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4.空間魔術のバグ
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質問がいくつも浮かんでいたが、それらを頭の隅に追いやり、応える。
つい最近までのシエルの空間魔術への執心ぶりを知っていればこの疑問は最もだからだ。
「ここ何ヶ月も空間魔術について調べ漁って、2つの問題に気づいたんです。 1つは、魔力消費量の多さ。ここは先生と何度も話し合ったと思うんですが、一度に使う魔力消費量は、上級魔法使いが保有する魔力量の全量以上に匹敵し、魔石で補うしかないんですよね、現状は・・・・・・。
もうひとつは、魔導具の小型化です。これは魔力消費量の膨大さも影響してるってのは、先生もご存知でしょう。私は、小型化には、魔力使用効率の向上と軽量化が必要だと考えました。さて、魔力使用効率の第一関門であった魔術の構成は見直し、魔法陣の改良には成功しています。次に問題となるのが」
「軽量化、又は素材の見直し、ね?」
先生に頷いてみせる。
(そう、そうなのだ。さすが先生!私の拙い説明でも理解してくれるなんて )
シエルは拝みたい衝動を押さえて、その熱量を口に乗せて語り続けた。
「軽量化ということで、魔石ではなく魔木なんですよ!!魔石というのは、質量が・・・それで・・・」
空間魔術は、魔力消費量の膨大さから、30人で5人から7人を移動させる方法が用いられている。大規模な魔導具(というより、ほぼ館)となるため、大都市にしかない。
魔術式や魔導具の作成や改良が出来る環境であることもその要因の一つである。
通常、魔術式、魔法陣、魔導具、呪文の順に使う際の工程は簡略化されていく。一方で、前者になるほど、構造や改良の理解度や難易度は、飛躍的に向上する。
つまり、誰もが使うために論理は度外視し実用性を高めたのが呪文で、国内の学者や研究者が束になって日々構造や改良の解明を行っているのが、魔術式や魔法陣ということになる。
「シエルちょっと待って」
はっと、我に返る。カレーム先生は目をキラリとさせていた。
(やばい、興奮して語ってしまった・・・・・・)
「一旦整理させてちょうだい。そうね、サミュエルにも理解出来るようにね」
目をぱちぱちさせる私にウィンクをするカレーム先生。口を挟む間もなく、話し始めた。
「まず、魔法陣から整理しましょう。シエルは今回、空間魔術の魔法陣を改良したのよね?空間魔術の魔術式は、確か三段階に別れていて非常に複雑なはず。貴方は一体どうやって改良したのかしら?説明してちょうだい」
「あぁ、それでしたら、意外と簡単でしたよ。確かに、浮く、移動する、移動先の情報、の3段階の魔術式となっていましたが、被ってる魔術式があったんです。なのに、わざわざ三つに分けて、地面、天井、側面に魔法陣が配置され、その三箇所に別々に魔力を送る必要があり、非常に非効率でした。また金属の伝導により失われる魔力量も、無視出来ない二割から三割もあったんです!だから、私はまず共通部分の魔術式は使いまわせるように魔法陣を一つに見えるようにしました。そして、異なっている魔術式の部分だけ加えたんです!こうすれば、ほら、解決でしょう」
「貴方は肝心な所の説明が、相変わらず下手くそね、はぁ」
褒めてもらえると思ってただけに、カレーム先生の呆れ顔は応えた。
つい最近までのシエルの空間魔術への執心ぶりを知っていればこの疑問は最もだからだ。
「ここ何ヶ月も空間魔術について調べ漁って、2つの問題に気づいたんです。 1つは、魔力消費量の多さ。ここは先生と何度も話し合ったと思うんですが、一度に使う魔力消費量は、上級魔法使いが保有する魔力量の全量以上に匹敵し、魔石で補うしかないんですよね、現状は・・・・・・。
もうひとつは、魔導具の小型化です。これは魔力消費量の膨大さも影響してるってのは、先生もご存知でしょう。私は、小型化には、魔力使用効率の向上と軽量化が必要だと考えました。さて、魔力使用効率の第一関門であった魔術の構成は見直し、魔法陣の改良には成功しています。次に問題となるのが」
「軽量化、又は素材の見直し、ね?」
先生に頷いてみせる。
(そう、そうなのだ。さすが先生!私の拙い説明でも理解してくれるなんて )
シエルは拝みたい衝動を押さえて、その熱量を口に乗せて語り続けた。
「軽量化ということで、魔石ではなく魔木なんですよ!!魔石というのは、質量が・・・それで・・・」
空間魔術は、魔力消費量の膨大さから、30人で5人から7人を移動させる方法が用いられている。大規模な魔導具(というより、ほぼ館)となるため、大都市にしかない。
魔術式や魔導具の作成や改良が出来る環境であることもその要因の一つである。
通常、魔術式、魔法陣、魔導具、呪文の順に使う際の工程は簡略化されていく。一方で、前者になるほど、構造や改良の理解度や難易度は、飛躍的に向上する。
つまり、誰もが使うために論理は度外視し実用性を高めたのが呪文で、国内の学者や研究者が束になって日々構造や改良の解明を行っているのが、魔術式や魔法陣ということになる。
「シエルちょっと待って」
はっと、我に返る。カレーム先生は目をキラリとさせていた。
(やばい、興奮して語ってしまった・・・・・・)
「一旦整理させてちょうだい。そうね、サミュエルにも理解出来るようにね」
目をぱちぱちさせる私にウィンクをするカレーム先生。口を挟む間もなく、話し始めた。
「まず、魔法陣から整理しましょう。シエルは今回、空間魔術の魔法陣を改良したのよね?空間魔術の魔術式は、確か三段階に別れていて非常に複雑なはず。貴方は一体どうやって改良したのかしら?説明してちょうだい」
「あぁ、それでしたら、意外と簡単でしたよ。確かに、浮く、移動する、移動先の情報、の3段階の魔術式となっていましたが、被ってる魔術式があったんです。なのに、わざわざ三つに分けて、地面、天井、側面に魔法陣が配置され、その三箇所に別々に魔力を送る必要があり、非常に非効率でした。また金属の伝導により失われる魔力量も、無視出来ない二割から三割もあったんです!だから、私はまず共通部分の魔術式は使いまわせるように魔法陣を一つに見えるようにしました。そして、異なっている魔術式の部分だけ加えたんです!こうすれば、ほら、解決でしょう」
「貴方は肝心な所の説明が、相変わらず下手くそね、はぁ」
褒めてもらえると思ってただけに、カレーム先生の呆れ顔は応えた。
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