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既視感がひどい冤罪婚約破棄とその後

後編

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隣国の皇子に求婚されて、嫁ぐ系の話なのか……

(それも既視感がありすぎて、もうお腹いっぱい……)

隣国の皇子の手を取って断罪を切り抜けるか、手を払って新たな道を歩むのか。どうしようか?目の前で言い争っているアイザックと隣国の皇子を眺めながら……あっ!

「キャロラインさんは私を虐めた人なんですよ」

ソニアが隣国の皇子に上目遣いで言い寄り出した。
「虐めの証拠は?」
「ソニアの証言だ」
「証言だけ?物的証拠もないのか」
「ソニアが嘘をつくはずがない!」

アイザックの頭悪い発言が繰り出されている。
もちろん実際に行ったことだが、ソニアの証言以外の証拠らしい証拠がないとは……もう少し頭の良い人だと思ったのだが。

隣国の皇子はうっすらと笑いを浮かべて……さて、私は隣国の皇子の手を取るべきなのだろうか?
偶に「隣国の皇子にすぐに乗り替えて痛い目をみる」というタイプの話がある。
たしかに、いきなり現れた異国の皇子に乗り替えるのって「王家と公爵家の間で結ばれた契約」だの「私達が破棄や白紙にすることはできません」等の発言した舌の根も乾かぬうちに、そんなことをしたらざまぁ対象に返り咲いても、何も言えない。


その後、ぐだぐだになった卒業パーティーは終わり、

「アイザック王子との婚約を白紙に。望むのは、それだけです」

婚約については父に任せて、巻き込まれたその他大勢の卒業生にお詫びをして歩いた。
アイザックが卒業パーティーを私物化したのが悪いのだが、私もソニアのことは虐めていたので。
私がソニアを虐めていなければ、みんなの前で「断罪」なんてことはしなかった……かどうかは知らないけど。

なんにせよ、みんなの楽しい時間を壊してしまったことをお詫びして歩いたのが、これが私にとって善い方向に働いた。

「お前が婚約者のキャロラインを蔑ろにして、他の女にうつつを抜かすからだろうが!」
「ですが!」
「だいたい、貴様の浮気を許してやってくれと、こちらから頼んでいたのだぞ」
「え……」
「卒業したら別れるから、学生の時だけは……とな。お前もモラトリアムだと解っていると思っていたから、わざわざ話さなかったが。まさか卒業して、浮気相手と別れるどころか、婚約者にいちゃもんを付けるとは思ってもいなかった」
「ですがキャロラインがソニアを虐めたのは事実で」
「お前が近づかなければ、その娘は危害を加えられることはなかった、それだけだ」
「……」
「その娘に本気ならば、王位を捨てればよかったのだ。まあ、こんなことをしでかしたのだから、王位を継がせることはできないが」
「そんな!」
「まさか、王位を継げると思っていたのか?アップルトン公爵の令嬢に対して、非礼を働いた男爵家の庶子と結ばれて?そう思っているのだとしたら、お前は本当に王位を継ぐのには向かないし、資格もない」
「…………」
「学生時代は色々と騒ぎを起こしたキャロラインだが、卒業パーティーで騒ぎを起こして悪かったと、卒業生全員にお詫び行脚をしたそうだ。あの傲慢な娘ですら、卒業し大人の一員となったら、すぐに大人の対応を取れるというのに、お前ときたら、司法権を脅かす断罪ごっこに興じるとは」

私の評価が上がり、下がっていたアイザックの評価は更に下がり、次期国王の座を失った。そのことにアイザックはショックを受けた。
どんな騒ぎを起こしても、自分が次期国王になることは揺るがないと、信じて疑っていなかったそうだ。
王位を継げないことが確定したアイザックは、生きていても仕方ないと自殺した……本当に自殺したのかどうかは、解らないけれど、深くは聞かなかった。
王子が自殺したのだから、ソニアと側近達は表向きは自害で、裏で処刑された。
親達は一斉に職を辞することはなかった。そんなことをしたら、国が迷惑を被るので。
たが数年の間に全員、その地位を退いた。


そして最後にいきなり現れた隣国の皇子だが、私と婚約が結ばれることはなかった。やっぱり国同士の問題があるので、パーティー会場で「婚約破棄したなら、結婚してくれ」などと言って来る皇子には、それなりに問題があったようだ。

そして今の私は、領地でスローライフ……のつもりだったが、前世の記憶で内政無双。これも婚約破棄モノとしては既視感しかないけれど、もうしばらくこの似非スローライフを頑張ってみることにする。
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