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二人の関係 2
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翌朝、リアンが朝食の支度をしていると、アイザックが二階から降りてきた。
「おはよう」
「おはよう、リアン。なんか美味そうな匂いがしてるな」
「ベーコンと卵を焼いたんだ。冷めないうちに食べちゃえよ」
「うん。その前に、これ」
アイザックが小さな袋を差し出した。
「なに?」
袋を開けると、紫と金の紐を編んだ髪紐だった。
「あ、買ってきてくれたんだ!」
「うん。リアンの瞳の色が入ってるから絶対似合うと思って。気に入った?」
「もちろん!」
さっそく伸びてきた髪を髪紐で一つに結んだ。
「どう?」
「すごく似合う。綺麗だ」
「また、そういうことを……ありがとな。大切に使わせてもらう。あ、急がないと時間なくなるぞ」
「うわ、やばい」
アイザックは慌ててベーコンに噛みついた。
***
「リアンちゃん、今日はいい白身が入ってるよ」
店の前を通りかかったリアンに魚屋のジーナが声をかけた。
「おはよう、ジーナさん。魚かあ。いいけど、俺、捌けないんだよねー」
「サービスで切ってあげるよ。あんたあ、切り身にしてやってー!」
「はいよー」
店の奥にいる夫が返事をした。
「フライにして旦那に食べさせてあげなよ」
「へ?」
リアンが目をパチクリさせる。
「やだなあ、ジーナさん。俺とアイザックはそんなんじゃ――」
「なに言ってんだい。一緒に住んでるくせに」
「恥ずかしがることないわよ。いい男じゃない、アイザックさん」
「リアンちゃんも綺麗だし、素敵なカップルよねえ」
周りにいた女性客たちが話に加わり、リアンを置き去りにして盛り上がっている。
「俺、他に買う物あるから」
リアンは魚を受け取ると、そそくさと逃げ出した。
「あら、照れちゃって」
「新婚さんだもの」
後ろから声が聞こえてくる。
(あー、もうっ。なんで俺とアイザックが夫婦だと思われてんだよ。俺たちはただの……)
昨夜のキスを思い出し、リアンは顔を赤くした。
(あいつ、いつもは頬やおでこにするくせに……そういえば、子どもの頃は平気でチュッチュしてたっけ……)
シスターに注意されて、泣きながらごねていたアイザックを思い出す。
『もう大きいんだから、人前でそういうことしちゃダメよ』
『なんでダメなのぉおお』
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら『ぢゅう、じだいよお』と叫んでいるアイザックが、可愛くておかしくて――愛おしかった。
「おはよう」
「おはよう、リアン。なんか美味そうな匂いがしてるな」
「ベーコンと卵を焼いたんだ。冷めないうちに食べちゃえよ」
「うん。その前に、これ」
アイザックが小さな袋を差し出した。
「なに?」
袋を開けると、紫と金の紐を編んだ髪紐だった。
「あ、買ってきてくれたんだ!」
「うん。リアンの瞳の色が入ってるから絶対似合うと思って。気に入った?」
「もちろん!」
さっそく伸びてきた髪を髪紐で一つに結んだ。
「どう?」
「すごく似合う。綺麗だ」
「また、そういうことを……ありがとな。大切に使わせてもらう。あ、急がないと時間なくなるぞ」
「うわ、やばい」
アイザックは慌ててベーコンに噛みついた。
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「リアンちゃん、今日はいい白身が入ってるよ」
店の前を通りかかったリアンに魚屋のジーナが声をかけた。
「おはよう、ジーナさん。魚かあ。いいけど、俺、捌けないんだよねー」
「サービスで切ってあげるよ。あんたあ、切り身にしてやってー!」
「はいよー」
店の奥にいる夫が返事をした。
「フライにして旦那に食べさせてあげなよ」
「へ?」
リアンが目をパチクリさせる。
「やだなあ、ジーナさん。俺とアイザックはそんなんじゃ――」
「なに言ってんだい。一緒に住んでるくせに」
「恥ずかしがることないわよ。いい男じゃない、アイザックさん」
「リアンちゃんも綺麗だし、素敵なカップルよねえ」
周りにいた女性客たちが話に加わり、リアンを置き去りにして盛り上がっている。
「俺、他に買う物あるから」
リアンは魚を受け取ると、そそくさと逃げ出した。
「あら、照れちゃって」
「新婚さんだもの」
後ろから声が聞こえてくる。
(あー、もうっ。なんで俺とアイザックが夫婦だと思われてんだよ。俺たちはただの……)
昨夜のキスを思い出し、リアンは顔を赤くした。
(あいつ、いつもは頬やおでこにするくせに……そういえば、子どもの頃は平気でチュッチュしてたっけ……)
シスターに注意されて、泣きながらごねていたアイザックを思い出す。
『もう大きいんだから、人前でそういうことしちゃダメよ』
『なんでダメなのぉおお』
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