがつと穿つ昂ぶりの勢いが増してきた。
 勇者の体力と性欲が比例するならば、私では受け止めきれない。
 視界が白んできた。
 呼吸も浅くなり苦しくて、膣を滑る感覚は私に何ももたらさない。

(ああ……まただわ…………)

 膣奥に放たれた熱を感じながら、私は意識を手放した。



 □ □ □  □ □ □


 窓から差し込む陽光が瞼に当たり、私は目を開いた。
 眼前にはラルの胸元があって、頭の上から彼の寝息が聞こえる。
 私はラルの腕の中にすっぽりと囲われていた。
 最近はいつもこうだ。
 意識を失くすまで抱き潰されて、目が覚めるとラルに抱きしめられている。

 むっとして、私はラルの腕を乱暴に払いのけた。
 寝息を立てる彼をじとりと睨みつけるが、その可愛らしい寝顔に牙を抜かれてしまい、私は嘆息する。

 ラルにとって意味があるのは、二年前の私が側にいることで、本当は今の私には恋愛感情など無いのかもしれない。
 むしろ、都合のいい性欲の発散相手にされている気もする。
 その証拠に愛を囁かれることもなく、こんなふうに抱き潰されるのだから。

(私って……馬鹿みたい)

 寝台を離れ立ち上がると、股から白濁が垂れて床に落ちた。
 思わず眉を寄せて、それを凝視する。俯くと自らの乳房が視界に入った。
 何度も弄ばれ吸われて鬱血痕が幾つも散らばっている。
 消えては増える所有の印は、今では痛いだけだ。
 
(このままじゃ駄目……いつか嫌いになってしまうわ)

 私は唇を噛み締めて、目元に湧き上がる熱を堪えた。



 □ □ □  □ □ □


 穏やかな晴天の空。その下に広がる綺麗な草原。山稜を眩しく照らす太陽の光。
 幼い頃から大好きな故郷の風景。村を出たせいで、不満があったように思われていそうだけれど、私はこの村が好きだ。
 川上から流れる清涼な空気を吸い込むと、胸の中がすっきりして心地いい。

 青々と広がる眼前の畑を見回し、一通りの手入れは終わったかなと、息を吐く。村に戻ってからは実家の畑仕事を手伝っている。
 籠に山積みにされた収穫後の野菜を一瞥し、その脇に腰掛ける。
 
 二年前は、こんなふうにラルと生活をするのだと信じて疑わなかった。
 未来を想像して胸を高鳴らせたりもした。

 勝手だとは思うけれど、二年ぶりにラルと接し、やはり彼を好きだと思った。
 無理やり手放した想いは消えてはいなかった。
 それなのに、あの頃、確信もなく心を踊らせていたような展望を今は持てない。

「ティアナ」

 私の名を呼ぶ声に必要以上に驚き身が跳ねた。

「え、そんなに驚いた?」

 苦笑するラルに、私は誤魔化すように笑う。

「半分くらい寝てたから……」
「こんなところで寝ちゃ駄目だろ。迎えに来てよかった」

 ラルは呆れた顔をしつつ、私の隣に腰を下ろした。
 傍らに小さな短剣を置く。

「それ……」

 私が首を傾げると、ラルは困ったように言う。

「近くはないけど、魔物の気配がするから念の為」
「へえ、そんなことも分かるのね」

 勇者としての二年間は伊達ではない。
 ラルは寛いでいるように見えて、辺りを警戒している時がある。
 そうやって生活してきたのだろうし、それを否定する気はない。
 でも、それらの行動に気づく度に、変わらない場所を求めていた彼が一番変わったのだと思い知らされるのだ。


 陽が傾き始め、私達は野菜籠を手に帰路につく。
 そっと隣を見やると、ラルの整った横顔が道の先を見ている。

(今日もするのかな……)

 毎晩の激しい情事を思い出し、頬が熱くなってしまう。

「ラル。私実家に寄りたいから、先に帰ってもらってもいい?」
「うん、いいよ。でも何の用?」
「野暮用だから気にしないで! 夕飯は私が作るから待っててね」

 ラルは頷きを返し、山積みの籠を軽々と持ち上げ、家の方角へ向かう。
 その背を見送りながら、私は息を吐いた。
 

 実家に立ち寄り、自室へ急ぐ。
 何年も使っていなかった机の引き出しから、避妊薬の瓶を取り出した。
 師匠に持たされた薬は残りが少ない。  
 買いに行かなくてはと思いつつ、理由も理由なので恥ずかしい。

「あと何日分かしら……」

 避妊薬の残りの本数を数えていたら、部屋の扉が開いた気配に気づくのが遅れた。

「ティアナ?」
「うわ!?」

 予期せぬタイミングに名を呼ばれ、あからさまに不審な驚き方をしてしまった。
 ラルは眉根を寄せて、私の手元を見ている。

 先程も思ったが、勇者は気配を殺すことに長けているようだ。
 つかつかとこちらに近寄る動きに、私は慌てて引き出しを閉めるが、直ぐ様その動きを遮られる。
 ラルはつまみを握り、がらりと引き出しを開けた。
 彼は中を見つめ、はっとした顔で息を呑む。

「あ、あのね! なんか、あの、言いづらくて!」

「言いづらいって何?」

 ラルは渋面を作り、引き出しの奥に置かれた別の瓶に気が付いた。彼は手を伸ばし、瓶を手前に引き寄せる。

「ああああ……そ、それは」

 私の反応がどう見ても悪戯が見つかった子供だ。
 ラルは瓶の蓋を開けて、中身を指で掬い、ようやくそれが何なのか気付いたようだ。
 より一層、表情を険しくしてしまう。

「毎日実家に行くから、何をしているのかと思ったら……」
「ご、ごめん。堂々とすることではないと思って」
「俺たち二人の問題なのに、どうして一人で対処するのさ」
「そ、それは、私の身体のことだから?」
「ティアナを抱いてるのは俺なのに?」

 ラルは溜息をつき、かたい表情のまま私から視線を外す。

「家に帰ってから話そう」
「うん……」

 このまま口喧嘩のように話を続けるわけにはいかない。
 別室には両親もいるのだ。

 私達は取り繕った笑顔を浮かべ両親に挨拶を告げ、実家を出た。
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