61 / 71
【愛人と奴隷と心理士と諜報員?】その8
しおりを挟む
コホン、とアーチュウは咳払いをし、襟を正した。
「時差・・・とは? ヴィヨレくん、ヒロコ様が今後危険な事に巻き込まれない為にも、確認しておきたいので、詳しく・・・」
「いや、こいつは自ら危険を呼び込むタイプだ」
ヴィヨレが顔の前で、脱力気味に手を振ってみせた。
世話係三人衆が「ああ~・・・」と、同感を禁じ得ない声を上げた。
「は? 私、安全第一で生きてるけど?」
その反応は・・・・・・なに?
イスマエル? 何故そこだけ同意しているの?
「・・・・・・・まあ、その、ソラル様に身も心も化けていたんで、あの人なら目の前でヒロコが泣いていたら、涙ぐらい口に含むだろうな、と」
「否定はできん・・・父上なら・・・やりかねん・・・だが、どちらにしても許さんぞ!?」
「まーまーまーまー・・・押さえて、押さえて」
「イスマエル、今は話を聞いとこうよ? 結構そこは大事なところだよ」
マクシムとナトンが調子を合わせて、イスマエルの苛立ちを宥めていた。
「興味深いですね。確かに“聖女の涙”については、記録が全くありませんから・・・そもそも、涙は感情の起伏によって湧き出る体液ですし、検証しようにも集められるものではありませんね・・・で? 体液交換の時差とは、どれぐらいの期間を空けて何をしたのですか?」
「え~と・・・、ソラル様が遠征で行ったり来たりと忙しい所を見計らって、ヒロコの涙を呑んで三週間後ぐらいかな」
「昨晩の事ですかね?」
「そう・・・ヒロコからチョコレートをごちそうして貰ったんだ」
ヴィヨレがその“チョコレート”を強調しながら、半眼で私をじっとりと見つめたので、私は髪が靡くほどの速さでサッと視線を逸らした。
「そのチョコレートと体液交換が関係しているのですか?」
「まさか口移しとか!?」
ぎょっとするような発言をマクシムがした。
「それでは“時差”は関係ないだろう」
「あ、そっか」
イスマエルが冷静な発言をしてくれて、私は心底ほっとした。
「ヒロコの手から食べさせてもらった」
ティーカップの乗っていたソーサーが問答無用でヴィヨレに飛んできた。
投げたのはナトンだった。
確実な顔面狙いだったが、ヴィヨレが真剣白刃取りのごとく、見事に両手で挟むように止めていた。
ナトンが小さく舌打ちをする。
「・・・・・・“あ~ん”してもらったのですね? それぐらいで聖女の力を甘受できるものなのでしょうか・・・」
「いや、一緒に指を舐めた」
「「「指を舐めたぁ!?」」」
「噂の聖女のチョコレートを余すところなく食べたかったから」
「「「くそっ!」」」
三人とも、モヤモヤとヴィヨレが私の指を舐めるシーンを想像しているらしい。
(止めてっ! 妄想ストップ!!)
「時差・・・とは? ヴィヨレくん、ヒロコ様が今後危険な事に巻き込まれない為にも、確認しておきたいので、詳しく・・・」
「いや、こいつは自ら危険を呼び込むタイプだ」
ヴィヨレが顔の前で、脱力気味に手を振ってみせた。
世話係三人衆が「ああ~・・・」と、同感を禁じ得ない声を上げた。
「は? 私、安全第一で生きてるけど?」
その反応は・・・・・・なに?
イスマエル? 何故そこだけ同意しているの?
「・・・・・・・まあ、その、ソラル様に身も心も化けていたんで、あの人なら目の前でヒロコが泣いていたら、涙ぐらい口に含むだろうな、と」
「否定はできん・・・父上なら・・・やりかねん・・・だが、どちらにしても許さんぞ!?」
「まーまーまーまー・・・押さえて、押さえて」
「イスマエル、今は話を聞いとこうよ? 結構そこは大事なところだよ」
マクシムとナトンが調子を合わせて、イスマエルの苛立ちを宥めていた。
「興味深いですね。確かに“聖女の涙”については、記録が全くありませんから・・・そもそも、涙は感情の起伏によって湧き出る体液ですし、検証しようにも集められるものではありませんね・・・で? 体液交換の時差とは、どれぐらいの期間を空けて何をしたのですか?」
「え~と・・・、ソラル様が遠征で行ったり来たりと忙しい所を見計らって、ヒロコの涙を呑んで三週間後ぐらいかな」
「昨晩の事ですかね?」
「そう・・・ヒロコからチョコレートをごちそうして貰ったんだ」
ヴィヨレがその“チョコレート”を強調しながら、半眼で私をじっとりと見つめたので、私は髪が靡くほどの速さでサッと視線を逸らした。
「そのチョコレートと体液交換が関係しているのですか?」
「まさか口移しとか!?」
ぎょっとするような発言をマクシムがした。
「それでは“時差”は関係ないだろう」
「あ、そっか」
イスマエルが冷静な発言をしてくれて、私は心底ほっとした。
「ヒロコの手から食べさせてもらった」
ティーカップの乗っていたソーサーが問答無用でヴィヨレに飛んできた。
投げたのはナトンだった。
確実な顔面狙いだったが、ヴィヨレが真剣白刃取りのごとく、見事に両手で挟むように止めていた。
ナトンが小さく舌打ちをする。
「・・・・・・“あ~ん”してもらったのですね? それぐらいで聖女の力を甘受できるものなのでしょうか・・・」
「いや、一緒に指を舐めた」
「「「指を舐めたぁ!?」」」
「噂の聖女のチョコレートを余すところなく食べたかったから」
「「「くそっ!」」」
三人とも、モヤモヤとヴィヨレが私の指を舐めるシーンを想像しているらしい。
(止めてっ! 妄想ストップ!!)
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。


すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。

愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる