99 / 115
変態は変態を呼ぶ?
どちら様でしょうか?
しおりを挟む
萌花ちゃんの態度が一変して私達は今までの溝を埋めるようにやりとりをした。寝不足になるくらいメッセージを送った。って言うか、送られてきた。怒濤の勢いで。竜也君より凄いかもしれない。
でも、萌花ちゃんが罪を認めて私に懐いても、それは内輪のこと。全てが解決ってわけじゃない。
それをわかってたはずだけど、相変わらず何か嫌な感じのする教室に私が欠伸を噛み殺しながら入って席に着いた時のことだった。
「りーりちゃんっ! おはよっ! おーはよっ!」
朝っぱらからバカみたいにテンションの高い挨拶にもこの眠気は吹き飛ばせないはずだった。
誰かなんて愚問で、面倒臭いからこのまま寝落ちできないかななんて思いながら顔を上げた時だった。
そう、目の前にいるのが誰かなんて愚問だったんだけど……
「おはよう……?」
「りりちゃん、お願いだから『どなた?』ってキョトン顔しないで! 可愛いけど! 可愛いけど、傷付くよ!」
正直思った。どちら様でしょうか?
いや、竜也君なんだけど、どう考えても竜也君なんだけど……! どなた感強すぎる。
「だ、だって……」
「ウィッグとそんなに変わんないでしょ」
黒髪の竜也君がそこにいた。思わず生え際を確認しちゃうけど、ウィッグとは違う自然な感じ。色は不自然に黒いから染めたの? カットもした? ヤリチンチャラ男モード終了のお知らせ? 形から入るタイプ?
「それとも、イメチェンした俺が格好良すぎて見とれてた? 惚れ直しちゃった?」
「まさか」
「いやーっ! 即答いやーっ! 聞きたくなーいっ!」
耳を塞いでこの世の終わりみたいな竜也君。
竜也君がイケメンなのは認めざるを得ないとしても見とれてたわけじゃない。ただ物凄く不思議だっただけ。
「うるさい! って……誰?」
鋭い声は由真ちゃんだった。多分、竜也君の奇声に反応したと思うんだけど、竜也君の顔を見るなり固まった。
いや、ポーカーフェイスの女王由真ちゃんだから、わかってて言ってると思うけど……
「俺だよ、俺俺! おーれっ!」
「あー、凛鈴に付きまとうゴキブリね。ゴキブリらしい色になったのね」
朝から毒舌が冴え渡る由真ちゃん。いや、朝からゴキブリ連呼ってどうなの……
「ちがぁぁぁうっ! りりちゃんの彼氏! か・れ・し!」
いや、彼氏も違うって言いたいんだけど、それこそ私も全力で「ちがぁぁぁうっ!」って否定したいんだけど……
「いいもん、いいもん! りりちゃんがわかってくれればいいもん!」
「抱きつかないで!」
「離れろ、ゴキブリ! 殺虫剤かけるわよ!」
ここぞとばかりに抱きついてくる竜也君。どさくさにまぎれて匂いを嗅ごうとしてくる。
どうにか押しのけようととする私と引き剥がそうとする由真ちゃん。カオス。朝から大騒ぎ。
「って言うか、りりちゃんが髪下ろしてる! おさげじゃない!」
「あんた、どうせ、ぼんやりテレビ見てたら時間がなくなったんでしょ?」
急に私の変化に気付く竜也君と呆れ顔の由真ちゃん。
ぎくっとした。由真ちゃんは私のことなんかお見通し。推理するまでもない。朝から好きな声優さんが出るって萌花ちゃんが教えてくれてつい……
最近は耳下で二つ結びしてたけど、遅刻の危機で、学校着いてから適当に一つに結べばいいかなって……
「じゃあ、俺が髪の毛結んであげるね!」
「えっ……いい」
竜也君の目がキラキラ。怖い。やばい。嫌な予感しかしない。思い出したくないことを思い出しちゃう……痛々しい思い出が蘇る。
「ツインテールにする? それとも、ツーサイドアップにしちゃう?」
うわぁ……全然、聞いてない。
「やだよ、どっちも痛いよ!」
「痛くないように上手に結ぶから!」
そういう意味じゃねぇよ!
全身全霊でそう叫びたかった。二次元だから許される髪型なのでは?
竜也君の家でツインテールにされた時だって自分が痛々しすぎて辛かったのに、学校でされるとか羞恥プレイすぎる。ほぼほぼ罰ゲーム。死んじゃう。
「こんなこともあろうかと、りりちゃん用のブラシを持ってきたよ! シュシュもピンもあるよ!」
竜也君は何やら可愛らしいバッグを持っててポーチを取り出したかと思えば、ブラシと可愛いシュシュやピンをいっぱい私の机の上に並べていく。
「あっ、おやつもあるよ! お腹空いたら言ってね!」
「竜也君、荷物多すぎだよ……」
更に、クッキー、チョコレート、グミ、キャンディー……机の上はあっという間に埋め尽くされてく。学業に関係のない物持ってきすぎだよ……
「着替えも持ってこようとしたら家族総出で止められちゃった」
竜也君はしょんぼりしてるけど、よくぞ止めてくれた皆様!
心の中で影本家の皆様の顔を思い浮かべて感謝する。
だって、竜也君が言う着替えって下着が当然のように含まれてそうだし……怖い。
「凛鈴はあんたのペットか……」
最早、由真ちゃんのツッコミに力がなかった。
朝から精気を吸い取られたようにお疲れモードの由真ちゃん、大丈夫かな?
でも、そんな状況で黙っててくれない男がいた。
「オタクのコスプレかよ。馬鹿にしてんじゃねぇぞ」
そう言い放つのは勿論しつこい男田辺君。
本当に毎日竜也君を攻撃しないと気が済まないらしい。
「つーか、朝っぱらからイチャつくんじゃねぇよ、クソが!」
朝っぱらから不機嫌すぎる……ヤンデレモードの竜也君に比べたら全然怖くないけど。
そう、問題は竜也君。キレないとは言ってるけど、信じきれない。昨日、耐えても今日耐えられる保証はない。どこにも。
そう、昨日は来なかった氷河期が今日来ちゃうことだって十分あり得る。
だから、恐る恐る竜也君を見るけど……
「どうやら、お前とは決着をつけなきゃいけないようだ……」
ゴゴゴゴゴ……そんな不穏な雰囲気。さっきまでキャッキャしながらお菓子とかを並べてた竜也君じゃない。怖い。
「け、決着って……?」
「大丈夫だよ、りりちゃん」
クラスを巻き込むような恐怖は私が止めなきゃいけない。
そう思ったけど、竜也君は笑ってる。その大丈夫を信じられたら苦労はしないのに。
「田辺、お前に決闘を申し込む!」
「ほう……?」
ビシッと決めたつもりらしい竜也君とピクッと眉を吊り上げた田辺君。一触即発じゃないよね?
「放課後、これで勝負だ!」
竜也君がバッグから何やらケースを出して印籠のように掲げる中身はカード? カードゲーム? よく田辺君達がやってるやつ?
「いいだろう。受けて立つ!」
田辺君は即答だった。それだけ自信があるってことだよね? 田辺君の土俵ってことだよね?
怖じ気付いて逃げるなよ、とか高笑いし始めた。やばい。
これ、絶対負けたら理不尽な扱い受けるやつだよね……?
「た、竜也君……」
その決闘、本当に大丈夫なの?
心配になって竜也君の服を引っ張るけど、竜也君はへらへらしてる。
「今朝、天馬に持たされたの」
竜也君が見せてくれるのは、やっぱりカードゲームみたいで、デッキってやつなんだよね?
そういうトレーディングカードゲームの類はわからないけど、天馬君が託したんなら大丈夫かな……?
「りりちゃんは当然見届けてくれるよね?」
あっ……この圧が怖い。
放課後、約束があるなんて言えない。ちょっと待ってもらうようにお願いしなければ……!
そうして私達は決戦の放課後を迎え……の前にお昼休みに一悶着あるわけで。
でも、萌花ちゃんが罪を認めて私に懐いても、それは内輪のこと。全てが解決ってわけじゃない。
それをわかってたはずだけど、相変わらず何か嫌な感じのする教室に私が欠伸を噛み殺しながら入って席に着いた時のことだった。
「りーりちゃんっ! おはよっ! おーはよっ!」
朝っぱらからバカみたいにテンションの高い挨拶にもこの眠気は吹き飛ばせないはずだった。
誰かなんて愚問で、面倒臭いからこのまま寝落ちできないかななんて思いながら顔を上げた時だった。
そう、目の前にいるのが誰かなんて愚問だったんだけど……
「おはよう……?」
「りりちゃん、お願いだから『どなた?』ってキョトン顔しないで! 可愛いけど! 可愛いけど、傷付くよ!」
正直思った。どちら様でしょうか?
いや、竜也君なんだけど、どう考えても竜也君なんだけど……! どなた感強すぎる。
「だ、だって……」
「ウィッグとそんなに変わんないでしょ」
黒髪の竜也君がそこにいた。思わず生え際を確認しちゃうけど、ウィッグとは違う自然な感じ。色は不自然に黒いから染めたの? カットもした? ヤリチンチャラ男モード終了のお知らせ? 形から入るタイプ?
「それとも、イメチェンした俺が格好良すぎて見とれてた? 惚れ直しちゃった?」
「まさか」
「いやーっ! 即答いやーっ! 聞きたくなーいっ!」
耳を塞いでこの世の終わりみたいな竜也君。
竜也君がイケメンなのは認めざるを得ないとしても見とれてたわけじゃない。ただ物凄く不思議だっただけ。
「うるさい! って……誰?」
鋭い声は由真ちゃんだった。多分、竜也君の奇声に反応したと思うんだけど、竜也君の顔を見るなり固まった。
いや、ポーカーフェイスの女王由真ちゃんだから、わかってて言ってると思うけど……
「俺だよ、俺俺! おーれっ!」
「あー、凛鈴に付きまとうゴキブリね。ゴキブリらしい色になったのね」
朝から毒舌が冴え渡る由真ちゃん。いや、朝からゴキブリ連呼ってどうなの……
「ちがぁぁぁうっ! りりちゃんの彼氏! か・れ・し!」
いや、彼氏も違うって言いたいんだけど、それこそ私も全力で「ちがぁぁぁうっ!」って否定したいんだけど……
「いいもん、いいもん! りりちゃんがわかってくれればいいもん!」
「抱きつかないで!」
「離れろ、ゴキブリ! 殺虫剤かけるわよ!」
ここぞとばかりに抱きついてくる竜也君。どさくさにまぎれて匂いを嗅ごうとしてくる。
どうにか押しのけようととする私と引き剥がそうとする由真ちゃん。カオス。朝から大騒ぎ。
「って言うか、りりちゃんが髪下ろしてる! おさげじゃない!」
「あんた、どうせ、ぼんやりテレビ見てたら時間がなくなったんでしょ?」
急に私の変化に気付く竜也君と呆れ顔の由真ちゃん。
ぎくっとした。由真ちゃんは私のことなんかお見通し。推理するまでもない。朝から好きな声優さんが出るって萌花ちゃんが教えてくれてつい……
最近は耳下で二つ結びしてたけど、遅刻の危機で、学校着いてから適当に一つに結べばいいかなって……
「じゃあ、俺が髪の毛結んであげるね!」
「えっ……いい」
竜也君の目がキラキラ。怖い。やばい。嫌な予感しかしない。思い出したくないことを思い出しちゃう……痛々しい思い出が蘇る。
「ツインテールにする? それとも、ツーサイドアップにしちゃう?」
うわぁ……全然、聞いてない。
「やだよ、どっちも痛いよ!」
「痛くないように上手に結ぶから!」
そういう意味じゃねぇよ!
全身全霊でそう叫びたかった。二次元だから許される髪型なのでは?
竜也君の家でツインテールにされた時だって自分が痛々しすぎて辛かったのに、学校でされるとか羞恥プレイすぎる。ほぼほぼ罰ゲーム。死んじゃう。
「こんなこともあろうかと、りりちゃん用のブラシを持ってきたよ! シュシュもピンもあるよ!」
竜也君は何やら可愛らしいバッグを持っててポーチを取り出したかと思えば、ブラシと可愛いシュシュやピンをいっぱい私の机の上に並べていく。
「あっ、おやつもあるよ! お腹空いたら言ってね!」
「竜也君、荷物多すぎだよ……」
更に、クッキー、チョコレート、グミ、キャンディー……机の上はあっという間に埋め尽くされてく。学業に関係のない物持ってきすぎだよ……
「着替えも持ってこようとしたら家族総出で止められちゃった」
竜也君はしょんぼりしてるけど、よくぞ止めてくれた皆様!
心の中で影本家の皆様の顔を思い浮かべて感謝する。
だって、竜也君が言う着替えって下着が当然のように含まれてそうだし……怖い。
「凛鈴はあんたのペットか……」
最早、由真ちゃんのツッコミに力がなかった。
朝から精気を吸い取られたようにお疲れモードの由真ちゃん、大丈夫かな?
でも、そんな状況で黙っててくれない男がいた。
「オタクのコスプレかよ。馬鹿にしてんじゃねぇぞ」
そう言い放つのは勿論しつこい男田辺君。
本当に毎日竜也君を攻撃しないと気が済まないらしい。
「つーか、朝っぱらからイチャつくんじゃねぇよ、クソが!」
朝っぱらから不機嫌すぎる……ヤンデレモードの竜也君に比べたら全然怖くないけど。
そう、問題は竜也君。キレないとは言ってるけど、信じきれない。昨日、耐えても今日耐えられる保証はない。どこにも。
そう、昨日は来なかった氷河期が今日来ちゃうことだって十分あり得る。
だから、恐る恐る竜也君を見るけど……
「どうやら、お前とは決着をつけなきゃいけないようだ……」
ゴゴゴゴゴ……そんな不穏な雰囲気。さっきまでキャッキャしながらお菓子とかを並べてた竜也君じゃない。怖い。
「け、決着って……?」
「大丈夫だよ、りりちゃん」
クラスを巻き込むような恐怖は私が止めなきゃいけない。
そう思ったけど、竜也君は笑ってる。その大丈夫を信じられたら苦労はしないのに。
「田辺、お前に決闘を申し込む!」
「ほう……?」
ビシッと決めたつもりらしい竜也君とピクッと眉を吊り上げた田辺君。一触即発じゃないよね?
「放課後、これで勝負だ!」
竜也君がバッグから何やらケースを出して印籠のように掲げる中身はカード? カードゲーム? よく田辺君達がやってるやつ?
「いいだろう。受けて立つ!」
田辺君は即答だった。それだけ自信があるってことだよね? 田辺君の土俵ってことだよね?
怖じ気付いて逃げるなよ、とか高笑いし始めた。やばい。
これ、絶対負けたら理不尽な扱い受けるやつだよね……?
「た、竜也君……」
その決闘、本当に大丈夫なの?
心配になって竜也君の服を引っ張るけど、竜也君はへらへらしてる。
「今朝、天馬に持たされたの」
竜也君が見せてくれるのは、やっぱりカードゲームみたいで、デッキってやつなんだよね?
そういうトレーディングカードゲームの類はわからないけど、天馬君が託したんなら大丈夫かな……?
「りりちゃんは当然見届けてくれるよね?」
あっ……この圧が怖い。
放課後、約束があるなんて言えない。ちょっと待ってもらうようにお願いしなければ……!
そうして私達は決戦の放課後を迎え……の前にお昼休みに一悶着あるわけで。
0
お気に入りに追加
1,096
あなたにおすすめの小説
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる