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変態のピンチ 解決編?
彼女の真意
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二人っきりになったら萌花ちゃんがあの時みたいに豹変するんじゃないかって、少なからず警戒してた。
でも、萌花ちゃんは私から少し離れてもシュンとしたままで、睨み付けてくるわけでもなかった。
「さっき先輩が言ってた通りです……」
「さっきって?」
神妙な面持ちで萌花ちゃんが言うけど、どのことか全然わからなかった。何言ったっけ?
「もう忘れたんですか! バカですか! 鳥頭ですか! 一歩も歩いてないじゃないですか! もうっ!」
この感じ、加納君に似てると思った。似た者同士? 同族嫌悪? いや、違うよね?
「ど、どれのことかわからないだけだよ……」
「私が構ってちゃんで超ツンデレだって話です」
そ、それ……? 自分で認めちゃう?
今日の萌花ちゃんは謎すぎる。全然わからない。
「私、小さくて可愛い物が大好きなんです。だから、りり先輩とは絶対仲良くなるって決めてたんです」
真っ直ぐ目を見てそう言われて反応に困る。
いつの話だろう? 私、萌花ちゃんに好かれてなかったよね? だから、萌花ちゃんが苦手だったはず。
「でも、挨拶の途中で放置プレイ食らって、それっきりになりました。覚えてないですよね?」
「うっ……」
覚えてるなんて言えない。そうだっけ……?
新入部員が入って初めての交流会で萌花ちゃんを含めてアニ研の一年生に挨拶したことまでは記憶がある。でも、その後は……?
「私の中でりり先輩は、自分から話しかけておきながら誰かに浚われて取り合いになって次から次へとちやほやされて、私のことなんか本当はどうでもいいからすぐ忘れちゃう善人面したひどい先輩なんです。お見合いして『ご趣味は?』って聞く前に逃亡された感じなんです」
そうか、石原さんに拉致されて、そのまま他の変態OB・OGに捕まり、順番待ちしてた先輩にもみくちゃにされたりとかいつものことすぎて忘れてた……!
私はふみちゃんから聞いて一方的に萌花ちゃんを知ってるつもりになってたけど、萌花ちゃんにとっては違う。
可愛さ余って憎さ百倍、ちゃんと話そうとした頃には萌花ちゃんに嫌われてたというわけだ。
「ご、ごめん……」
石原さんのせいだと思う。人のせいにするの良くないと思うけど、石原さんのせいで私がアニ研のおもちゃ的存在になってるのは否めない。
「でも、ふみちゃんと由真ちゃんは残ったよね……?」
「二人とも私の好みじゃないんです。誰とでも仲良くしたいわけじゃないんです」
きっぱり言い切る萌花ちゃん。ふみちゃんと由真ちゃんまで嫌われるのはとばっちりじゃないかと思ったけど、萌花ちゃんの狙いは私だけだったみたい。複雑なところ。
「先輩方に散々可愛がられて私をそっちのけにした上に溺愛してくれる彼氏まで連れてくるとか、ちやほやの極みじゃないですか。私に構う暇ゼロじゃないですか」
本当に全部石原さんのせいのような気がしてきた……
話の途中で私を拉致して構い倒すのも彼氏連れてこいって言うのもパワハラじゃないかと思う。
確かに先輩にたらい回しされて萌花ちゃんとの挨拶を忘れた私も悪いけど、ヘロヘロにされるわけだし……もうちょっと自分のとこの可愛い後輩を構ってあげればいいと思う。
「でも、りり先輩は昨日私に手作りクッキーくれました。私の推しキャラの」
だから、萌花ちゃんの態度が昨日の今日で変わったってこと?
やばい。萌花ちゃんの推しキャラなんて当然知らなかった。
竜也君の推しキャラで、本当は竜也君にあげる予定だったなんて言えない。やばい。
「りり先輩って嘘つけないですよね。本当は私の推しキャラなんか知らないですよね?」
ぎくっとした。怖い。ポーカーフェイス大会万年最下位なんだから仕方ない。
ふみちゃんから情報を聞いてたわけでもなく、私がうっかり放置プレイしたせいで萌花ちゃんとの交流は断絶状態になったわけで……
「いいんです、その場しのぎでも私にくれたから今までのりり先輩への一方的な恨みは水に流そうと思ったんです。先輩のこと妬ましいですけど、やっぱり憧れなんです。私の物にしたいんです」
ぎゅっと手を握られた。何かまた別の不穏な気配を感じたのは気のせい?
「これからはちゃんと私のことも構ってくれますか?」
うるうるの目で見られてノーなんて言えるはずもない。
でも、誤解は解けたわけで、構わない理由もない?
「でも、竜也君にちゃんと謝らなきゃダメだよ? みんなにも」
私への妬みからやったことでも私だけに謝って終わりじゃない。私が無意識にしたことを水に流しても他の被害者は流れない。
いくら竜也君が終わりよければ全てよし的な感じで気にしてなくても礼儀として謝らなきゃいけない。
「わ、わかりました……」
さすがに気まずそうだけど、なかったことにはできない。
「一緒に行くから、ね?」
そう言った瞬間、萌花ちゃんの顔がぱぁっと輝いた気がした。
「手、繋いでくれますか?」
もう握られてるけど、とは思ったけど言わなかった。
そうして私達は手を繋ぎながらアニ研の部室へと向かうのだった。
萌花ちゃんはもうご機嫌だった。変わり身早すぎて怖い。私、騙されてないよね? 大丈夫だよね?
でも、萌花ちゃんは私から少し離れてもシュンとしたままで、睨み付けてくるわけでもなかった。
「さっき先輩が言ってた通りです……」
「さっきって?」
神妙な面持ちで萌花ちゃんが言うけど、どのことか全然わからなかった。何言ったっけ?
「もう忘れたんですか! バカですか! 鳥頭ですか! 一歩も歩いてないじゃないですか! もうっ!」
この感じ、加納君に似てると思った。似た者同士? 同族嫌悪? いや、違うよね?
「ど、どれのことかわからないだけだよ……」
「私が構ってちゃんで超ツンデレだって話です」
そ、それ……? 自分で認めちゃう?
今日の萌花ちゃんは謎すぎる。全然わからない。
「私、小さくて可愛い物が大好きなんです。だから、りり先輩とは絶対仲良くなるって決めてたんです」
真っ直ぐ目を見てそう言われて反応に困る。
いつの話だろう? 私、萌花ちゃんに好かれてなかったよね? だから、萌花ちゃんが苦手だったはず。
「でも、挨拶の途中で放置プレイ食らって、それっきりになりました。覚えてないですよね?」
「うっ……」
覚えてるなんて言えない。そうだっけ……?
新入部員が入って初めての交流会で萌花ちゃんを含めてアニ研の一年生に挨拶したことまでは記憶がある。でも、その後は……?
「私の中でりり先輩は、自分から話しかけておきながら誰かに浚われて取り合いになって次から次へとちやほやされて、私のことなんか本当はどうでもいいからすぐ忘れちゃう善人面したひどい先輩なんです。お見合いして『ご趣味は?』って聞く前に逃亡された感じなんです」
そうか、石原さんに拉致されて、そのまま他の変態OB・OGに捕まり、順番待ちしてた先輩にもみくちゃにされたりとかいつものことすぎて忘れてた……!
私はふみちゃんから聞いて一方的に萌花ちゃんを知ってるつもりになってたけど、萌花ちゃんにとっては違う。
可愛さ余って憎さ百倍、ちゃんと話そうとした頃には萌花ちゃんに嫌われてたというわけだ。
「ご、ごめん……」
石原さんのせいだと思う。人のせいにするの良くないと思うけど、石原さんのせいで私がアニ研のおもちゃ的存在になってるのは否めない。
「でも、ふみちゃんと由真ちゃんは残ったよね……?」
「二人とも私の好みじゃないんです。誰とでも仲良くしたいわけじゃないんです」
きっぱり言い切る萌花ちゃん。ふみちゃんと由真ちゃんまで嫌われるのはとばっちりじゃないかと思ったけど、萌花ちゃんの狙いは私だけだったみたい。複雑なところ。
「先輩方に散々可愛がられて私をそっちのけにした上に溺愛してくれる彼氏まで連れてくるとか、ちやほやの極みじゃないですか。私に構う暇ゼロじゃないですか」
本当に全部石原さんのせいのような気がしてきた……
話の途中で私を拉致して構い倒すのも彼氏連れてこいって言うのもパワハラじゃないかと思う。
確かに先輩にたらい回しされて萌花ちゃんとの挨拶を忘れた私も悪いけど、ヘロヘロにされるわけだし……もうちょっと自分のとこの可愛い後輩を構ってあげればいいと思う。
「でも、りり先輩は昨日私に手作りクッキーくれました。私の推しキャラの」
だから、萌花ちゃんの態度が昨日の今日で変わったってこと?
やばい。萌花ちゃんの推しキャラなんて当然知らなかった。
竜也君の推しキャラで、本当は竜也君にあげる予定だったなんて言えない。やばい。
「りり先輩って嘘つけないですよね。本当は私の推しキャラなんか知らないですよね?」
ぎくっとした。怖い。ポーカーフェイス大会万年最下位なんだから仕方ない。
ふみちゃんから情報を聞いてたわけでもなく、私がうっかり放置プレイしたせいで萌花ちゃんとの交流は断絶状態になったわけで……
「いいんです、その場しのぎでも私にくれたから今までのりり先輩への一方的な恨みは水に流そうと思ったんです。先輩のこと妬ましいですけど、やっぱり憧れなんです。私の物にしたいんです」
ぎゅっと手を握られた。何かまた別の不穏な気配を感じたのは気のせい?
「これからはちゃんと私のことも構ってくれますか?」
うるうるの目で見られてノーなんて言えるはずもない。
でも、誤解は解けたわけで、構わない理由もない?
「でも、竜也君にちゃんと謝らなきゃダメだよ? みんなにも」
私への妬みからやったことでも私だけに謝って終わりじゃない。私が無意識にしたことを水に流しても他の被害者は流れない。
いくら竜也君が終わりよければ全てよし的な感じで気にしてなくても礼儀として謝らなきゃいけない。
「わ、わかりました……」
さすがに気まずそうだけど、なかったことにはできない。
「一緒に行くから、ね?」
そう言った瞬間、萌花ちゃんの顔がぱぁっと輝いた気がした。
「手、繋いでくれますか?」
もう握られてるけど、とは思ったけど言わなかった。
そうして私達は手を繋ぎながらアニ研の部室へと向かうのだった。
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