【短編集】ざまぁ

彼岸花

文字の大きさ
上 下
26 / 26
不実な婚約者との婚約解消後、お見合いをした

不実な婚約者との婚約解消後、お見合いをした

しおりを挟む
ロナは裕福な子爵家の一人娘だ。
祖父がやり手の商人で、男爵位を買った。爵位を得たことで更に商売を発展させ、父の代で子爵になった。

そんな財力を目当てに、多くの貧乏貴族から婿入りの申し込みがあった。

そんな貧乏貴族の中から選ばれたのが、侯爵家の三男リュークだった。
リュークは格下の新興貴族に婿に出されることを不服に思い、ロナに対して酷い態度を取った。

「高貴な我が家の血筋が欲しいんだろう」
「おれの心まで自由にできると思うなよ」
「成金の家に婿に入ってやるんだ、ありがたがれ!」
「お前との結婚は義務だ。おれの愛は望むな」

……などなど、好き放題言い放ち、言葉通り放埒な態度を取った。
そんな婚約は1年と経たずに解消。

婚約解消の場で、リューク一人だけが驚き、叫き、そして茫然自失となった。リュークはロナや子爵家に、簡単に捨てられると思っていなかった。

捨てるのは上流貴族の自分だと、信じて疑っていなかった。

「お父さま、血筋もそうですが、もう少し弁えているの」
「いやいや、こんなに無礼だとは思わなかったのだ。上流の貴族の血筋がこんなにも下品で頭が悪いなど、思わないだろう」

リュークたち家族の前でロナたち家族は言い放った

――――――

リュークとの婚約解消から三ヶ月後、ロナはお見合いをしていた。
相手はリュークと同じ、伝統ある侯爵家で財政難。少しだけ違うのは、侯爵家の長男ということ。
跡取りの座は、ロナとの間に生まれた子に継がせたいとの申し出てきた。

「バグナス公爵家のその後を、ご存じですか?」

ロナとの見合いでフランクは、リュークの実家のその後を知っているかと尋ねてきた。

「知りませんが」

ロナは知らないというより、興味がなかった。

「こちらからの持参金を当て込んで、随分と買い物をしていたそうです。金は無くとも子爵家の名を出せば、買い物はすんなりと出来たようですが、あてにしていた婚約がなくなり、多くの店から訴えられているそうです」

リュークたちバグナス公爵家は、貴族なので訴えられることはないと高をくくっていたのだが、彼らのような見栄っ張りは貴族御用達の高級店でしか購入しない。
高級店はバグナス公爵家以外の家とも繋がりがあるので、他の貴族を頼りに訴えを起こすのは簡単なこと。
バグナス公爵家はそんな単純な図式すら、解っていなかった。

「そうですか。大変ですね」
「可哀想だとお思いですか?」
「さあ?関係のないことなので」

フランクはその後も、バグナス公爵家の凋落振りを話した。

曰く、長兄は離婚され、妻が娘を連れて実家に帰った
曰く、次兄も両親が金の無心にくるので、離縁されて実家に返された
曰く、使用人たちが給与未払いで次々と辞職している
曰く、手っ取り早く現金を手に入れるため圧政をしき、激しい抵抗を受けている
曰く、領地の不安を早く解消するよう、勅命がくだった

……等。ロナは曖昧な微笑みを浮かべながら、フランクの話を聞き、見合いは終わりとなった。

「ロナ。今回の相手はどうだ?」
「リュークよりあり得ませんわ」
「どんな所がだ?」
「始終嬉しそうに、噂話を語るところです。わたくし、一度たりともバグナス公爵家のその後を聞きたいなど言っていないのに、ずっと語っていました」
「それは、話題選びが……」
「わたくし、前の婚約者が没落し、泥水を啜って生きていると聞かされて喜ぶような人間ではありません。見合い相手は、わたくしがそんな下らない話を聞いて喜ぶと思っておりましたが」
「ロナはバグナス家の没落を聞いても、楽しくなかったのか?」
「興味もありません。とにかくこのフランクという方と結婚したら、話題と称していつまでもバグナス公爵家の没落を語りそうなので、お断りします」
「解った」
「お父さま、次が最後のチャンスですよ。人間性が優れているとまでは言いませんが、この二人よりももう少し真面な人間を連れてきてください。そうでなければ、わたくし、結婚しませんので」

こうしてフランクは婚約を断られ、フランクの実家の侯爵家もリュークの実家バグナス公爵家と同じような末路を辿ることになり、両家ともロナが良縁に恵まれたころに、爵位を返上して一家はどこかに消えた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

王太子から婚約破棄……さぁ始まりました! 制限時間は1時間 皆様……今までの恨みを晴らす時です!

Ryo-k
恋愛
王太子が婚約破棄したので、1時間限定でボコボコにできるわ♪ ……今までの鬱憤、晴らして差し上げましょう!!

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

逆恨みをした侯爵令嬢たちの末路~せっかくのチャンスをふいにした結果~

柚木ゆず
恋愛
 王立ラーサンルズ学院の生徒会メンバーである、侯爵令嬢パトリシアと侯爵令息ロベール。二人は同じく生徒会に籍を置く格下であり後輩のベルナデットが自分たちより支持されていることが許せず、ベルナデットが学院に居られなくなるよう徹底的に攻撃をすると宣告。調子に乗った罰としてたっぷり苦しめてやると、揃って口の端を吊り上げました。 「パトリシア様っ、ロベール様! おやめください!」  ですがそんな二人は、まだ知りません。  自分たちは、最初で最後のチャンスを逃してしまったことを。自分達は、最悪のタイミングで宣告してしまったということを――。

さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます

夜桜
恋愛
 令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。  アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。

処理中です...