病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

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【愛人と奴隷と心理士と諜報員?】その5

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「聖女様から名前を貰えるなんて、思いもよらなかったよ! オレの人生捨てたもんじゃないね!!」
 大げさにふざけているようにも・・・けれど、心からの叫びにも聞こえた言葉だった。

 文官服のイスマエルが下がった眼鏡のブリッジを押さえながら、逞しい筋力で上の二人ごと床から起き上がった。
 当たり前だが、バランスを失ったマクシスとナトンはごろりと床に転がり落ちた。
「・・・ふう・・・、不本意だが、今この瞬間に貴様は聖女ヒロコと我々の配下になった。今度こそ、ここにいる理由を聞かせてもらおうか?」
「うるせえな、おまえの部下になったわけじゃねえよ」
「・・・・・・あの、今、イスマエル、二人載せたまま片腕で起き上がらなかった?」
 普通うに考えて、積載量がかなりあったのでは?
「才を使ったに決まってんだろ?」
 間入れず、ヴィヨレが答えた。
 どうやら、イスマエルの何かを認めたくないらしい。
「“才”ですか・・・」
 なんだか変なおやじギャグみたいに聞こえた。

 今、この瞬間に・・・ヴィヨレが私の配下に・・・なったらしい・・・。

 聖女が名を与えた人間――――。
 聖女から名を貰い受けた者は、生涯における“祝福”を星に与えられ、聖女の所有物となる。

 そして、名を与えた聖女と生も死も供にある存在となる。
 聖女が死を迎えれば、本人も後を追うように死を迎える。
 本人が聖女より先に死を迎えた場合は、特に聖女には何も起こらない。
 つまり「聖女にすべてを捧げた奴隷」となる。

「ど・・・・・・ど・・・・・奴隷を作っちゃったのぉおぉおぉおっっっ!?」
「ああ、何故か契約が成立してしまったらしい」
 マクシムは困惑した様子で、顎に手を添える。
「そーなんだよなあ・・・オレもなんでちゃんと成立したのか解んないんだけどさあ・・・」
 仕掛けた本人がそんな事を言っている。
 なんて無責任なんだ!
「い、イスマエル先生! 教えて! なんでこうなったの!?」
「まったく分からん」
「NOぉ~~~っっっ!」
「・・・ねえ・・・思ったんだけどさ・・・」
 ナトンが遠慮がちに声を出した。
 その場にいた全員がすごい勢いで注目した。
「何か思い当たる事があるのか?」
 イスマエルが重々しい口調で言った。
 私は何となく次の台詞の危うさを感じた。
「ナトンくん、ちょ・・・」
 その話は後回しにしたかった、もしくはその場から逃げたかった。
「もしかして、お互いの体液の交換した?」

 ぎゃあぁあぁあぁあぁあぁ~~~~~~!!!!!

「ナトンくんっ!? 言い方ぁあぁあぁぁぁぁぁ~~~っっっ!!」

 顔が火を噴きそうな私は両手で頭を抱える。
 何故か空気の薄さに眩暈を起こしかけているクレー。
 思考が追い付かず静止しているマクシム。
 完全氷結しているイスマエルの周囲に、キラキラした何かが舞っていた・・・あれ? 
 ダイヤモンドダスト! 初めて見た! 寒い! 夏なのに!?

 とりあえず、聞かなかった事にして朝食の後片付けを完了したギヨムは、平常心を保ちながら、食器を納めたワゴンを押し、扉の向こう側に姿を消した。
 その扉が閉まる音だけが、静まる部屋に響いた。

 ご・・・誤解だあぁあぁあぁ~~~!
 な、なにか、みんな大人の想像してるよね?
 良い子が絶対想像しないような映像をっっっ!!!!

 いいぃやあぁあぁあぁあああああ~~~~っっっ!!
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