小雪が行く!

ユウヤ

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第一章 小雪、ログイン

踏めそうで踏めないスタートライン

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 暗転した視界に光がまたさすと、今度は赤い煉瓦のつくりの部屋に私はいた。

電子機器の類の物はなく、出窓から漏れる光で部屋が明るく保たれているようで、夜は隅にあるベッドの横にある小さな机の上のランタンに火を灯せば良いのだろうと察せる物が色々と置いてある。

「ん、これを……押せばいいのかしら?」

 ふと正面にある四脚の木製である机の上に、"ログインしたら、ここを押してください"と書いてあるポップと、そのポップの下にあるボタンが目に入ったので、それを手に取り、押してみる。すると、突然部屋の奥にある木製の扉がガタガタと揺れ、そちらを見ると、勢いよく扉は開かれた。

「こんにちはー!今日から貴女の専属サポートパートナーAIとなるミリィです!よろしくお願いうわぁっ!」

 元気良く飛びたしてきた、私の専属AIを名乗るミリィちゃんこと、エルフのような少女は、扉を開けてドタドタと私に近寄ると、机の存在に気づいていなかったのか、足を引っ掛けて前のめりに転がる。私はそれを一歩下がって避けた。

「だ、大丈夫かしら?」

「ふ、ぐぅ、だ、大丈夫れす」

 大丈夫と言う彼女だけど、明らかにそんな様子ではなさそう。

「あらあら、鼻が赤くなってるわよ?」

「てぃへへ……すいません」

 照れ隠しに笑うミリィちゃんは、さて!と切り替えるように声をあげ、その場に立ち上がり、姿勢を整えて私を見る。

「改めまして、こんにちは!今日から貴女の専属サポートパートナーとなります、ミリィです!よろしくお願いします!」

「宜しくね、ミリィちゃん。私は小雪ですよ。さて、早速質問なのだけれど、回答ってできるかしら?」

 元気よくご挨拶をしてきたので、それに返答すると同時に、質問したいことがあるので、返答できる機能があるのか、AIであるミリィちゃんに確認をとると、

「私は人間同様に、知的かつ理的な思考ができますよっ!それに、感情もありますので、お相手の事を考えて、言葉を練ってお話しもできますよっ!旧型とは違うのです!」

「へ、へえ、そうなのね」

 ミリィちゃんは、ピンクのツインテールを揺らしながら、少し長くて可愛らしい八重歯をちらつかせ、にこりと笑みを見せた。そこまでは聞いていないとは言えない。

「こほんっ、それでは小雪様……様?さん?どちらがよいですか?ちゃんのほうがよろしいですか?」

「小雪さんで良いわよ、ちゃんも様もこの歳では恥ずかしいわよ」

「ほほう。ではでは、小雪さんとお呼びしますね!それではお話しは少し戻りますが、ご質問とはなんでしょうか?」

 とんとん拍子に進んでいく話しや、この元気さを、先程のリアちゃんに近しいものを感じるなと思っていると、件の内容を言ってくれとミリィちゃんが言うので、

「サポートパートナーとはどんな事をするのかしら?」

 と、聞いてみる。するとミリィちゃんは、豊満とは言い難い胸を張り、待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべる。

「サポートパートナーとは、狩りのお手伝いからクラフトのお手伝い、それに、お料理のお手伝いや、例え一緒に居なくとも、スキル取得などをすれば小雪さんにテレパシーを送って取得したことを伝えるといった事もできますっ!」

 ちなみに料理は得意中の得意だと続けてミリィちゃんは言うと、白いブラウスに青色のロングスカートという格好から、その上にレースを散りばめられたふりふりした白いエプロンを前に掛けた姿になり、それっ!とミリィちゃんは1度ずつ声をあげながら一周ターンすると、割烹着や和、フレンチ、中華といった料理人の姿になっていく。

「それ!……あ、きゃあっ!」

「あれ、まあ。これまた随分大胆な……」

 ミリィちゃんはあれこれと姿を変えていると、裸エプロンという殿方の妄想のソレになってしまい、小さな悲鳴をあげて、ばっとしゃがみ込んでしまった。全年齢対象なのよね?このゲームオールフィクションっていうのは。

「あうぅ、お見苦しい姿を……」

 と、ミリィちゃんは元の白いブラウスに青いスカートという姿に戻り、顔を少し赤らめ、目を潤ませながらそう言う。

「ふふ、男の人ならサービスだったんじゃないかしら?」

「ふぇっ?ちょっと、小雪さんっ!」

「冗談よ、冗談。さて、それじゃあスキルの事とか色々聞かせてくれるかな?」

 ぷりぷりとまだ頬を膨らませながら怒っているミリィちゃん。申し訳ないけど、話をすこし流さないと次に進めないので、流れを切って質問をはじめていく。

 ゲーム開始まで、まだ少しかかりそうだ。

 私は、話を流す事に失敗し、ふんっ!とツンケンしているミリィちゃんをなだめながら、そう思った。




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