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【愛人と奴隷と心理士と諜報員?】その3
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「いただきます!」
この国の正式な食事前の祈りは特にないけれど、この部屋には調理師のギヨムと、侍女のクレー、私と紫頭だけなので、一応日本式で済ませる。
目の前で私の事を睨んでいる紫頭にはお構いなしに、私は朝食にがっつく。
食パン美味しい!
目玉焼きサイコー!
サラダしゃくしゃくで新鮮!
はああああ・・・美味し~い!
「ギヨムさん、今日も美味しい食事をありがとうね!」
「は、恐れ入りますヒロコ様」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・。
「おい・・・」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・。
「おおおおお~い!」
「んぐ! うっさい、食事中でしょう!」
「これが最後の晩餐とでも?」
「朝食ですけど? ・・・食べたら適当に出てったら?」
「はあ?」
紫頭はポカンと私を見詰めた。
「ギヨムさんの作ってくれたごはんはすっごく美味しいの! 食べなきゃ損よ?」
「・・・ま、いいけど」
警戒心が削がれた紫頭はモソモソとサラダを食み始めた。
目が覚めてきたのか、傍にあるレモン水を一気に飲み干し、焼き立てのトーストにバターを塗り、サクサクと口の中に入れ始めた。
(ふっ! 旨かろう、旨かろうて!!)
パンから何から手作り感満載のこの朝食は、体に行き渡る美味しさ満点なのだ!
「美味しいね!」
笑顔で私は紫頭に声をかける。
「・・・なんなんだよ・・・あんたは・・・」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・美味しいごはんは皆を幸せにするのだ。
敵も味方も、同じ食卓で美味しい食事をすれば笑顔になる・・・と、私は思っている。
「・・・けど、一人の食事は寂しい・・・」
「んあ?」
紫頭が物を口に入れたまま、中途半端な返事をした。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。
あ、いかん、ついつい・・・がっつき過ぎた・・・と反省し、姿勢を整えて上品に食事を口に運び直した・・・もう殆どないけど。
クレーが厳しい目で私を見ている。
(気品がなくて、ごめんなさい)
途中からは互いに無言になり、朝食を平らげた。
紅茶が目の前に置かれ、熱い紅茶をふうふうと冷ましながら私はすすった。
猫舌なのだよ。
「よく眠れた?」
「お蔭様で!」
ごめんなさい、薬を盛ったのは私です。
「さすがに私の寝室に殿方をお泊めするわけには行かないもの。客室は良い所だったでしょう?」
手足を縛ってソファーに転がして置いたけどね。
「目が覚めたら手足がしっかりお縄になってたけど!」
「あら・・・ものすごくゆるく結ぶようにお願いしておいたのに・・・大丈夫?」
紫頭は初めて気が付いたかのように自分の手首を確かめながら指でなぞった。
「本当だ・・・縄の痕が全然ついてないや・・・」
「よかった」
「よかった? 敵なのに?」
「あら? 敵なの?」
紫頭の男はしまった! と、言わんばかりに窄めた唇を上に向けた。
「・・・・・・・・・・あんたさ、さっきオレを従わせるだの言ってたくせに、出てけって言ったり、なんなんだよ?」
「噓も方便よ、貴方は夜倒れたの、それを私が見つけたの、他には何もないわ」
「・・・どうせ、ここから今逃げたってすぐにオレは捕まる」
「そうなの?」
「そうだよ! 分かってるよ、聖女を・・・騙したんだ」
「あら? 私、騙されたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「あら私、被害被ったっけ?」
丸くした目をクレーの方に顔を向けると、彼女は床を見詰めていた。
「ふん! その女、オレをソラルと間違えて・・・聖女の部屋に入るのを黙認してたんだぜ?」
この国の正式な食事前の祈りは特にないけれど、この部屋には調理師のギヨムと、侍女のクレー、私と紫頭だけなので、一応日本式で済ませる。
目の前で私の事を睨んでいる紫頭にはお構いなしに、私は朝食にがっつく。
食パン美味しい!
目玉焼きサイコー!
サラダしゃくしゃくで新鮮!
はああああ・・・美味し~い!
「ギヨムさん、今日も美味しい食事をありがとうね!」
「は、恐れ入りますヒロコ様」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・。
「おい・・・」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・。
「おおおおお~い!」
「んぐ! うっさい、食事中でしょう!」
「これが最後の晩餐とでも?」
「朝食ですけど? ・・・食べたら適当に出てったら?」
「はあ?」
紫頭はポカンと私を見詰めた。
「ギヨムさんの作ってくれたごはんはすっごく美味しいの! 食べなきゃ損よ?」
「・・・ま、いいけど」
警戒心が削がれた紫頭はモソモソとサラダを食み始めた。
目が覚めてきたのか、傍にあるレモン水を一気に飲み干し、焼き立てのトーストにバターを塗り、サクサクと口の中に入れ始めた。
(ふっ! 旨かろう、旨かろうて!!)
パンから何から手作り感満載のこの朝食は、体に行き渡る美味しさ満点なのだ!
「美味しいね!」
笑顔で私は紫頭に声をかける。
「・・・なんなんだよ・・・あんたは・・・」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・美味しいごはんは皆を幸せにするのだ。
敵も味方も、同じ食卓で美味しい食事をすれば笑顔になる・・・と、私は思っている。
「・・・けど、一人の食事は寂しい・・・」
「んあ?」
紫頭が物を口に入れたまま、中途半端な返事をした。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。
あ、いかん、ついつい・・・がっつき過ぎた・・・と反省し、姿勢を整えて上品に食事を口に運び直した・・・もう殆どないけど。
クレーが厳しい目で私を見ている。
(気品がなくて、ごめんなさい)
途中からは互いに無言になり、朝食を平らげた。
紅茶が目の前に置かれ、熱い紅茶をふうふうと冷ましながら私はすすった。
猫舌なのだよ。
「よく眠れた?」
「お蔭様で!」
ごめんなさい、薬を盛ったのは私です。
「さすがに私の寝室に殿方をお泊めするわけには行かないもの。客室は良い所だったでしょう?」
手足を縛ってソファーに転がして置いたけどね。
「目が覚めたら手足がしっかりお縄になってたけど!」
「あら・・・ものすごくゆるく結ぶようにお願いしておいたのに・・・大丈夫?」
紫頭は初めて気が付いたかのように自分の手首を確かめながら指でなぞった。
「本当だ・・・縄の痕が全然ついてないや・・・」
「よかった」
「よかった? 敵なのに?」
「あら? 敵なの?」
紫頭の男はしまった! と、言わんばかりに窄めた唇を上に向けた。
「・・・・・・・・・・あんたさ、さっきオレを従わせるだの言ってたくせに、出てけって言ったり、なんなんだよ?」
「噓も方便よ、貴方は夜倒れたの、それを私が見つけたの、他には何もないわ」
「・・・どうせ、ここから今逃げたってすぐにオレは捕まる」
「そうなの?」
「そうだよ! 分かってるよ、聖女を・・・騙したんだ」
「あら? 私、騙されたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「あら私、被害被ったっけ?」
丸くした目をクレーの方に顔を向けると、彼女は床を見詰めていた。
「ふん! その女、オレをソラルと間違えて・・・聖女の部屋に入るのを黙認してたんだぜ?」
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