楽しくて異世界☆ワタシのチート生活は本と共に強くなる☆そんな私はモンスターと一緒に養蜂場をやってます。

夏カボチャ

文字の大きさ
上 下
39 / 310
1章 7才以上で7才未満の召喚士。

再戦に合図と本棚掃除です。

しおりを挟む
 夜更けに私は皆にバレぬように窓から静かに外へと向かう。
 森の中を流れる川まで移動する。
 勿論、夜釣りや川遊びに来た訳じゃないわよ。

 私は閃いた、私の魔法の知識と考え方を使えば楽に麦を潰せる。
 今よりも、かなり上質な麦や殻の入って無い小麦粉が作れるようになる。

 私は水車をイメージしながら土石魔法ロクロックを使い薄くて頑丈な石の水車を作ってみた。

「取り敢えず出来たわね! いざ!」

 川にセットされた石の水車が回ることはなく、水を塞き止めてしまい失敗、更に軽量化してみるが、回っても石なのに砕けたりと悪戦苦闘……なんなのよ!

 何故、私が石で水車を造るかと言えば、他の誰かに真似されたくないからだ、木製にして組み立てれば楽だが、絶対に悪さをする奴が現れる、その為持ち出せない石の水車が欲しかったのだが、残念だわ……

 一旦諦めて夜道を戻る私、川の流れを見ると一気に流れる部分と緩やかになる部分との強弱の激しさに気付く。

 川が狭くなると流れが急になり、その先の川幅がもし広がっていたなら更に激しくスピードをあげる。

 此れだわ、試して見るかな。うん。

 石の水車の手前までを狭くする事で勢いをあげさせ、其処から一気に水車の回転を手伝うように手で下に向けて動かす、しかし、中々動かない。

「あ~ダメか、不味いなぁ、そろそろ帰らないと明日も修行だよ、今度寝坊したら不味いからなぁ……」

 諦める私の後ろから、歩いてきたのはデンキチであった。今の私からすれば助け船に他ならない。

「ナイスよ! デンキチ、ちょうど困ってたのよ、力を貸してくれないかなぁ?」

『今はムリ。お腹空いたから果実を食べに行くの』

 あらま、最近、反抗期かしら、私が修行ばかりしてるからかしら……

「少しだけだから! デンキチってば」

『わかった。明日手伝う』

 イラッ……

 次にお願いするとデンキチは素直に助けてくれた。勿論……優しくお願いはしたわ。

『ほっぺた……いだい。冗談づうじない』

「ごめんね、反抗期だと思ってつい、許して」

 ごめんねデンキチ……前みたいに軽くほっぺたを引っ張ったつもりだったの……

 デンキチの力も借りて、水車を下から上に動かす私は喜び飛び跳ねた。

 水車が凄い勢いで回転を始めたからだ。回転が止まる事はなく、次第に安定していく。

「ありがとうデンキチ。やっと回ったわ」

 デンキチは不思議そうに水車を眺めて一言『先端に木の板付ければ良いのに』と呟いた。

 確かに! 私はデンキチに負けた……負けたと言うか……敗北感だわ。

「そうね……試して見るわね」

 新しく造った石の水車に窪みを作って木の板を嵌め込むと水に押されてスムーズに動き出したわ。

 やるじゃない……デンキチ……

 敗北感満載のままに帰宅した私は朝になり、じい様に作製魔法を見て貰う。

 じい様が笑いながら作製魔法である“アトリー”を見て誉めてくれた。

 浮かれていたが、じい様は浮かれている私に一喝、まだまだ頑張らないと。

 修行開始からあっという間に時間が過ぎていく。次第に魔法の基礎と応用、コントロールを理解する私。

 いよいよ、1ヶ月が過ぎようとしていたその日、じい様から「カミル、明日の朝に再戦をしてやる」と言われた。

 いや、余り嬉しくないんですが……

 私の表情を読み取ったのか、じい様から更に「お前が勝ったら褒美をやろうじゃないか、負けたら……図書館の棚全ての掃除じゃ、約束じゃぞ」と言われ逃げ場を失った。

 約束って互いに了承したら成立じゃないの?!

 私の明日は輝くか闇に落ちるかの2択になりましたとさ。マジに無いわぁ……

 その日は全力で頭を悩ませる事にした。

「考えるより行動! って作戦は作戦じゃないし、参ったわね」

 悩む事……1時間……

 仕方ない……じい様には悪いけど勝つしか無いわ! 私は悪魔に魂を売る覚悟よ、アハハハハ! みたいなテンションになりながら作戦は考えた。

 じい様に負けて貰うわ。じゃないと図書館の棚に私がやられる……

 複雑な思いを胸に朝から、じい様と向き合う。

 じい様余裕だわね……罪悪感が薄れるから助かるわ。

「じい様? 本気でいくわよ!」

「構わん、だが、使い魔は無しだ! 自身の力のみで戦うんじゃぞ、よいな」

 じい様……大人げないなぁ。

 まぁいいわ。今回の作戦は初めから一人でやる予定だもの。

 戦う前に合図を決める私達。
 じい様がコインを投げて地面に落ちた時点で戦うことに決める。

 そしてコインが宙を舞いゆっくりと落下する。

 合図と同時にじい様は一気に前に、私は後ろに後退する。

 私は全力で昨日行ったのは、イメージトレーニングだけではない。

  そう、普段ならやらない走り込み。私は特急強化ハイアップのお陰で普段なら筋トレや自主トレはしない。

 しか~し! 今回は全力で出来る限りやり抜いたわ! ふふふ、さぁ! 来なさい。

「何をニヤついとるか!」

 じい様が更に速度をあげ真後ろまで迫った瞬間、本気で反転し一気にじい様の斜め後ろに移動する。

「じい様ッ! 覚悟ォォォッ!」

 じい様の足元に次々と夥しい数の石槍を出現させる。
 私が本気だと理解したのか足に強化魔法を使い、石槍の先端を次々に踏み込み移動してくる。正直、化物以上に化物だわ!

「お前の1ヶ月はこんな物かッ!」

 感情むき出しのじい様、熱いじゃない!

「そんな訳、無いでしょうがッ! ハアァァァァ!」

 光魔法“ラメリル”で目暗めしをするもじい様には一瞬程の隙しか生まれない。

 しかし、それでいい。私の仕掛けは全て終わったんだもん。いくわ!

「いくわよ! 冷凍魔法コルコル

 私は斜めにじい様の足元目掛け、高出力で魔法を発動する。当然あっさり避けてくれた。

 避けた先にある石槍の上に踏み込むじい様。

 “ずぼっ!”「なっ?!」驚きと共に体が地面に沈んでいく。

 私は透かさず、じい様の足元を土石魔法ロクロックで石に変え自由を奪う。
 足から下半身が地面に飲み込まれた状態で地面を石に変えたのだから、私の勝ちよね、ふふふ、やったわ!

「甘い! こんなもん物質変化魔法ホルミレフ、液体化ッ!」

 じい様、ごめんね。予想してたの……

土石魔法ロクロック! 作製魔法アトリー! 上位水魔法ウォルウォルゥゥゥッ!」

 じい様の体の下に土石魔法ロクロックで巨大な空間を作り出し、更に石の水車を地中に造り出す。液体化したじい様を上から上位水魔法ウォルウォルで流し込む!

 流石のじい様も驚いたみたいね? でも、じい様は化物だから、仕上げまで手は抜かないわ!

「行けぇェェェッ! 雷撃魔法ボルボル上位雷撃魔法エレボルス!」

 じい様が吸い込まれた隙間に一筋の稲光が線となり落下した後、更に激しい強雷ごうらいを落としてあげたわ。流石にやり過ぎたかしら?

「やってくれたな……カ・ミ・ルッ!」

 やっぱり駄目か、流石に頑丈過ぎでしょ……

 しかし、外に這い出してきたその姿は、ボロボロで戦える様子には見えない。少なくとも、今の私はこれ以上攻撃したくない。

「じい様、引き分けにしない? 私も魔力限界だしさ」

 私のエンジェルスマイルを見たじい様が首を“フン”と斜め上にあげる。

「お前の勝ちじゃよ、まだまだ遣れるんじゃろうに嘘を口にするな、それは相手に対しての単なる侮辱に他ならん、胸を張れ、ミルシュ=カミル。お前は立派に儂に勝ったんじゃからな」

 じい様の言葉が嬉しかった。必死に覚えた魔法を誰かに見せる事なんて無かった。
 私は本当は怖かったんだ。自分だけが他の人達と違いチートを使い生きている事実を知られる事が、自信が無かった、私は強がっていただけだった。

「ひぐっ……ありがとうじい様、そんな事ないよ、私はズルい子なの……だから誉めないで」

 人に素直に誉められた時……それが全てズルを積み重ねた結果だと気付かされる。

「カミル、よしよし。お前がズルい子だろうが、儂からしたら関係無い。お前が必死に学んだ1ヶ月は紛れもなく共に過ごした時間だ、誰がなんと言おうと儂はお前を誇りに思うぞ」

 優しく頭を撫でる、見た目よりもガッシリとした優しい手は心の闇すら払い落としてくれるようで、暖かかった。

 それから私は図書館の本棚の掃除を開始した。
 勿論、自分から進んで始めた。
 じい様は、戦いで足を挫いていたらしい。そんな、じい様一人に本棚の掃除はさせられない。

 1日で終わる量でないのは理解していた。だからこそ頑張ろう。私は図書館の棚掃除を3日程掛けて終わらせた。

 メルリとアララにも手伝って貰い3日、凄く広い図書館の棚はピカピカになった。

 疲れたけど、最高に気持ちいいわ。

しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

処理中です...