60 / 71
【愛人と奴隷と心理士と諜報員?】その7
しおりを挟む
「つまり・・・私の母も貴様に協力してしまった形になるのか?」
「・・・・・・・そうだなあ、ソラル様に成り代わるには彼女からの情報が必要だったからな、まあ、彼女の意志ではないよ?」
衛兵に指示を出し終わっていたイスマエルは、ヴィヨレの襟首を大きく掴み、椅子から立ち上がらせた。
「母の・・・愛人ではないと言ったな? 説明しろ」
「ん~・・・、オレは心の治癒士として雇われただけだ、これ以上は言えない」
「母の治療を・・・していた?」
「オレは幻影士、だから・・・この能力は使い方によっては、人を騙しもするし、場合によっては救いもする・・・わかるだろ?」
覆いかぶさるように凄むイスマエルに、物怖じもせず彼は答えた。
「直接的にも、間接的にも、母が聖女の誘拐幇助に自分の意志で協力した訳ではないという事だな?」
「そうそう、ゴメンゴメン。オレが治療と言いつつ彼女に近づいただけって事だよ。誰だって心の悩みも・・・人に言えない暗黒面は家族には話したくないモンだろ?」
納得はしていないが、イスマエルはヴィヨレの胸ぐらをゆっくり放した。
すとん、と、ヴィヨレは椅子に尻を着けた。
「では、他国の工作員は捉えて拷問だな。自ら聖女の誘拐の手引きを行ったと自白したのだ」
そうなのだけど、そうとも言えない。
「・・・・・・イスマエルさんや? 私、誘拐されていませんけど?」
日本の警察風に言うと「まだ事件になっていません」という状態だ。
誘拐事件にするには、実際に事件が起きてからではないと無理なのである。
「では、城に忍び込んだ不法侵入罪で裁く」
「でもオレ、今・・・聖女様と隷属契約になったんだけど? 罪に問えるの?」
(えーと、うーんと・・・よく分からない。誰か教えて下さい!?)
「イスマエル、打つ手なしだ。彼の罪は問えない、何せ聖女ヒロコが彼をかばってしまっている」
侍女のクレーに準備された、熱い紅茶にゆっくりとマクシムは口を付けながら言った。
「うん、三人の夫候補兼任の世話係に、愛人みたいなのが一人増えただけだよ」
金髪碧眼美青年(のはず)のマクシムと、茶髪に緑眼の(キラキラの)ショタ系ナトンがイスマエルに追撃を食らわした。
(あんた達、誰の味方だよ?)
「――――へ? いや、ちょ・・・愛人って何?」
(あれ? あれ? あれ?)
「・・・だって今、ヒロコがコイツと・・・従属契約をしちゃったんだよ?」
「聖女の奴隷ってなあ? 奴隷の中の最高位だよな・・・」
マクシムとナトンが並んで、よく分からない掛け合いをしている。
(奴隷の最高位ってなんだい?)
「・・・・・・・マ・・・マテオ様、今・・・何が起きているのか、私に教えて頂いてもよろしいでしょうかっ!?」
イスマエルがマテオGと視線を合わせながら、ゆっくりと自分の席に着いた。
ふがふがと、フサフサの眉毛と髭を揺らしながら、マテオGは語り始めた。
「ふ~ん・・・まずは話を戻すかのお・・・、で? 先ほどアーチュウが質問した内容についてなのだが、ヒロコ殿とそこの・・・」
「ああ、オレ? さっきヴィヨレって名前になっ・・・りました」
「うぬ・・・つまり、直接的な粘膜接触はあったのか?」
ブフォーーーーーーっ!!!!
もしかして、わざとなんじゃないだろうか? と言うタイミングで、みんなが何となく紅茶を口に含んだ途端にその発言をした。
「ちょ・・・直接的な粘膜接触ってなあに?」
ナトンがきちんとした質問をしてくれた。
「アーチュウどの、ここはお任せする」
振るんだ・・・アーチュウ先生に。
「主に“血液”“唾液”“精液”を介して聖女と深い触れ合いをする場合が、契約媒体とされています。一般的な呪術式の隷属契約とは、まったく違います」
「深い・・・触れ合い・・・だと?」
イスマエルの手にしていたティーカップの、紅茶の表面には氷が張っていた。
「ふ~ん? 体液交換は時差があっても成立するんだ?」
「「「「「時差っ!?」」」」」
アーチュウをはじめ、その他数名がヴィヨレの言葉に前のめりになった。
「・・・・・・・そうだなあ、ソラル様に成り代わるには彼女からの情報が必要だったからな、まあ、彼女の意志ではないよ?」
衛兵に指示を出し終わっていたイスマエルは、ヴィヨレの襟首を大きく掴み、椅子から立ち上がらせた。
「母の・・・愛人ではないと言ったな? 説明しろ」
「ん~・・・、オレは心の治癒士として雇われただけだ、これ以上は言えない」
「母の治療を・・・していた?」
「オレは幻影士、だから・・・この能力は使い方によっては、人を騙しもするし、場合によっては救いもする・・・わかるだろ?」
覆いかぶさるように凄むイスマエルに、物怖じもせず彼は答えた。
「直接的にも、間接的にも、母が聖女の誘拐幇助に自分の意志で協力した訳ではないという事だな?」
「そうそう、ゴメンゴメン。オレが治療と言いつつ彼女に近づいただけって事だよ。誰だって心の悩みも・・・人に言えない暗黒面は家族には話したくないモンだろ?」
納得はしていないが、イスマエルはヴィヨレの胸ぐらをゆっくり放した。
すとん、と、ヴィヨレは椅子に尻を着けた。
「では、他国の工作員は捉えて拷問だな。自ら聖女の誘拐の手引きを行ったと自白したのだ」
そうなのだけど、そうとも言えない。
「・・・・・・イスマエルさんや? 私、誘拐されていませんけど?」
日本の警察風に言うと「まだ事件になっていません」という状態だ。
誘拐事件にするには、実際に事件が起きてからではないと無理なのである。
「では、城に忍び込んだ不法侵入罪で裁く」
「でもオレ、今・・・聖女様と隷属契約になったんだけど? 罪に問えるの?」
(えーと、うーんと・・・よく分からない。誰か教えて下さい!?)
「イスマエル、打つ手なしだ。彼の罪は問えない、何せ聖女ヒロコが彼をかばってしまっている」
侍女のクレーに準備された、熱い紅茶にゆっくりとマクシムは口を付けながら言った。
「うん、三人の夫候補兼任の世話係に、愛人みたいなのが一人増えただけだよ」
金髪碧眼美青年(のはず)のマクシムと、茶髪に緑眼の(キラキラの)ショタ系ナトンがイスマエルに追撃を食らわした。
(あんた達、誰の味方だよ?)
「――――へ? いや、ちょ・・・愛人って何?」
(あれ? あれ? あれ?)
「・・・だって今、ヒロコがコイツと・・・従属契約をしちゃったんだよ?」
「聖女の奴隷ってなあ? 奴隷の中の最高位だよな・・・」
マクシムとナトンが並んで、よく分からない掛け合いをしている。
(奴隷の最高位ってなんだい?)
「・・・・・・・マ・・・マテオ様、今・・・何が起きているのか、私に教えて頂いてもよろしいでしょうかっ!?」
イスマエルがマテオGと視線を合わせながら、ゆっくりと自分の席に着いた。
ふがふがと、フサフサの眉毛と髭を揺らしながら、マテオGは語り始めた。
「ふ~ん・・・まずは話を戻すかのお・・・、で? 先ほどアーチュウが質問した内容についてなのだが、ヒロコ殿とそこの・・・」
「ああ、オレ? さっきヴィヨレって名前になっ・・・りました」
「うぬ・・・つまり、直接的な粘膜接触はあったのか?」
ブフォーーーーーーっ!!!!
もしかして、わざとなんじゃないだろうか? と言うタイミングで、みんなが何となく紅茶を口に含んだ途端にその発言をした。
「ちょ・・・直接的な粘膜接触ってなあに?」
ナトンがきちんとした質問をしてくれた。
「アーチュウどの、ここはお任せする」
振るんだ・・・アーチュウ先生に。
「主に“血液”“唾液”“精液”を介して聖女と深い触れ合いをする場合が、契約媒体とされています。一般的な呪術式の隷属契約とは、まったく違います」
「深い・・・触れ合い・・・だと?」
イスマエルの手にしていたティーカップの、紅茶の表面には氷が張っていた。
「ふ~ん? 体液交換は時差があっても成立するんだ?」
「「「「「時差っ!?」」」」」
アーチュウをはじめ、その他数名がヴィヨレの言葉に前のめりになった。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。


夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる