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もう隠れない1
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遼と始めからやり直せるかもしれない。
光希とのことも忘れられるかもしれない。
希彩は何となくそんな希望を抱いていたが、そんなに甘いはずがないのだとすぐに思い知らされた。
光希のことがなくなってから咲子も前ほど警戒してべったりと側にいるわけではない。
否、ついてくれようとしたのを希彩の意思で断ったのだ。
それで良いと思っていた。怖いのは光希関係の人間だけだと思い込んでいた。
しかし、平和が訪れたと思っていた希彩は気付けば女子達に囲まれていた。皆、怖い顔をしている。
「光希のこと弄んだ次は遼ってわけ?」
きつい口調に希彩はたじろぐ。
弄んだなどとは、とんでもない話だ。
どちらかと言えば自分が弄ばれていたと思いながらも言えば怒られそうで、気弱な希彩が反論できるはずもない。
「元カノだか何だか知らないけど、いい気にならないでよね」
「ちょっと光希に構われたからって自分が可愛いとか勘違いしちゃってる?」
彼女達は口々に言う。
勘違いなどしていないつもりだったが、希彩は何も言い返せないままだ。
「遼もこんな子のどこがいいんだか」
上から下まで舐めるような不躾な視線に希彩は戸惑うばかりだ。
なぜ、遼が自分を好きだと言ってくれたのか。今も戻ろうとしてくれるのか。希彩にもわからないのだ。
「あんたが遼の彼女になるなんてありえない」
そう言われても仕方がないと思ってしまって希彩は余計に何も言えなくなる。
希彩自身、そう思って過去に直接言ったことがあるくらいだ。
「あんたなんかと一緒にいたら遼の趣味が疑われるじゃない」
彼女達が言うことは希彩にもわかる。全く理不尽なことを言われているわけではない、その通りだと納得してしまうのだ。
中学の時は隠していたが、今は違う。今なら隠さなくて良いと遼は言う。けれども、やはり周りは認めてくれないのだ。
「何か言ったら?」
「だって……その通りだと思って」
反論できるだけのものが自分にはないと希彩は気付いてしまった。勇気も自信も何もない。
「だったら、遼には近付かないでよ!」
まるで光希の時と同じだが、彼の時とは違う思いが希彩の中にはあった。
「でも……」
「何、あんた、遼とより戻せるとか思っちゃってるわけ?」
「そうじゃなくて……」
まだ遼のことを怖がっている部分もある。それでも彼のことは好きだったのだ。友人になれた時、どれほど嬉しかったか、まだ覚えている。初めて気が合う相手に巡り会えたと思った。だから、せめて友人に戻りたいと思っていた。
「あんたなんか友達としても相応しくないに決まってるでしょ」
見透かされたように言われ、やはりおこがましいのかもしれないと希彩は思う。
「あんたがはっきりしないと遼だって困るの」
「遼は優しいから、あんたに情けかけてるだけなの。だから、これ以上遼に迷惑かけないで」
勝手なことばかり言われているが、希彩自身は何を言われても構わなかった。
しかし、咲子達に何かされるかもしれないと思うと怖くなってしまう。また彼女達を人質のようにして脅されるかもしれない。今度は事前の脅しもなく、手を出されるかもしれない。
「……わかった」
「わかればいいのよ」
たった一言で、彼女達はにっこりとして満足げに去っていく。しかしながら、それは口先だけでは済まされないという脅しが込められているかのようだ。
やっと解放されたと思えば一気に疲れ、この先、こういうことと戦っていかなければならないのは辛く、希彩を不安にさせた。
誰にも相談できずに一人で抱えなければならないのだから。
やはり自分では隣にいることが許されない。
光希も遼も同じ世界に並び立ってはいけない人間で、彼らのことを好きな女子達が納得しない。認めてもらえない。やはり相応しい女子が隣にいるべきなのだろう。
そう思うからこそ、希彩は遼を避けるしかなくなった。直接言うのは怖くて教えてもらったばかりのアドレスにメールを送っておいた。納得できないと彼は説明を求めてきたが、希彩は無視するしかなかった。
もう放っておいてほしかった。
そうして咲子の影に隠れ、自分は何をやっているのだろうとも思ったが、どうするのが正解なのかもわからなかった。
咲子達と一緒にいるのは楽しいことだった。
女の子らしい話題で盛り上がったりして、けれど、それも続かないものなのかもしれなかった。
光希とのことも忘れられるかもしれない。
希彩は何となくそんな希望を抱いていたが、そんなに甘いはずがないのだとすぐに思い知らされた。
光希のことがなくなってから咲子も前ほど警戒してべったりと側にいるわけではない。
否、ついてくれようとしたのを希彩の意思で断ったのだ。
それで良いと思っていた。怖いのは光希関係の人間だけだと思い込んでいた。
しかし、平和が訪れたと思っていた希彩は気付けば女子達に囲まれていた。皆、怖い顔をしている。
「光希のこと弄んだ次は遼ってわけ?」
きつい口調に希彩はたじろぐ。
弄んだなどとは、とんでもない話だ。
どちらかと言えば自分が弄ばれていたと思いながらも言えば怒られそうで、気弱な希彩が反論できるはずもない。
「元カノだか何だか知らないけど、いい気にならないでよね」
「ちょっと光希に構われたからって自分が可愛いとか勘違いしちゃってる?」
彼女達は口々に言う。
勘違いなどしていないつもりだったが、希彩は何も言い返せないままだ。
「遼もこんな子のどこがいいんだか」
上から下まで舐めるような不躾な視線に希彩は戸惑うばかりだ。
なぜ、遼が自分を好きだと言ってくれたのか。今も戻ろうとしてくれるのか。希彩にもわからないのだ。
「あんたが遼の彼女になるなんてありえない」
そう言われても仕方がないと思ってしまって希彩は余計に何も言えなくなる。
希彩自身、そう思って過去に直接言ったことがあるくらいだ。
「あんたなんかと一緒にいたら遼の趣味が疑われるじゃない」
彼女達が言うことは希彩にもわかる。全く理不尽なことを言われているわけではない、その通りだと納得してしまうのだ。
中学の時は隠していたが、今は違う。今なら隠さなくて良いと遼は言う。けれども、やはり周りは認めてくれないのだ。
「何か言ったら?」
「だって……その通りだと思って」
反論できるだけのものが自分にはないと希彩は気付いてしまった。勇気も自信も何もない。
「だったら、遼には近付かないでよ!」
まるで光希の時と同じだが、彼の時とは違う思いが希彩の中にはあった。
「でも……」
「何、あんた、遼とより戻せるとか思っちゃってるわけ?」
「そうじゃなくて……」
まだ遼のことを怖がっている部分もある。それでも彼のことは好きだったのだ。友人になれた時、どれほど嬉しかったか、まだ覚えている。初めて気が合う相手に巡り会えたと思った。だから、せめて友人に戻りたいと思っていた。
「あんたなんか友達としても相応しくないに決まってるでしょ」
見透かされたように言われ、やはりおこがましいのかもしれないと希彩は思う。
「あんたがはっきりしないと遼だって困るの」
「遼は優しいから、あんたに情けかけてるだけなの。だから、これ以上遼に迷惑かけないで」
勝手なことばかり言われているが、希彩自身は何を言われても構わなかった。
しかし、咲子達に何かされるかもしれないと思うと怖くなってしまう。また彼女達を人質のようにして脅されるかもしれない。今度は事前の脅しもなく、手を出されるかもしれない。
「……わかった」
「わかればいいのよ」
たった一言で、彼女達はにっこりとして満足げに去っていく。しかしながら、それは口先だけでは済まされないという脅しが込められているかのようだ。
やっと解放されたと思えば一気に疲れ、この先、こういうことと戦っていかなければならないのは辛く、希彩を不安にさせた。
誰にも相談できずに一人で抱えなければならないのだから。
やはり自分では隣にいることが許されない。
光希も遼も同じ世界に並び立ってはいけない人間で、彼らのことを好きな女子達が納得しない。認めてもらえない。やはり相応しい女子が隣にいるべきなのだろう。
そう思うからこそ、希彩は遼を避けるしかなくなった。直接言うのは怖くて教えてもらったばかりのアドレスにメールを送っておいた。納得できないと彼は説明を求めてきたが、希彩は無視するしかなかった。
もう放っておいてほしかった。
そうして咲子の影に隠れ、自分は何をやっているのだろうとも思ったが、どうするのが正解なのかもわからなかった。
咲子達と一緒にいるのは楽しいことだった。
女の子らしい話題で盛り上がったりして、けれど、それも続かないものなのかもしれなかった。
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