【R18】Hide and Seek

猛獣は我慢できない5

　ぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなるほど粘着質な音が響いている。
　希彩はそれが自分から出ている音だと信じたくなかった。
　指で舌で唇で散々刺激されて希彩の花筒からは止めどなく蜜が溢れ、零すまいとするように光希が舐め啜る。

「あっ、みつ、くっ……も、い、から」

　息も絶え絶えに希彩は必死に光希に訴えようとする。伸ばした指先は彼の髪を掠めるだけだ。

「もっといっぱいイカせてあげるって約束したから」

　舌は離れたものの、吐息がかかる距離で光希は言う。それだけでも今の希彩が感じてしまうことをわかってやっているのだろう。
　約束とは言っても彼が一方的に宣言しただけのことだ。

「もう欲しいの……おねがっ……」

　丁寧と言うよりも最早執拗と言うべきか。散々、蕩かされた秘部の奥は疼きっぱなしで光希を求めている。
　何度絶頂に押し上げられたかわからない。既に中には光希の指が三本も入るようになっている。処女ではないし、一度しか経験していない行為は痛みばかりだったが、あの時とは明らかに違うと希彩にもわかる。もう彼を受け入れても良いはずだ、と。

「ほんと俺を煽ってくるね……超肉食狼さんだって言ったはずなのに」

　溜息を吐きながら光希が体を起こしたかと思えば勢いよく服を脱ぐ。
　上半身裸になった彼の肉体を希彩はもっとよく見たかったが、彼は背を向けて何かとしている。
　触れてみたい、希彩がそう思って躊躇いがちに手を伸ばそうとした時にはまたくるりと前を向いて、熱い物が花弁に触れていた。

「んっ……」
「希彩ちゃん、力抜いて」
「うん……あっ、あんっ」

　そう言われても希彩も意識してやっているわけでもない。
　むしろ意識を逸らすように、ぬるぬると蜜を絡めるように前後に擦られると、たまらず声が漏れる。

「これ、気持ちいいでしょ？　希彩ちゃんが嫌がるなら、これだけで済まそうとも思ってたんだけど、おねだりされたし？」

　意地悪な言い方だが、希彩には余裕がない。
　先端が花芯を掠めていく度に電流が走るかのようだ。だが、光希は希彩がその快感に気を取られた瞬間を決して、見逃さなかった。

「ぁっ、あっ、あぁぁぁっ」

　先端が埋まってしまえば、あとは溢れる蜜が導く。中を押し広げ、最奥まで満たされる感覚に希彩の体は震えた。
　何が起きたか希彩にもよくわからなかった。ぎゅっとシーツを掴み、耐える。

「入れただけでイっちゃった？」

　焦点の合わない目で希彩は光希をぼんやりと見る。今、彼と繋がっているのだと思うと不思議な気分だった。

「痛くない？」

　希彩は小さく頷く。圧迫感はあるし、全く痛くないかと言えば嘘になる。しかし、それは幸せな痛みに思えた。確かに繋がっている証なのだから。

「ふふっ、希彩ちゃん、ほんと可愛い。大好き」

　光希の手が希彩の手に重なり、指が絡まる。希彩は自分も好きだと伝えられないまま笑みを返す。

「希彩ちゃんの中、凄い良くて、俺もすぐイっちゃいそう」

　熱い吐息を漏らす光希からは色気が感じられる。彼が自分の体で感じてくれていることが希彩には嬉しかった。たとえ、痛みを伴っても滅茶苦茶にされたいと思うほどに。

「あっ、ふ、あぁっ、みつ……み、きくんっ……」

　ゆっくりと光希が動き始め、ずるずると抜けてしまいそうなところまで引かれたかと思えば、また奥へと押し込まれる。引っかかりながら中を擦られる度に希彩の腰は揺れたが、認識する余裕もない。ただ必死に光希の名を呼ぶ。

「あ、ひ、ぁあ、あっ、ぁあんっ」

　光希が腰を打ち付けるスピードも次第に早くなり、希彩はもう声を抑えることも考えられなかった。
　頭が痺れる感覚に希彩は飲み込まれていく。それは恐ろしいほどの快感の波だった。
　もう何度目かもわからない絶頂はすぐそこまで来ていた。

「今度は一緒だからね……っ！」
「あっ、んぁあああっ！」

　最奥が突かれ、花筒が収縮し、光希が息を詰める。二人は同時に果てていた。
　避妊具越しに熱い飛沫を受け止めながら、希彩は今日のことを後悔することはないだろうと思っていた。


　終わった後、冷たくされるのではないか。希彩は恐れていたが、光希は優しく希彩を気遣った。
　そして、今希彩は大人しく光希に腕枕をされているところだった。

「ねぇ、希彩ちゃん。不安にならなくていいからね？」

　そう言って髪を撫でる光希こそ希彩には不安げに見えた。彼は全て見透かしているのか。

「明日からも俺は変わらないから」

　遼と体を重ねた後の妙な空気を思い出せば今でも息が詰まりそうになる。
　けれど、今は幸福な余韻の中で明日のことなど考えられそうになかった。それは信頼でもあるのかもしれない。

「希彩ちゃんじゃなきゃ、俺、こんなに尽くさないから。今までヤった後なんか冷めてたけど、ずっとこうしてたい」

　このままでいたいことに関しては希彩も同じ気持ちだった。
　単に気怠いからではない。こうして他人に体を預けて微睡む瞬間が一番幸せに思えた。

「俺も逃げてたのかもね。ちゃんと他人と向き合うこととか。でも、希彩ちゃんのおかげで俺も前に進める気がする」

　光希が逃げているなどとは考えもしなかった。しかし、今、彼は素の表情を見せてくれているのだと希彩は感じていた。心の内を明かしてくれている。

「光希くん」
「ん？」
「これからも一緒にいてね」

　彼とならば、これから先も前に進んでいけるような気がしていた。彼だけではない。彼をきっかけに咲子と友達になれたし、遼ともまた友達に戻れたのだ。

「もちろん。絶対に離さないからね」

　その笑みに安心し、額に落とされる口づけに希彩はうっとりと目を閉じた。幸福な夢に身を委ねていくように。