【R18】変態に好かれました

Nuit Blanche

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やっぱり変態でした

本当は知らないままでいたい

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「じゃあ、何をしたの……?」

 声が震える。喉が引き攣って声を出しにくい。
 聞きたくないのに、怖いのに、聞かなきゃいけない。私は知らなきゃいけない。
 一緒にベッドに入って寝顔を見てただけだよって言ってほしかった。

「りりちゃんにとっては物凄ーく恥ずかしいことかな?」

 今、こうして抱っこされているのすら恥ずかしいのに、それ以上に恥ずかしいのって、やっぱりエッチなことだよね?
 竜也君が物凄くって言うからには物凄いんだと思う。
 知りたくなくて怖い。

「ちょっと剥いて匂いを嗅いだり舐めたりしただけだよ」

 さらっと言われて一瞬わからなかった。
 剥いたって、私、服脱がされたの?
 匂いを嗅いで? 舐められた? どこを?

「起きてたら恥ずかしがってさせてくれないでしょ?」
「そ、そうだけど……」

 さっきだって、ちょっと首筋の匂いを嗅がれただけで凄く嫌だった。
 匂いを嗅ぐだけで済むって言われても多分全力で拒否する。恥ずかしすぎて死ぬ。
 この前、胸とかあそことか舐められたのだって信じられなかったのに、寝てる間ならいいやってことにはならない。

「りりちゃんがもっと流されやすくて、エッチなことに抵抗がなかったら良かったんだけど」

 残念そうに言われても困る。
 十分に流されてるって言うか、相手は天馬君が言ったみたいに濁流っていうか、津波? 天災レベル。
 そもそも、竜也君は私に色々強要しすぎだと思う。
 今日こうして家に遊びに来てるのだって、最初に脅されたのがあるから。
 家族に彼女として紹介されて、どんどん退路を断たれてる気がする。
 あのシャドペさんの兄でシャドウ姉様の弟で影爺の孫でミスターシャドウの息子で、その正体はネット親友のリュウ君で、信じられないくらい奇跡的な状況で、怖い。
 それだけの要素を持ち合わせていてもOKってことにはならない。リアルはリアル。

「喜んでさせてくれるのも微妙だけど、でも、もうちょっと興味を持ってくれるくらいの方が俺も自分を抑えられたかもしれないのに」

 また私のせいにされるの?
 いくらイケメンだからって、何でもできると思ったら大間違い。
 付き合ってもいないのに、要求が高度すぎる。ありえない。
 竜也君はやっぱりチャラ男に擬態してた時間が長すぎて貞操観念がおかしくなってるとしか思えない。
 そこまでヤリチンじゃないって言ってるけど、まっさらでもないわけで。
 竜也君くらいのイケメンなら今まで何人か彼女いても全然不思議じゃないし、童貞じゃないことは問題じゃない。
 でも、私を好きだって言うなら、もっともっと私の意見を尊重してくれてもいいはずなのに、私が折れることを求められてる。

「りりちゃんは本当に恐がりだよね。一回やっちゃえば何ともないのに、踏み出すのに時間がかかる」

 それは自覚がある。私だってわかってるけど、今までどうにもならなかった。いつももっと早くやれば良かったって思ってる。
 でも、今こそ変わる時だって言って、竜也君とエッチなことをする気にはなれない。
 それこそ私がしたいって気持ちになるまで待ってくれる人が理想だと思う。
 そもそも想いが通じ合って正式に付き合うわけでもないのに早すぎる。竜也君は気が早い。

「怖くないよ。大丈夫。大丈夫」

 優しい声で繰り返されても洗脳されるつもりはない。
 その笑顔にも騙されない。

「やっぱり難しいかな?」

 何も言えない私の顔を覗き込んで竜也君は困ったような表情を見せる。
 あまりに難易度が高すぎて何度も頷けば、「そっか……」と呟いて頭をぽんぽんしてくる。
 何だか悲しそうに笑ってたけど、そっと竜也君の上から下ろされて、ちょっと安心した。
 やっとまともに呼吸ができる気がする。猛獣は未だ目の前にいるのに。

「あ……もう大丈夫なの?」

 ふと、どうして竜也君に抱えられてたかを思い出して、改めて竜也君の顔を見てみる。
 ファミレスに行って疲れたせいで私を抱えて回復してたのに、途中から私が恐怖体験させられた。マジで怖かった。

「まだ俺の心配してくれるなんて嬉しすぎて泣きそうだよ」

 泣くなんて大袈裟だって思う。
 でも、相手は突然泣き出した前科持ちの竜也君。本当に泣くかもしれない。
 いきなり号泣しても不思議じゃない。驚かない。

「りりちゃん、大事なこと忘れてない?」
「大事なこと?」

 大事なことって何だろう?
 竜也君にとって大事なことは私には理解できない。価値観が違う。

「これから一週間分の補給させてもらうからね」
「あっ……」

 そうだった。帰れるわけじゃない。今ので終わりじゃない。
 具合が良くならないからもう帰っていいよって言ってほしかったけど、すっかり回復してるように見える。
 私を抱える口実にも思えるくらい。でも、本当に具合悪そうだった。
 それとも、超演技派の竜也君は顔色も自由自在? いや、まさか。

「りりちゃん、明日は会えないんだもんね」

 明日は予定通り従姉に下着を買ってもらいに行く。
 予定通りじゃないのは行き先がお姉様のお店に変わったことくらい。
 あれからドキドキしながらお店のホームページを見たけど、全然いやらしい感じじゃなかった。
 ゴージャスなお姉様のイメージとは違って、可愛い物がいっぱいだった。私に似合うかは別として。
 Aカップ以下の小さいサイズもあるし、ティーン向けのラインもあって特別高いわけでもなさそうで、従姉にもOKしてもらえて、実はちょっと楽しみになってたりする。

「俺のために下着買ってきてくれるんだもんね」

 嬉しそうに言われて、開いた口が塞がらなかった。
 竜也君のためじゃない。断じて違う。
 竜也君と会わなくて済むけど、その次の週が怖かったりする。つけてきて見せてとか言ってたし……
 絶対、見せたくないけど、無理矢理剥かれて見られる可能性なきにしもあらず。

「必要だから買ってもらうだけだもん……」

 ド貧乳だけど、もう高校生だし、スポブラから移行するだけ。色気付いたとかじゃない。
 誕生日はとっくに過ぎてるけど、プレゼントをもらうだけ。
 従姉の都合でたまたま今になってだけで、彼氏ができたからとかじゃないし、私はまだ竜也君を彼氏として認めてない。

「本当は俺もついて行きたいんだけど」
「やだ……」

 仮に彼氏だとしても一緒に下着を買いに行くのは抵抗しかない。ありえない。
 そもそも、せっかく従姉と会うのに、竜也君が来たら面倒なことになる。
 絶対、また彼氏とか言い出すし、確実に外堀埋められる。
 従姉に知られたら、最終的に親戚中に知られる。辛い。

「チャラ男になりきらないと人多いところにいけないし、りりちゃんに迷惑がかかっちゃうから泣く泣く我慢する」

 金髪のチャラ男だったら絶対目立って周りの女性がざわつくと思う。逆ナンとか凄そう。絶対、私の買い物どころじゃない。
 親戚との関係は大事とか言いながら本当は行きたいのかもしれないけど、無理な物は無理。

「だから、明日俺が寂しくないように、今日いっぱいサービスして?」

 甘えるような声で言う竜也君に身構えずにはいられなかった。
 これまでのやりとりがなかったら恋人からの可愛いおねだりに聞こえたかもしれない。
 でも、相手は恋人ではない竜也君で、何をさせられるか恐怖でしかない。

「さ、サービスって……?」

 今までは私が眠ってる間にするから、その前の要求は軽いものだった。
 けど、もうカラクリがわかってしまったから。同じ手は使えないから。
 だから、膝枕とか抱っこ程度で済むとは思えない。

「俺の趣味に付き合ってほしいな」

 にっこり、花が咲くような笑みに背筋がぞわぁっとした。
 竜也君の趣味って何?
 乙女ゲームにドはまり中なのは知ってる。でも、きっとそういうことじゃない。
 変態趣味? 何させられるの?

「大丈夫。処女を奪ったりしない。恥ずかしいことはするけど、痛いことはしないよ」

 伸びてきた手に頭を撫でられてびくっとした。怖い。
 処女のまま帰れる。痛いことはない。でも、恥ずかしいってことはエッチなことはされるんだよね……?

「恥ずかしいのやだ……」

 恥ずかしいこともしないでほしい。それが本音。
 恥ずかしいことは恥ずかしい。嫌なことは嫌。

「じゃあ、寝てる間に済まそうか? 俺はそれでもいいよ?」

 ぶんぶんと首を横に振る。私は良くない。全然良くない。
 自分から睡眠薬を飲む勇気はない。寝てる間に全てが終わるとしても、何をされるかわからないのは怖い。

「もう薬はやだ」
「わかった。りりちゃんが嫌なら、もう使わないよ。約束する」

 自分に都合が悪いことには難聴になる竜也君を信用していいかはわからないのに、それ以上何を言ったらいいかわからなかった。
 そんな私の顔が不安そうに見えたのかもしれない。

「大丈夫大丈夫。すぐに恥ずかしくなくなるよ」

 ぐしゃぐしゃにする勢いで頭を撫でられて、ちょっと面食らった。
 こういう時の竜也君は抱えた深い闇を感じさせない笑顔で眩しいくらい。
 子供扱いされてる感じだけど、毒気を抜かれて、甘んじて頭を撫でられる。
 大体、竜也君の毒気に当てられてる気がする。
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