楽しくて異世界☆ワタシのチート生活は本と共に強くなる☆そんな私はモンスターと一緒に養蜂場をやってます。

夏カボチャ

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1章 7才以上で7才未満の召喚士。

アララが本気なんです。

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 涙で腫れた目、 憂鬱に目覚める朝、外は雨であり、私の心をそのまま写し出したような土砂降りである。 

 いけない……皆大丈夫かしら

 普通なら、そんな事は考えない。自然界に生きてきたモンスターである使い魔が雨などに屈する訳は無い。
 たが、その日は少し違っていた。まるで嵐のように吹き荒れる突風と黒雲から撃ち鳴らされ木々が軋む。

 慌てて外に飛び出した私を襲う激しい雨に、じい様との闘いを思い出し身が震える感覚、寒さや冷たさでも恐怖でもない悔しさだ。

 雨を全身に浴びるようにして両手を広げる。
 私は負けたんだと、自身に言い聞かせると両手で頬を叩く。そして昨日の泣き虫な自分に別れを告げる。

「よし、いくわよ!」

「よし、じゃ無いですよ! お嬢様、風邪引いちゃいますよーー!」

 家の扉に掴まり必死に叫ぶメルリ、それでも前に進もうとする私を追って後を付いてくる。

 不思議な物でメルリが側に居るだけで心に余裕が生まれる。心から感謝したい。

 そう思っていた矢先、私達は養蜂場に近付くにつれ、水嵩が徐々に増している事に気付く。
 メルリを連れて走り出し、養蜂場に着くとモームとメガ達ボアが必死に壁役となり、クイーンとハニービーをボスとトレントウッド達が守り、ジュレが周囲の木々を蔓で支えている。
 その先では、デンキチとスカーが氾濫した川の水を塞がんと倒れた木々を集めて重ね即席のダムを造っていた。
 ずぶ濡れに為りながらその指示を出していたのはアララであった。

「何やってるのよ!」

 焦りアララに駆け寄るとアララは涙目を浮かべて抱きついてきた。

「カミルーーゥゥっ! 怖かったんですよ、頑張ってカミルの養蜂場とハニービー達は守りましたが川が氾濫してて」

 アララの説明から状況を理解したけど、色々と腑に落ちない事がいっぱいだわ。

 何故、直ぐに私を呼ばなかったのか、ララリルルの女神であるアララが何故、悪天候に怖いと言ったのか、考えると分からない事だらけだわね。

「アララ、この雨何とか出来ないの?」

「それが……」

 アララは女神に幾つかの規則が有り、その一つに《自然界の天候を故意に変更ことを禁止する》と言う記述が存在すると口にした。
 自然界災害を防ぐ事は女神であるアララには出来ない事実を初めて知った。

「なら何で直ぐに私に言わないのよ」

「だって、だってッ! カミルが辛い思いしてるの知ってます……だから」

 負けた私がウジウジしてたから気遣い何かさせて……私はバカだ!

「アララ、女神は故意には天候を変更させられないのよね?」

 頷くアララ。

「因みにだけど、空に向けてアララが本気で魔法を使えば雲を吹き飛ばせる?」

「可能です!」

 そう答えるアララ、私はメルリに頼み一瞬でも構わないからガルーダを出して貰えるように頼む。

「アララ、今から私は真上に飛ぶわ全力で魔法を撃ち出しなさい。手加減は無しよ、手を抜いたら絶交なんだから。良いわね」

 不安な表情を浮かべ、下を向く姿に私はニッコリと笑って見せる。

「私を信じなさい。アララの主人なんだから。絶対に大丈夫よ」

 私は天高く飛び上がり、空中で風魔法エアエアの上位魔法である“エアスペース”を発動する。

 ーー上位風魔法エアスペース

 全ての風魔法と風を無効化する防御魔法の1つである。範囲は術者の魔力により異なる。

「今よ! 来なさいアララッ!」

「カミルゥゥゥーーゥゥウウウッ! 避けてください! 全ての風は神と共に全てを吹き飛ばす。神話級風魔法“エアロブライム”」

 風が一瞬でも止んだ瞬間上空に向けて迫る見えない音速の壁、その一瞬にガルーダがカミルを捉え、その場を離脱する。
 瞬きをする一瞬の内の出来事であり、エアロブライムがガルーダの尾羽ギリギリを通り過ぎた瞬間に暴風のような凄まじい風が天に向けて加速していく。

 空に星形のマークが出来た瞬間雲が吹き飛び、台風の目が広がるように大地を太陽光が照らし出す。

 作戦は成功した。私を狙ったアララの攻撃、しかし私が避けて空にあった黒雲を吹き飛ばしたのだから、規則は破っていない。

 地上に戻り直ぐに氾濫した川の水を球体に変えていくと直ぐに川の水位が下がり始める。

「やったぁ、アハハ、疲れたぁ」

 倒れるように地面に背を向けて寝そべる。そこから見上げた青空は最高だ。

 心配して走って来るアララとメルリが泣きながら私に抱きつく。泥だらけに為りながら笑う3人の女性陣、でも悪くない。むしろ凄く好きかも?

 デンキチとスカーも、一息ついたのか、腰を地につけて笑っていた。

 ハニービー達も全員無事だった。しかし、蜂蜜は雨により全滅していた。
 申し訳なさそうなクイーン達の姿があり、私は皆を抱きしめる。

「皆が無事で良かった。本当に良かった」

 それから、ジュレが直ぐに花を咲かせ、クイーン達が新たな蜂蜜を作るために動き出す。

 私達も少しだが手伝いをしてからアララも連れて家に帰宅した。
 直ぐ、お風呂が用意されると私を含めた女3人で互いの背中を流し泥を落としていく。

 お風呂から上がるとアララは帰っていく。メルリは信じられないと言う顔をしていた。

「お嬢様? お嬢様は何者なんですか、少し普通とは、かけ離れ過ぎていて、正直、困惑してしまいました」

「ハァ、メルリ? 私は只の女の子よ」

 泣いたり笑ったりもするし、悔やんだり怒ったりもする。私は多分普通の女の子の筈だわ。多分ね?
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