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ただいま法事の真っ最中。

親戚一同が座敷に集まったよ。

親戚の親たちはみんな和装をしていて子供たちは俺以外は普通の洋服だった。

爺ちゃんの兄弟はみんなどことなく似ていて、かっこいいおじいちゃんって感じだった。
姉妹の方も姉妹で顔がよく似ていて、優美な雰囲気だった。

そして、和装の中に洋服で居る子供たちが浮いて見えるね。




そうそう、新見家のあゆむ、これからは歩にいちゃんと呼ぶことになったんだけど、しっかり者のお兄さんって感じだった。
初対面で優しくしてくれて仲良くなれた。
だけど、歩にいちゃんの親が言うには病気がちらしくてよく体調を崩すらしい。
大きな病気にならないか心配だね。


新見家の真紀まき姉ちゃんはなんとなく猫っぽかった。
髪の毛をゆるふわに巻いて居るのがよく似合っていた。
なんだろ、近づきたいんだけどなんだか俺嫌われてる?
挨拶が終わって話そうと思って近づこうとするとキッ!と睨まれてしまった。
んー、親戚だから仲良くしたいんだがどうしたんだろうか。



鷹山家の美奈お姉ちゃんと恵奈お姉ちゃんは双子だった。
歳も同じだし、写真でも顔がよく似てるとは思ってたんだけどね。
美奈お姉ちゃんはショートヘアーで言動がハキハキしていて、恵奈お姉ちゃんは背中までのロングヘアでおっとりとした印象だった。

俺的には、ロングヘアよりショートヘアーが好きかなぁ。
活発そうな印象があって好印象だったね。

そんなことを考えていると、父さんが話し出した。



「皆さんもうすぐ時間ですので、お手洗い等済ませて頂けるようお願いします。それから、法要後はお昼に出前を頼んでありますのでよろしくお願いします。」

それに対して皆は思い思いに返事した。

もう時間なのか、初めてのお盆の法事だからワクワクしてるのは内緒。
もうすぐ和尚さんが来るみたい。


本家の列が仏壇の前で爺ちゃんの兄弟姉妹の年齢順で分家が並ぶらしい。
こう言うところは、しっかりしておく事が家を残して行く上で重要なのだと爺ちゃんは言っていた。
親しき仲にも礼儀あり。
一族の中にも序列ありってことかな?

お?座布団に座ってるとあーちゃんが寄ってきた。



「ちーちゃんもうすぐだね?」

「そうだね。」

「終わったらいっぱい遊ぼうね。」

「いいよ!何して遊ぶ?」

「んーとね!んーと、何かしよ!」

あーちゃん思いつかなかったんだね。

「じゃあ、あーちゃん後で何かしようね!」

「うん!あとでね!」

そう言ってあーちゃんは席に戻っていった。














そして、和尚さんが来て法事が始まった。

ゆったりとしていて、しっかり声が通り聴きやすい読経だった。



「はい、終わりました。」

「ありがとうございました。」

和尚さんが終わりを告げると、代表して爺ちゃんが感謝を述べて頭を下げると皆がそれに沿って頭を下げたので、俺もそれに合わせて頭を下げた。

「新見家は、今年は勢揃いですな。いいことです。歳信もよかったのう。」

「そうじゃな良庵りょうあん。兄貴や姉さん達も喜んでくれとるじゃろ。」

良庵っていうのは和尚さんの名前らしい。
歳も近そうだし幼馴染とかなのかな?


「そうじゃな。親父さん達も喜んでくれとるよ。さて、一つ話をするかの。」

「おう、頼む。」

一つ法事の終わりに話をしてくれるらしい。


「今日は皆様お盆の法事の為にお集りにになりました。お盆とは、一年に一度皆様の御先祖様が常世から現世にいらっしゃる期間であります。盆棚に飾られておりますこちらの茄子の牛と胡瓜の馬にのって常世から現世にへと渡って来られるのです。そして、子孫の様子を確認し、常世で御使いになるものを牛と馬を連れて買い物に出かけるのです。」

へー、馬と牛はその為にあるのか。
前世では意味までは知ろうと思わなかったからなぁ。

「そして、お盆には御先祖様が虫などになって現れると言われて居る地域もあるのですよ。」

虫!?
へー、いろいろな風習があるのか。

「そして、この盆棚に飾られて居る供物は御先祖様が安らかでありますようにと言う願いを込めて備えられるものです。もともと、これらの盆飾りは盆が明けると川や海へと流す風習だったのですが、環境問題の点が問題となっておるそうで、禁止にする地域もあるそうです。」

あー環境汚染がーってやつかな?
正直、自然のものなら川に流しても食物連鎖で大丈夫なはずなんだけどな。
プラスチック製の物や化学物質が問題なんだろうな。

「そして、この刻島ではお盆に合わせて行われる刻神祭では、御先祖様の魂が新たな命となりますように、という願いが込められております。ここで、あれ?新たな命になったら御先祖様消えちゃうんじゃ?お盆意味ないんじゃ?と、思われるでしょう?仏教には六道輪廻という考え方がございます。生きている方がなくなると六道を通って新たな命に転生するという考えですね。そして、六道輪廻をするのにかかる時間が30年から40年、または、300年から400年と言われています。」


30から40と300から400じゃ差がありすぎやしませんかね?

あれ?でも俺が死んでこの体に転生したのは一瞬だった様な?
実際は何年も経ってるのか?
んーわからないね。

「面白いでしょう?だから、皆様がお盆をする時に御先祖様が居ないと言うことはないのです。」

たしかに。


「そうそう、こちらの馬と牛の角が多い理由を知っておりますでしょうか?」

お!?
それ気になってたやつ!

「こちらの牛は三角牛さんかくうし・こちらの馬が一角馬いっかくばといいます。神様に使える神獣であります。なぜ角が三本あるのかと申しますと、古くから角というものには魔除けや厄除けの力があり、薬にもなると考えられて居りました。そして、その事から神に使える神使には角があるという考えがございまして、奈良の鹿が大切にされてきたのも角が貴重であった事と、こう言ったことが関係して居ると言われています。そう言った関係で刻島では角の多い牛と馬が盆飾りとして供えられているのです。」


へー。
それで角が多い牛と馬なのか。
神様の使いねー。
神様って本当にいるのかな?
まぁ、俺がこんな状態になるなんてこともあったんだから居ても不思議ではないよね。


「さて、この様なお話でございます。これからも御先祖様を大切になさってください。」

そう言って、和尚さんが締めくくり、話が終わっ。


「ありがとうございました。」

話が終わり、爺ちゃんが感謝の挨拶をすると和尚さんを玄関へと爺ちゃんと婆ちゃん父さん母さんの4人が見送りに行った。
もちろん俺も4人についていったよ。
本家だからしっかりと見送るのが礼儀らしい。

「それでは、歳信と豊子さん、秋歳と千世子さんそして、えーっ。」

「にいみちとせです!」

「あーそうじゃったそうじゃった。千歳くんもまたの。それでは、お暇させていただきます。」

「ありがとうございました。」

そして、見送りが済むと座敷へと戻るのだった。

やっと、和服が脱げる。
暑かったぁ。


早くTシャツに着替えたい。
あっつぅ。




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