運命のレヴル~友達増やして神様に喧嘩売りました~

黒雪ささめ

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トラブルメイカー

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 俺達はリーシュを見送った後、商店街のような店が建ち並ぶ通りをキョロキョロしながら歩いていた。近世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みで何故かイケメンと美女の比率がめちゃくちゃ高い。


(なんか俺、浮いてる気がする)


 クイクイッ…


『お兄さんっ♪ 観光ですか?』


 急に袖を引き話しかけられ、振り向いてみると美少女が俺を見ていた。少し幼さを残した将来絶世の美女になるであろう整った顔立ちに少し紫の混じったようなストレートの綺麗な黒髪、深淵を覗くかのような深く黒い瞳。周りの美女たちなど足下にも及ばないような美少女が目の前にいた。外見的には俺と同い年か少し年下くらいだろうか? 真っ黒いローブを着ているのでとても目立つ。全身ほぼ真っ黒なのだが、肌が白いので彼女の整った顔立ちが夜空に浮かぶ月のように美しく…俺は返答を忘れて見惚れてしまっていた。


『あの…お兄さん? 聞こえてます?』


「あっ、き、聞こえてます! 観光です! 観光してます!」


『よかった♪ なんだか不安そうな顔をされていたので、観光に来た方かなぁと思いまして♪ 何かお困りですか?』


(めっちゃいい子! しかも、この子が美少女過ぎるせいなのか、俺が浮いてるせいなのか、周りからの視線が痛い。そりゃ、これだけ可愛い子と俺がいたら釣り合わなすぎて悪目立ちするよなぁ)


「いえ、友達と待ち合わせで時間ができたので、その辺を見て回ろうかと思ったんですが、初めて来る街なのでどこを見たらいいか分からなくて。でも、特に困っているという訳でもないので大丈夫ですよ」


『あら♪ なら私が案内して差し上げますよ! 今日は時間がありますので』


 (えぇ~、何故そんな展開になるんだ!? 今会ったばかりだぞ!? でも、可愛い子との観光…いいなぁ…いや!)

「いえ、申し訳ないので。それに俺と一緒にいると変に目立ちますよ? 今だって俺のせいで周りからの視線が痛いですし…」


『そんなこと気にしないでくださいっ♪ 周りの目なんて気にしちゃダメですよ! さぁ、ご案内しますっ♪』


 そう言って彼女は俺の腕を引き、歩き始めた。


(周りの視線が痛い。でも、なんか顔がニヤけそう…)


 少し落ち着いてきたので、美少女に話しかけてみた。


「あの、ありがとうございます。なんかすいませんね。俺はユシルって言います。お名前を聞いてもいいですか?」


 すると、美少女が微笑みを浮かべて


『いえいえ♪ 私は、[ロザリー]です! よろしくお願いしますね♪』


 (ロザリーさんか……リーシュも郡を抜いて可愛いが、ロザリーさんも同じくらい可愛い。なんか突拍子もなかったがいい人そうだ)


そう思っていると


 ピチュ~!!


「あぁ、そうだった。この子は幼い朱雀のフェニと言います」


『あら、可愛いっ♪ 朱雀ですか…フェニちゃんもよろしくお願いしますね♪』


 ピッ、ピチュ~♪ 


「そう言えば、今どこへ向かってるんですか? 1時間ほどしたら、さっきの場所に戻らないといけないんですが…」


『そうなんですね!今はヴァルハラ城に向かっていますよ♪ 今見えている通り、とても高いのが印象的ですが、本当は近くで見た時の外観やその装飾がすごいんですよ』


 そう言い向けてくる笑顔の威力がすごい。


(この子と知り合えてよかった…リーシュ、なんかごめん… )


「へぇ~! 気になってはいたんですが、近くに行っても大丈夫なんですよね? なんかオーディンさん?が住んでるんですよね?」


『大丈夫ですよ♪…あれ? オーディン様をご存知ないんですか?』


 (やべっ! 多分俺がミドガルドからの転生者だって気付かれるとマズいよな? リーシュも驚いてたし)


「いえ、名前は聞いたことはもちろんありますよ!? 田舎者でして…」


『あ、そうなんですね! あの…ユシルさん?お互い敬語は止めません? せっかく知り合えたんですから、気楽に話しましょうよ♪』


 (こっちの人って敬語嫌いなのかな? リーシュもそうだったし)


「そうだね。よろしく! ロザリーさん!」


『うんっ♪ よろしくね! ユシルさん♪ あっ、見えてきたよっ♪』


 ロザリーさんと話していたら、あっという間にヴァルハラ城に着いた。

「…すげぇ」

 外壁は銀色に輝き、巨大で重厚な鈍色の扉、所々に施された金と宝石を散りばめた装飾が神々しさを際立たせていた。見た目というより、完全にオーラ……ただ見ているだけなのに圧倒されそうな何かがこの城にはあった。


『すごいでしょ? これぞ神の座す処って感じよね! さぁ、入りましょう!』


「え!? 入るの? てか、入れるの?…いや、入っちゃダメだよね!? 絶対怒られるよね!?」


『大丈夫よ♪ 私も用事があるの♪ 私に任せて!』


 (…いやいやいやいや、ダメでしょう!? オーディンいるんでしょ? 主神でしょ? リーシュの風結界ですら消滅するかもしれないのに、主神の怒りとか買ったら消滅確定でしょ!)

 アタフタしているとロザリーさんが巨大な扉を触り呟く。


『…[マナブレイク]』


ピシッ…ピシピシッ…ガシャーーン!!


何かが壊れる音が聞こえたが、見た目には何か変わった所などなかった。


『さぁ、入りましょ♪』


 そう言ってロザリーさんは俺の腕を引きながら重厚な扉を片手で開ける。俺は全力で扉から離れようとするがロザリーさんの力が強すぎて引きづられていく。


「くっ! 嘘だろ!? ロザリーさん! 離してくれっ!…っ…離せっ!!」


 美少女に抵抗したくはなかったが、確実にロザリーさんは普通じゃないので、俺は体に魔力を通して逆に引き戻すことにした。すると引きづられていた体が扉をくぐる直前で止まり、これから引き戻そうと力を入れた瞬間だった。


『ダメよ? あなたもここに用事があるんだから…[マナシール]』


突如、体から力が抜けた…いくらやっても魔力が体に通らず…


「くっ! 何でだ!? 魔力が…ロザリーさんっ!!」


『…』


「ロザリーさん! 急にどうしたんだ!? 止まってくれ!」




『…うっさいわね、諦めなさいよ。…あれ? この魔力…ユグドラシル? ん?…まさかね』


口調が明らかに変わった。


(この世界の奴らはみんな二重人格かよ!?)


「騙してたんだな! 何が目的だ!」


『はぁ? 騙した? 何言ってんのよ? ちゃんと案内してあげたじゃない。ヴァルハラ城に♪ 目的は……仕返し?ってとこかなぁ。そ~れっ!』


「っうわっ!?」


 引きづられ扉をくぐった後、ロザリーさん…いや、ロザリーに中庭のような場所に物凄い力で放り投げられた。


 (何なんだよ! 仕返しって…俺…何もしてねぇじゃん!)


 理不尽な言葉に頭に血が昇り、ロザリーに文句を言ってやろうと起き上がると…鎧を纏った衛兵たちに囲まれ槍を突き付けられていた。


「動くなっ! このヴァルハラ城に結界を破って侵入するとはっ!貴様、何が目的だっ!」


「…は? いやいや、俺は結界なんて破ってないし、侵入もしてないっ! そこのロザリーが結界を破って、俺をここに投げ込んだんだよ!!」


俺はロザリーのいた方向を指差すと


「貴様! 何を言っているっ! ロザリーだか誰だか知らんがお前以外ここにはいないではないか!!…さては貴様、オーディン様の命を狙っているのでは無かろうな!?…よく見れば大和の国の奴らと顔が似ているな…貴様…大和の国の暗殺集団[シノビ]の者だな!?」


 いつの間にかロザリーは居らず、俺しかいない状況になっていた。


「っ待て! 本当にロザリーって奴がいたんだ! それに俺はその[シノビ]とかいう集団でもないし、オーディンとやらの命も狙っちゃいないっ!」


「貴様ぁ…オーディン様を呼び捨てとは! 反逆者め、殺せ! コイツはオーディン様を呼び捨てにし、命を狙う暗殺者だっ! 跡形もなく消し飛ばして構わんっ!!」


「「「オゥ!!!」」」 


 俺を取り囲んでいた衛兵の2人が槍を振りかぶり降ろしてきた!


「クソッ!…違うって言ってんのにっ!」


 体に魔力を通し、脚に多目に魔力を集め起き上がった体勢のまま地面を蹴り飛ばす! 


…ドンッ!! …「ウァー!!」


 俺の後ろにいた衛兵2人に背中からぶつかり、城の壁に衛兵ごと吹き飛ぶ!今の衝撃で俺と壁に挟まれた衛兵2人は意識を失ったようだ。ともあれ…なんとか囲まれた状況を脱出できた。衛兵は後4人、俺は立ち上がり腕を上げ構える。


「…お前ら確認もせずにいきなり殺そうとしやがって、正当防衛だ。俺はこれから自衛のためにお前らをぶっ飛ばすっ!」


「反逆者め! ガキの貴様なんぞにアース神族である我等が負けるわけがないではないか!」


「言ってろっ!!」


 思いきり踏み込み衛兵の一人を蹴り飛ばす。もちろん、手加減なしに


ドーーーンッ!!


 城壁にめり込んだ。あと3人…残りの衛兵の一人が槍を突きだし、もう一人が槍を振り降ろしてきた! 俺は突き出された槍をわざとギリギリで左脇腹の方へと躱し、左肘と左膝でその槍をへし折る…そして、そのまま左膝を地面に降ろすと同時に右拳でその衛兵を殴り飛ばし、その勢いで回転し廻し蹴りで槍を振り降ろしていた衛兵を槍ごと城壁に蹴り飛ばした。


「あと一人! これで…」


最後の衛兵に殴りかかった瞬間



バァッン!!ビリリッ!!


「っくぁ!?」



 (何かに弾かれたっ!? この感触、リーシュに風結界で止められた時と同じだ)


しかも殴った瞬間、感電したような痺れを感じたので急いで拳を引き戻したのだ。


(ん?…何か、目の前にいる?) 


「貴様が侵入者か? 威勢のいいものだな。しかも、我が雷壁に触れて無傷とは……久々に楽しめそうだ」


 衛兵を守るように俺の目の前には身長2メートル以上の筋肉隆々の男がその体ほどありそうな巨大なハンマーを持ち立っていた。モンハンかと心の中でツッこんでいると衛兵が


「ト、トール様ッ!! 来てくださったのですね!」


 (…トール? ハンマー…モンハン…トール? ヴァルハラ? ん?…雷神トールか!! 

「雷神トール…なのか?」


「左様。我が名は雷神トール! アースガルドを守護するオーディン様の右腕なり。侵入者よ…貴様はここで消滅するが、名を名乗れ」


「消滅したくないし、完全に誤解だ! 俺はユシルという! 騙されてここに来たんだっ! 出ていけと言われれば直ぐに出ていくから、とりあえず話を聞いてくれ!!」




「…ユシルよ。問答無用!」


 いきなりトールが消えた。…ゾクッ…後ろを振り向くとトールがすでにハンマーを振り降ろしていた!俺は全力で横に跳ぶ。


ドガァーンッ!!


「うわっ!?」


 避けたはずなのに爆風で吹っ飛ばされた。砂埃が消えると振り降ろされた場所に5メートルほどの穴《・》が出来ていた。クレーターではない。完全な穴…空洞である。


「…あんなの食らったらマジで消滅するじゃねぇかっ!しかも、あの消えたように見えたスピード……魔力通してるから動体視力も上がってるはずなのに! 逃げるのは無理か…」


 (やるしかない。トールを戦闘不能にして逃げる! もうこれしかない)


俺は戦う覚悟を決めた。



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