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変態のピンチ 解決編?
総帥と呼ばれた男
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部室内にあの人の姿はまだなかった。ほっとしたような落胆したような複雑な気分。でも、主要メンバーは既に揃ってる。
「遅かったわね、凛鈴。連れてくるしかないってすぐ悟ると思ったのに」
由真ちゃん……お願いだから、そんな残念な子を見るみたいな哀れみの目を向けないでほしい。私の頭が残念だったわけじゃない。加納君みたいに自分の頭脳に自信があるわけじゃないけど、残念な方じゃないと思いたい。
「悟った瞬間に田辺君に絡まれて大変だったんだよ! 氷河期来ちゃうかと思ったんだから……」
遅くなったのは由真ちゃんがいなくなった途端に絡んできた田辺君のせい。それで足止めされた。
田辺君もまさか由真ちゃんがいなくなったの狙ったとかじゃないよね?
「あの男、ほんとしつこいわね」
由真ちゃんも呆れてる。そう、しつこすぎた。
竜也君も悪かったかもしれないけど、竜也君が黙ってるのをいいことに田辺君は言いたい放題。相手にされてないのにサンドバッグ状態。田辺君も田辺君で周囲から引かれてることに気付いてるのかいないのか……
その竜也君は何か部長に深々と挨拶してるし、部長は何か紙を渡してるし、今日のところは門前払いというわけにはいかない。
「総帥は?」
「こっちにはまだ」
「何ですか?」
私が聞けば由真ちゃんは首を横に振るし、加納君は首を傾げる。やっぱり先に話しておくべき?
「アニ研にはかつて総帥と呼ばれた人がいてね……」
そうして私が話を切り出した瞬間だった。部室のドアがノックされた。
噂をすれば何とか?
悪魔の話をすると悪魔が来る的な感じで総帥召喚?
ガラガラと開くドアの方を見て、やっぱり総帥で、今日はどんな言葉が飛び出すんだろうってちょっと身構えたんだけど……
「よお」
「あ、ぞーすい! お久しぶりです」
部長は総帥に挨拶をさせなかった。明らかにあの病をこじらせてる総帥に痛々しい挨拶をさせなかった。
多分、昨日から考えてきたんだろうけど……
「締めに食べる美味いやつじゃねぇわ! 総帥だ、総帥!」
完全に出鼻をくじかれた総帥はそれでも切り返しが早かった。
上手いこと言ったつもりかもしれないけど、その返しは多分部長の想定内というか、多分、まんまと言わされたと思う。
「わかってます。締めの美味しいとこどりに来たんですよね?」
「くそっ! わざとだってわかってるのに乗っちまった……」
頭を抱える総帥。やっぱり佐々木部長が最強かもしれない。
オタク連合の集会に顔を出すOB・OGの中では一番年長の総帥にさえ全く臆さない。と言うよりは敬意が感じられない?
とは言え、周りが偉大なOBに敬意を表してそう呼んでるんじゃなくて、本人がそう呼ばせてるあたりでどうかお察しください的な……
「つーか、お前がアニ研の秩序が乱れてるって言うからビシッと締めにきてやったんじゃねぇか」
そう、呼んだのは部長。部長なんだけど……
「そろそろ来にくくなって、でも、合法的に顔を出せる文化祭までは我慢できないし、どうにか来る理由探してましたよね?」
「くっ……殺せ!」
部長が放つナイフが総帥にグサグサ突き刺さるようだった。図星なんだと思う。
去年初めて総帥と会った時の「どなた?」感ハンパなかったし、それはきっと年々強くなっていくもの。部長が一年生の時に既に卒業してた人なんだから仕方ない気もする。去る者は日々に疎し?
「ここでビシッと決めれば、もう少ししがみつけますよ」
「お前は俺を再起不能にするために呼んだのか!? そうなのか!?」
「後輩達の役に立つことしないと面倒臭いだけの先輩で終わりますよ」
「お前は俺のこと、ずーっとそう思ってたんだな!?」
部長の容赦ない言葉に総帥は泣きそうだった。
正直、総帥じゃなくても、部長がビシッとできたと思う。十分にアニ研に恐怖を刻めたはず。いや、それはそれで可哀想かもしれない。
だって、昨日の部長はそんなにお腹を空かせてたのかはわからないけど、クッキー見詰めただけで萌花ちゃんを怯えさせるレベルだったし。
でも、部長は総帥を呼んだ。確かに昨日は竜也君もいなかったし、問題はふみちゃんのクッキーだったけど。手早く適当に表面をならしただけ。そんな感じ。
まあ、ふみちゃんは何事もなかったように機嫌が直っちゃったし……
自分がどうこうするよりこの面倒臭い人を呼んじゃう方がアニ研には効くと思ったのかもしれないし、自分でやるのは面倒臭いのかもしれない。部長にとっては他人事なわけだし。
「アニ研のオタサーの姫気取り、締め上げてくださいよ。諸悪の根元です」
加納君に怖い物はあるんだろうか。竜也君でさえ部長の横でポカーン状態なのに初対面の総帥に言い放った。
加納君の目には頼りになる先輩として映っているわけでもないと思う。
「とりあえず、話は聞いてやろう」
一瞬にして立ち直ったらしい総帥がニヤッと笑う。尊大な態度も仕方ない。年上だし、OBだし、総帥だし。
でも、本当に総帥に解決できるのか不安だったりもする。って言うか、総帥はアニ研のOBとは言っても離れて久しいし、萌花ちゃんとも面識ないし、ぶっちゃけ関係ないと思う。関係あるとすれば、この前の集会を主催したあの人。その先輩だからって総帥に責任を取れっていうのもひどいような……?
「遅かったわね、凛鈴。連れてくるしかないってすぐ悟ると思ったのに」
由真ちゃん……お願いだから、そんな残念な子を見るみたいな哀れみの目を向けないでほしい。私の頭が残念だったわけじゃない。加納君みたいに自分の頭脳に自信があるわけじゃないけど、残念な方じゃないと思いたい。
「悟った瞬間に田辺君に絡まれて大変だったんだよ! 氷河期来ちゃうかと思ったんだから……」
遅くなったのは由真ちゃんがいなくなった途端に絡んできた田辺君のせい。それで足止めされた。
田辺君もまさか由真ちゃんがいなくなったの狙ったとかじゃないよね?
「あの男、ほんとしつこいわね」
由真ちゃんも呆れてる。そう、しつこすぎた。
竜也君も悪かったかもしれないけど、竜也君が黙ってるのをいいことに田辺君は言いたい放題。相手にされてないのにサンドバッグ状態。田辺君も田辺君で周囲から引かれてることに気付いてるのかいないのか……
その竜也君は何か部長に深々と挨拶してるし、部長は何か紙を渡してるし、今日のところは門前払いというわけにはいかない。
「総帥は?」
「こっちにはまだ」
「何ですか?」
私が聞けば由真ちゃんは首を横に振るし、加納君は首を傾げる。やっぱり先に話しておくべき?
「アニ研にはかつて総帥と呼ばれた人がいてね……」
そうして私が話を切り出した瞬間だった。部室のドアがノックされた。
噂をすれば何とか?
悪魔の話をすると悪魔が来る的な感じで総帥召喚?
ガラガラと開くドアの方を見て、やっぱり総帥で、今日はどんな言葉が飛び出すんだろうってちょっと身構えたんだけど……
「よお」
「あ、ぞーすい! お久しぶりです」
部長は総帥に挨拶をさせなかった。明らかにあの病をこじらせてる総帥に痛々しい挨拶をさせなかった。
多分、昨日から考えてきたんだろうけど……
「締めに食べる美味いやつじゃねぇわ! 総帥だ、総帥!」
完全に出鼻をくじかれた総帥はそれでも切り返しが早かった。
上手いこと言ったつもりかもしれないけど、その返しは多分部長の想定内というか、多分、まんまと言わされたと思う。
「わかってます。締めの美味しいとこどりに来たんですよね?」
「くそっ! わざとだってわかってるのに乗っちまった……」
頭を抱える総帥。やっぱり佐々木部長が最強かもしれない。
オタク連合の集会に顔を出すOB・OGの中では一番年長の総帥にさえ全く臆さない。と言うよりは敬意が感じられない?
とは言え、周りが偉大なOBに敬意を表してそう呼んでるんじゃなくて、本人がそう呼ばせてるあたりでどうかお察しください的な……
「つーか、お前がアニ研の秩序が乱れてるって言うからビシッと締めにきてやったんじゃねぇか」
そう、呼んだのは部長。部長なんだけど……
「そろそろ来にくくなって、でも、合法的に顔を出せる文化祭までは我慢できないし、どうにか来る理由探してましたよね?」
「くっ……殺せ!」
部長が放つナイフが総帥にグサグサ突き刺さるようだった。図星なんだと思う。
去年初めて総帥と会った時の「どなた?」感ハンパなかったし、それはきっと年々強くなっていくもの。部長が一年生の時に既に卒業してた人なんだから仕方ない気もする。去る者は日々に疎し?
「ここでビシッと決めれば、もう少ししがみつけますよ」
「お前は俺を再起不能にするために呼んだのか!? そうなのか!?」
「後輩達の役に立つことしないと面倒臭いだけの先輩で終わりますよ」
「お前は俺のこと、ずーっとそう思ってたんだな!?」
部長の容赦ない言葉に総帥は泣きそうだった。
正直、総帥じゃなくても、部長がビシッとできたと思う。十分にアニ研に恐怖を刻めたはず。いや、それはそれで可哀想かもしれない。
だって、昨日の部長はそんなにお腹を空かせてたのかはわからないけど、クッキー見詰めただけで萌花ちゃんを怯えさせるレベルだったし。
でも、部長は総帥を呼んだ。確かに昨日は竜也君もいなかったし、問題はふみちゃんのクッキーだったけど。手早く適当に表面をならしただけ。そんな感じ。
まあ、ふみちゃんは何事もなかったように機嫌が直っちゃったし……
自分がどうこうするよりこの面倒臭い人を呼んじゃう方がアニ研には効くと思ったのかもしれないし、自分でやるのは面倒臭いのかもしれない。部長にとっては他人事なわけだし。
「アニ研のオタサーの姫気取り、締め上げてくださいよ。諸悪の根元です」
加納君に怖い物はあるんだろうか。竜也君でさえ部長の横でポカーン状態なのに初対面の総帥に言い放った。
加納君の目には頼りになる先輩として映っているわけでもないと思う。
「とりあえず、話は聞いてやろう」
一瞬にして立ち直ったらしい総帥がニヤッと笑う。尊大な態度も仕方ない。年上だし、OBだし、総帥だし。
でも、本当に総帥に解決できるのか不安だったりもする。って言うか、総帥はアニ研のOBとは言っても離れて久しいし、萌花ちゃんとも面識ないし、ぶっちゃけ関係ないと思う。関係あるとすれば、この前の集会を主催したあの人。その先輩だからって総帥に責任を取れっていうのもひどいような……?
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