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10.悪役令嬢(仮)からのお誘い
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パトリシアはたくさんの取り巻き令嬢がいるにも関わらず、なぜかリーリエの隣の席に座り、にっこりと微笑んでいる。
えっと…なぜ?
悪役令嬢(仮)は平民のリーリエなんかに近寄らないものなのでは??
戸惑うリーリエを他所に
「聖属性の方が今年入学されるって聞いてましたが、リーリエ様のことでしたのね」
「虹色の光を出すことができるとお聞きしましたわ。友人がテストの時に見て、すごく神秘的だったと感激してましたの。わたくしも是非拝見したいわ」
「まぁ!素敵ね。わたくしも是非!」
パトリシアの取り巻き令嬢たちが目を輝かせて、リーリエを見ている。
神秘的な光?
ここは、あんなショボい光の玉しか出せないあなたがいるようなクラスじゃないのよ!とか言われる場面じゃ…?
「まぁまぁ、あなたたち、ここでは勝手に魔法を使うことが禁じられてるのよ。リーリエ様を困らせちゃダメよ」
パトリシアが取り巻きたちを、おっとりと嗜める。
「そうでしたわね。申し訳ありません」
取り巻き令嬢たちがしゅんとして謝った。
「えっ、えっ、そんなことで、謝らないで下さい。こちらこそなんかすみません」
明らかに身分の高そうな人たちに頭を下げられ、慌てて止める。
平民が貴族令嬢に頭を下げさせてるなんて、みんなに「うわー、とんでもない奴いる」って思われてるに違いない。
ざまぁされるヒロインにならないようにしてるのに、これはなんのフラグ?
わたわたとしている間に先生が入ってきたので、話がそこで終わってくれた。
よかった。ありがとう、先生。
担任の先生はウォルター・ブラドという二十代半ばくらいで少し垂れ目の茶色の瞳の優しそうな先生だった。
先生もイケメンだわ。
ブラド先生も攻略対象者っぽい。
担任の先生だけに、できるかどうか分からないけど、極力近づかないようにしたいところよね。
まずはブラドからこれからの学校生活の説明があり、その後、生徒が順に自己紹介をしていくことになった。
「フェルナンド・ゴールディです。魔力属性は水です。よろしくお願いします」
窓際の一番前の席に座っている生徒から始まった自己紹介の三人目で見つけた、目がくりっとしてかわいい感じの男子生徒。
これは、攻略対象者なのでは?
年下じゃないけど、年下キャラっぽい。
非常に怪しい。彼にも近づかないようにしよう。
「リーリエです。魔力は聖属性です。よろしくお願いします」
自分の自己紹介をサラッ済ませると、他の攻略対象者候補がいないか、心の中でチェックを続けたが、他にはピンとくる人はいなかった。
パトリシアの取り巻き令嬢たちはやはり、いずれも高位貴族で、背が高くてスラっとしているクールビューティーなスージー・トワイト侯爵令嬢、小柄で小動物のような可愛らしさのあるマリア・シンテラド伯爵令嬢、中肉中背のほんわかした印象のあるチェルシー・デイトナル伯令嬢。
悪役令嬢(仮)の取り巻き令嬢と言えば、キツめの顔立ちと性格が定番な気がするが、彼女たちはそんな感じではない。
なんだか腑に落ちないものの、悪役令嬢が主役の物語だったりすると、そんなものかもしれない。
今日はこれだけで終わり、本格的に授業が始まるのは明日からだ。
帰ろうとしたところで、パトリシアに声を掛けられた。
「リーリエ様、この後、少しだけお時間頂けませんか?ご一緒していただきたいところがあるんですけど」
「わたし、ですか?」
リーリエが訝しげな目を向けた。
今日初めて会ったパトリシアに誘われる理由が想像つかない。
「三十分ほどでいいんですけど。あっ、お迎えの方が来ていらっしゃるのよね?」
「それはまぁ…」
「その方には、少し遅れることをお伝えさせて頂くので、ダメですか?」
申し訳なさそうに眉尻が下がっているが、言っていることは、なかなかに強引だ。
まさか!表向きは良好な関係に見せかけて、裏で「卑しい平民のくせして、わたくしの婚約者に色目を使わないでくださる?」とか難癖をつけられる?
ライハート殿下には全く近づいてはないけど、入学式の日のあれだけで、許しがたいとか?
えー、なんだろう。気になる。
「少しだけなら…」
好奇心に負けて、パトリシアについて行くことにした。
「では、わたくしがお迎えの方にご連絡しますわ。あの素敵な騎士様ですわよね」
「わたくしもご一緒いたしますわ」
「わたくしも!」
スージー、マリア、チェルシーの目がきらきらと輝いて、るんるんと立ち去るのを呆然と見送った。
まさか、このために…?
なんてことはもちろんなく、パトリシアについて歩いて行くと、リーリエたちの教室のある中央棟を出て、東棟にやって来た。
東棟には教室はなく、教職員の研究室などが入っている。
こんなところになんの用事があるのかと不思議に思いながらも、パトリシアが黙って歩いて行くので、リーリエもその後に従って歩く。
そのままパトリシアは迷うことなく、東棟の中を進んで行き、とあるドアの前で立ち止まった。
リーリエはそのドアに掛かっているプレートを見て、「うげっ」と思わず声を出してしまった。
そのプレートには「生徒会室」と書かれていた。
えっと…なぜ?
悪役令嬢(仮)は平民のリーリエなんかに近寄らないものなのでは??
戸惑うリーリエを他所に
「聖属性の方が今年入学されるって聞いてましたが、リーリエ様のことでしたのね」
「虹色の光を出すことができるとお聞きしましたわ。友人がテストの時に見て、すごく神秘的だったと感激してましたの。わたくしも是非拝見したいわ」
「まぁ!素敵ね。わたくしも是非!」
パトリシアの取り巻き令嬢たちが目を輝かせて、リーリエを見ている。
神秘的な光?
ここは、あんなショボい光の玉しか出せないあなたがいるようなクラスじゃないのよ!とか言われる場面じゃ…?
「まぁまぁ、あなたたち、ここでは勝手に魔法を使うことが禁じられてるのよ。リーリエ様を困らせちゃダメよ」
パトリシアが取り巻きたちを、おっとりと嗜める。
「そうでしたわね。申し訳ありません」
取り巻き令嬢たちがしゅんとして謝った。
「えっ、えっ、そんなことで、謝らないで下さい。こちらこそなんかすみません」
明らかに身分の高そうな人たちに頭を下げられ、慌てて止める。
平民が貴族令嬢に頭を下げさせてるなんて、みんなに「うわー、とんでもない奴いる」って思われてるに違いない。
ざまぁされるヒロインにならないようにしてるのに、これはなんのフラグ?
わたわたとしている間に先生が入ってきたので、話がそこで終わってくれた。
よかった。ありがとう、先生。
担任の先生はウォルター・ブラドという二十代半ばくらいで少し垂れ目の茶色の瞳の優しそうな先生だった。
先生もイケメンだわ。
ブラド先生も攻略対象者っぽい。
担任の先生だけに、できるかどうか分からないけど、極力近づかないようにしたいところよね。
まずはブラドからこれからの学校生活の説明があり、その後、生徒が順に自己紹介をしていくことになった。
「フェルナンド・ゴールディです。魔力属性は水です。よろしくお願いします」
窓際の一番前の席に座っている生徒から始まった自己紹介の三人目で見つけた、目がくりっとしてかわいい感じの男子生徒。
これは、攻略対象者なのでは?
年下じゃないけど、年下キャラっぽい。
非常に怪しい。彼にも近づかないようにしよう。
「リーリエです。魔力は聖属性です。よろしくお願いします」
自分の自己紹介をサラッ済ませると、他の攻略対象者候補がいないか、心の中でチェックを続けたが、他にはピンとくる人はいなかった。
パトリシアの取り巻き令嬢たちはやはり、いずれも高位貴族で、背が高くてスラっとしているクールビューティーなスージー・トワイト侯爵令嬢、小柄で小動物のような可愛らしさのあるマリア・シンテラド伯爵令嬢、中肉中背のほんわかした印象のあるチェルシー・デイトナル伯令嬢。
悪役令嬢(仮)の取り巻き令嬢と言えば、キツめの顔立ちと性格が定番な気がするが、彼女たちはそんな感じではない。
なんだか腑に落ちないものの、悪役令嬢が主役の物語だったりすると、そんなものかもしれない。
今日はこれだけで終わり、本格的に授業が始まるのは明日からだ。
帰ろうとしたところで、パトリシアに声を掛けられた。
「リーリエ様、この後、少しだけお時間頂けませんか?ご一緒していただきたいところがあるんですけど」
「わたし、ですか?」
リーリエが訝しげな目を向けた。
今日初めて会ったパトリシアに誘われる理由が想像つかない。
「三十分ほどでいいんですけど。あっ、お迎えの方が来ていらっしゃるのよね?」
「それはまぁ…」
「その方には、少し遅れることをお伝えさせて頂くので、ダメですか?」
申し訳なさそうに眉尻が下がっているが、言っていることは、なかなかに強引だ。
まさか!表向きは良好な関係に見せかけて、裏で「卑しい平民のくせして、わたくしの婚約者に色目を使わないでくださる?」とか難癖をつけられる?
ライハート殿下には全く近づいてはないけど、入学式の日のあれだけで、許しがたいとか?
えー、なんだろう。気になる。
「少しだけなら…」
好奇心に負けて、パトリシアについて行くことにした。
「では、わたくしがお迎えの方にご連絡しますわ。あの素敵な騎士様ですわよね」
「わたくしもご一緒いたしますわ」
「わたくしも!」
スージー、マリア、チェルシーの目がきらきらと輝いて、るんるんと立ち去るのを呆然と見送った。
まさか、このために…?
なんてことはもちろんなく、パトリシアについて歩いて行くと、リーリエたちの教室のある中央棟を出て、東棟にやって来た。
東棟には教室はなく、教職員の研究室などが入っている。
こんなところになんの用事があるのかと不思議に思いながらも、パトリシアが黙って歩いて行くので、リーリエもその後に従って歩く。
そのままパトリシアは迷うことなく、東棟の中を進んで行き、とあるドアの前で立ち止まった。
リーリエはそのドアに掛かっているプレートを見て、「うげっ」と思わず声を出してしまった。
そのプレートには「生徒会室」と書かれていた。
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