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第一章

「いつもお世話になってます」 15

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「泣かないで、ちゃんと優しくしますから諦めて気持ち良くなってください」

 安心させるようにポンポンと軽く頭を叩かれて、流れていた涙がまるで引っ込んだかのように一瞬止まる。
 その目も手も声も、彼の何もかもが優しくなければ、もっと憎めただろう。絶望して、自棄になって受け入れられただろう。
 それなのに、優しさが変わらないからこそ、受け入れ難くなる。こんなにも優しいのに、どうしてやめてくれないのかがわからなくて混乱してしまうのだ。

「俺も今日は長く保ちそうにないんで、すぐ終わりますよ」
「ほんと……?」

 信じて裏切られたばかりだと言うのに、紗菜はその言葉に縋りつかずにはいられなかった。既に退路はなくなってしまったのだ。
 潤む目で見上げれば答えの代わりのように口づけられる。その行為の優しさに呆けてしまったその瞬間、再び陰茎が秘部に押し当てられて紗菜は身を硬くした。

「んんっ!」
「大丈夫。これは、先輩を傷つけるためのモノじゃないです。いっぱい気持ちよくしてあげるためのモノです。だから、安心してください」

 言いながら晃は蜜を塗り広げるように何度も陰茎を秘部にヌルヌルと擦り付けてくる。
 意図的なのだろうが、秘芽とこすれるとまた快感の火が燃え上がるようで、思わず逃げようとした腰ががっしりと捕まえられる。
 執拗に擦り付けられ、下腹部がキュンとする感覚に紗菜はギュッと目を瞑った。そうするとトロリと蜜が溢れ、絡め取られてはクチュクチュと音を立てるのをより意識してしまい、振り払うように首を横に振る。
 覚悟が決まったわけでもないのに、本能はそれを求めているのだということは決して認めたくなかった。

「大丈夫だから力を抜いてください。目を開けて、俺を見て」

 大きく優しい手が髪から頬を撫で、穏やかな声音に誘われるように紗菜はそっと目を開ける。涙で滲む視界に晃の顔を映し、魔法にかけられたように体からは力が抜けていった。
 脅され、丸め込まれ、ひどいことをされそうになっているとわかっているはずなのに、体は彼を受け入れようとしている。

「好きです」

 不意の告白は混乱した紗菜の頭が愛されていると錯覚し、思考を停止するのには十分すぎた。何度も絶頂させられている内に大事な判断力を司る部分が溶けてしまったのかもしれない。

「え……ぃっ……!!」

 紗菜の気が緩んだ瞬間を見逃さずにぐっと押し込まれた先端が秘部の入り口を広げて埋まったようだった。指とは圧倒的に違う質量に限界まで広げられてピリピリと痛みを発し、涙が零れ落ちる。

「く、っ……トロトロだったのに、やっぱきっついですね……食いちぎられそ……!」
「はい、らなっ……」

 晃も苦しげに息を吐いている。それならばこれ以上自分の中に入ってこないでほしいと紗菜は願うが、彼に抜く意思はないようだった。

「先っぽ、ちゃんと入ったから大丈夫です。力抜いててください」

 頭を撫でられ、微笑まれてもできないものはできない。それほど簡単に力を抜けていたなら、今頃このような苦痛を覚えることもなかっただろう。

「むり……こわい……ゃぁ……」

 彼の陰茎を見た時に紗菜は体に杭を打ち込まれるような激痛を想像していたが、実際はそれほどでもない。耐えられる程度の痛みである。
 まだ全てが収まったわけではないからだろうか。太い先端が入り口を突破したからと言ってもまだ長さが残っている。彼はその全てを収めようとしている。それがわかるからこそ、怖いのだ。

「大丈夫、怖くない怖くない。全部入ったら気持ち良くなります。だから、先輩の中に入らせてください。ね?」

 ねだるような言葉に引きつけられて紗菜は晃を見てしまった。
 どうして、ひどいことをして痛みを与えておきながら優しい顔ができるのか。
 どうして、自分はこんなにも心を奪われてしまうのか。
 紗菜にはわからないのに、晃は一瞬の隙を絶対に見逃しはしないのだ。

「ん、く、ぅぅっ――!」

 紗菜の力が抜けた瞬間に晃の物は一気に中を押し広げながら侵入してくる。コツンと奥に行き当たった感覚とあまりの圧迫感に空気を求めるように口がはくはくと動く。想像以上の衝撃に現実を受け入れられない紗菜の体はぎゅっと抱き締められた。汗ばんだ肌同士が触れ合っても不快感はない。それ以上に安心感を覚えてしまったことが紗菜を混乱させていく。

「っは……大丈夫。大丈夫ですよ」
「うぅっ……」
「いい子いい子」

 今まで感じたことのない苦痛を与えてくるのは間違いなく彼であるはずなのに、子供騙しとわかっているのに、その優しさに騙されようとするのは本能的に自分を守ろうとしているからなのかもしれない。

「俺を受け入れてくれて、ありがとうございます」
「ぁ……ぅ……」

 紗菜が望んだことではない。彼が強制したことに他ならない。
 それなのに嬉しそうに聞こえるのは錯覚なのだろうか。それとも、また騙すための演技なのだろうか。
 彼の鼓動の早さを感じ、胸が締め付けられるようで紗菜は戸惑わずにはいられなかった。
 自分では決して触れられない奥の奥まで彼に侵略されているかのようである。しかしながら、愛しい相手ならば歓迎できたことだからこそ、無意識に心の負担を軽くしようとしているのか。
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