病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

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【愛人と奴隷と心理士と諜報員?】その8

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 コホン、とアーチュウは咳払いをし、襟を正した。
「時差・・・とは? ヴィヨレくん、ヒロコ様が今後危険な事に巻き込まれない為にも、確認しておきたいので、詳しく・・・」
「いや、こいつは自ら危険を呼び込むタイプだ」
 ヴィヨレが顔の前で、脱力気味に手を振ってみせた。
 世話係三人衆が「ああ~・・・」と、同感を禁じ得ない声を上げた。
「は? 私、安全第一で生きてるけど?」
 その反応は・・・・・・なに?
 イスマエル? 何故そこだけ同意しているの?
「・・・・・・・まあ、その、ソラル様に身も心も化けていたんで、あの人なら目の前でヒロコが泣いていたら、涙ぐらい口に含むだろうな、と」
「否定はできん・・・父上なら・・・やりかねん・・・だが、どちらにしても許さんぞ!?」
「まーまーまーまー・・・押さえて、押さえて」
「イスマエル、今は話を聞いとこうよ? 結構そこは大事なところだよ」
 マクシムとナトンが調子を合わせて、イスマエルの苛立ちを宥めていた。
「興味深いですね。確かに“聖女の涙”については、記録が全くありませんから・・・そもそも、涙は感情の起伏によって湧き出る体液ですし、検証しようにも集められるものではありませんね・・・で? 体液交換の時差とは、どれぐらいの期間を空けて何をしたのですか?」
「え~と・・・、ソラル様が遠征で行ったり来たりと忙しい所を見計らって、ヒロコの涙を呑んで三週間後ぐらいかな」
「昨晩の事ですかね?」
「そう・・・ヒロコからチョコレートをごちそうして貰ったんだ」
 ヴィヨレがその“チョコレート”を強調しながら、半眼で私をじっとりと見つめたので、私は髪が靡くほどの速さでサッと視線を逸らした。
「そのチョコレートと体液交換が関係しているのですか?」
「まさか口移しとか!?」
 ぎょっとするような発言をマクシムがした。
「それでは“時差”は関係ないだろう」
「あ、そっか」
 イスマエルが冷静な発言をしてくれて、私は心底ほっとした。
「ヒロコの手から食べさせてもらった」
 ティーカップの乗っていたソーサーが問答無用でヴィヨレに飛んできた。
 投げたのはナトンだった。
 確実な顔面狙いだったが、ヴィヨレが真剣白刃取りのごとく、見事に両手で挟むように止めていた。
 ナトンが小さく舌打ちをする。
「・・・・・・“あ~ん”してもらったのですね? それぐらいで聖女の力を甘受できるものなのでしょうか・・・」
「いや、一緒に指を舐めた」
「「「指を舐めたぁ!?」」」
「噂の聖女のチョコレートを余すところなく食べたかったから」
「「「くそっ!」」」
 三人とも、モヤモヤとヴィヨレが私の指を舐めるシーンを想像しているらしい。
 (止めてっ! 妄想ストップ!!)
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