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【愛人と奴隷と心理士と諜報員?】その6
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プルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル・・・・・・・。
私は震えていた。
広い長方形のテーブルに、見習い聖女の私を中心に、世話係三名、ヴィヨレ、看護塔の医師のアーチュウ、お誕生日席の私の真正面にマテオGが席に着いていた。
別に断罪されるような雰囲気だけで、私が肩を震わせている訳ではない。
青ざめながら、イスマエル以外が室内の寒さに震えていた。
夏なのに・・・・・・。
「イスマエル、感情の起伏を何とかするのじゃ・・・・・・未熟者め、一発食らわすぞ!」
カッと瞼を見開いたマテオが、小さな電撃をイスマエルに放った。
「いっ・・・!」
驚いたイスマエルが片手で顔面を押さえた。
眼鏡に、ほんの小さな電気を走らせたらしい。
室内の冷気が緩み、周囲は胸を撫で下ろした。
「おぬしの戸惑いは分かるんじゃが・・・不機嫌になるたびに不必要に冷気を出すんじゃない!」
本当に一発食らわすとは思わなかった。
「・・・・・・・え? イスマエルが不機嫌になると、寒くなるの?」
全員が私の質問に静かに頷いた。
「あ~・・・まずは状況を確認しよう・・・え~、その~・・・その不法侵入したと思われる青年とヒロコが体液交換によって聖女との奴隷契約が成立したという事で間違いはないな?」
恥ずかしさで固まっている私を他所に、お茶の準備をしているクレーとギヨムを含め、全員コクンと頷いた。
「話の焦点は、いつ・どのように体液交換をしたか! 大変興味が・・・ではなく、とても重要な内容です!!」
医師のアーチュウが目をぎらつかせながら、話を進めたがっていた。
ヴィヨレがじっと私を見ている。「言っていいの?」と、男性として気を使ってくれているらしい。
私は肩をすぼめて震えていた。
イスマエルからの説教コースが着々と組まれているような気がして、叱られる寸前の子供のように緊張していた。
けれど、正確に皆に説明できるのは私しかいないのだ。
「最初・・・私がヴィヨレをソラルさまと見間違えたんです。それで、つい、は・・・初恋の先生の話になって、私が泣いちゃったんです・・・それで、その・・・」
「舐めた」
ヴィヨレがあっさり答えた。
「「「なんで?」」」
「美味しそうだったから」
「「「ええええぇ~~~っ!?」」」
声を揃えたのは世話係三人衆だった。
「ちなみに、ヒロコはオレをソラル様と見間違えたのではなく・・・ソラル様に化けたオレに油断したんだ」
「貴様が父上に、化けただと?」
「オレは・・・“幻影の才”を持っている。故に、幻影士という人を騙す事を生業としている」
「聖女ヒロコを誘拐する手引きを依頼された隣国の諜報員という事だな?」
「諜報員とは聞こえはいいが・・・まあ、オレはたぶん捨て駒だ。とりあえず、今すぐ城内と、城外周辺で怪しい人間や馬車が居ないか、戦闘力の高い人間で調査をした方がいい」
室内が一瞬ざわりとしたが、イスマエルが立ち上がり、すぐに扉の前にいる衛兵に指示を伝えた。
私は震えていた。
広い長方形のテーブルに、見習い聖女の私を中心に、世話係三名、ヴィヨレ、看護塔の医師のアーチュウ、お誕生日席の私の真正面にマテオGが席に着いていた。
別に断罪されるような雰囲気だけで、私が肩を震わせている訳ではない。
青ざめながら、イスマエル以外が室内の寒さに震えていた。
夏なのに・・・・・・。
「イスマエル、感情の起伏を何とかするのじゃ・・・・・・未熟者め、一発食らわすぞ!」
カッと瞼を見開いたマテオが、小さな電撃をイスマエルに放った。
「いっ・・・!」
驚いたイスマエルが片手で顔面を押さえた。
眼鏡に、ほんの小さな電気を走らせたらしい。
室内の冷気が緩み、周囲は胸を撫で下ろした。
「おぬしの戸惑いは分かるんじゃが・・・不機嫌になるたびに不必要に冷気を出すんじゃない!」
本当に一発食らわすとは思わなかった。
「・・・・・・・え? イスマエルが不機嫌になると、寒くなるの?」
全員が私の質問に静かに頷いた。
「あ~・・・まずは状況を確認しよう・・・え~、その~・・・その不法侵入したと思われる青年とヒロコが体液交換によって聖女との奴隷契約が成立したという事で間違いはないな?」
恥ずかしさで固まっている私を他所に、お茶の準備をしているクレーとギヨムを含め、全員コクンと頷いた。
「話の焦点は、いつ・どのように体液交換をしたか! 大変興味が・・・ではなく、とても重要な内容です!!」
医師のアーチュウが目をぎらつかせながら、話を進めたがっていた。
ヴィヨレがじっと私を見ている。「言っていいの?」と、男性として気を使ってくれているらしい。
私は肩をすぼめて震えていた。
イスマエルからの説教コースが着々と組まれているような気がして、叱られる寸前の子供のように緊張していた。
けれど、正確に皆に説明できるのは私しかいないのだ。
「最初・・・私がヴィヨレをソラルさまと見間違えたんです。それで、つい、は・・・初恋の先生の話になって、私が泣いちゃったんです・・・それで、その・・・」
「舐めた」
ヴィヨレがあっさり答えた。
「「「なんで?」」」
「美味しそうだったから」
「「「ええええぇ~~~っ!?」」」
声を揃えたのは世話係三人衆だった。
「ちなみに、ヒロコはオレをソラル様と見間違えたのではなく・・・ソラル様に化けたオレに油断したんだ」
「貴様が父上に、化けただと?」
「オレは・・・“幻影の才”を持っている。故に、幻影士という人を騙す事を生業としている」
「聖女ヒロコを誘拐する手引きを依頼された隣国の諜報員という事だな?」
「諜報員とは聞こえはいいが・・・まあ、オレはたぶん捨て駒だ。とりあえず、今すぐ城内と、城外周辺で怪しい人間や馬車が居ないか、戦闘力の高い人間で調査をした方がいい」
室内が一瞬ざわりとしたが、イスマエルが立ち上がり、すぐに扉の前にいる衛兵に指示を伝えた。
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