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22.騎士のお姫様
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「みんなー!新しい本とペンと紙を持ってきたわよ!」
リーリエは学院祭で得た利益をキレイな本と文房具にして、学院生からの寄付として教会に併設されている孤児院に持ってきた。
王都には孤児院がいくつかあって、それぞれに分配したので、たくさんという訳にはいかなかったが、子どもたちは大喜びだ。
「新しい本!これ、お姫様のお話がいい!お姉ちゃん、早く読んで!」
リーリエはあっという間に、女の子たちに取り囲まれた。
「ぼくはこっちの冒険物語がいい!」
少し出遅れた男の子たちは、リーリエが女の子たちに囲まれているのを見て、読んでもらえるのは随分後になりそうだと察する。
誰か他に読んでくれる人はいないかと部屋の中を見渡して、壁際にひっそりと佇んでいるレオナルドに目をつけた。
「お兄ちゃん!本読める?」
レオナルドには今まで剣の相手しかしてもらったことがなかったので、一応確認する。
「これ!この本読んで!」
目をキラキラさせて迫ってくる子どもたちに怯んだような顔になったが、「読んで読んで」圧力に負けて、小さくため息を吐いた後、本を受け取った。
リーリエはレオナルドが男の子たちに囲まれて、本を読む姿をチラリと見た。
レオナルドさんは無表情で無愛想だけど、なんだかんだで優しいのよね。
子どもたちが色々言っても怒るようなことはないし。
「ある国にとても美しいお姫様がいました。お姫様があまりに美しいので、何度も攫われそうになります。
でも、お姫様の側にはいつも守ってくれるとても凛々しい騎士がいました」
リーリエが本を読み始めると、女の子たちは目を輝かせて聞き入っている。
「さまざまな危機を乗り越え、お姫様と騎士はいつしかお互いが一番大切な人となりました。しかし、お姫様の美しさはとうとう魔王の耳にまで届いてしまいました」
女の子たちは、お姫様が魔王に攫われる場面で不安そうな顔になる。
「騎士は傷だらけになりながらも、魔王を何とか打ち倒し、お姫様を取り戻しました」
「よかったー」
子どもたちのホッとした様子が微笑ましい。
「騎士はお姫様に結婚を申し込み、お姫様は喜んで騎士の手を取りました。みんなに祝福された二人はいつまでも仲良く暮らしました」
リーリエは読み終わった本を閉じ、子どもたちの楽しそうな顔を見た。
「リーリエお姉ちゃん、お姫様みたい」
ルーシーが無邪気な笑顔をリーリエに向けてくるが、ルーシーの言葉には戸惑いしかない。
「お姉ちゃんはお姫様じゃないよ」
「えー、だっていつも騎士に守られてるよ」
「そっかぁ、そうだね」
女の子たちがレオナルドの方に視線を向ける。
ん?レオナルドさんが護衛してくれてるから?
「わたしはお姫様じゃないよ」
間違った認識をそのままにしておけないので、一応否定しておく。
「本当のお姫様って意味じゃないよ」
十歳のサラが呆れたような目で見てくる。
ん~?どういうこと?
「騎士のお姫様ってことよ」
したり顔で頷くサラ。
騎士のお姫様?
レオナルドの方を見ると、あちらも本を読み終わったのか、顔を上げたレオナルドと目が合った。
いつもよりも穏やかな顔には、ほんの少しの笑みが浮かんでいる。
レオナルドさんが、レオナルドさんが笑ってる?
いつも無表情なレオナルドの口角がほんの少し上がっているだけで、すごい衝撃だった。
元々美丈夫だと思っていたレオナルドの笑顔は破壊力抜群で、リーリエの思考が止まってしまった。
すっごいカッコイイ…
ルーシーがちょいちょいと服を引っ張られて、我に返ると、火照っている顔を隠すように、慌てて次の本を開いた。
リーリエは学院祭で得た利益をキレイな本と文房具にして、学院生からの寄付として教会に併設されている孤児院に持ってきた。
王都には孤児院がいくつかあって、それぞれに分配したので、たくさんという訳にはいかなかったが、子どもたちは大喜びだ。
「新しい本!これ、お姫様のお話がいい!お姉ちゃん、早く読んで!」
リーリエはあっという間に、女の子たちに取り囲まれた。
「ぼくはこっちの冒険物語がいい!」
少し出遅れた男の子たちは、リーリエが女の子たちに囲まれているのを見て、読んでもらえるのは随分後になりそうだと察する。
誰か他に読んでくれる人はいないかと部屋の中を見渡して、壁際にひっそりと佇んでいるレオナルドに目をつけた。
「お兄ちゃん!本読める?」
レオナルドには今まで剣の相手しかしてもらったことがなかったので、一応確認する。
「これ!この本読んで!」
目をキラキラさせて迫ってくる子どもたちに怯んだような顔になったが、「読んで読んで」圧力に負けて、小さくため息を吐いた後、本を受け取った。
リーリエはレオナルドが男の子たちに囲まれて、本を読む姿をチラリと見た。
レオナルドさんは無表情で無愛想だけど、なんだかんだで優しいのよね。
子どもたちが色々言っても怒るようなことはないし。
「ある国にとても美しいお姫様がいました。お姫様があまりに美しいので、何度も攫われそうになります。
でも、お姫様の側にはいつも守ってくれるとても凛々しい騎士がいました」
リーリエが本を読み始めると、女の子たちは目を輝かせて聞き入っている。
「さまざまな危機を乗り越え、お姫様と騎士はいつしかお互いが一番大切な人となりました。しかし、お姫様の美しさはとうとう魔王の耳にまで届いてしまいました」
女の子たちは、お姫様が魔王に攫われる場面で不安そうな顔になる。
「騎士は傷だらけになりながらも、魔王を何とか打ち倒し、お姫様を取り戻しました」
「よかったー」
子どもたちのホッとした様子が微笑ましい。
「騎士はお姫様に結婚を申し込み、お姫様は喜んで騎士の手を取りました。みんなに祝福された二人はいつまでも仲良く暮らしました」
リーリエは読み終わった本を閉じ、子どもたちの楽しそうな顔を見た。
「リーリエお姉ちゃん、お姫様みたい」
ルーシーが無邪気な笑顔をリーリエに向けてくるが、ルーシーの言葉には戸惑いしかない。
「お姉ちゃんはお姫様じゃないよ」
「えー、だっていつも騎士に守られてるよ」
「そっかぁ、そうだね」
女の子たちがレオナルドの方に視線を向ける。
ん?レオナルドさんが護衛してくれてるから?
「わたしはお姫様じゃないよ」
間違った認識をそのままにしておけないので、一応否定しておく。
「本当のお姫様って意味じゃないよ」
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ん~?どういうこと?
「騎士のお姫様ってことよ」
したり顔で頷くサラ。
騎士のお姫様?
レオナルドの方を見ると、あちらも本を読み終わったのか、顔を上げたレオナルドと目が合った。
いつもよりも穏やかな顔には、ほんの少しの笑みが浮かんでいる。
レオナルドさんが、レオナルドさんが笑ってる?
いつも無表情なレオナルドの口角がほんの少し上がっているだけで、すごい衝撃だった。
元々美丈夫だと思っていたレオナルドの笑顔は破壊力抜群で、リーリエの思考が止まってしまった。
すっごいカッコイイ…
ルーシーがちょいちょいと服を引っ張られて、我に返ると、火照っている顔を隠すように、慌てて次の本を開いた。
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