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18.ランキング戦

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あれから目まぐるしい1週間を過ごし、今日はついにランキング戦初日。
俺達は、ランキング戦が行われる競技場へと向かっていた。
ランキング戦は、普段使っている訓練場ではなく街にある競技場でやるらしい。
競技場が姿を表したと思ったら、中から歓声が溢れ出ている。
観客席には、街中から騎士団を見に来る人達が集まり、盛り上がりをみせている。
こんな、街中を巻き込んでの行事だったの?
だから、いつもはしない騎士団の制服なのか。
訓練場では皆、好きな動きやすい服装で活動しているが、今日は制服着用の指示が出ていた。
着慣れない制服ではあるが、動きづらさは特にない。そうだよな、騎士団の制服なのに闘えなきゃ意味がないもんな。
俺がランキング戦の規模のデカさに驚きを隠せないでいるとレオが口を開いた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。最初はどうなることかと思ってたけど、魔力のコントロールができるようになってからは嘘のように上達したじゃない。」
「ああ。魔力のコントロールできなかったって嘘だったんじゃねーかと思うくらいだぜ。」

俺が人の多さで緊張しているのだと勘違いしたらしい。

「普通はあんなはやく魔法覚えられないのよ!?ほんとは前から魔法使えてたんでしょ!?」


魔法がない世界からきたのに、前から魔法を使えてたわけがない。前から使えていたのなら、今までの俺の苦労はなんだったんだ。魔力不足で倒れたり、グラディウス様に魔力を馴染ますのを手伝ってもらったり!いや、後者は苦労じゃなくご褒美だな。

「いやいや、2人の特訓の賜物だろ。」

「「はぁ~」」
2人して呆れたように、ため息をつく。



「これじゃ、必死に魔法を習得したアネーロが可哀想に思えてくるわ。」
「ほんとだよな、まさか、2つ同時に別属性を発現させるどころか、3つ以上、そしてその応用まで使いこなすんだからな。」
「2人の教え方が良かったんだよ。」

そう、俺は2人の特訓のお陰で魔法が使えるようになった。魔力のコントロールができるようになってから、俺は魔力が自分の手足のように思えた。俺がイメージしたように動き、出し入れできる。
1つ目の属性を発現してからは、早かった。2つ3つと全ての属性を発現させることができた。
レオが言っていたように、最初に発現させたときは魔力の構成とかイメージとかで脳が擦り切れるほど頭を使った。しかし、不思議なことに、その後はその魔力の使い方、回路を身体が元々知っていたかのように、スムーズに使えるようになっていた。身体が思い出したかのようだった。

「私より生徒の方が魔法の扱いがうまくなるなんて、私って教官とかのほうが向いてるのかしら。」

レオが1人で何か呟いている。
だが、そんなことお構い無しでフィジーは俺に顔を向ける。

「ったく。こいつは。」

そういうと、フィジーは俺の肩に腕を回したかと思えば、もう片方の手で頭を撫で回した。

「おっ、おい。」
「これで予選で負けるなんてことしたら、俺がぶん殴ってやるからな。決勝まであがってこいよ。」
「ああ、もちろんだ。」

「あら、ちょっと?私もいるんですけど?」
「フッ、そうだったな。3人で決勝トーナメントで会おう。」
「そうこなくっちゃ!」


俺達は、決勝トーナメントでの再会を約束し、各々の待機部屋へと向かった。
予選は、4つのブロックごとにトーナメント戦が繰り広げられる。1つのブロックに8名が振り分けられており、3回勝てばいいらしい。各ブロックで勝ち上がった4名と前回の上位3名が決勝トーナメントで闘うようだ。

俺はブロック2だから、もう少し時間がありそうだ。
競技場を探検がてら見て回ることにした。

待機部屋から出て、少し歩くと競技場の廊下や入口付近に屋台が多く出店しているのが見える。その様子は、元の世界のスポーツ観戦のときのようだった。色んな美味そうな食べ物の混ざった匂いが俺をお祭り気分にさせる。そんな気分になるのが、俺だけじゃないのは周りを見れば明らかだった。街の皆が楽しそうな笑顔を浮かべている。
沢山の人が入り乱れ、どんな人でも受け入れる環境がここにはあった。


ドンッ


俺は向こうからすごい勢いで歩いてくる人にぶつかった。
「っ、すまない。」
ぶつかった人に謝罪の言葉をかけるが、相手からはなんの反応もない。
目線をあげると、相手は体格からして男で黒いフードを被り、そこから覗く目は丸く見開き驚いている様子だった。

「お、お前は騎士団の…」

やっとなにか喋ったかと思いきや何やら俺が騎士団の団員ということに驚いているらしい。

「え?あぁ、そうだよ、俺は騎士団の団員。」

いつもなら、黒髪黒目で驚かれるが、今は騎士団の団員ということに驚いているらしい。
これが制服効果か?
黒髪黒目が目立たなくなるなら、俺ずっと制服着てようかな。
俺がアホなことを考えていると、男は焦ったようにあたふたしながら走っていった。


なんだったんだ?
俺が騎士団の団員に見えなかったのかな。お前なんか俺達が応援する騎士団じゃねーよってこと?俺ってそんな貧相に見えるのかな。
いや、違うか、騎士団の団員にぶつかってびっくりしたのかもしれない。
今日は騎士団のランキング戦なんだから、競技場に騎士団がいるのだって当たり前なのにな。
なにを驚いてるんだか。


…ん?騎士団の団員を見て慌てて逃げるってめちゃくちゃ怪しくね?
やましい事がないなら堂々とするよな?
俺は、さっきの男を追いかけようと思ったが、男の姿は見えなくなっていた。
何なんだ、前々からの胸騒ぎが一層大きくなる。


「どうしたの?」

後ろからの声が聞こえたと同時に、肩に重みが加わった。
その声がする方へ顔を向けると思いも寄らない人が立っていた。
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