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彼らは旅立った。どこかへ
前編
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学園の卒業が終わり、パーティーが開かれた。
「カロリーナ・ベルビット!ルチアス王国第一王子である私は、お前との婚約を破棄し、新たにモニカ・リルーと婚約をする!」
その会場で、ルチアス王国の第一王子エルドが、いきなり婚約破棄と新たな婚約者のお披露目を始めた。
名前を呼ばれたカロリーナは声がした方を見ると、エルドとその腕にぶら下がるように密着しているモニカ。そして取り巻きの四名が、壇上にいた。
カロリーナは給仕に外に事態を伝えるよう指示し、
「出て来い!モニカに謝罪しろ!」
壇上で叫いているエルドたちの元へと向かった。
彼らはモニカがカロリーナに虐められたと騒ぎ、謝罪を要求してきたが、彼らの言い分はどれ一つ正しくはなかったので、カロリーナは拒絶した。
「謝罪はいたしません」
「なんという女だ!」
「もうお前の悪行は、皆が知ったのだ!言い逃れはできないぞ!」
「伯爵家の息子風情に、お前呼びされる言われはございません」
「カロリーナさん、そうやって身分を振りかざすなんて、ひどい!」
カロリーナは喚き散らす高貴な五人とモニカを無視し、
「私、ベルビット公爵家の娘カロリーナは、ルチアス王国の国王バーナビー陛下と側妃マリオンの子、エルド王子の間に婚約を結んだことはございません」
間違った解釈ができないように、事細かにはっきりと告げた。
「私が婚約破棄したからな!」
カロリーナは「はあ……」と淑女らしからぬ大きな溜息を吐き出し、眉間に皺を寄せ、不快感をあらわにして首を振る。
「破棄される婚約など、最初から無かったと言っているのです」
「婚約破棄をしたからだろう!」
「婚約したことはないと、申し上げているのですが」
「わたしによって婚約が破棄されたからだろう!」
カロリーナが「婚約はしていない」と言っても、エルドは自分が婚約破棄を告げたことに固執し、まるで話しにならない。
「はー。殿下の側にいる、宰相閣下のご子息サマにお尋ねしますけど、私は、そんなに難しいこと言ってます?」
カロリーナに話を振られた宰相の息子は、その質問に答えずに、
「本当に最初から、殿下と婚約していないのですか?」
先ほどまでの傲岸不遜な態度から一転、身分を弁えてカロリーナに尋ねた。
「していないわ。どうして私が殿下の婚約者だなんて、勘違いをしたのかしら?」
「い、家柄と年齢の釣り合いが……」
宰相の子息の言葉をカロリーナは馬鹿にする。
「ふーん。貴族や王族の婚姻には、家柄の釣り合いが必要だと知っていたのね」
先ほどまで男爵家の庶子モニカを、王妃にするのだと騒いでいた集団の一人に加わっていたことを思い出し、顔を真っ赤にして俯く。
「今更羞恥を覚えて、俯かれても」
「カロリーナさん!リュー君を虐めないで!」
空気が読めないモニカが、また会話に割って入ってくる。
「リュー君……まあ、素敵な愛称ですこと。で、リュー君とやら、私と殿下がいつ婚約したとお思いなのかしら?」
「あ、生まれて……すぐに……」
婚約したのだろうと、思っていた。エルドと年齢も家柄も釣り合いが取れているカロリーナ。彼女以外が婚約者に選ばれる筈がないと、彼らは信じて疑っていなかった。
「生まれてすぐに婚約したと思い込んでいたと。だから、何度も繰り返しますが、私は殿下と婚約しておりません。破棄も何も最初から婚約していないのです。そろそろ理解できましたか?」
宰相の息子は、エルドの今までの行動を思い出してみた。
エルドは婚約者のカロリーナと交流を深めることはせず、誕生日に贈り物もしたことはない。
何もしていなかったが、誰も何も言わなかった。
本来ならば、王子の婚約者に選ばれた女性とその家に対して、誠意なりを見せるために、なにか動くのが普通なのだが、エルドは何もしなかった。
エルドは「カロリーナは私のことが好きだから、公爵家の力を使って婚約者になった」と常々言っていた。
国王の婚約者になれるほどの権力を持っている公爵家の令嬢に、あんな扱いをしていたら、普通は注意されるはずだ。
だが誰かがエルドの態度に対して、何かを言っていた姿を見たことはなかった。当のカロリーナもその父である公爵も。
宰相の息子は、完全にこちらが間違ったことに気付き、自分の行く末の恐ろしさに震え膝から崩れ落ちた。
「カロリーナ・ベルビット!ルチアス王国第一王子である私は、お前との婚約を破棄し、新たにモニカ・リルーと婚約をする!」
その会場で、ルチアス王国の第一王子エルドが、いきなり婚約破棄と新たな婚約者のお披露目を始めた。
名前を呼ばれたカロリーナは声がした方を見ると、エルドとその腕にぶら下がるように密着しているモニカ。そして取り巻きの四名が、壇上にいた。
カロリーナは給仕に外に事態を伝えるよう指示し、
「出て来い!モニカに謝罪しろ!」
壇上で叫いているエルドたちの元へと向かった。
彼らはモニカがカロリーナに虐められたと騒ぎ、謝罪を要求してきたが、彼らの言い分はどれ一つ正しくはなかったので、カロリーナは拒絶した。
「謝罪はいたしません」
「なんという女だ!」
「もうお前の悪行は、皆が知ったのだ!言い逃れはできないぞ!」
「伯爵家の息子風情に、お前呼びされる言われはございません」
「カロリーナさん、そうやって身分を振りかざすなんて、ひどい!」
カロリーナは喚き散らす高貴な五人とモニカを無視し、
「私、ベルビット公爵家の娘カロリーナは、ルチアス王国の国王バーナビー陛下と側妃マリオンの子、エルド王子の間に婚約を結んだことはございません」
間違った解釈ができないように、事細かにはっきりと告げた。
「私が婚約破棄したからな!」
カロリーナは「はあ……」と淑女らしからぬ大きな溜息を吐き出し、眉間に皺を寄せ、不快感をあらわにして首を振る。
「破棄される婚約など、最初から無かったと言っているのです」
「婚約破棄をしたからだろう!」
「婚約したことはないと、申し上げているのですが」
「わたしによって婚約が破棄されたからだろう!」
カロリーナが「婚約はしていない」と言っても、エルドは自分が婚約破棄を告げたことに固執し、まるで話しにならない。
「はー。殿下の側にいる、宰相閣下のご子息サマにお尋ねしますけど、私は、そんなに難しいこと言ってます?」
カロリーナに話を振られた宰相の息子は、その質問に答えずに、
「本当に最初から、殿下と婚約していないのですか?」
先ほどまでの傲岸不遜な態度から一転、身分を弁えてカロリーナに尋ねた。
「していないわ。どうして私が殿下の婚約者だなんて、勘違いをしたのかしら?」
「い、家柄と年齢の釣り合いが……」
宰相の子息の言葉をカロリーナは馬鹿にする。
「ふーん。貴族や王族の婚姻には、家柄の釣り合いが必要だと知っていたのね」
先ほどまで男爵家の庶子モニカを、王妃にするのだと騒いでいた集団の一人に加わっていたことを思い出し、顔を真っ赤にして俯く。
「今更羞恥を覚えて、俯かれても」
「カロリーナさん!リュー君を虐めないで!」
空気が読めないモニカが、また会話に割って入ってくる。
「リュー君……まあ、素敵な愛称ですこと。で、リュー君とやら、私と殿下がいつ婚約したとお思いなのかしら?」
「あ、生まれて……すぐに……」
婚約したのだろうと、思っていた。エルドと年齢も家柄も釣り合いが取れているカロリーナ。彼女以外が婚約者に選ばれる筈がないと、彼らは信じて疑っていなかった。
「生まれてすぐに婚約したと思い込んでいたと。だから、何度も繰り返しますが、私は殿下と婚約しておりません。破棄も何も最初から婚約していないのです。そろそろ理解できましたか?」
宰相の息子は、エルドの今までの行動を思い出してみた。
エルドは婚約者のカロリーナと交流を深めることはせず、誕生日に贈り物もしたことはない。
何もしていなかったが、誰も何も言わなかった。
本来ならば、王子の婚約者に選ばれた女性とその家に対して、誠意なりを見せるために、なにか動くのが普通なのだが、エルドは何もしなかった。
エルドは「カロリーナは私のことが好きだから、公爵家の力を使って婚約者になった」と常々言っていた。
国王の婚約者になれるほどの権力を持っている公爵家の令嬢に、あんな扱いをしていたら、普通は注意されるはずだ。
だが誰かがエルドの態度に対して、何かを言っていた姿を見たことはなかった。当のカロリーナもその父である公爵も。
宰相の息子は、完全にこちらが間違ったことに気付き、自分の行く末の恐ろしさに震え膝から崩れ落ちた。
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