【R18】変態に好かれました

Nuit Blanche

文字の大きさ
上 下
93 / 115
変態のピンチ 解決編?

氷河期突入の危機

しおりを挟む
 バレてしまっては開き直るしかないのか、はたまた我慢の限界だったのか……
 それからの竜也君は竜也君だった。私がよく知ってる感じの竜也君。オタクの方。
 イケメンヤリチンチャラ男のキャラなんて幻だったかのよう。悪い夢?
 いや、こっちの方が悪い夢なのかもしれない。

「りーりちゃん! 一緒に帰ろっ!」

 荷物を持ってこっちに来る竜也君。ブンブン振られた尻尾が見えるかのよう……こんな暴走変態ワンコお世話できません!

「無理!」
「何で!?」

 断られるなんてありえないって顔の竜也君。
 大事なことを忘れすぎてる。多分、脳内ではお花畑を駆け回ってる。

「これから部活だもん」
「あっ、そっか! じゃあ、俺も文芸部入る!」

 やめて、マジでやめて、私の安息の地がなくなる。
 そう思ったけど、言えるわけがなかった。
 助けて由真ちゃん! と思ったら、すたすたと先に行ってしまった……
 こうなったら部長に門前払いしてもらうしかない。
 って言うか、今日、あの人来るんだっけ……連れて行った方がいいのか。

「いちゃついてんじゃねぇよ」

 唸るような低い声が聞こえたかと思ったら田辺君。思いっきり睨まれてる。私達に言ってたらしい。
 怖い。また竜也君を刺激しそうで怖い。

「別れたんじゃなかったのかよ? 見損なったぞ、光石!」

 言われることはご尤も。
 でも、あれは竜也君が勝手に吐いた嘘だった。私に言われても困るんだけど……
 事実があるとしても、ガチのオタクだからって引いてたわけじゃない。ガチの変態だからドン引きしたんだけど。多分、お昼のアレで周りも引き始めてる。

「俺のことは何言っても構わないけど、りりちゃんのこと悪く言うなら……」

 ひっ……何かひやっとした。冷気を感じる気がする。体感温度が下がっていくような……
 やばい、竜也君がキレる前触れかも……!

「わ、私は大丈夫だよ! 大丈夫だからね?」
「はわわ、りりちゃんがお手々繋いでくれた……!」

 こっちは竜也君がキレないように必死に手を掴んだのに、竜也君はお幸せなもの。
 そのスイッチの切り替わりが意味不明。
 それとも、気のせいだった? 私が過敏になりすぎ? 取り越し苦労ならいいんだけど……

「イケメンのくせに」

 田辺ぇぇぇぇぇっ!
 一番言っちゃいけないことを吐き捨てやがった!!
 ぐっと竜也君の手に力が入ったのがわかる。
 やばい、今度こそ気のせいじゃ済まない。氷河期突入を止めなきゃ! 由真ちゃんに見捨てられた今、私しかいない!

「だめっ! キレちゃだめーーっ!」
「り、りりちゃ……」

 竜也君が暴れないように必死に抱き着く。
 どうしたらいいかなんてわからないけど、私なんか簡単に弾き飛ばされそうだけど、体を張って止めるしかない。

「田辺君もそれ言うと竜也君がマジギレするからやめて! 氷河期来ちゃうから! みんな恐怖のどん底に突き落とされるから!」

 普段なら人に強く言うことなんてできないんだけど、今は緊急事態。これはみんなを守るため。私が最後の砦みたいな気分。
 変な目で見られるけど、みんなは竜也君のマジな怖さを知らない。この場で私だけが知ってる。身をもって知ってる。

「り、りりちゃん……そこまで言わなくても大丈夫だよ? 今はキレないよ」

 あれ……? 竜也君まで困ってる?
 完全に田辺君が地雷を踏んだのに?
 恐る恐る見上げれば竜也君は耳まで真っ赤? なぜ?

「イケメンを理由にオタクであることを否定されてキレた結果、今に至るのに?」

 竜也君の大丈夫なんて全然信用できない。
 当時よりも大人になって寛容になった? いや、私にも怖かった。

「だから、いちゃつくなって言ってるだろ!」

 わけわかんないって顔で田辺君が吠える。
 ぶち切れ竜也君が不発に終わって良かったんだけど、そうなると急に恥ずかしくなって竜也君から離れる。
 まだ残ってるクラスメート達の視線が痛い。逃げたい。そうだ、逃げよう。逃げるしかない!

「もう行こう! 部活遅れちゃう!」

 そうして私は教室から逃亡したのだった……
 これ以上田辺君に絡まれたら私の心臓が無理! 明日、このことが噂になったらなんて考えたくない!


「りりちゃん、りりちゃん、待って!」

 ついてきてると思ってたのに、どうやら置いてきていたらしい。竜也君が遅れて追いかけてきた。

「またお手々繋いで?」
「やだ」

 おねだりしながら竜也君は手を差し出してくるけど、もちろん握らない。

「さっきは繋いでくれたし、ギュッてしてくれたのに……」
「竜也君がキレると思ったから咄嗟に仕方なくだよ。爆弾抱き締めてる気分だったよ」

 こっちはめちゃくちゃ必死だった。
 全力で止めなきゃと思ってた。別に竜也君のためにギュッとしてあげたわけじゃない。

「絶対にキレないって約束したじゃん!!」
「したけど……竜也君、嘘ばっかり吐くし」
「うぐっ……」

 これは言い返せないらしい。
 信用できないのは竜也君のせい。
 私に吐いた嘘の数々忘れたとは言わせない。何て言うか身から出た錆だと思う。

「耐えたよ、俺。超耐えてたでしょ?」
「限界だったよね?」
「りりちゃんが入れば無敵のヒーローになれるよ」

 竜也君は格好付けてるつもりかもしれないけど、それを信じられたら心配なんてしない。
 そして、そうこうしてる内に部室に着いたわけで、後のことはあの人と部長に任せたい。それくらい既にお疲れモード。私のライフはもう……
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

処理中です...