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日常の終

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夕暮れの森の中


 俺、神代 由知かみしろ ゆしるは空を見上げながら歩いていた。

 15歳の時に祖父が亡くなって2年…家の裏山を段々と赤く染まっていく空を見上げながら歩くのがなんとなく心落ち着くので日課になっていた。

 俺にもう家族はいない。両親は物心つく前に亡くなったらしく、古武道の道場を開いていた祖父に育てられてきた。
 その祖父が亡くなってからは近所の叔母が学校関連や家の事を面倒見てくれている。よって、学校以外は一人でいる事がほとんどだった。

 そんないつもと変わらない日課の散歩だったはずなのに。

 人の気配もない、いつもの森の…いつもの道に…それはあった。

  木だ。もちろん森なのだから木があるのは当たり前なのだが、俺の記憶にないほどの大木だった。まるで神社などで祀られている神木のようだ。

「あれ? …こんな木、あったっけ?」

 近づいてみると他の木とは全く違うのがわかる。
 全体から水色の湯気のようなものが出ているからだ。

 恐る恐る幹に触れてみた。そこに木を触っている感触はなかった。


 それはまるで川に手を入れた時のような


 何かが指先から流れ込んでくるような



 このまま触れていたいと思わせるほどの心地よさを感じた。



 ズブッ…



 急に目の前が真っ暗になり、胃から熱いものがせり上がってきて思わず吐き出した。
 そして、耐え難い腹部の痛みと熱さを感じ、意識が遠退く。


「俺様のご馳走に勝手に触ってんじゃねぇよ! カスがっ!」


 それが俺がこの世界で聞いた最後の言葉だった。
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