楽しくて異世界☆ワタシのチート生活は本と共に強くなる☆そんな私はモンスターと一緒に養蜂場をやってます。

夏カボチャ

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4章 輝く未来

光の矛先……永遠をなくす者です9

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 所有者が私に変更されたリーヴルは自由の身になり、何者にも縛られない存在になったの。

 そこまでは予定通りだったわ、問題はリーヴルが私から離れない事にあるわ。

「ぬぬぬ、こら! リーヴルよ、カミルから離れぬか! 困っておるじゃろ!」

「う~ん、離したくないかな? それにカミルが“所有者”で私は“所有物”だから、側にいて問題ないかな?」

 ペンネとリーヴルは私が目覚めてから、ずっとこんな感じよ……アララはそんな光景を複雑そうに見つめて苦笑いをするばかりだし、女神と魔王が本の化身に相手取られてる光景はなんとも言えないわね。

「はいはい、取り敢えず落ち着いて! リーヴル、私達は明日の朝、マドラッドからバトラング王国に向かうの。もう貴女は誰に従うでもなく自由な存在になったのよ。好きなようにしていいのよ」

 その言葉にリーヴルは頷き素敵な笑みを私に向けたの。

「私はカミルと居たいかな、ペンネとアララも凄く面白いし……出来たら一緒に行きたい……かな……」

 あまりに弱々しく不安そうにそう口にするリーヴルの姿にアララは優しく微笑み、ペンネは困ったように頭を抱える、しかし、二人は最後には首を縦に振ったの。

「ハァ、仕方ない奴じゃ。なんの為にカミルが自由にしてやったかわからぬのぉ」

「ふふふ、今は仲良しですが、ペンネだって最初はカミルと喧嘩してましたよ? マドラッドの人は本当に似てますね」

 ペンネとアララの意見がまとまり、私を見つめる。
 三人の視線が向けられると私は悩まずに頷いたわ。

「リーヴル、宜しくね。バトラング王国についたら、他の皆も紹介するわね」

 そして、二日遅れの旅立ちの日の朝がやって来たわ。

 空は快晴、海には心地好い潮風が吹き、コンディションの整った巨大要塞アザラシ【ビッグアザー】、最高の船出日和びよりだわ。

「さて、出港じゃ! 抜かるでないぞ、目的地はバトラング王国、イッテん! 行くゾォォォォ!」

「「「オオォォォォッ!」」」
『『『オオオオゥゥッ!』』』

『キュオオォォォォン!』

 ペンネの掛け声に多くの魔王軍の者達が声を上げ、ビッグアザーも気合いの雄叫びを堂々と上げたわ。

 海を進む巨大なビッグアザーは名前の通り、動く要塞と言えるわね。

 マドラッド本島を出て直ぐに、ペンネが巨大な岩山のある島を指差す。

「あれがビッグアザーの仲間達が眠っている洞窟のある島じゃ」

 マドラッド本島と同様の巨大な岩山に空いた大きな洞穴から凄まじい“ゴォォォ”と言う音が鳴り響き、凄まじい風が吹き荒れる。

「よう寝ておるわ。皆が起きれば、更に貿易は楽になるぞ」

 楽しそうにそう語るペンネ。

 以前のマドラッドとザカメレア王国、ベジルフレア王国の三国が争った際に、麟鳳亀竜のいるベジルフレア王国はともかく、カルメロの居るザカメレア王国は本当に危なかったかも知れないわね?

 あくまでも今動ける要塞アザラシがビッグアザーだけであり、周期がかわると一年の眠りに入り、その代わりにビッグアザーの仲間達が目を覚ますらしいわ。

 つまり、争いが終わって直ぐにペンネはビッグアザーだけを残して、他の仲間達を眠らせたのね。

 ペンネのザカメレアとベジルフレアの両国と戦わない、争わないと言う言葉を行動で示していた事実に私は改めてペンネの誠実さと魔王としての器の大きさを実感したわ。

「やっぱり、ペンネは凄いわね。約束をしっかりと最後まで守ってるのね」

「当たり前じゃ、他者との約束ならば未だしも、カミルと交わした約束であれば、たがえる訳にはいかぬじゃろ?」

 不思議そうに此方をみて、疑う必要なしと言わんばかりに頷く。

「ありがとう。ペンネ、私はまだまだ、頑張らないとね。先ずはバトラング王国でシュビナとの約束をはたすわ」

 大海原を遠く見つめる私に無言で頷くペンネ。

 それから数日、私は魔力を無駄遣いしないように気をつけながら、リーヴルの際に扱った解除魔法をイメージしながら特訓を行い、確実に操れるように神経を研ぎ清ませていったの。

 数日の航海は何事もなく過ぎていったわ。

 バトラング王国まで1日と迫った夜、リーヴルが私に質問を投げ掛けたの。

「カミル……あのさ、私は一緒にいて役にたてるかな、今さ、向かってるバトラング王国にはカミルの大切な仲間が居るってペンネとアララから聞いたよ……」

 不安そうにうつ向くリーヴル。

「どうしたのよ? 今更な質問ね?」

「ううん、少しだけ……不安かな、私は役にたてないと意味がない存在だから……かな……」

「ふぅ、いい! 貴女は私の大切な仲間になったのよ。その事実に偽りは無いわ! 自信を持ちなさい。リーヴルは私の大切な仲間よ。此れからもずっと安心して付いてきなさい。いいわね?」

「……う、うん! 凄く嬉しいかな。ううん、凄く嬉しいよ」

 不安が一瞬で吹き飛び、花が咲いたように華やかな笑みを浮かべるリーヴル。

 明日には人生で一度しかチャレンジ出来ない試練になるわ。
 私もリーヴルのように笑えるかしら……なんて、らしくないわね! 絶対に成功させるわ。

 人は自分自身の力を信じた時に最大の成果を発揮するわ。

 意気込む私を乗せたビッグアザーは休むことなく、海を進む……バトラング王国到着まで1日……今日は明日の為にゆっくり寝ることにするわ。
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