運命のレヴル～友達増やして神様に喧嘩売りました～

未来の世界の中心

　
　ーツグミー


　ロキさんのお陰でブーイングがなくなり、やりやすくなりました。でも、ロキさん？私そんなにウジウジシクシク面倒くさいですか？それって悪口じゃないですか？泣いていいですか？

　いけない、いけない。また面倒だと思われちゃう。大丈夫、ロキさんはちょっと素直じゃないだけ。きっと普通に私へのブーイングを止めさせるのが気恥ずかしかったんだと思います。そうですよね？本音じゃありませんよね？泣いていいですか？ 


　またズレてしまいました。今は目の前の相手に集中する事にしましょう。さて、中々強そう…というより優勝候補でしたね。本気でやってもここでは怒られないはず。

　え？何故そこまで勝ちにこだわるのかですか？それはもちろん旦那様の為です。旦那様に尽くすのは妻の務め。リーシュさんには申し訳ありませんが、旦那様はリーシュさんに勝ちます。その後私と当たる流れですが、私は旦那様と当たった時点で棄権します。旦那様には優勝して箔を付けていただかないとダメなんです。皆さん旦那様を甘く見すぎています。本当に凄い方なんですよ？リーシュさん達が５柱会議に行っている間、旦那様の成長を間近で見ていたのは私なんですから。転生者は珍しいですが、いないわけでもありません。転生後にランカーになった人も確かいましたね。


　でも、私を大和から解放してくれたのは旦那様しかいません。私を初めて助けてくれたのも旦那様です。


　自分で言うのも恥ずかしいのですが、私結構大和だと重要なポジションにいたんです。姉様に何かあった時には大和をまとめるのは私の役目。だけれど、その存在は公にはできない。小さい頃から厳しい戦闘訓練を受けてきました。外で目立つ事どころか名乗る事も許されなかったんです。そのお陰か他国にはこの通り存在はバレていましたが、私がそうだというのは全くバレていませんでしたね。ヘルメス様は何故私がわかったんでしょう？あの方も不思議な方です。
　大和での名乗る事も許されず、戦闘訓練だけひたすらこなす生活は本当に苦痛でした。
　友達はもちろんできませんでしたし、戦闘訓練も本気でやる事もなくなりました。だって手を抜かないと相手にならないんですよ？相手に悟られないように手を抜くのは大変でした。

　そりゃ強くなりますよ。それしか許されていなかったんですから。

　大和だとナータ様かタケミカヅチ様しか本気を受けきれる方はいません。ナータ様は何も言わないのでありがたかったですが、タケミカヅチ様からは「それほどの実力があるなら」と軍団長を押し付けられそうになりました。友達もいないのに部下ができるって滑稽ですよね？それに私は存在だけ、いるかいないかはうやむやにしておかなければいけなかった。


『私って生きてていいのかな』


　そこまで考えました。いるかいないかうやむやにしたいなら、私じゃなくてもいいですよね？誰か強い方が月読を名乗ればいいのです。私が月読である必要はありませんよね。


　でも、もういいんです。だって私は救われたんですから。何をされても何も仕返す事ができなかった私にロキ様が声を掛けてくれて、旦那様が助けてくれて、リーシュさんが話を聞いてくれました。そのお三方が他国の留学生で姉様の信頼に足る方だったので、存在を隠す必要もなかった。
　いえ、隠すどころか私が月読だと知っても全く気にしていませんでしたね。ツグミはツグミだろ？みたいな感じで。

　旦那様達と知り合ってからは私の見る世界は変わりました。モノクロから色鮮やかな世界へ。億劫だった塾へ行くのもお三方となら楽しくて、黄泉へ御使いに行く時も一緒に来ていただいて。


　最後は大和を離れられない運命と言う名の太い鎖を強引に引き千切ってくれた。


　普通、国のNo.２は他国へは行けません。代理というのもありますが、もし囚われでもしたら国際問題ですから。だから私を他国へ連れて行くというのは重罪なんです。本当に国自体が敵に回ります。仮にオリンポス十二神の誰かを拉致したとします。恐らく全面戦争ですよ？国の上層部は秘密の宝庫ですからね。まぁ、旦那様と仲の良い姉様が何とかしてくれると思うのですが、それでも普通はしません。

　感謝？私の気持ちはそんな言葉で表せるものではありません。お三方の為にこの命を使おうと思いましたが、きっとそんな事を言ったら怒られるのでしょうね。泣いても許してくれそうにありません。ですので私はこのままずっと皆さんと一緒にいる事にしました。

　もし大和へ私を連れ戻そうとする者が現れたなら…




　切ります。




　もう私は誰の指図も受けませんし、お三方の側を離れる事もありません。



　お三方のいるこの場所は私の世界の中心、そして未来の世界の中心。



　わかりませんか？旦那様はいずれ世界を救う器、ロキさんはその参謀でリーシュさんは右腕。私は左腕くらいにはなれるといいなと思っています。

　夢物語だと思いますか？

　女の勘を舐めてはいけませんよ？


　まぁ、以上の理由があるのでちょっとくらい本気を出しても許される…いえ、私がそうしたいのです。


　他国の強者？優勝候補？


　そこに転がっている者の事ですか？
　考え事をしていたら終わってしまってました。

　優勝候補がこの程度なら旦那様も無事リーシュさんと戦えるでしょう。

　嫉妬はないのか？リーシュさんと旦那様の関係は眩しく見えますし、羨ましくもあります。嫉妬は…無いとは言い切れません。でも、リーシュさんとロキさんが居て、今の旦那様ができているのは間違いありません。私たちは敵同士ではなく心を同じくする[同志]そう思っています。私もリーシュさんとロキさんが大好きですから。旦那様はとてもおモテになりますが、それは男の甲斐性で何とかしていただけるのではないかと信じています。もちろん旦那様の中身を見ていない女は切り…オホン、排除します。次の試合であのネメシスという女が勝ち上がってきたら、即排除します。

　控え室で旦那様を睨んでいたの、わかってますからね？

　そろそろ降りないと。旦那様の試合が遅くなってしまいます。あれ？観客の皆さん、どうして私を凝視してるんですか？降りていいんですよね？私、勝ちましたよね？泣いていいですか？