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変態は変態を呼ぶ?

平和の訪れです?

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 結局、あれから竜也君の部活は保留になったらしいけど、アニ研とパソコン部で攻防が繰り広げられてるとか……
 一番竜也君に突っかかってた田辺君がくるっと手のひら返しで自称弟子(って言うか信者)になったことにより、クラスには平和が訪れたのかな……?
 しかし、これはどうしたものか。

「竜也君、可愛くないからね?」

 目の前で竜也君がぷくーっと膨れてる。見事なふくれっ面。
 取り合われる竜也君を放置して萌花ちゃんとクレープを食べに行き、土日も萌花ちゃんと遊んだら竜也君が完全に拗ねた。激拗ね。
 いや、わかってたけど、それにしても拗ねまくり。日曜はふみちゃんと由真ちゃんも加わってオタク女子会だったんだけど、拗ねすぎ。

「今週は竜也君の家に遊びに行くからね?」
「お家デートじゃないじゃん!!」

 そう、ふみちゃんの『ふみウィーク』は本気だったらしいんだけど、オタク女子会で満足したのと、今度の日曜に予定が入ったのとで良くなったらしい。要するに私と遊べれば何でも良かったらしい。拗ねて拗ねまくる竜也君よりずっと大人だと思う。
 その予定というのが竜也君の家でのパーティーなんだけど……

「オタクバーベキューなんて俺は許可してない!」

 そうオタクBBQイン影本家、ボドゲ大会付き。
 竜也君が許可してなくてもお家のもっと偉い人が許可してるわけで……ぶっちゃけ竜也君がいなくても開催される。

「ミスターのお誘いだし……」

 主催はミスター、「みんなで遊びにおいで」が社交辞令じゃなくて、本当に実現されたわけで折角だからBBQもってことになった。だから、本当はボドゲ大会がメインかもしれない。
 ボドゲお兄さんこと佐々木部長歓喜で加納君と由真ちゃんも強制参加で当然のようにふみちゃんも。
 そして、寛大な影本家は萌花ちゃんを出禁にはしなかった。天馬君もお姉様も参加するらしいけど、竜也君だけがおもしろくないといった状況。その前の日だって遊びに行くのに。いや、打ち合わせも兼ねてるから一日竜也君と遊ぶわけじゃない。

「俺のりりちゃんなのに……ぐすっ」

 すぐにメソメソし始める竜也君が面倒臭い。由真ちゃんは週末の予定が憂鬱らしくて、関わる元気がないらしい。昨日だって萌花ちゃんとふみちゃんに連れ回されたわけだし。マジごめん……と心の中で謝っておく。


「光石……光石……!」

 何かどこからともなく呼ばれた気がしたら、田辺君が手招きしてた。
 やばい、教祖を泣かせたって言いがかりを付けられるかもしれない。
 いや、私を攻撃したら竜也君の逆鱗に触れちゃうかもしれないし、田辺君もそこまで馬鹿じゃないと思うんだけど……何だろう?

「ささっ、どうぞどうぞ」

 田辺君の方に行くなり差し出されて反射的に受け取っちゃったのはウエハース。某乙女ゲームの、カード付きの。
 これって、まさか、賄賂……?

「えっと……何?」

 直球で賄賂かなんて聞けない。
 私に対する態度も変わったけど、ちょっと怖い。

「相談なんだが……放課後、師匠を借りられないだろうか」

 やっぱり賄賂?
 どうして私に聞くんだろうって思うけど、竜也君は絶対に断るよね?

「いいよ」

 考えるまでもなく、私は答える。
 賄賂受け取っちゃったし、手を後ろにやった田辺君は返品を受け付けないつもりらしい。
 それに、竜也君に対する敵意がなくなったなら何の問題もないと思う。みんなで仲良くカードゲームやればいいと思う。

「人身売買やめて! 俺の意思は!?」

 慌てた様子で竜也君がやってきて言った。
 お前が言うか、お前が。本当にそう思う。散々私の意思を無視したくせに!

「ほしいなら俺がコンプするまで箱で買ってあげるのに!」
「そういうことじゃない!」

 出たよ、金持ち発言!
 推しが出なくてもカード綺麗だし、何が出るかドキドキするし、ウエハース美味しいし、萌花ちゃん達とも買って開封して盛り上がったけど、朝食にする生活は何て言うかそこまでじゃない。

「やだ……放課後はりりちゃんと一緒に部活行くんだもん!」
「竜也君、部外者だからね? ほぼほぼ出禁だからね?」

 どうせ、萌花ちゃん連れて部活行かなきゃだし。竜也君いると面倒だけど、文芸部に入れないし。

「いやだぁぁぁぁっ! りりちゃんと一緒じゃなきゃいやぁぁぁぁっ!」

 竜也君、駄々っ子モード。
 こうなっても一番絡んでた田辺君が「ししょーっ! ししょぉぉぉぉっ!」とか叫んでると他はスルー。何か既にオタク竜也君に慣れてる気がする。

「折角友達いっぱいできたんだから仲良くしなよ」

 何かもう今までのことはお互い水に流してるみたいだし、この際仲良くした方がいいと思う。向井君達の代わりって言うか、正直、四六時中竜也君にべたつかれたら私のストレスが……

「こんなの友達じゃない!」

 本人達の前でそれ言っちゃうの? って思ったんだけど……

「そうだ、光石。師匠は友達じゃない! 偉大なる師匠だ!」

 田辺君は怒るわけでもなく、難しい顔で私に言ってきた。
 そうなんだ……友達じゃなくていいんだ……
 田辺君が何を求めてるかちょっとわからない。あれだけ竜也君のことを攻撃してたのに、この変わりよう。

「竜也君のこと、こんなに慕ってくれるなんてすごいじゃん」
「えっ? 見直した? 惚れ直した?」
「カードゲームやってるの、ちょっとは格好いいかもと思ったよ、ちょっとは」

 本当にちょっとなんだけど、竜也君の目がキラキラ輝いてる気がする。
 やばい、失言したかもしれない。

「本当に?」
「ほ、本当に」

 ちょっと格好いいかもと思ったの本当。本当にちょっとだけど。

「じゃ、じゃあ、またやろうかな……?」

 おおっ、これはいい流れでは?

「そうだよ、それでアニ研に入れば交流会は堂々と一緒に出れるよ」

 時々は交流会に出たいし、出ないと面倒な人達がいるわけだし、既に竜也君はフリーパスを手に入れているような状態なんだけど……

「いや! そこはパソ部で!」

 ここで入ってくるか、田辺ぇぇぇぇっ!

「交流断絶してるでしょ」

 よし、ちゃんとツッコめた! 由真ちゃんじゃなくてもツッコめた!
 オタク部としてくくられててもパソコン部は違う。

「ふむ、つまり正常化すれば良いわけだ」
「えっ……」

 それは絶対に無理だと思ったんだけど……

「ふはは、俺を誰だと思っている? 次期部長の呼び声が高い田辺様だぞ!」

 そうだったんだ……そんなこと全然知らなかった。
 だから、妙に偉そうだったんだ……とは口が裂けても言えない。権力あっても人望ないでしょとも言えない。

「と言うことで、放課後師匠は借りるからな! 決定事項だ! 拒否権はない!」
「俺の意思! 俺の意思ぃぃぃぃっ!」

 竜也君が叫ぶけど、今までうるさいって言ってた田辺君が信者になったせいで誰ももう何も言わない。

「今日はカードないの?」

 もしかして……と思って聞いてみたら竜也君の表情が曇る。

「い、いや、天馬に返しても鞄から出しても入ってるの、不思議なの……」

 それ、絶対に天馬君の仕業だよね?
 深くは突っ込まないことにしておこう……
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