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第一章

「いつもお世話になってます」 9

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「今日のも可愛いですね」

 一度下着を見られているからと言っても紗菜は恥ずかしさで晃に背を向けて自分を守るように丸まった。褒められて嬉しいものでもない。具体的に何をされるかもわかっていないからこそ、怖かった。

「触るだけですから」

 そう言ってベッドに上がってきた晃に頭を撫でられて、紗菜はより身を固くした。最早そんな言葉を信用できるはずもないのだ。

「本当に先輩が入れてって言わなきゃ入れませんって」
「ひゃうぅぅ……」

 晃の手が耳をくすぐり、首筋を通って肩の丸みを撫で回す。緊張をほぐそうとでも言うのか。ダイレクトに感じる手の熱さに紗菜はこれ以上ないほど体に力を込める。
 言うはずもないのだが、安心できないのはなぜだろうか。

「指切りでもします?」

 手を重ねられ、それだけでぞわぞわとする物を感じた紗菜は首を横に振る。指を絡められるだけで妙な気持ちになるのはなぜなのか。

「って言うか、俺に背中見せちゃっていいんですか?」
「え……?」
「こんな綺麗な背中で誘ってます?」
「ちが、あっ……ひ、ぁあ!」

 項に口づけられたかと思えば背中を舐め上げられ、紗菜は思わぬ刺激にビクビクと震えた。前を守ることばかりを考えていたが、自ら弱点を晒しているようなものだったのかもしれない。

「違うんですか? ブラ外してって言ってるみたいですよ」
「違うのっ、やっ、だめっ!」

 恥ずかしさでどうすれば良いのかわからないと言うのに、胸に感じる解放感に紗菜は慌てた。不埒な手がホックを外してしまったのだ。

「想像には限界があるんです。おっぱい見せてくださいよ」
「ひゃぁ……ゃめて……!」

 手を緩めてしまえばブラジャーがずれてしまう。それなのに、指先が触れるか触れないかという微妙なタッチで背筋をなぞられて紗菜は拷問でも受けているような気持ちだった。

「先輩がその気ならいいですよ」

 指が離れて紗菜が安堵したのも束の間だった。くるりと視界が変わり、背中に軽い衝撃を感じる。肩を掴まれて上を向かされたのだと気づいた時には別の刺激が紗菜を襲った。

「あぅぅ……!」
「肌白くて、滑らかで、ずっと触っていたいです」
「ゃっ、くすぐったい……!」

 がら空きになっていた腹を先ほど背中に触れたように撫でられて紗菜は身を捩るが、肩を抑えつけられていた。

「やめてほしいですか?」

 そう問う間にも晃の手が紗菜の腹を撫で回し、紗菜は何度も頷いた。しかし、晃の手は止まらずに臍の周りをなぞる。

「じゃあ、おっぱい見せてくれます?」
「それはっ……」

 くすぐったさと恥ずかしさ、どちらを我慢するべきなのか。否、考えられるはずもなかった。

「案外耐えますね。でも、こういうこともできちゃうんですよね」
「やっ!」

 両手首をまとめて掴まれて抵抗する暇もなかった。頭上で縫い止めるように強い力で抑えつけられて紗菜は恐怖を覚えた。

「あ、暴れると乳首見えちゃいますよ?」

 紗菜はハッとするが、隠すこともできずに恨めしい気持ちで晃を見上げる。彼はひどく楽しげに笑って紗菜を見ている。彼は片手だと言うのに掴まれた腕は動かせず、無理に動けばかろうじて乗っているブラジャーがずれてしまうだろう。

「こんな、無理矢理……」
「俺が満足しなくて困るの先輩じゃないですか。だから、恥ずかしがり屋さんの先輩のお手伝いです。これくらい強引な方がいいって子もいますし。俺は先輩がお泊まりしてくれても構わないんですけど」
「うぅ……」

 晃が言う通りだった。この状況で困っているのは紗菜だけである。帰りたい――ただそれだけだったというのに、それは羞恥心との戦いだった。

「こうしてると犯してるみたいで何だか興奮しちゃいますね。先輩、ちっちゃいから余計に犯罪感が……凄くいいですよ」
「ひっ……」

 彼にとっては遊びか何かのつもりなのかもしれないが、紗菜にとっては犯されているのと何ら変わりない。晃の目が全身を這い回っているようである。

「やっぱり撮影しちゃダメですか?」

 再びスマートフォンを手にした晃を止めたくとも紗菜の手は封じられている。しかし、首を横に振って訴えれば意外にもあっさりとしまわれた。尤も、「残念」と笑った彼が本当にそう思っているのかはわからないものだったが。

「じゃあ、目に焼き付けておくんで、じっくり見せてくださいね」

 そう言われてしまえば紗菜はもう辱めを受けるしかない。
 ブラジャーがずらされて、隠されていた先端が露わになってしまう。どうせ、大した膨らみもないのだ。ガッカリしてくれれば良い、紗菜はそう思っていたのだが――

「あぁ……想像していた以上にピンクで可愛いです」

 うっとりと晃が呟き、拘束されていた手が離れる。ブラジャーを腕から抜き取られると紗菜は思わずギュッと目を閉じ、胸元を隠さずにはいられなかった。

「だから、隠しちゃダメですって」
「ゃっ……」

 開くように今度は顔の横で手首を縫い止められて紗菜は目を開けられずに震えることしかできない。穴があるものならば入りたい、そんな思いでいっぱいだった。

「恥ずかしさなんか忘れさせてあげますよ」

 両手を絡めるように繋がれた次の瞬間、紗菜は目を閉じてしまったことを後悔した。
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