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新しい家
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退院後、団長に挨拶に行き、寮から荷物を引き上げた。他の団員たちには、病院に見舞いに来てくれたときに挨拶を済ませている。
荷物を詰めたカバンをアイザックが持ち、二人で新居に向かった。
新しい家は騎士団の拠点から歩いていける距離にあった。
小さな庭には赤や黄色の花が咲いている。
レンガ造りのこじんまりとした家を見て、リアンは目を輝かせた。孤児だったリアンの夢は、家を買って大好きな猫と暮らすことだった。
玄関を入ってすぐの広いリビングルームには、大きなテーブルと椅子、空の食器棚などが置かれていた。
「中は結構広いんだな」
「こっちが台所。あっちの奥に風呂とトイレがある」
「へえー」
リアンは嬉しそうにあちこち見て回った。
「二階もあるぞ」
アイザックがリアンの手を引いて階段を上る。
二階には個室が二部屋並んでいた。
「こっちがリアンの部屋だ」
アイザックが案内してくれた部屋には大きな窓があり、暖かい光が差し込んでいた。
「……ここが、俺の部屋?」
「どうだ? 少し狭いかもしれないが、気に入ったか?」
心配そうに訊くアイザックの背中を、リアンはバシンと叩いた。
「気に入るに決まってるだろ! 自分の部屋なんて初めてだ!」
キャッキャとはしゃぐリアンを見て、アイザックの目尻が下がる。
「可愛い……」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、気に入ってもらえて良かった。後で買い物に行こう。ベッドと布団は適当に買ったけど、リアンの好みがわからないから、まだ買ってない物がたくさんあるんだ」
「わかった。食器も買わなきゃな」
(お揃いの食器! なんか新婚さんみたいだ)
アイザックがブンブンと首を縦に振る。
近所に買い物に行くと、リアンが負傷したことを知っている人たちが集まってきた。
「街を守ってくれてありがとう!」
「あんたはこの街の英雄だ」
「お兄ちゃん、これどうぞ」
少女が小さな花束を差し出す。
「ありがとう。綺麗だね」
「えへへ」
「みんな、街を守るために命懸けで戦ったおまえに感謝してるんだ」
「そうか……」
リアンは花束に顔をうずめ、溢れてくる涙を隠した。
荷物を詰めたカバンをアイザックが持ち、二人で新居に向かった。
新しい家は騎士団の拠点から歩いていける距離にあった。
小さな庭には赤や黄色の花が咲いている。
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玄関を入ってすぐの広いリビングルームには、大きなテーブルと椅子、空の食器棚などが置かれていた。
「中は結構広いんだな」
「こっちが台所。あっちの奥に風呂とトイレがある」
「へえー」
リアンは嬉しそうにあちこち見て回った。
「二階もあるぞ」
アイザックがリアンの手を引いて階段を上る。
二階には個室が二部屋並んでいた。
「こっちがリアンの部屋だ」
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「どうだ? 少し狭いかもしれないが、気に入ったか?」
心配そうに訊くアイザックの背中を、リアンはバシンと叩いた。
「気に入るに決まってるだろ! 自分の部屋なんて初めてだ!」
キャッキャとはしゃぐリアンを見て、アイザックの目尻が下がる。
「可愛い……」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、気に入ってもらえて良かった。後で買い物に行こう。ベッドと布団は適当に買ったけど、リアンの好みがわからないから、まだ買ってない物がたくさんあるんだ」
「わかった。食器も買わなきゃな」
(お揃いの食器! なんか新婚さんみたいだ)
アイザックがブンブンと首を縦に振る。
近所に買い物に行くと、リアンが負傷したことを知っている人たちが集まってきた。
「街を守ってくれてありがとう!」
「あんたはこの街の英雄だ」
「お兄ちゃん、これどうぞ」
少女が小さな花束を差し出す。
「ありがとう。綺麗だね」
「えへへ」
「みんな、街を守るために命懸けで戦ったおまえに感謝してるんだ」
「そうか……」
リアンは花束に顔をうずめ、溢れてくる涙を隠した。
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