小雪が行く!

ユウヤ

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第二章 小雪、食べる

外へ

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 しばらくカグヤちゃんとたかしちゃんとの話に花を咲かせていると、先程カードを持って来てくれたエルフの少年が扉へのノックと同時に、返答を聞かず部屋へ入る。少し足早にカグヤちゃんの元へと寄ると、彼女へ耳打ちし、一歩下がった。

「お話の途中で申し訳ありません、少し仕事が入って来ましたので、そろそろおいとまさせていただきます」


「仕事ってなんですか?」

 カグヤちゃんの言葉にたかしちゃんはそう質問すると、カグヤちゃんは、

「プロジェクト"アイ"の件よ」

 と言い残し、部屋を出た。たかしちゃんも合点がついたようで、あー、了解です。と一言漏らし、続けて部屋を出ようかと私にそう言った。

 部屋を出てすぐの通路で、エルフの少年と目が合う。彼は私と目が合うと、一礼し、そそくさとその場を離れ、スタッフルームと思われる部屋の扉を開け、中に入ってしまった。


「ねえ、たかしちゃん」

「んー?」

 先を歩くたかしちゃんに声をかける。


「さっきから思ってたんだけど、エルフの子って、みんなAIなの?」


 私の問いに、少し苦笑いを浮かべ、答えにくそうにたかしちゃんは口を開く。


「んー……まあ、間違ってはいないよ」

 そう私に言うと、近付いていった両扉を、入った時とは正反対に優しくかちゃりと開き、扉の外へ私達は出た。喧騒が再び私達を包む。あまり言いたく無いことなんだろうと思って、あえて追及は控えた。

「さぁて、おばあちゃん。これで登録が終わったし、行動するとしますか!……とと、そういえば初期給付金渡して無かったね」

 ちょっと待ってとたかしちゃん。VRフォンを起動し、誰かに電話をかけ、何かやりとりをした後、わかりましたと言って電話を切った。

「んとね、運営権限ちょっと使うから、もう一回だけ中に入ろっか」

「あらま、そんな大それたことするの?」

「カグヤちゃんからのお達しだしね。それに、今回限りだよ」


 上司に対してちゃん付けとは何事かと思ったけど、アバターネームなら別に良いのかしら?と思ったので、口には出さない。

 また私達はスタッフルームの二枚扉の中へ入ると、たかしちゃんはどこから出したのかわからない麻布袋を私に手渡してきたので、それを受け取る。中には銀色のコインが30枚入っていた。

「これは?」

「それが初期給付金の3000ゴルドだよ」

 ちなみにと言って、貨幣価値も教えてくれた。銅貨と銀貨と金貨の三種類あり、銅貨百枚で銀貨一枚分の価値となり、銀貨百枚で金貨一枚の価値となるらしい。11111ゴルドなら、金貨一枚、銀貨十一枚、銅貨十一枚の支払いとなるようだ。

 日本人は一万円と百円と一円だと思えばいいから楽だなと思ったのと同時に、海外の人は換算する事ってできるのかな?と思ったが、その考えは徒労だと気付き、考えをやめる。

「はい、これで準備完了。これからはおばあちゃんもギルドメンバーの一員だ!」

 そう笑顔で親指を立てて見せるたかしちゃん。

「いよいよなのねぇ、ドキドキしてきたわぁ」

「じゃあそろそろ出ようか。外に出るならこの部屋を出て真っ直ぐ、クエスト受付に行くのなら、この部屋を出て右に行くと、エリア26からエリア27が受付になってるから。あ、そうそう、おばあちゃんもこれから転移床が使えるから、どこにいても転移床を使えば受付にひとっ飛びできるからね」

 転移床、そうだ。さっき気になっていたソレ・・が使えるようになったのか。

「転移床を体験したいけど……まずは外が見たいわね」


「なら……っと、電話だ。ちょっとごめんね」

 そう言って、たかしちゃんはVRフォンを操作し、何も無い空間に話しかけ始めた。へぇ、さっきは全く気にしてなかったから気付かなかったけど、電話中、通話相手の発言が他の人には何を言ってるのかわからない工夫されてるのね、と感心。

 するとたかしちゃんはわかりましたと電話を切り、こちらを向く。

「ごめんおばあちゃん!ちょっと仕事入ったから、一緒に行けないや!」

「んーん、仕方ないわよ、お休みなのにお仕事お疲れ様。おばあちゃん一人で楽しむから、後は大丈夫よー」

 そう手首を前後に振りながら言う私。本音としては、一年ぶりにゲームとは言えど会う孫との会話を楽しみたかったけど、仕事ならば仕方ない。なにせここはたかしちゃんの職場と言っても過言では無いのだし、居るのならと声をかけられることなどあるだろう。


 たかしちゃんはごめんね!と大きな声で手を顔の前で合わして言うと、扉を開け走って行ってしまった。さてと、



「美味しい物でも食べますか!」

 扉を勢いよく開け、人混みを避けながら真っ直ぐ私は外へ向けて歩み始めた。まだ見ぬ世界と美味しい物への期待を胸に。


「あ、あのアイスクリーム美味そう!」


 誘惑にもちょっぴり負けながら。


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