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2章 外の世界へ
サトウは強くなるんです。
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カリンの能力は優秀としか言えない、私が試しに剣でサトウと戦ってみたの。
本気の剣をギリギリで回避するサトウ、普通なら有り得ない回避速度なんだけど、剣の突き出される瞬間の僅かな風をカリンが感じ取って、サトウが剣を躱せるように風を起こし回避させる。
知らなかったら、使い魔の仕業とは思えない程、自然な動きに見えるわ。
更に剣の凄さをマジマジと感じたわ……これに関しては予想外の事実があったのよね。
サトウの事は案外知ってると思ってたけど、知らなかった事実が出てきたの。
剣道の段位を持ってるなんて……木刀相手に私は一方的に敗北を味わったわ。
あくまでも剣では勝てなかったわ、悔しいので本気の2回戦目は私の圧勝で終わったわ。事実的には貸し借りなしだけど、でも確信に近づいたわ。
不意の攻撃はカリンがカバーして、サトウの剣が炸裂すれば“鬼に金棒”、いえ、“鬼に木刀”ね。とにかく強いのよ。
其れからの時間は此方の世界の剣術つまりは騎士道の基礎を叩き込んでいく。
敵を知ればなんとやらってやつね。
「此れならタウリを倒せるわ。確実にノックアウト勝利に持っていける!」
勝利を確信する私。
そんな喜びを感じていた私にサトウがある質問をしてきたのよね。
「カミルさん? タウリ君を知り尽くしてるんだね。でも兄妹なのにいいのかい?」
当然と言えば当然の質問ね? まぁいい気分はしないけどね。
「いいのよ。タウリは強いから一回や二回の敗北は寧ろ薬よ! 負けて何かを得る事があるの、だから人は頑張れるのよ。私だって同じ……人生で酷い敗北を経験して今を生きてるの、アンタにはわからないでしょうけどね」
少しキツい言葉づかいで語る私、私の人生を変えた出来事とその引き金になった張本人を前にいつも以上に冷たく聞こえた事だろうとおもう。
サトウは下を向き、静かに語り出した。
「人生の敗北か……俺は生きてる事が罪滅ぼしなんだ……大切な人を傷つけて失って、最低だったんだ当時の俺……酷い話でさ、人生を変える程の出来事が起きるまで気づかなかったんだ」
サトウの語る其は私が 美浦 海徒であった頃の出来事であり、私の死が理由で転落人生を歩む事になったエピソードだった。
私の死が事故と自殺の両方の可能性があると分かると原因の1つとしてサトウの存在が浮上し、メディアは其れを派手に取り上げたのだ。
私が沖縄を訪れたその日、サトウも同じように沖縄を後にしていた事実が更に拍車をかけ、当時の彼女であったあの女はサトウをアッサリと捨て、知らぬ存ぜぬを貫いたそうだ。
ほとぼりが覚めた頃には仕事も信用も全てを失い、死すら覚悟していたらしい。
そんなサトウを救った存在は最後まで取材を続けていたフリージャーナリストの女性記者だったそうだ。
私の死が事故であると最後まで主張し、偶然だが、サトウ宅を訪ねた際に 鍵の空いたままなのを不審に感じ、中に入った際に倒れたサトウを見つけ、其れがきっかけでサトウを支える存在になっていったそうなの。
最後まで添い遂げ、最後まで励まし続けた女性記者の存在がサトウの人生を救ったの。
私は自分が 美浦海徒である事実を言う事はないだろう……互いに別の人生を歩みながら生きていた事実とサトウの人生を余りに過酷にしてしまった事実に寧ろ謝りたいくらいだ。
「サトウ……貴方は、 美浦海徒__カイト__#を恨んでいるの?」
「恨んでないよ、妻には悪いが海徒がもし生きていたら、もう一度やり直そうと考えていたんだ……その当時の俺は何も分かって無かったんだ。海徒と過ごした時間がいとおしく感じなかった事はない……一晩の過ちが大きく人生を変えたんだ……だが、全ては遅すぎたんだ。妻にはいつも、「貴方は彼女の分まで生きなさい」と言われたよ」
複雑な気分……私はサトウの存在を忘れていたのに……助けてあげたい……
「話は此処までよ。泣いたり、落ち込むのは後でも出来るわ。今から剣の基礎をその身に叩き込んで貰いにいくわよ! ついてきて」
そう言い向かった先はベジルフレア城である。
門を顔パスで通り抜けた私は中庭で兵士達を鍛え上げているクラウン=バイルを見つけて手を振り大声で挨拶をする。
「バイルさん! 忙しい所ごめん。お願いがあるの」
兵士達の表情は驚きに包まれ、私を直視する。残虐非道の文字を刻む、麟鳳亀竜の一人クラウン=バイルを友のように呼ぶ私の姿は不思議で仕方なかったんだと思う。
「あぁ? カミルじゃないか! どうしたんだ。わざわざ城まで来て、王なら今はザカメレア王に会いに向かってて不在だぞ?」
「違うのよ、バイルさんに用があってきたの。実はお願いがあるの……このサトウを今日1日で強くして欲しいのよ」
私の突然の登場と更に突拍子もない発言にも関わらずバイルは頷いてくれたの。
その後、バイルが直接、戦闘を行い、踏み込みのタイミングやガードと受け流しの基礎を叩き込んでいったの。
「あはははッ! なんだコイツは凄いじゃないか、不思議な剣術だが、間違いなく楽しめるぞ!」
バイルが笑いながらそう言い、サトウも不思議と笑みをこぼしていたわ。
男ってなんで、戦いになると笑うのかしら?
本気の剣をギリギリで回避するサトウ、普通なら有り得ない回避速度なんだけど、剣の突き出される瞬間の僅かな風をカリンが感じ取って、サトウが剣を躱せるように風を起こし回避させる。
知らなかったら、使い魔の仕業とは思えない程、自然な動きに見えるわ。
更に剣の凄さをマジマジと感じたわ……これに関しては予想外の事実があったのよね。
サトウの事は案外知ってると思ってたけど、知らなかった事実が出てきたの。
剣道の段位を持ってるなんて……木刀相手に私は一方的に敗北を味わったわ。
あくまでも剣では勝てなかったわ、悔しいので本気の2回戦目は私の圧勝で終わったわ。事実的には貸し借りなしだけど、でも確信に近づいたわ。
不意の攻撃はカリンがカバーして、サトウの剣が炸裂すれば“鬼に金棒”、いえ、“鬼に木刀”ね。とにかく強いのよ。
其れからの時間は此方の世界の剣術つまりは騎士道の基礎を叩き込んでいく。
敵を知ればなんとやらってやつね。
「此れならタウリを倒せるわ。確実にノックアウト勝利に持っていける!」
勝利を確信する私。
そんな喜びを感じていた私にサトウがある質問をしてきたのよね。
「カミルさん? タウリ君を知り尽くしてるんだね。でも兄妹なのにいいのかい?」
当然と言えば当然の質問ね? まぁいい気分はしないけどね。
「いいのよ。タウリは強いから一回や二回の敗北は寧ろ薬よ! 負けて何かを得る事があるの、だから人は頑張れるのよ。私だって同じ……人生で酷い敗北を経験して今を生きてるの、アンタにはわからないでしょうけどね」
少しキツい言葉づかいで語る私、私の人生を変えた出来事とその引き金になった張本人を前にいつも以上に冷たく聞こえた事だろうとおもう。
サトウは下を向き、静かに語り出した。
「人生の敗北か……俺は生きてる事が罪滅ぼしなんだ……大切な人を傷つけて失って、最低だったんだ当時の俺……酷い話でさ、人生を変える程の出来事が起きるまで気づかなかったんだ」
サトウの語る其は私が 美浦 海徒であった頃の出来事であり、私の死が理由で転落人生を歩む事になったエピソードだった。
私の死が事故と自殺の両方の可能性があると分かると原因の1つとしてサトウの存在が浮上し、メディアは其れを派手に取り上げたのだ。
私が沖縄を訪れたその日、サトウも同じように沖縄を後にしていた事実が更に拍車をかけ、当時の彼女であったあの女はサトウをアッサリと捨て、知らぬ存ぜぬを貫いたそうだ。
ほとぼりが覚めた頃には仕事も信用も全てを失い、死すら覚悟していたらしい。
そんなサトウを救った存在は最後まで取材を続けていたフリージャーナリストの女性記者だったそうだ。
私の死が事故であると最後まで主張し、偶然だが、サトウ宅を訪ねた際に 鍵の空いたままなのを不審に感じ、中に入った際に倒れたサトウを見つけ、其れがきっかけでサトウを支える存在になっていったそうなの。
最後まで添い遂げ、最後まで励まし続けた女性記者の存在がサトウの人生を救ったの。
私は自分が 美浦海徒である事実を言う事はないだろう……互いに別の人生を歩みながら生きていた事実とサトウの人生を余りに過酷にしてしまった事実に寧ろ謝りたいくらいだ。
「サトウ……貴方は、 美浦海徒__カイト__#を恨んでいるの?」
「恨んでないよ、妻には悪いが海徒がもし生きていたら、もう一度やり直そうと考えていたんだ……その当時の俺は何も分かって無かったんだ。海徒と過ごした時間がいとおしく感じなかった事はない……一晩の過ちが大きく人生を変えたんだ……だが、全ては遅すぎたんだ。妻にはいつも、「貴方は彼女の分まで生きなさい」と言われたよ」
複雑な気分……私はサトウの存在を忘れていたのに……助けてあげたい……
「話は此処までよ。泣いたり、落ち込むのは後でも出来るわ。今から剣の基礎をその身に叩き込んで貰いにいくわよ! ついてきて」
そう言い向かった先はベジルフレア城である。
門を顔パスで通り抜けた私は中庭で兵士達を鍛え上げているクラウン=バイルを見つけて手を振り大声で挨拶をする。
「バイルさん! 忙しい所ごめん。お願いがあるの」
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「あぁ? カミルじゃないか! どうしたんだ。わざわざ城まで来て、王なら今はザカメレア王に会いに向かってて不在だぞ?」
「違うのよ、バイルさんに用があってきたの。実はお願いがあるの……このサトウを今日1日で強くして欲しいのよ」
私の突然の登場と更に突拍子もない発言にも関わらずバイルは頷いてくれたの。
その後、バイルが直接、戦闘を行い、踏み込みのタイミングやガードと受け流しの基礎を叩き込んでいったの。
「あはははッ! なんだコイツは凄いじゃないか、不思議な剣術だが、間違いなく楽しめるぞ!」
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