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不実な婚約者との婚約解消後、お見合いをした
不実な婚約者との婚約解消後、お見合いをした
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ロナは裕福な子爵家の一人娘だ。
祖父がやり手の商人で、男爵位を買った。爵位を得たことで更に商売を発展させ、父の代で子爵になった。
そんな財力を目当てに、多くの貧乏貴族から婿入りの申し込みがあった。
そんな貧乏貴族の中から選ばれたのが、侯爵家の三男リュークだった。
リュークは格下の新興貴族に婿に出されることを不服に思い、ロナに対して酷い態度を取った。
「高貴な我が家の血筋が欲しいんだろう」
「おれの心まで自由にできると思うなよ」
「成金の家に婿に入ってやるんだ、ありがたがれ!」
「お前との結婚は義務だ。おれの愛は望むな」
……などなど、好き放題言い放ち、言葉通り放埒な態度を取った。
そんな婚約は1年と経たずに解消。
婚約解消の場で、リューク一人だけが驚き、叫き、そして茫然自失となった。リュークはロナや子爵家に、簡単に捨てられると思っていなかった。
捨てるのは上流貴族の自分だと、信じて疑っていなかった。
「お父さま、血筋もそうですが、もう少し弁えているの」
「いやいや、こんなに無礼だとは思わなかったのだ。上流の貴族の血筋がこんなにも下品で頭が悪いなど、思わないだろう」
リュークたち家族の前でロナたち家族は言い放った
――――――
リュークとの婚約解消から三ヶ月後、ロナはお見合いをしていた。
相手はリュークと同じ、伝統ある侯爵家で財政難。少しだけ違うのは、侯爵家の長男ということ。
跡取りの座は、ロナとの間に生まれた子に継がせたいとの申し出てきた。
「バグナス公爵家のその後を、ご存じですか?」
ロナとの見合いでフランクは、リュークの実家のその後を知っているかと尋ねてきた。
「知りませんが」
ロナは知らないというより、興味がなかった。
「こちらからの持参金を当て込んで、随分と買い物をしていたそうです。金は無くとも子爵家の名を出せば、買い物はすんなりと出来たようですが、あてにしていた婚約がなくなり、多くの店から訴えられているそうです」
リュークたちバグナス公爵家は、貴族なので訴えられることはないと高をくくっていたのだが、彼らのような見栄っ張りは貴族御用達の高級店でしか購入しない。
高級店はバグナス公爵家以外の家とも繋がりがあるので、他の貴族を頼りに訴えを起こすのは簡単なこと。
バグナス公爵家はそんな単純な図式すら、解っていなかった。
「そうですか。大変ですね」
「可哀想だとお思いですか?」
「さあ?関係のないことなので」
フランクはその後も、バグナス公爵家の凋落振りを話した。
曰く、長兄は離婚され、妻が娘を連れて実家に帰った
曰く、次兄も両親が金の無心にくるので、離縁されて実家に返された
曰く、使用人たちが給与未払いで次々と辞職している
曰く、手っ取り早く現金を手に入れるため圧政をしき、激しい抵抗を受けている
曰く、領地の不安を早く解消するよう、勅命がくだった
……等。ロナは曖昧な微笑みを浮かべながら、フランクの話を聞き、見合いは終わりとなった。
「ロナ。今回の相手はどうだ?」
「リュークよりあり得ませんわ」
「どんな所がだ?」
「始終嬉しそうに、噂話を語るところです。わたくし、一度たりともバグナス公爵家のその後を聞きたいなど言っていないのに、ずっと語っていました」
「それは、話題選びが……」
「わたくし、前の婚約者が没落し、泥水を啜って生きていると聞かされて喜ぶような人間ではありません。見合い相手は、わたくしがそんな下らない話を聞いて喜ぶと思っておりましたが」
「ロナはバグナス家の没落を聞いても、楽しくなかったのか?」
「興味もありません。とにかくこのフランクという方と結婚したら、話題と称していつまでもバグナス公爵家の没落を語りそうなので、お断りします」
「解った」
「お父さま、次が最後のチャンスですよ。人間性が優れているとまでは言いませんが、この二人よりももう少し真面な人間を連れてきてください。そうでなければ、わたくし、結婚しませんので」
こうしてフランクは婚約を断られ、フランクの実家の侯爵家もリュークの実家バグナス公爵家と同じような末路を辿ることになり、両家ともロナが良縁に恵まれたころに、爵位を返上して一家はどこかに消えた。
祖父がやり手の商人で、男爵位を買った。爵位を得たことで更に商売を発展させ、父の代で子爵になった。
そんな財力を目当てに、多くの貧乏貴族から婿入りの申し込みがあった。
そんな貧乏貴族の中から選ばれたのが、侯爵家の三男リュークだった。
リュークは格下の新興貴族に婿に出されることを不服に思い、ロナに対して酷い態度を取った。
「高貴な我が家の血筋が欲しいんだろう」
「おれの心まで自由にできると思うなよ」
「成金の家に婿に入ってやるんだ、ありがたがれ!」
「お前との結婚は義務だ。おれの愛は望むな」
……などなど、好き放題言い放ち、言葉通り放埒な態度を取った。
そんな婚約は1年と経たずに解消。
婚約解消の場で、リューク一人だけが驚き、叫き、そして茫然自失となった。リュークはロナや子爵家に、簡単に捨てられると思っていなかった。
捨てるのは上流貴族の自分だと、信じて疑っていなかった。
「お父さま、血筋もそうですが、もう少し弁えているの」
「いやいや、こんなに無礼だとは思わなかったのだ。上流の貴族の血筋がこんなにも下品で頭が悪いなど、思わないだろう」
リュークたち家族の前でロナたち家族は言い放った
――――――
リュークとの婚約解消から三ヶ月後、ロナはお見合いをしていた。
相手はリュークと同じ、伝統ある侯爵家で財政難。少しだけ違うのは、侯爵家の長男ということ。
跡取りの座は、ロナとの間に生まれた子に継がせたいとの申し出てきた。
「バグナス公爵家のその後を、ご存じですか?」
ロナとの見合いでフランクは、リュークの実家のその後を知っているかと尋ねてきた。
「知りませんが」
ロナは知らないというより、興味がなかった。
「こちらからの持参金を当て込んで、随分と買い物をしていたそうです。金は無くとも子爵家の名を出せば、買い物はすんなりと出来たようですが、あてにしていた婚約がなくなり、多くの店から訴えられているそうです」
リュークたちバグナス公爵家は、貴族なので訴えられることはないと高をくくっていたのだが、彼らのような見栄っ張りは貴族御用達の高級店でしか購入しない。
高級店はバグナス公爵家以外の家とも繋がりがあるので、他の貴族を頼りに訴えを起こすのは簡単なこと。
バグナス公爵家はそんな単純な図式すら、解っていなかった。
「そうですか。大変ですね」
「可哀想だとお思いですか?」
「さあ?関係のないことなので」
フランクはその後も、バグナス公爵家の凋落振りを話した。
曰く、長兄は離婚され、妻が娘を連れて実家に帰った
曰く、次兄も両親が金の無心にくるので、離縁されて実家に返された
曰く、使用人たちが給与未払いで次々と辞職している
曰く、手っ取り早く現金を手に入れるため圧政をしき、激しい抵抗を受けている
曰く、領地の不安を早く解消するよう、勅命がくだった
……等。ロナは曖昧な微笑みを浮かべながら、フランクの話を聞き、見合いは終わりとなった。
「ロナ。今回の相手はどうだ?」
「リュークよりあり得ませんわ」
「どんな所がだ?」
「始終嬉しそうに、噂話を語るところです。わたくし、一度たりともバグナス公爵家のその後を聞きたいなど言っていないのに、ずっと語っていました」
「それは、話題選びが……」
「わたくし、前の婚約者が没落し、泥水を啜って生きていると聞かされて喜ぶような人間ではありません。見合い相手は、わたくしがそんな下らない話を聞いて喜ぶと思っておりましたが」
「ロナはバグナス家の没落を聞いても、楽しくなかったのか?」
「興味もありません。とにかくこのフランクという方と結婚したら、話題と称していつまでもバグナス公爵家の没落を語りそうなので、お断りします」
「解った」
「お父さま、次が最後のチャンスですよ。人間性が優れているとまでは言いませんが、この二人よりももう少し真面な人間を連れてきてください。そうでなければ、わたくし、結婚しませんので」
こうしてフランクは婚約を断られ、フランクの実家の侯爵家もリュークの実家バグナス公爵家と同じような末路を辿ることになり、両家ともロナが良縁に恵まれたころに、爵位を返上して一家はどこかに消えた。
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