238 / 310
4章 輝く未来
光の矛先……永遠をなくす者です9
しおりを挟む
所有者が私に変更されたリーヴルは自由の身になり、何者にも縛られない存在になったの。
そこまでは予定通りだったわ、問題はリーヴルが私から離れない事にあるわ。
「ぬぬぬ、こら! リーヴルよ、カミルから離れぬか! 困っておるじゃろ!」
「う~ん、離したくないかな? それにカミルが“所有者”で私は“所有物”だから、側にいて問題ないかな?」
ペンネとリーヴルは私が目覚めてから、ずっとこんな感じよ……アララはそんな光景を複雑そうに見つめて苦笑いをするばかりだし、女神と魔王が本の化身に相手取られてる光景はなんとも言えないわね。
「はいはい、取り敢えず落ち着いて! リーヴル、私達は明日の朝、マドラッドからバトラング王国に向かうの。もう貴女は誰に従うでもなく自由な存在になったのよ。好きなようにしていいのよ」
その言葉にリーヴルは頷き素敵な笑みを私に向けたの。
「私はカミルと居たいかな、ペンネとアララも凄く面白いし……出来たら一緒に行きたい……かな……」
あまりに弱々しく不安そうにそう口にするリーヴルの姿にアララは優しく微笑み、ペンネは困ったように頭を抱える、しかし、二人は最後には首を縦に振ったの。
「ハァ、仕方ない奴じゃ。なんの為にカミルが自由にしてやったかわからぬのぉ」
「ふふふ、今は仲良しですが、ペンネだって最初はカミルと喧嘩してましたよ? マドラッドの人は本当に似てますね」
ペンネとアララの意見がまとまり、私を見つめる。
三人の視線が向けられると私は悩まずに頷いたわ。
「リーヴル、宜しくね。バトラング王国についたら、他の皆も紹介するわね」
そして、二日遅れの旅立ちの日の朝がやって来たわ。
空は快晴、海には心地好い潮風が吹き、コンディションの整った巨大要塞アザラシ【ビッグアザー】、最高の船出日和だわ。
「さて、出港じゃ! 抜かるでないぞ、目的地はバトラング王国、イッテん! 行くゾォォォォ!」
「「「オオォォォォッ!」」」
『『『オオオオゥゥッ!』』』
『キュオオォォォォン!』
ペンネの掛け声に多くの魔王軍の者達が声を上げ、ビッグアザーも気合いの雄叫びを堂々と上げたわ。
海を進む巨大なビッグアザーは名前の通り、動く要塞と言えるわね。
マドラッド本島を出て直ぐに、ペンネが巨大な岩山のある島を指差す。
「あれがビッグアザーの仲間達が眠っている洞窟のある島じゃ」
マドラッド本島と同様の巨大な岩山に空いた大きな洞穴から凄まじい“ゴォォォ”と言う音が鳴り響き、凄まじい風が吹き荒れる。
「よう寝ておるわ。皆が起きれば、更に貿易は楽になるぞ」
楽しそうにそう語るペンネ。
以前のマドラッドとザカメレア王国、ベジルフレア王国の三国が争った際に、麟鳳亀竜のいるベジルフレア王国はともかく、カルメロの居るザカメレア王国は本当に危なかったかも知れないわね?
あくまでも今動ける要塞アザラシがビッグアザーだけであり、周期がかわると一年の眠りに入り、その代わりにビッグアザーの仲間達が目を覚ますらしいわ。
つまり、争いが終わって直ぐにペンネはビッグアザーだけを残して、他の仲間達を眠らせたのね。
ペンネのザカメレアとベジルフレアの両国と戦わない、争わないと言う言葉を行動で示していた事実に私は改めてペンネの誠実さと魔王としての器の大きさを実感したわ。
「やっぱり、ペンネは凄いわね。約束をしっかりと最後まで守ってるのね」
「当たり前じゃ、他者との約束ならば未だしも、カミルと交わした約束であれば、違える訳にはいかぬじゃろ?」
不思議そうに此方をみて、疑う必要なしと言わんばかりに頷く。
「ありがとう。ペンネ、私はまだまだ、頑張らないとね。先ずはバトラング王国でシュビナとの約束をはたすわ」
大海原を遠く見つめる私に無言で頷くペンネ。
それから数日、私は魔力を無駄遣いしないように気をつけながら、リーヴルの際に扱った解除魔法をイメージしながら特訓を行い、確実に操れるように神経を研ぎ清ませていったの。
数日の航海は何事もなく過ぎていったわ。
バトラング王国まで1日と迫った夜、リーヴルが私に質問を投げ掛けたの。
「カミル……あのさ、私は一緒にいて役にたてるかな、今さ、向かってるバトラング王国にはカミルの大切な仲間が居るってペンネとアララから聞いたよ……」
不安そうにうつ向くリーヴル。
「どうしたのよ? 今更な質問ね?」
「ううん、少しだけ……不安かな、私は役にたてないと意味がない存在だから……かな……」
「ふぅ、いい! 貴女は私の大切な仲間になったのよ。その事実に偽りは無いわ! 自信を持ちなさい。リーヴルは私の大切な仲間よ。此れからもずっと安心して付いてきなさい。いいわね?」
「……う、うん! 凄く嬉しいかな。ううん、凄く嬉しいよ」
不安が一瞬で吹き飛び、花が咲いたように華やかな笑みを浮かべるリーヴル。
明日には人生で一度しかチャレンジ出来ない試練になるわ。
私もリーヴルのように笑えるかしら……なんて、らしくないわね! 絶対に成功させるわ。
人は自分自身の力を信じた時に最大の成果を発揮するわ。
意気込む私を乗せたビッグアザーは休むことなく、海を進む……バトラング王国到着まで1日……今日は明日の為にゆっくり寝ることにするわ。
そこまでは予定通りだったわ、問題はリーヴルが私から離れない事にあるわ。
「ぬぬぬ、こら! リーヴルよ、カミルから離れぬか! 困っておるじゃろ!」
「う~ん、離したくないかな? それにカミルが“所有者”で私は“所有物”だから、側にいて問題ないかな?」
ペンネとリーヴルは私が目覚めてから、ずっとこんな感じよ……アララはそんな光景を複雑そうに見つめて苦笑いをするばかりだし、女神と魔王が本の化身に相手取られてる光景はなんとも言えないわね。
「はいはい、取り敢えず落ち着いて! リーヴル、私達は明日の朝、マドラッドからバトラング王国に向かうの。もう貴女は誰に従うでもなく自由な存在になったのよ。好きなようにしていいのよ」
その言葉にリーヴルは頷き素敵な笑みを私に向けたの。
「私はカミルと居たいかな、ペンネとアララも凄く面白いし……出来たら一緒に行きたい……かな……」
あまりに弱々しく不安そうにそう口にするリーヴルの姿にアララは優しく微笑み、ペンネは困ったように頭を抱える、しかし、二人は最後には首を縦に振ったの。
「ハァ、仕方ない奴じゃ。なんの為にカミルが自由にしてやったかわからぬのぉ」
「ふふふ、今は仲良しですが、ペンネだって最初はカミルと喧嘩してましたよ? マドラッドの人は本当に似てますね」
ペンネとアララの意見がまとまり、私を見つめる。
三人の視線が向けられると私は悩まずに頷いたわ。
「リーヴル、宜しくね。バトラング王国についたら、他の皆も紹介するわね」
そして、二日遅れの旅立ちの日の朝がやって来たわ。
空は快晴、海には心地好い潮風が吹き、コンディションの整った巨大要塞アザラシ【ビッグアザー】、最高の船出日和だわ。
「さて、出港じゃ! 抜かるでないぞ、目的地はバトラング王国、イッテん! 行くゾォォォォ!」
「「「オオォォォォッ!」」」
『『『オオオオゥゥッ!』』』
『キュオオォォォォン!』
ペンネの掛け声に多くの魔王軍の者達が声を上げ、ビッグアザーも気合いの雄叫びを堂々と上げたわ。
海を進む巨大なビッグアザーは名前の通り、動く要塞と言えるわね。
マドラッド本島を出て直ぐに、ペンネが巨大な岩山のある島を指差す。
「あれがビッグアザーの仲間達が眠っている洞窟のある島じゃ」
マドラッド本島と同様の巨大な岩山に空いた大きな洞穴から凄まじい“ゴォォォ”と言う音が鳴り響き、凄まじい風が吹き荒れる。
「よう寝ておるわ。皆が起きれば、更に貿易は楽になるぞ」
楽しそうにそう語るペンネ。
以前のマドラッドとザカメレア王国、ベジルフレア王国の三国が争った際に、麟鳳亀竜のいるベジルフレア王国はともかく、カルメロの居るザカメレア王国は本当に危なかったかも知れないわね?
あくまでも今動ける要塞アザラシがビッグアザーだけであり、周期がかわると一年の眠りに入り、その代わりにビッグアザーの仲間達が目を覚ますらしいわ。
つまり、争いが終わって直ぐにペンネはビッグアザーだけを残して、他の仲間達を眠らせたのね。
ペンネのザカメレアとベジルフレアの両国と戦わない、争わないと言う言葉を行動で示していた事実に私は改めてペンネの誠実さと魔王としての器の大きさを実感したわ。
「やっぱり、ペンネは凄いわね。約束をしっかりと最後まで守ってるのね」
「当たり前じゃ、他者との約束ならば未だしも、カミルと交わした約束であれば、違える訳にはいかぬじゃろ?」
不思議そうに此方をみて、疑う必要なしと言わんばかりに頷く。
「ありがとう。ペンネ、私はまだまだ、頑張らないとね。先ずはバトラング王国でシュビナとの約束をはたすわ」
大海原を遠く見つめる私に無言で頷くペンネ。
それから数日、私は魔力を無駄遣いしないように気をつけながら、リーヴルの際に扱った解除魔法をイメージしながら特訓を行い、確実に操れるように神経を研ぎ清ませていったの。
数日の航海は何事もなく過ぎていったわ。
バトラング王国まで1日と迫った夜、リーヴルが私に質問を投げ掛けたの。
「カミル……あのさ、私は一緒にいて役にたてるかな、今さ、向かってるバトラング王国にはカミルの大切な仲間が居るってペンネとアララから聞いたよ……」
不安そうにうつ向くリーヴル。
「どうしたのよ? 今更な質問ね?」
「ううん、少しだけ……不安かな、私は役にたてないと意味がない存在だから……かな……」
「ふぅ、いい! 貴女は私の大切な仲間になったのよ。その事実に偽りは無いわ! 自信を持ちなさい。リーヴルは私の大切な仲間よ。此れからもずっと安心して付いてきなさい。いいわね?」
「……う、うん! 凄く嬉しいかな。ううん、凄く嬉しいよ」
不安が一瞬で吹き飛び、花が咲いたように華やかな笑みを浮かべるリーヴル。
明日には人生で一度しかチャレンジ出来ない試練になるわ。
私もリーヴルのように笑えるかしら……なんて、らしくないわね! 絶対に成功させるわ。
人は自分自身の力を信じた時に最大の成果を発揮するわ。
意気込む私を乗せたビッグアザーは休むことなく、海を進む……バトラング王国到着まで1日……今日は明日の為にゆっくり寝ることにするわ。
0
お気に入りに追加
548
あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる