天国

揺リ

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懐かしい、とても懐かしい音色であった。
気が付けば小学校の廊下にいた。僕は小学生の男児になっていた。ごわごわとした体操着。むき出しになった手足を冷えた秋の風が叩いた。硬いコンクリートの床。ぱたぱたと乾いた足音。それに続く、やかましい子供たちの笑い声。まるで膨らみ過ぎた風船のようで、日光をつるつると反射させて思い思いに浮かんでいる。鉛筆が落ちる音。オイルの匂い。教師の怒鳴り声。どこかの教室から聞こえてくる、笛の音色。高くなるにつれふらふらと不安定になり、かすれた滑稽な音になる。
リコーダー、という楽器の名前を思い出した時には、僕は二十四歳の銀行員に戻っていた。体操着はスーツに変わり、機械によってコンディションされた人工的な風が顔を撫でていた。子供の笑い声も、軽快な足音もない。あるのはATMの機械音声、キーボードを叩く音。イラッシャイマセツウチョウマタハカードヲオイレクダサイゴリヨウメイサイヲハッコウイタシマスオトリワスレノナイヨウ…だが笛の音だけは鳴り続けていた。その音に混じって、警戒したような空気が店内に充満していく。僕はこの時点で、嫌な胸騒ぎを止める事ができなかった。今やだれもが笛の音のする方に注目しているのが分かった。怖かった、見るのが怖かった。だが見ないわけにいかなかった。僕はデスクトップから目を上げ、恐る恐るそちらを見た。
椚だった。
胸騒ぎは的中した。してしまった。
今日は奇怪な柄のTシャツ姿では無く、水色のワンピースを着用した椚が茶色い縦笛を咥え、よくよく聞けば蛙の唄に聞こえなくもない何かを飄々と奏でていた。
どういうことやねん。
あの、クソ女(アマ)。客、職員、店内で息をしているものは皆一様に動きを止め、突如現れた笛吹き女に見入っている。全員が、混乱していた。椚が美しく誰の目も気にせずあまりにも堂々と笛を吹いている為、それを変に思っている自分がむしろ変なのではないか、間違っているのではないかという疑問が湧き上がっていた。椚は目を閉じ、大阪の都内からはおよそかけ離れたどこかで、完全にリコーダーの音色と一体になっていた。とは言え椚以外の人間にとってはここは銀行である、日本アルプスか何か、とにかくどこかの山の中腹あたりでやるなら何の問題もなかったのに、ここは紛れも無く銀行内で、椚の間違いはそれだけだった。一つ分っているのは、あの女は僕に用があって来ているということで、隣にいる同僚が「なんや、あれ」と呟いたのを合図に僕はデスクから飛び出し、おずおずと椚に近づこうとする警備員を押しのけて、椚の手を引き外へ連れ出した。椚は僕の姿を見つければ必ず向かってきて声をかけてきただろうし、そんな場面を職場の人々に見られたらこのトチ狂った笛吹女と僕が知り合いであることが露見してしまうわけで、そうなる前に不審者を見つけた職員が注意をしに行くという体を装い、一刻も早くこの場から追い出す必要があったのだ。
「おお、進藤やん。何してんの、どないしたん」椚は平気な顔で言った。
「こっちの台詞やわ」店の真ん前ということもあり、苛立ちに任せて大声で喚きたいところだがそう言うわけにもいかず、押し殺した声を出す他なかった。「何、やってんすか。何を」
「ああ、これええやろ。家ん中探しとったらあってんけど、昔やったことあるからこれならできそうやわ。リコーダーでロック、新しいやろ」そう言ってまたぞろリコーダーの吹き口に空気を入れようとするので、僕は椚の手からそれをひったくった。
「あんね、椚さん。昨日も言うたけども、バンドやりませんから。ね、見ての通り忙しいですから、僕。社会人やねん、立派な。やるんならあの探偵とやって下さい、もう一人いるっていうんなら誰か紹介でもしてやりたいとこやけど、僕友達おりませんから、すんませんけど」「ほんま」椚の表情が、さっと曇った。「リコーダー、あかんか」「リコーダーちゃうねん、リコーダーどうこう関係ないねん。もう聞いてくれや、話を。頼むから」「分かった、分かった。ほんなら明日はあれ、持って来るわ。鍵盤ハーモニカ」
悪魔だった。僕ははっきりと分かった。これは僕に対する脅迫だった。今、無理やり追い返したところで、無意味だ。椚は明日もやって来る。毎日、違う楽器を携えて。負けた。
「分かりました、やります。バンド、僕もやります」僕はほとんど泣きそうになりながら、椚に向かって頭を下げた。「メンバー入れてください。やからもう、来んといてください」
返事がなかった。顔を上げた時には、椚の姿は消えていた。遠くで、かすれた笛の音色が聞こえた。

今日も今日とて僕は探偵と、例の喫茶店のテーブル席で向かい合っていたが、別に約束をし合ったわけではなく、ここへ来れば安くで夕飯が食べられるので来ていたというだけで、一人で饂飩を啜っているところへ探偵がやって来た。うす、とか、おす、とかなんとか簡単な挨拶をして正面に座った探偵の姿を見て、僕の箸を持つ手が力を失った。箸の間に挟んでいた麺がずるっと椀の中に落ちていき、その反動で熱い汁が撥ね顔に飛んだ。
探偵の腕のギプスがなくなっており、その代わりに、二の腕の患部に簡単な当て布がされていた。僕は手の力だけではなく声まで失い、蝋人形のようになって探偵の腕にぎろぎろと見入っていた。むき出しの腕は、右腕と比べごっそりと肉が削ぎ落ちていた。僕はほとんど片腕の探偵しか知らなかったため、奴に左腕があることがひどく不自然なことのように思えた。だが探偵は今、箸を動かしながらもう一方の手で、器を支えている。
「今日からリハビリやわ」思えば探偵は今日までの片腕の期間中、どうやって生活をしていたのだろうか。親兄弟と暮らしているのか。それとも探偵の世話を焼く女がいるのか。僕はどうして今の今になるのまで、それを考えなかったのか。僕の奥歯が、がたがたと震えだした。僕は必死になって、唇を固く結んでいる必要があった。少しでも口を開くと、奥歯が飛び出しテーブルや床に散らばる可能性があったからだ。「神経ちぎれとったらしいから、まあ思うようにはまだ動かんけど。その内、治るわ」
探偵はゆっくりとした動作で、手を開いたり閉じたりしてみせた。音がした。錆びた金属が擦れ合うような、嫌な音だった。そのぎしぎしぎし、という音が段々と膨れ上がり頭の皮を突き破るような大きさになった。僕は耳を塞ごうとした。「ちゃんと、聞いとけ。耳塞がんと」
探偵の声だった。「お前、俺に何か言うことあるんちゃうんか」
僕の血管や喉元に、割と大きめの砂利が詰まっていた。あります、言うことあります。分かってるから。うまく流れて行かない。ぎしぎし、という音は探偵の手指ではなく、僕の体から発せられていたものかもしれぬ。体中の血と水が、その砂利に吸い取られていく羽目になった。僕は水を飲み干し、ほとんど空になりかけた山葵のチューブを絞るように、声を出した。「言います、今から。全部」
だが探偵にはそれが聞こえていないのか、聞こえていたが聞こえない振りをしているのか、全く分からなかった。彼は何事もないかのように、機嫌良くカツ丼を食べているだけだった。うっすいカツを嬉しそうに引きちぎっている様が、哀れだった。器から立ち上る湯気が、探偵の目を覆う黒いレンズを曇らせていた。さっきまで威嚇のように鳴り響いていたぎしぎしという音が、消えて行った。
探偵は驚異的な速さで器を空にすると、どことなくわざとらしい感じで目線を斜め上にしながら煙草を吸い始めた。「今日、来んのかな」
誰のことを言っているのかはすぐに分かった。僕と探偵の間にいる共通の知り合いと言ったら、あの奇想天外なパンクかぶれの女しかおらぬ。
「来てほしいんすか」「別に、そんなんちゃうもん。好きとか、そんなんちゃうから。全然。バンド仲間やねんから、バンドの相談せんなならんやろ」「そうっすか」「お前もやぞ、バンド仲間」「やから、僕は…」バンド仲間呼ばわりされることに激しくイラっとした。今日の昼間、リコーダーを武器に脅迫されたことを思い出したのだ。僕は密かに奥歯を噛んだ。畜生。ふざけやがって、あのガキ。
少し経ってから、椚がやってきた。
「五、六人殺してきた」椚は苛立ったような様子で、いびつに折り曲がったパンフレットをテーブルの上へ置いた。紙面には、うら若くフレッシュな男女が教室の窓際で顔を寄せ合っている写真が印刷されていた。
「映画すか」「そう」「見に行ってたんですか」「いかにも」
「あなたも、きっと、恋をする」探偵はパンフレットに印字されたフレーズを、古代語を解読するかのように、不思議で仕方が無い、といった感じで読み上げた。「コイしました?」
「した、した」椚は言葉とは全く裏腹に、渋い顔で腕を組み、脚をかたかたと忙しなく揺すっていた。「キュンキュンが、止まらんのよ。最高やった。五百万の借金肩代わりして娼婦にまでなった女が男の裏切りを知ってホームセンターで出刃包丁盗んで高笑いしながら男のヤサに突撃していくシーンは圧巻でしたよ」「そんなシーンないですよね」僕の言葉を受けた椚は一転して暗い顔になり、首を横に振った。「クソやった。薄かった。寒かった。大いに、クソみたいな時間やった」「残念でしたね」「最悪やわ」「やけど、分るでしょう。テレビで宣伝もしてるくらいやねんから、どういう世界観のものなんか、自分の好みかどうかぐらいは、ある程度。こういうのはね、今売り出し中の俳優さんや女優さんを使って金儲けしたい連中が作ったものなんやからね、映画好きに評価されようとか思って作ってないんやから、中身の重厚さを求めたら駄目ですよ、中身なんて、なくったっていいんやから。スクリーン映え良さそうな、顔面が揃ってたらええんやから。借金まみれの風俗嬢とヤクザが出てくるのが好きなんやったら、Vシネでも見とったらええやん」「そうですよ、椚さん。映画見るなら誘ってくれたら良かったのに、今度俺と何か見に行きませんか」
「反骨精神の生成」椚は、またぞろ訳のわからないことを言った。「大衆に持て囃される創作物に触れる事で焦燥感と苛立ちを生み出す、それが私のロックになんねん」
それを聞いた僕は呆れ、何も言えなかった。わざわざ千八百円払って二時間座席に釘付になり好きでもない映画を見てまでしてあえて、反骨精神だか何だか知らぬが、原動力を生み出しているような人間がロックとやらをやる必要など何処にあるというのだ。第一、そんな苛々むしゃくしゃとした余裕の無い精神状態で音楽をやって、何が楽しいのだ。探偵は椚のバンド仲間として、椚の発言について何を感じているのかと思って表情を伺うと、映画に誘ったにも関わらずそれに対する返事がなかったことを気に病んでいるのか、僕とは違った意味で呆けた顔をしていた。
「その後な、映画館の近くのおしゃれなカフェに行ってきてん」「良かったじゃないですか。俺も今度行きたいです、一緒に」探偵は、決して挫けてはいなかった。「良おないわ、アホンダラ」「え。すいません」
「隣の女二人がな、誂え物を写真に撮ってたんや、可愛い、とか何とか騒ぎながら。いただきます、言って手を合わせて、食うたらええものを」椚は一層白熱した様子だった。「どうせネットに載せるんやろ、くそ、くだらん。しょもない、苛々したし、今も苛々してる。ゴキブリ以下の脳みその奴らと一緒にされたらかなん、ロックをやらなあかん、全員潰さんとあかん」
正直なところ僕は先程から、映画についての意見を述べた後、椚から返って来た言葉に対して黙る事しかできなかったことが非常に悔しく、不快な思いをしていた。確かにかなり乱暴で主観的ではあるが、結構尤もらしいことを言えたという自負があった、にも関わらず、予想をはるかに絶する返事が来たため、呆れ果ててしまったためとは言え、返す言葉を失ってしまった。僕は大学を卒業し、この就職難の時代に狭き門を潜って銀行員となった選ばれし男である。外見は確かに垢抜けているし、おじいちゃんにも優しいけれども、それでいてもこんな柄の悪い、ただ楽しく生きている人達を口汚く罵ることしかしない痛い小娘に、この僕が言い負かされたままでいるような筋合いはないのだ。
と言う訳で僕は、今日の脅迫事件の復讐も兼ねて、椚を言い負かしたい、黙らせたい、悔しがる顔を見たいという欲求に激しく掻き立てられていた。「そんなに不満なら、そういう今時の若者が集まる場所へ近づかなければいいではないか」と言ってもどうせまた反骨がどうのこうの、と言われるに決まっているので、論点を変え、こじゃれた感じのカフェの可愛い器に入ったカプチーノ等を撮影してS NSなんかに掲載する、若者のそういった行為自体を擁護することにした。見栄えが良くて美味しい物を食べたことをみんなに自慢したいんじゃないですか、可愛いもんやないですか、というのは少し弱い気がする。
「前テレビで見てんけど」僕は貝のごとく閉じていた口を、意を決して開いた。「NHKのですね、戦後の日本を再現したドキュメンタリー番組をね。戦争に負けた日本が、アメリカに占領されたのは周知の事実かと思いますけども、アメリカ軍専用のキャバレーでダンサーとして過酷な労働を強いられていた女性たちが組合を設立して立ち上がるわけです。その内の一人の女性は言うわけです、これからは民主主義の社会。戦時中のように、何もかも我慢する必要はない、と」「何をいきなり言いだすん」「まあ、聞いて下さい。僕にとってその台詞が印象的でしたわ、そう、民主主義です。この国は。若者がくだらない事に興じ、インターネットを通じて各々好きなように発言する、誰も何も我慢する必要などない、これはきっと、戦争一色だった頃の人々が望んだ社会の在り方です。平和な証拠というわけです。国が平和で、潤ってるんです、ロックをやれるのも、他人を批判できるのも民主主義、民主主義のお陰ですよ。その番組の中ではこんなシーンもあった、戦争に負け、天皇陛下が人間宣言をした後、幾つもの宗教が生まれ、空腹に苦しむ国民は皆様々な神様に夢中になって祈り、踊り明かした。現代をご覧なさい、空腹で倒れる人はこの国にはほとんど見られなくなりました。ですがみんな踊っています、俳優を熱狂的に愛する人々、ロックを信仰する人々、いいね!が欲しいがために死に物狂いで奔走する人々、飽食の時代でありながら皆、腹を空かせて踊っています。いや、心の方でしょうか。何せ踊っている人々は皆、同じです、戦後生み出された無数の神の中の一つに、ただ踊らされているに過ぎないのです。戦争は終わりました、しかし戦後は未だに続いています」
自分で言いながら、何を言っているのか、何を言うべきだったのか、段々分らなくなってきた。二人の内どちらかに、だから何だ、と言われたら僕は終わりだと思った。
だが二人は何も言わなかった。探偵は口を半開きにして、眉を中心に寄せていた。椚は静かにじっと黙って僕を見ていた。目をわずかに細め、唇を一の文字に結んでいた。悔しがっている、というふうに見えない事も無かった。こんな椚の顔を見るのは初めてだった。何や、黙っとったら良い女やないか、やっぱり。
何か知らんがうまくいったようだった。少なくとも椚は黙っている。とは言え、それがどうしたと言われることへの恐れをぬぐい去る事ができなかった僕は、前髪の生え際に嫌な汗が滲んでいるのを感じながら、更に続けた。
「それにこないだ、っつうか結構前かな、ほら。長野県の怖吐吐迦(ふつつか)洞窟に日本で最古の壁画が発見されたっつうじゃありませんか。それが面白くて、狩の様子とか、食事の様子、四人家族と思しき人間が遊んでいるかのような、稚拙ではありながら生活感溢れる絵が描かれていたそうで、それについて見解を示してたのが、ほらあのバラエティにもよく出てる…、鶉尾(うずらお)先生、ファニー・鶉尾先生です。先生が言っておられましたが、彼ら、って言ったら縄文人ですよね。生きていく術と家族を愛することを後世に伝えるため、描いたのだろうみたいなことを仰ってましたけども僕はちょっと違うと思ってて、とにかく描きたい、それだけやったと思うんです。別に後世に残したいとかそういう小難しいことではなくって、ただただ描きたい、それも誰かの目につくところに、洞窟の壁に、生活している上でのトピックスを描いておきたいという、欲求です。これ、どうです?現代の若者が自分の人生の中で起きたイベントを、SNSに書き綴っていることに通ずるもの、ないですか。だとしたら、写真を撮ってネットに掲載するという行為は、壁画するのと同じであって、人間が根底に持つごくごく自然な欲求っつうことになりますよね。何のことはない、洞窟の壁がインターネットに変わっただけです。であるからしててですね、そういった若者を真っ向から否定するとなると、今から何万年も前、人類が誕生した頃から話を遡らなあかんことなりますけど、ちょっと面倒くさくないですか、ちょっとどころか非常に。面倒すよね」
でっちあげだった。長野県の怖吐吐迦洞窟?何処だ。ファニー・鶉尾?誰だ。知らん、そんなもの。僕が今適当に考えて言ったのだ。全て言い終えた後で、やめといたら良かった、と思った。民主主義の下りで既に黙らせたんやから、調子乗らんとそこでやめといたらよかったものを、素人の悪いところが出てしまった。探偵が「ウズラ、ウズラ」と狂ったように繰り返しながらげらげらと、腹を抱えて笑っていた。彼にとって鶉が一体何なのか、皆目分からなかった。しかし突然、ぴたりと口を閉じ、恐ろしそうな様子で椚の方を見た。僕がつらつら並べ立てた言葉に、椚が怒っているのではないかと危惧し、顔色を伺ったのだろうが、椚も笑っていた。僕の予定では悔しさにぎりぎりと奥歯を鳴らしているはずの椚が、満足気ににこにこしていた。この笑顔に心臓を貫かれない男がいるのだろうかと思った。
「民主主義かあ」椚は楽しそうに言った。「民主主義ロックやな」
椚がにこにこ笑っている時点で、言い負かしたい、という僕の目論見は見事に失敗した。とは言え、可愛い女子が心底嬉しそうにしているのを見て、男として不快な気持ちになるのは幾らなんでも難し過ぎた。本望は、存分に悔しがって頂きたかったのだが、存外腹立たしさは無かった。
「進藤君をバンドに誘って良かったわ」「ほんまや、進藤」探偵は僕の肩を掴み、揺すぶった。「お前、最初全然意見言わんからやる気ないんか思ってたけど、色々言えるんやんけ」「この三人なら、おもろいことできるそうやわ」「ほんまですよね。楽しみやな、おい、進藤」
暖かかった。店内の冷房はいつものように不吉な音を立てながらフルの力で冷たい風を送っていたが、僕の腹の中にいる小さな僕が、炬燵に潜りながら「ぬくいわあ」と言っていた。真冬の、休日の前の夜。ほろ酔いになり、テレビの音を聞きながら、炬燵の中でまどろんでいた。完璧な、幸福だった。幸福の中には実に沢山の要素が含まれており、その中には怠慢があった。すべきことから目を背け、楽をしたい、怠けたいという思いだった。思えば僕は生まれてから一度でも、他人に本当のことを言った事があっただろうか。いや、当たり前にあるのだろうが、それが分からなくなっていた。そして思いの丈を思うままにぶつけ、それを肯定され、褒められたことがあっただろうか。今が、初めてではないのか。判然としないが、少なくとも今はそう感じていた。そりゃあ洞窟も学者も出任せではあるが、椚を言い負かしたいという欲求から飛び出した僕の本音なのだ。これまで友人と呼べる人間にも嘘ばかりつき、金を持って逃げた。今いる職場でも、のらりくらりと建前ばかりかましている。目の前にいるこの二人にもそうすべきなのだ。嘘をつき、金を借り、消えなければならないのだ。だが、僕は今、ぬくい炬燵の中にいた。散らかり放題の部屋の掃除や洗濯、皿洗い、家賃の振込等を全て放棄し、炬燵に潜っていた。そしてそこから出ることを激しく拒んでいた。
僕は探偵に話すべきことを思い出した。この男が受けた銃弾による傷は、着実に癒えつつある。僕はつい数時間前まで、この怪我が治る前に強盗事件についての真実を話し、謝罪すると固く心に決めていた。僕の、傷ついた名誉と自尊心の回復のためだ。探偵の傷が治ってしまえば、僕のプライドはごっそりと抉り取られたまま治癒する術を失い、僕はそれが心の底から恐ろしかった。
だがそんなことを思っていたことすら今は、夢を見ているようにぼんやりと薄れ、僕は本格的に眠ろうとしていた。
「さて、さて」椚が立ち上がった。「そろそろバンドの練習、始めよか」
どこで、と尋ねた僕に、椚は信じられない事を言った。「進藤君の家」

就職を期にこの土地へと移り住み、一人暮らしを始めてからというもの、僕は死んでも他人を自宅に招くことはしまいと決めていた。自宅だとどうしても近くにいる人間に対しての警戒心が緩んでしまい、飲酒した上につい眠り込んでしまったりすれば、客人がその隙に僕の財布の中身を抜き取る、引き出しから通帳や印鑑を持ち出す、または僕の背後に回り首を絞めて絞殺する、といった可能性が必ずしもないとは言い切れぬ。他人と自分のプライベートな密室空間で過ごす時間にはそう言ったリスクが付き物であるから、僕は今日の今日まで人を一切自宅に入れなかったわけだけれども、何故着いてくる探偵と椚を追い払うこともなく、あっさりと敷居をまたがせたのかというと、はっきりと申し上げる、この二人を相手に拒否したりするのも面倒くさかったからで、後々冷静になってから考えれば僕はこの日全財産を奪われた上に殺されていても不思議ではなかったのだ。人は、たった一つ選択を誤っただけで、全てを失う危険と隣り合わせで生きている。
「ビールないん」探偵はまるで自分の家に帰ってきたかのように冷蔵庫に直行し、中を開けて探り始めた。「喉渇いた、あと、歩いてきて暑いから後でシャワー貸して」「勝手にどうぞ」
「あ、ギターある」椚は入ってくるなり、壁際にもたれかかっているアコウスティック・ギターを目ざとく見つけた。「進藤君、やる気満々やん」
「ちゃうわ、出て行く時に親父から貰っただけやし。僕、触ったこともないすよ、悪いけど」「何でもええよ、取り敢えず練習できるやん。これで」椚はギターにうっすらと積もった埃に息を吹いたり、掌で撫でたりしていた。
「練習て、そもそも何を」「作った曲あるから、聞いて」「椚さん、曲なんか作るんですか、すごいすね、あ。進藤、灰皿どこ」「その辺の空き缶適当に使って下さい、歌うんはええけど夜やし、あんま大きい声は駄目ですよ。ほんで壁薄いから」
僕が言い終わらない内に、椚はぽろぽろと弦を鳴らし始めた。その姿が、何だかやけに、道理に合っているような感じがした。理屈では説明のつかない、尤もらしさがあった。「聞いてください」

絵描きになりたかった男と
優しくなりすぎた女が
汚い寿司屋にのさばって
昨日の話をしてるだけ

嘘笑いには一銭も
ただの一銭の値打ちも無し
腹を空かせた雀が
啄みにくるだけ

東京なんかええことない
東京なんかええことない
東京なんかええことない
東京なんか行きたくない

詩もひどいし曲もひどいし、椚の歌もひどかった。尤もらしいのは見てくれだけだった。そして何よりもギターがひどかった。通常弦楽器というのは定期的に調弦というものをしなければならず、父には悪いが半年以上も放置された僕のギターは音が狂いに狂いまくっており、左手が正しくコードを抑えていても、不協和音にしかならないような悲惨な状態で、しかも楽器が弾けないと自ら公言していた椚の演奏は成程いかにも適当にやっているだけのようで、この様子なら調弦をしたところで救いはないと見える。
「いやあ、すごい。すごいすよ」探偵は激しく両手を打ち鳴らした。「舞台は七十年代の日本でしょうか、世では学生運動がさかんで暴力、抗争が絶えなかったそんなさ中、時代の波に乗り切れない二人の男女がいた、男の方には夢があり、女は毎晩夜の街に出て、甲斐性無しの男を養っていた、そんな生活に嫌気がさしていたが、女はとあるデモによってかつての恋人を失うという暗い過去を背負っていたため、その悲しみから男と別れる事ができなかった、それに、夢を語る男の真っ直ぐな瞳が好きだった…、ある日男が女に言った、俺仕事探す、一緒に東京へ行こう…、激闘の日本、社会を変えようと闘う若者たちを横目で見ながら、熱くもなれず冷たくもなれない恋人たち、明日を憂いながらも、弾まぬ会話に薄く笑うしか他ない、青春とは何か、人生とは…、二人がこの時代を、笑って話せる日が来るのだろうか。感動したあ、感動しましたよ。この短い曲の中に、これ程のドラマを見せるとは、あれ、何か。あかん、涙が」
仕方なかろう。僕は、赤い顔でいい加減なことをまくしたてる探偵を見ながら、そう思った。このおっさんは僕の家に上がり込んでから既にビールを三缶空けていたのだ。
「ありがとう」椚はまたぞろ右手の親指で弦を鳴らした。大抵の猫が精神錯乱を起こす音だった。探偵の酔いが回るのがやけに早いのも、椚が鳴らすギターのせいではなかろうか。「高橋んとこのぼんくら息子が俺の妹に手出した、っていう曲もあんで」「絶対売れますわ」
売れへんやろ。僕はその言葉をかろうじて胸の中で留めた。そんな曲、誰が聞きたいねん。世間が求めているのは、明るく前向きな気持ちになれる、ポップな音楽だ。ステップ・バイ・ステップ、明日に向かって一歩ずつ進んで行こうよ、うん、ゆっくりでええよ、あんま急いだら転ぶさかいに、ほら言うたそばからこけよった、ああもう言わんこっちゃない、でも君は一人じゃないさ、手を取り合って、涙を拭いて顔を上げよう、ほら、雨降りの後は空に虹がかかるよ、見てみなはれ、お前さん、まっこと綺麗じゃ。と言ったような、味わいや深みには欠けるがポジティブで、世の中にいるより多くの、感性が貧相な人々が共感した、心を慰められた、と感じる作りでなくてはヒットしないわけで、ヒモ男と情婦が登場するような煤けた歌に商業的価値等あるわけがないのだ。
「まあ、そう慌てなさんな。探偵さんも、何か一曲。ハードボイルドやって」「俺ですか」探偵はどぎまぎしながら、眠る赤子を母親の手から受けるかのように恐る恐る、椚からギターを受け取った。「ほんな進藤、あのCDかけて。貸したやつ」
言われて僕は、何日か前に探偵から借りた松田優作のアルバムCDをデッキに入れ、再生した。実のところ僕はコレを借りてからというもの、一度も聴いていなかった。
三拍子の曲がかかった。
僕の頭には浮かんだ、きっと椚の頭の中にも。予定も決めずに気まぐれに、夕暮れの町を歩く長身の男、その男の革靴が道路を鳴らす音、ゆったりとした速度だった。ピアノとギターの前奏。しゃがれた声に合わせて、しかし控えめに探偵は歌い始めた。驚くべきは探偵が、一体どういうからくりなのか、調律用の電子機器や音叉を使わずにすらすらとギターの調弦をし始めた事だった。弦の細い方からぽろぽろと弾き、ギターの先に取り付けられたネジのような物を回すことを繰り返す内に、いびつだった音が互いに仲良く手を取り合い、いつの間にか弦は弦としての、ギターはギターとしての自信を完全に取り戻していた。探偵が、歌いながら三拍子に合わせてじゃらじゃらと鳴らす和音は、CDが流す音楽と調和していた。
大したものだった。錆びと埃まみれになって、すっかり不貞腐れているギターからまともな音を出せるとは。喫茶店で、楽器が弾けないと言っていたのは椚の前で謙遜したのか、それとも演奏の経験がなくても楽器を持っただけで瞬時に調律し、弾きこなしてしまう耳と指を持っているのか。どちらにしろ、探偵は間違いなく演奏していた。椚も余計な口を挟まず、黙って小さく揺れていた。
「めっちゃ、弾けるじゃないですか」僕の言葉に、黙って歯を見せる探偵。そして、探偵の左指。銃弾の衝撃により、一度は神経をぶった切られ、一ヵ月もの間自由を奪われていた指。見えない針金で縛りつけられているかのように、そしてそれに屈するまいとして死にもの狂いで指は動き回り、時々痙攣しながら、フレットの上を走っていた。指は動くたびに針金によって傷つけられ、血が噴き出していた。この一度切で、もう二度と指が使えなくなってもいい、という探偵の投げやりな覚悟が見えた。僕は、今度は奥歯だけでなく、手や肩や膝まで震えだした。何の前触れもなく、ギターが終わった。
探偵は歌うのも、止めた。その代わりに泣きだした。この男が泣いているのを既に一度見ている僕は、彼が何もあの時のように、嬉しくて泣いているのではないことくらい分かった。あの時と同じく、大声を上げて男児のように泣き喚いていたけれども。指が思うように動かない事が悔しいのか、と思ったが違うようだった。
「優作はおらん」探偵は嗚咽し、もがくようにして言った。「おらんのや、この世におらんねん。俺がこんなんしたって、優作は死んだんや、しかも俺が生まれるより前や。やけどCDはかかるやん、ボタン押したら。音楽鳴るやん、優作の歌聞けるやん、だから生きてはいんねん、死んでもてるけど、死んではない。死んだわけでは、ない」「分ってる、分ってる」僕は瀕死の患者に声をかけるように、訳も分からずそう繰り返した。「あんたの言う通りや」
「あとはビデオも、雑誌もある。そこに優作がおって、そこに生きてる、俺の中にも。やけど死んでもてんねんから、それ以上は生きられへん。優作は俺の人生の全てやから、優作がこれ以上生きられへん限り俺も、それ以上は生きられへんねん」
少なくとも探偵は恐らく、腕を撃たれた時よりも痛がっており、奴が強盗となって現れたあの日、段々と薄れていく意識の中で聞いていた、探偵のものと思しき喚き声を僕ははっきりと思い出していて、今探偵はあの時のように周りの人間に痛みを訴え助けを求めているのではなく、ただ単純に痛がり、苦しんでおり、腹の中のそれを吐き出そうと躍起になっていた。口の中に指を突っこんで、吐瀉物を外へ出し不快感から解放されたがっているかのようだった。痛苦から自由になるために通らなくてはならない、人間にとって最も痛く苦しい過程だった。そんな風に身を刻み命を削ってまで自分のために泣く男に、優作は知らん顔して歌い続けていた。酷な事だった。スターは、スターだから早くに死ぬのか、早くに死んだからスターなのか。そんな簡単そうなことすら分らない僕に、今の探偵を助けることはできなかったし、痛みから自由になる手助けをすることもできそうになかった。
椚はポケットから細い煙草を取り出し、うずくまっている探偵に差し出してマッチを磨ってやっていた。探偵がゆっくりと煙を吐き出すのを見届けてから、言った。「良い曲やん。これ、やろな。バンドで」
これは椚なりの励ましの言葉なのだろうし、探偵もそれを察したようで、今はこれが精一杯だと言わんばかりに、遠慮がちな感じで口角を上げて見せた。流しっぱなしの涙と汗と鼻水によって、髪の毛が額や頬に貼りつき、無様だった。その濡れた顔を拭こうとシャツの裾を引っ張り上げた探偵の指から、煙草が落ちた。あれ(’’)が始まった。奴が撃った弾丸が、探偵の腕を突き破り、白い床に、煙草が落ちていくのだ。スロー・モーション。それが僕の意思とは関係なしに、僕の脳の中で再生された。
僕は、自分が今の今まで炬燵の中に潜っていた事に気がついた。そして今、段々とそこから引き戻されていくのを感じた。幸福に包まれながら眠りについた時は休日の前夜だったのに、目が覚めたら一夜明け、とっくに昼も過ぎ、十八時半になっていた。夢の様な時間はもう、ない。空き缶や弁当の箱が散乱した部屋。これからすべきことが山のように、ある。それを嫌でも思い出す。憂鬱が首の上にのしかかるが、誰も代わりをしてはくれない。家賃催促の電話が鳴る。しつこく鳴る。体がひどく重く、だるいのだ。だが僕は炬燵から這い出し、起き上がらなくてはならない。僕は謝らなくてはならない。何故なら僕は覚醒剤もやっていないし、金が無いからといって突発的に強盗したらい、罪の無い市民に銃を向け発砲するような野蛮な人間ではないからだ。
「ごめん、進藤、ごめん」探偵は慌てて煙草を拾った。「灰が、床に。ああ…、ごめんな」
次の瞬間、僕は勢いよく探偵の両肩を掴んでいた。その勢いから探偵は、僕に殺されると思ったのか、ぎくりと震えて身を引いた。熱い薬缶に指を触れてしまった、というような程度ではない、煮えたぎった鍋が汁を飛び散らせながら時速八十kmで飛行、そのまま顔面に衝突してきた、みたいな反応だった。反動でサングラスがずるっと下がり、涙が枯れ果てた後の、干し葡萄みたいな黒目が現れ、怯えたように僕を見ていた。その目を見て、僕は申し訳無さを感じないわけにはいかなかった。
「全部、話しますね。今から」僕は言った。言った、というか、ほとんど言わされているようなものだった。歯の隙間から、漏れて行くのだ。
あの日から続く屈辱と、探偵に本当の事を打ち明けようとすると怖気づいてしまう自分への歯がゆさからこれでやっと解放されるという清々しい思いと、ここで白状してしまえば何もかもが終わるのだ、という恐怖が激しくせめぎ合っており、正直に言って何が終わるのかははっきりとは分らず、というより今ここでそれを細かに分析するような余裕が無かったため、何が終わるのかが分らないという事も、何が終わるのかが分らないという事に怯えている自分も、ひどく、怖かった。そして割合で言うなら恐怖は今、完全に勝利していた。清々しさなどほんの微々たるものだった。だからやめたかったし、黙りたかった。けれども止まらないのだった。
「は、何が。どうしたん」「強盗の事やねんけど」「強盗?」「探偵さんを撃った奴やんか、あいつですよ。あいつのことで話すことあるから、今から。あるから」止めようとしても、止まらなかった。頭の中は真っ赤に燃え上がっており、目の前はチカチカと光った。喉が開き切っており、舌が勝手に動いた。
「あいつ…、あいつさあ。ほんまは、あいつなあ」探偵に語りかけているのでも、もはやなかった。悲しい事に僕は壊れた、哀れな人形だった。僕はできることならすぐさま、ティッシュ・ペーパーを丸め口一杯に詰め込んでしまいたかった。「何で、死んでもうたんでしょうね」
止まった。僕は心底ほっとしていた。呪いだ。あれ程までに、屈辱を受け続けながら、責められ、いたぶられながらも、僕は、言いたくないのだ。探偵に。探偵の腕を突き破ったのが、僕の友人であったということを、言いたくないのだ。驚くほど、簡単なことだというのに、そうできなかった。例えそれを告げて、ただ一言奴の代わりに謝罪の言葉を口にすることによって、僕が望み続けてきたように、僕が紛れも無く善良でまともな人間であることを僕自身に証明し、その次の日からまた、胸に一点の曇りも無く晴れやかな気持ちで生きていく事ができるとしても、だ。それを分っていても、言いだす事ができない、どころかそれを拒否し、喋ろうとする口があと一歩のところで止まってしまっても、あー良かったとか思っているし、これはもう呪いだとしか説明のしようがなかった。奴の呪いだ。奴が自分の頭に銃をぶっ放す寸前に、僕が一生、死ぬまで胸を張って生きる事ができないよう呪いをかけやがったのだ。とは言え、僕はそれが分かった今も、呪いとな、全く世の中には不思議なことがあるもんですなあ、うはははははは、なんてことを考えていた。
「それに」それに、と僕は思った。
探偵に本当のことを話したとしても、それによって今迄とはまた違った、しかし今迄以上の屈辱やある種の心苦しさを感じながら生きていく羽目になる可能性が全く無いと言い切れるのだろうか。否。ある。充分にあるのだ。それなら何もせずに今のままこの三人で、バンドをやるなり盆休みに温泉旅行に行くなりしてへらへらしながら楽しく生きていく方がよっぽど楽で良いのではないか。だって面倒くせーじゃん、もう。
そんなことを考えている僕は今、再びあのまどろみの中にいた。暖かく、誰にも邪魔される心配のない、羽毛の中で欠伸をしていた。
「え。何なん」探偵は心の底から薄気味悪い、という顔で言った。「何やねん。それに、って」「いや、別に。何にも」「全部話すって、何やったん」「何も無いです。てゆうかそんなん言うたっけ」「何や、気持ち悪いぞ、進藤」
椚は何も言わず、不機嫌とも何も考えていないとも取れる顔で、爪を眺めていた。

その次に探偵に会った時、探偵の腕の傷を庇うための布は消えていた。
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