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リーシュの掌の上

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「レーヴァテイン…か」



『レーヴァテインという名は聞いたことがありますが、実在しないと聞いていましたが』



 ウズメが言う。




『それはこっちの世界の情報でしょう?皆、そんな自分たちに都合の悪い存在をそうそう認めないでしょうね』





『皆っ!ユシルは病み上がりなんだから、今日はもう解散しよ?多分話しててもわからないし、ユシルに協力してくれるんでしょ?なら、今日は寝かせてあげよう?』



(リーシュ、ありがたい。正直、色々有りすぎて頭の整理が追い付かない)



『そうね。今日は解散しましょう。あんたは明日から自分がどうしたいのか考えておきなさいね。はい、あげるわ』


 ロキが差し出してきたのはスキーズブラズニルでも使ったエリクサーの小瓶だった。



「これってめちゃくちゃ高いんじゃなかったっけ?」



『いいから飲みなさいよっ!私だってこの武器作っちゃった事に責任感じてんだから!』



 照れ隠しなのか目線を逸らしてロキは言う。



「わかった。ありがたく飲ませてもらうよ」



『そうよ、飲んでさっさと寝なさい。あんたが元気にならないとリーシュが落ち着かないんだから』



 俺はその言葉に甘え、その日はそのまま休むことにした。





 そして次の日の朝





 俺は全員を居間に集めた。



「皆、集まってくれてありがとう。昨日、今後の事を考えたんだけど、当分は自分を鍛え直す事にした」




『鍛え直すっていうのは、具体的にはどうするの?』



 リーシュが可愛く小首を傾げて聞いてくる。



「とりあえず、武闘エリアの講義に出る。で、帰ってきたら家でも鍛えたいんだ。だから、誰か練習に付き合ってくれないかな?主に近接戦闘で、俺はレーヴァテインは使わない。レーヴァテインは別の時間に練習するつもりだ」



 俺が羅刹に勝てなかったのはレーヴァテインを使いこなせなかったのもあるが、一番は羅刹と俺の実戦経験の差だと思った。羅刹は俺の前世も含めた人生の数十倍、下手をしたら数百倍の年月、戦場に身を置いていたはずだ。



『ハイ!ハ~イッ!近接はあたしが相手するよ♪』



 リーシュが手をビッと挙げる。




『リーシュ、あなたユシル相手にちゃんとできるの?』




 ロキが怪訝な顔で言う。




『大丈夫だよ!神器じゃなく木の棒でやるから、殺傷能力ないし♪』



『…あの…私もお相手致します。近接戦闘なら出来ますので…』



 ツグミが小さく手を挙げる。



「えっ!?ツグミって戦えるの!?」



『ユシル様、ツグミ様に失礼ですよ?ツグミ様は天照大御神様の妹君です。おそらく高天原でも3本の指に入ります』




(いやいやいや、チンピラにイジメられてたじゃん)



 顔に出てしまっていたのだろうか。察したようにウズメが続ける。



『ツグミ様は御身分を周囲に知られてはいけないのです。もし、お強いのを知られたら、天照大御神様の代わりに担ぎ上げよういう輩も出てきます。ですので、この前のチンピラたちにも従う事しか出来なかったのでしょう。お優しい方ですから。気の弱いところも多少ありますが』



『なるほどね。そうゆう事ならリーシュとツグミでローテーションすればいいじゃない?毎日は疲れそうだし』



『ロキ様、私も時間がある時は参加致します。協力すると申しましたので』



『あっそ、じゃあ、たまにウズメも参加ね』



「ロキは相手してくれないのか?」



『私は近接戦闘は得意じゃないし、どうせあんた怪我するんでしょ?エリクサーまではちょっと勿体ないから、骨折くらいまでなら治せる回復薬を量産しといてあげるわ。そしたら、実戦に近いレベルの練習できるでしょ?それに誰かがサポートに回らないといけないじゃない。私はレーヴァテインの練習に付き合ってあげるわよ』





 ・・・





『…何よ?』



『ローちゃんもちゃんとユシルの事考えてくれてるんだなぁ…って』


『…ですね。そんなにロキ様に想われて、私、手加減出来なくなりそうです』



『ユシル様とロキ様は合わないと思っておりましたが、世の中わからないものですね。このウズメ、まだまだわからない事があると実感しました』



「お前…そんなにちゃんと考えてくれてたのか」





 ・・・




 ロキの顔がぐんぐん赤くなっていき…ボンッと蒸気が上がる。




『ちっが~うっ!!皆、何言ってんの!?わ、私がこんなカスの事をまともに考えるはずないじゃない!め、面倒だからに決まってるじゃない!誰がこんなやつ』





「だよなぁ~、ロキってそうゆう感じだよな」





 ・・・





『ユシルって、たまにぶっ飛ばしたくなるくらい鈍感だよね?』



 リーシュが怖い事を言ってくる。




「え!?何で!?なんかした!?」




『最初はわざとかと思ってたけど、天然だったんだね!』



(リーシュほどじゃないと思うんだが)




『あっ、ところで、あたしも提案があるんだけど?』



「提案?」



『そうそう!ユシルを一人にすると毎回トラブルに巻き込まれてるから、ユシルの講義に毎回私達の誰かを連れていってほしいの!昨日ユシルが寝た後に話し合ったんだけどね?皆協力してくれるって♪』





「え!?ん?何?どうゆうこと?」




『だから、あんたの武闘エリアの講義に毎回誰かが一緒に行くって事よ』




「え?だって皆、講義は?」



『ん?休むよ?』



「行きたい講義あるだろ?」



『それはあるけど、4人でローテーションすれば全然支障ないし、ユシルは一人だと必ず問題起こすから』



『つまり、トラブルメイカーのあんたに皆合わせてあげんのよ』



「トラブルメイカーはお前だろうがっ!」



『はぁ!?喧嘩売ってんの!?』



 いつものように俺とロキの口喧嘩が始まろうとしていた瞬間




『…あの…ストップです…』



 止めたのがまさかのツグミだった。




『いいね♪ツグミちゃん♪』



(ツグミに仕込んだな)



 よしよしと頭をリーシュに撫でられ嬉しそうなツグミ



『私だけを慕ってると思ったら、強かね…ツグミ』



 ロキが少し寂しそうに呟く。



「ロキ、忘れちゃダメだ。ツグミを仕込んだのが誰なのかを」



『そうね。私達って実は手の平で躍らされてるのかしら』



「…かもな。俺達は何も知らないのかもしれない。頑張ろうな、俺達」



『そうね、なんか…頑張りましょう』



 俺とロキは強く握手を交わした。



『ん~♪皆、仲良くてよろしい♪』



『リーシュさんには逆らわないようにしておきましょう』



 ウズメがボソッと呟いた。




 俺達がリーシュの本質の一部を理解した瞬間だった。












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